+10了ヒバSS

薔薇の芽かきの手も止まる

なかなか慣れない草壁と誰も見てないって思ってる了平と知ってるけど言わない雲雀



 雲雀、と呼び声が聞こえて、薔薇の芽かきをしていた草壁の手が止まった。思わず顔をあげた草壁の目に、テラスに立つ雲雀へと駆けよる了平の姿が映った。
 テラスの柵越しにならんだ二人は、いつものようにたわいのない話をしているのだろう。草壁は手を止めたついでに肩をまわし、大きく伸びをした。
 そのときテラスの二人は互いに手をそえて、会話の合間に短いキスをかわした。見まちがいか、と思うほどのごく短い一瞬にふたつの唇がついて離れた。そして、なにごともなかったかのように二人の会話はつづいている。
 ただその一部始終を目にしていた草壁だけは、ひそかに鼓動を乱していた。
20220123
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