短編
夜中に
夜中に帰ってくるや否や、恋人が抱きついてきた。チャイムが鳴って玄関を開けた瞬間に、ガバッと覆い被さって俺の肩に顔をうずめる恋人。
どうしたの、と尋ねても全く口を開かない。何か嫌なことでもあったのかな。恋人が悲しむ姿は見たくないけど、こうして傷心に甘えてくる恋人も可愛いなあと思ってしまう邪な自分もいる。
よしよし、と恋人の背中を撫でていると、恋人が背中を抱きしめていた手をゆるやかに解いてススス、と胸元から離れていった。どうして離れたんだろう、と不思議に思っていると、目の前には全身に夥しい数のひっつき虫をくっつけた恋人の姿が。
そうだった。君はそういう人だったね。
終わり
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