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どこかの村で伝説として語られてそうな話

ある村に、人の願いを叶えるために生まれた少女と、人の願いを消すために生まれた少年がいた。
彼らは双子の兄妹きょうだいとして生まれ、少年をレオ、少女をフローリアといった。

レオは悪魔の子として虐げられ、フローリアは神の子としてあがめられ、特にフローリアには、彼女のための教会が建てられた。
「妻の病気が治りますように。」「今年は豊作ほうさくでありますように。」と色々な願いをフローリアは叶えていった。

ある時、「婚約者こんやくしゃが生き返りますように。」という男の願いを、フローリアは憐漢字あわれみ、叶えた。

暗闇くらやみの世界から息を吹き返した花嫁は、人気ひとけのない家のベッドの上で涙を流していた。
花嫁は急いで家を飛び出し、願いを消してしまうレオの元を訪ねた。
「あぁ、神様。どうかお願いします。二度目の生を授かった私に、永遠の眠りをお与え下さい。」
レオが訳を聞くと、花嫁と男の婚約は、男によって勝手に結ばれたものだった。その上、男は癇癪かんしゃくもちで、気に食わないことは全て花嫁に当たった。彼女が死んだ原因も、結婚式当日の、些細な男の言いがかりによる暴力のせいだった。
レオは、フローリアには申し訳ないが、自分を頼ってくれた花嫁のために、願いを消すことにした。花嫁に二度目の死が訪れ、動かなくなった彼女の身体をレオは燃やすことで永遠の眠りを与えた。

数日たった頃、自分の願いが叶わなかったと男がフローリアの教会までやってきた。
フローリアは、「あなたの願いは叶えたはずよ」と言ったが、男は聞く耳を持たなかった。

ややあって、静かになったと思ったらふと「お前の兄のせいじゃないか?」と男は言い出した。ふらつきながら教会を出ていく男は、その足でレオの家まで行き、通りすがりに拾った猟銃りょうじゅうでレオを撃ち殺した。
遅れてやってきたフローリアは、急いでレオを生き返らせようとするが、人の願いを叶えるために生まれた彼女は、自分の願いは叶えることは出来なかった。

レオを失ったフローリアは、願いを叶えることをやめてしまったが、レオの死を知らない村の人々は、レオがフローリアの邪魔をしているのだと村中で悪口を言い始めた。

フローリアは、村人を見放すことにしたが、彼女は人の願いを叶えることしか出来なかった。その為、翌年からは「死んでしまいたい。」「あいつを殺してやりたい。」という願いだけを叶えていった。

数年後、村の者は一人もいなくなったが、そこには人の願いを叶える神様がいるという伝説のある教会だけがすたれずに残っている。
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