昔ある村に、ニーネルという少女と、ドミという少年がいた。
二人（ふたり）は幼い頃から仲が良く、ニーネルはドミの演奏する、音の外れたハープで踊ることが好きだった。
成長するにつれてニーネルは村一番（むらいちばん）の踊り子に、ドミはしがないハープ奏者になった。
ある時、ニーネルが村の神様に、生贄として捧げられることになった。神様が、踊り子の生贄を欲しがったからだ。しかし、ニーネルは「ドミの演奏でないと踊らない」と言った。
村の人々が、仕方なくドミの家を訪ねると、ドミは病気で寝たきりになっていた。村人の一人（ひとり）が訳（わけ）を話すと、ドミは笑って、最後の力で弱々しくハープを弾いた。
ドミの演奏を元に、村の人々はハープを弾く機械人形を作っていたが、その数年の間に、ドミは死に、生贄として捧げられたニーネルは人間ではなくなってしまった。
完成した機械人形をニーネルの元へ持っていくと、ニーネルは「やっと会いに来てくれたのね、ドミ」と言って、機械人形の演奏に合わせて踊り始めた。
神様は、やっとニーネルが踊りを見せてくれたことに満足をし、村に数年ぶりに雨を降らせた。

神様が消滅した今でも、機械人形は演奏を続け、人の姿を失（な）くしたニーネルは踊り続ける。その村では月に一度、大雨が降る。