不純同性交友

不純同性交友

ここは私立堀鐔学園。

ある名物教師たちの小話である。

体育準備室にて。

「ねーねー、黒みゅーセンセー。次の授業、体育館でやるのー?」

化学教師であるはずのファイ先生は、体育教師の黒鋼先生にいつもどおりちょっかいをかけていた。

「お前こそ次授業ねーのかよ?全く。俺は保健体育教えるから教室だ!」

それを聞いたファイ先生は蒼い瞳をキラキラ輝かせていた。

「オレは次は空いてるのー。厳しくてストイックな黒たん先生が保健体育教えるとか、めっちゃ興奮しちゃうんだけどオレ!聞きたい!」

とんでもないことを言い出すので呆れてしまう黒鋼先生。

「興奮するだぁ?!お前、頭がパッパラパーだな相変わらず、ったく、ふざけるのも大概にしろ!俺は真剣に教えているんだ!」

「まーまーそんなに怒らないでよね?黒りん先生?そんなのわかってるよー。じゃぁーさー、今夜特注の日本酒お持ちしますからー。ね?」

「ふん!」

少し上機嫌になった黒鋼先生だったが、隙を見せてしまうことにあとで後悔することになる。

「あらー、楽しそうなお話してるじゃない?私も混ぜなさいよ?お仕置きよ?」

いきなり窓から登場した、堀鐔学園の理事長である破天荒な侑子が来たことに気づかなかった。

「また窓から登場かよったく。俺は授業の準備があるからずらかるぞ!」

侑子が黒鋼先生にビシッと言う。

「あらーこんな楽しいこと、放っておくわけないじゃない。今日の保健体育はB組とC組の合同に決定よ!」

いきなり勝手に決められた黒鋼は流石にキレた。

「授業は生徒のためにある。ここだけは、譲れないぜ理事長。」

そういう黒鋼に侑子は、ふふと艶やかに微笑み。

「もちろん授業はいつも通り、真面目にやってください。でも楽しそうだから、今日は合同よ!理事長の命令よ!」

ファイはうわーい!合同ー!とはしゃいでいる。

黒鋼は観念したのか、はぁーと大きく大袈裟にため息をついた。

キーンコーンカーンコーン。

チャイムが鳴る。

「お前ら、いきなりでびっくりさせて申し訳ないが、あるわがまま理事長のお達しで、急遽合同になっちまった。だが、真面目にやるから心して聞くように!」

廊下から覗いていたファイである。

「うわーい、黒りん先生真面目ー!かっこいいー!ひゅー。」

黒鋼はファイの額に向けて、チョークを投げた。

クリティカルヒット。

「いったーい。ひどいよー。」

「うるさい!外野は黙ってろ!」

授業は邪魔も入らず、通常どおり進んでいる。

性教育の話がある程度終わったあと、黒鋼は生徒に厳しく語った。

「いいな、男共!女子は大切に扱え!大切な人だからこそ尚更だからな!わかったな!俺の授業を受けたからには、絶対だぞ!約束だからな!」

黒鋼の意気込みは凄かった。

ほとんどの生徒ははい!っと返事をした。

生徒の中で、小狼の双子の兄である、小龍が手を挙げた。

「はい!黒鋼先生質問があります?いいでしょうか?」

「質問ならなんでも答えてやる。やる気があっていいぞ。なんだ?」

黒鋼は少し嬉しそうに話しかけた。

すると小龍は、予想の斜め上を行く質問を投げかけてきた。

「先生、女性を大切に扱うことは、おれたち男子のほうが力が強いし優しさを持って接すると言うことでわかります。

でももし一番大切な人が女性ではなく、同性だった場合はどうなのでしょうか?」

うっと、言葉に苦しんでしまった。

うーんうーんと考え込んだ末、

「愛したものの性別は関係ねぇ。自分が生涯守ると決めたものは、絶対に守り通せ。絶対だ。」

そう答えた。

「わかりました。ありがとうございます。黒鋼先生。」

素直に聞き入れてもらえたようだ。

キーンコーンカーンコーン。

教壇をバンと叩いた。

「今日の授業は以上だ。しっかりと覚えておくようにな!」

黒鋼は授業が無事に終わったことを心から安堵した。

パチパチと侑子が登場した。

「流石黒鋼先生、同性交遊にもきちんと答えるなんて!多様性の時代をわかってるわね!」

「はぁー。これで満足ですか?」

侑子は不敵な笑みを浮かべて頷いた。

夜の帳が下りる。

教員宿舎で隣同士のファイと黒鋼は、今夜は黒鋼の部屋で美味い日本酒を嗜んでいた。

「黒様先生かっこよかったよー!みんな絶対わかったと思うなーオレ!」

ファイはお酌しながらそんなふうに感想を述べた。

「ふんっ。そうかよ。てか、小龍のやつは、男と付き合ってるのかよ?お前のクラスだろ?」

ファイは少し眉根に皺を寄せながら、少し言葉を選びながら答える。

「うーん。複雑でね。まあ、また話すよ、今日は飲もう!」

言いにくいようで、うまく流されてしまった。

「なんだー。まぁいいけどよ。」

ファイのお酌に気分よく飲む黒鋼。

「あのさ、あのね、黒りん。。オレは…。」

ファイが言いにくそうに、言葉を濁しながら話しかけてきた。

かちりと合った目はとても真剣な蒼だった。

「なんだよ。改まって。」

ファイは、意を決した顔になった。

「あのね、君…授業で愛するものは生涯絶対守り通せって言ってたよね。あれって君がそうしてるからだよね…。どうしたら、君の懐に入れてもらえるの?」

目の前の化学教師は、ただのファイという細い変梃な1人の人間だった。

とても不安そうに自分のことを一生懸命見上げてくる。

放っておけない。そう心で思ってしまった。

惚れたもん負けだな…。

黒鋼はファイの柔らかな金糸の髪の毛を撫でた。

言葉にするより温もりで伝わるような気がした。

ファイは必死な顔で、黒鋼の唇に自分の唇を重ねた。啄むような軽いものだ。

向こうが行動で示すなら、自分もと挑んでみた。

「オレのことも、黒様の心に入れて欲しい。」

そういうと、黒鋼の厚い胸板に頬を寄せて眠り始めた。

まるでひよこのようなやつだな。

黒鋼はふっと微笑んだ。

「もう前から懐に入り込んだのはそっちだろ。敵わねえな。」

聞こえてるから聞こえてないのかわからない相手に静かに語りかけた。

胸の中で眠りかけている化学教師を優しく抱きしめてやった。

そしたら、自分よりも短い腕だが、しっかり抱きしめ返したのがわかった。

愛おしい。

今はそう思うだけ。

ゆっくり考えていけばいいかと黒鋼は考えた。

そして夜は静かにふけていった。

私立堀鐔学園。

今日も適度に平和で。適度に刺激がある楽しい学園。

ちゃんちゃん。
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