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お金ないよ
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週に一回は借金取りのオッサンがうちに来て、扉をガンガン叩くから、それがいやで私は外にでた。
吉田からもらった10万は、肉を食べて1万減って、携帯の料金を払ったり学費を入れたりしたらグーンと減って、もう半分になってしまった。
はーああ、お金ないのにどうしてデパートなんて来ちゃったんだろ。
……吉田と次に会った時、いい服を着てないと何を言われるかわからないからだった。
私って結構衝動でお金を使うところがあって、そういうとこは親に似ているのかもしれない。
百貨店の中は、お洒落な人でいっぱいで、しまむらで固めた自分の垢抜けないファッションが浮いているように感じてきた。
4階の女性服売り場では、私の1ヶ月の食費と同じ値段の服が所狭しと並んでいて、それを私とそんなに年の離れていない女の子が買っていたから、うわー! と叫びたくなった。
店員さんも買わせようと必死だし、何が自分に似合うのか全然わからなくて、全部の売り場をひたすら見て回っていたら、思ったよりも時間がたっていて、早く決めないといけないのに、全然わからなくて、急に泣きたくなってきた。
もう、昨日「レディース 服 おすすめ」で検索した時に出てきた服と同じやつを買って帰ろう。
どうせ、ああいうひらひらしてて可愛いやつとか、肩を出してるやつとか、似合わないけど、似合わなかったらメルカリに出しちゃえばいいし、もう、それでいい。
今シーズンの新作ですよ~なんて言葉で適当に買った服を試着室で着て、そのまま電車に乗って帰った。窓に反射する自分は、お人形が着るみたいなひらっひらの、レースまみれみたいな服を着ていて、どこかで見たことのある顔をしていた。このブランド、よく思い出せばお母さんが好きなやつだ。通りでなじみがあると思ったら、そういうことか。
若い時のお母さんみたいな自分がそこにいて、途端にこの可愛いひらひらが、重い鉄カセの拘束具みたいに見えてきて、ゾッとした。
あーあ、お母さんかぁ。おかーさん、今どこで何してんだろ。そもそも、まだ東京にいるんだろうか。おばあちゃんの家に電話しても出ないし、もう何が何やらわからない。
リボンのついた、それだけで売り物になりそうなブランドの買い物袋の中には、私のぺらぺらの生地の服と、履き潰したスニーカーが入っていて、ずっしりとした重みが私の腕を痺れさせようとしている。
土曜日の午後の電車は、通勤ラッシュほどじゃないけれどそこそこに満員で、早く誰か降りて座らせてくれないかなぁと、あたりを観察したりした。
車掌の気の抜けた声が、平和だなぁと感じさせてくれる。昨日の夜は、この駅の近くで悪魔が出たっていうのに、もう元通りに停車するようになっている。
私がそれを殺しただなんて、みんな思わないだろうなぁ。大手の派遣会社って、いっぱい中抜きされるんだよ、悪魔よりひどいよねぇ。
のんびりしていると、電車がカーブに差し掛かり、車体が揺れた。
「っ!」
「申し訳ありません。踏切にて歩行者と接触しかけたため、急ブレーキをかけました」
車掌の声は、事務的で、車内も少しざわついたくらいで治った。まぁ、たまーにあることだ。
それよか、これから電車が止まるんじゃないかということの方が心配だ。人との接触って、超迷惑だと思う。
「悪魔じゃなくてよかったな」
「そうですねーまだ人間のがマシですよね」
急に話しかけられて、まぁ適当に受け答えしておく。こういう時、声をかけてくる人っているよね。野次馬みたいな感じで、こっちもまぁ暇だし、声かけられてもいっかみたいな。
「……えっ、えぇ~~?」
「よっ、ナマエ。昨日ぶり」
「よしだぁ……?」
「ヒロフミだろ。俺、ちゃんと教えてやったのに、忘れたのか?」
同じ車両に、吉田がいるなんて思ってもいなかった。
私がビビって固まっていると、吉田はいつものように、私をじろじろと見つめ回した。
うぇぇ、この時間が一番苦手なんだ。人のこと、検品するみたいに見て、失礼だと思わないんだろうか。
「へぇ……ちゃんと服買ってんだ」
「そうだけど、何……」
「可愛いけど、それナマエには合ってないな」
「え、えぇ~? 嘘ぉ」
私が不満げな声をあげると、吉田は私の肩を触った。へ、と気の抜けた声が口から漏れた。肩から腕、腰までに手をはわせられ、心底気持ち悪いと思った。痴漢だろ。でも、側から見た私と吉田はカップルがいちゃついているように見えるのか、関わりたくないのか、誰もこちらに気づく気配がない。
まぁ、前にもその、いろいろ触られてしまっているので、今更ではあるが、大人しくされるがままも腹が立つので、上にある綺麗な顔を睨みつけた。
私の体の形を確かめるように這う腕は、本人が契約している悪魔そっくりだと思った。長い手に触れられる先が、少し暑くなって、体温が上がっていることを悟られないように、私はギュッと体を硬くした。
「やっぱ、ナマエの骨格だと、そのタイプの服は合わないだよな。俺が選んでやるからさ、次で降りようぜ」
確か次の駅には、ファミリー向けのモールがあったはずだ。
「吉田と私が、買い物……?」
「デートだよ、デート。しようぜ。したことないだろ?」
「うぇぇぇ」
吉田は私の靴が入った鞄を奪い取って、何も持っていなかった方の手を、自然につかんだ。
「手……」
「ダメだな、これくらい反応しなきゃ」
「あー、はい……」
抜き打ちテストをされた気分だった。説教くさいことを言うたびに、吉田は嬉しそうに笑う。電車は緩やかに止まって、胃の中のものを吐き出すように、人間が駅へと降りていく。
「晩飯奢るから、な?」
行くのが面倒でだらだら歩いていると、寿司屋の目の前で、そんなことを言った。
「……大トロめっちゃ頼む」
「いいねぇ」
私は一人で2万円分の回転寿司を食べて、会計する時に寿司飴も買った。
吉田からもらった10万は、肉を食べて1万減って、携帯の料金を払ったり学費を入れたりしたらグーンと減って、もう半分になってしまった。
はーああ、お金ないのにどうしてデパートなんて来ちゃったんだろ。
……吉田と次に会った時、いい服を着てないと何を言われるかわからないからだった。
私って結構衝動でお金を使うところがあって、そういうとこは親に似ているのかもしれない。
百貨店の中は、お洒落な人でいっぱいで、しまむらで固めた自分の垢抜けないファッションが浮いているように感じてきた。
4階の女性服売り場では、私の1ヶ月の食費と同じ値段の服が所狭しと並んでいて、それを私とそんなに年の離れていない女の子が買っていたから、うわー! と叫びたくなった。
店員さんも買わせようと必死だし、何が自分に似合うのか全然わからなくて、全部の売り場をひたすら見て回っていたら、思ったよりも時間がたっていて、早く決めないといけないのに、全然わからなくて、急に泣きたくなってきた。
もう、昨日「レディース 服 おすすめ」で検索した時に出てきた服と同じやつを買って帰ろう。
どうせ、ああいうひらひらしてて可愛いやつとか、肩を出してるやつとか、似合わないけど、似合わなかったらメルカリに出しちゃえばいいし、もう、それでいい。
今シーズンの新作ですよ~なんて言葉で適当に買った服を試着室で着て、そのまま電車に乗って帰った。窓に反射する自分は、お人形が着るみたいなひらっひらの、レースまみれみたいな服を着ていて、どこかで見たことのある顔をしていた。このブランド、よく思い出せばお母さんが好きなやつだ。通りでなじみがあると思ったら、そういうことか。
若い時のお母さんみたいな自分がそこにいて、途端にこの可愛いひらひらが、重い鉄カセの拘束具みたいに見えてきて、ゾッとした。
あーあ、お母さんかぁ。おかーさん、今どこで何してんだろ。そもそも、まだ東京にいるんだろうか。おばあちゃんの家に電話しても出ないし、もう何が何やらわからない。
リボンのついた、それだけで売り物になりそうなブランドの買い物袋の中には、私のぺらぺらの生地の服と、履き潰したスニーカーが入っていて、ずっしりとした重みが私の腕を痺れさせようとしている。
土曜日の午後の電車は、通勤ラッシュほどじゃないけれどそこそこに満員で、早く誰か降りて座らせてくれないかなぁと、あたりを観察したりした。
車掌の気の抜けた声が、平和だなぁと感じさせてくれる。昨日の夜は、この駅の近くで悪魔が出たっていうのに、もう元通りに停車するようになっている。
私がそれを殺しただなんて、みんな思わないだろうなぁ。大手の派遣会社って、いっぱい中抜きされるんだよ、悪魔よりひどいよねぇ。
のんびりしていると、電車がカーブに差し掛かり、車体が揺れた。
「っ!」
「申し訳ありません。踏切にて歩行者と接触しかけたため、急ブレーキをかけました」
車掌の声は、事務的で、車内も少しざわついたくらいで治った。まぁ、たまーにあることだ。
それよか、これから電車が止まるんじゃないかということの方が心配だ。人との接触って、超迷惑だと思う。
「悪魔じゃなくてよかったな」
「そうですねーまだ人間のがマシですよね」
急に話しかけられて、まぁ適当に受け答えしておく。こういう時、声をかけてくる人っているよね。野次馬みたいな感じで、こっちもまぁ暇だし、声かけられてもいっかみたいな。
「……えっ、えぇ~~?」
「よっ、ナマエ。昨日ぶり」
「よしだぁ……?」
「ヒロフミだろ。俺、ちゃんと教えてやったのに、忘れたのか?」
同じ車両に、吉田がいるなんて思ってもいなかった。
私がビビって固まっていると、吉田はいつものように、私をじろじろと見つめ回した。
うぇぇ、この時間が一番苦手なんだ。人のこと、検品するみたいに見て、失礼だと思わないんだろうか。
「へぇ……ちゃんと服買ってんだ」
「そうだけど、何……」
「可愛いけど、それナマエには合ってないな」
「え、えぇ~? 嘘ぉ」
私が不満げな声をあげると、吉田は私の肩を触った。へ、と気の抜けた声が口から漏れた。肩から腕、腰までに手をはわせられ、心底気持ち悪いと思った。痴漢だろ。でも、側から見た私と吉田はカップルがいちゃついているように見えるのか、関わりたくないのか、誰もこちらに気づく気配がない。
まぁ、前にもその、いろいろ触られてしまっているので、今更ではあるが、大人しくされるがままも腹が立つので、上にある綺麗な顔を睨みつけた。
私の体の形を確かめるように這う腕は、本人が契約している悪魔そっくりだと思った。長い手に触れられる先が、少し暑くなって、体温が上がっていることを悟られないように、私はギュッと体を硬くした。
「やっぱ、ナマエの骨格だと、そのタイプの服は合わないだよな。俺が選んでやるからさ、次で降りようぜ」
確か次の駅には、ファミリー向けのモールがあったはずだ。
「吉田と私が、買い物……?」
「デートだよ、デート。しようぜ。したことないだろ?」
「うぇぇぇ」
吉田は私の靴が入った鞄を奪い取って、何も持っていなかった方の手を、自然につかんだ。
「手……」
「ダメだな、これくらい反応しなきゃ」
「あー、はい……」
抜き打ちテストをされた気分だった。説教くさいことを言うたびに、吉田は嬉しそうに笑う。電車は緩やかに止まって、胃の中のものを吐き出すように、人間が駅へと降りていく。
「晩飯奢るから、な?」
行くのが面倒でだらだら歩いていると、寿司屋の目の前で、そんなことを言った。
「……大トロめっちゃ頼む」
「いいねぇ」
私は一人で2万円分の回転寿司を食べて、会計する時に寿司飴も買った。