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ジェイド、頭をよくしてあげよう
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何もかもがオレと違う。彼女の小さな身体はちょっとでも力を込めるとあっけなく崩れてしまいそうだったし、肌に指が触れるとすべすべしていて、暖かくて、お人形みたいなのに呼吸するごとに上下して、ああ、ナマエも人間だったんだな、とよくわからない考えに至る。小さくて、弱くて、かわいいな。守ってあげたくなるんだけど、オレがしているのはいつも考えていることとは真逆のことで、自分の中にある矛盾のすべてが、今のオレがやっていることへの解答な気がしている。
「す、すごいよナマエ……♡ オレたち、やっと繋がれた♡ うれしいな、ナマエは……ちょっとしんどいよな、ごめん」
「最悪っ! さいあくさいあく! も゛う゛やだぁ……っ」
「非道いこと言わないで欲しいなぁ。でも、オレだけ気持ちよくてナマエに負担掛けてるのは、ごめん。こればっかりは男と女なんだから、仕方ないんだ」
ナマエの身体は、まあ、女の子にしては普通なんだけどやっぱり、オレなんかと比べると小さくて、その上でやっぱり処女だったから、オレのを挿入れるとかなりキツかった。
なるべく痛くしないように前戯とか、舐めたり……色々頑張ったんだけど、ナマエは本人なりに必死に抵抗してくるし、どこがいいとかも恥ずかしがって教えてくれないから結構大変だった。
暴れられてもオレの前だったら何も意味がないのに……。なんで意味のないことをするんだろう。ナマエはオレより賢いんだから、ちゃんと理解していて当たり前だと思うんだけど、やっぱりナマエもセックスに関してはよく分かってないのかな。
オレは精一杯優しくしてあげてるつもりだけど、どうしても体格差とか、そもそも女性は受け入れる側だし、配慮が足りないのかも。……でもオレだってナマエがはじめてだし、練習……とか、そういうことじゃないと思う、から。どうしても不慣れでナマエに迷惑をかけるのは致し方ない。
「繋がれて、すごい……♡ ナマエのおまんこ、キツキツだ……♡ オレの、まだ全部は入ってないけど、ん゛っ……、っ、あ、もってかれそ……♡」
「ぅ、ぁ……、え゛……っ、んぅっ……♡」
呼吸すら忘れて顔面蒼白になりながら、オレのを必死に受け入れているナマエの表情すら愛おしい。白くて細い首に汗が流れて、前髪もおでこに張り付いている。そういえばこの部屋、なんだか暑いな……。セックスしてるせいなのか、元からこうなのか、わからないけど、まあ、いいや。
ナマエの中はすごかった。さっきも指だけ入れた時ですら異物を押し出す力がすごくて、勢いだけで進めたら怪我をさせてしまうんじゃないかって心配になったし。中は暖かいっていうか……ぬるい? お湯に浸かっている時みたいにナマエの中の体温がオレよりも暖かくて、ただでさえ気持ちいいのに人肌の暖かさを意識すると硬く張り詰めるような感じがした。
指一本だけでもいっぱいいっぱいで、ナマエはそんなにオナニーもしたことないのかもしれないって思うとオレ、それだけで出してしまいそうだなって思った。聞いたら怒るから一応言わないけど。
……オレは、正直どっちでもいい。性欲とかあったら解消しようとするのは普通だし、ナマエがおもちゃとか使って、オレのこと考えてオナニーしてくれてたら、う、最高……かもしれない。今度頼んでみようかな。
せっかく恋人になれたんだし、今だってこうやって二人ではじめてのセックスできてるんだから。
……普通のセックスに飽きてきたら、こういうのもやってみたい! オレ、ナマエとするならなんだっていい。なんでもやれる!
――なんでもって、具体的にどうしたいのかあんまり考えつかないけど……。今だってこうやって正常位で挿入して、ナマエが落ち着くまで待ってあげてるくらいだし。まだまだこれから。
「え゛、うぅ……っ♡ ぉ…………♡」
「ね、ナマエ……。そろそろ動いてもいい? 悪いんだけどさ、オレ、もう……辛いんだ。ナマエだって辛いだろうけどさ、な……っ?」
「嫌、抜いてよ……。もう嫌、嫌い、あんたなんて嫌い……」
「うーん、まぁ、辞めてあげられるならもうそうしてるんだけど……。今、オレ、ナマエとセックスしたいんだ。だからさ、もうちょっと頑張って欲しいんだ。だってほら……、この後トイレ借りて抜くのもさ、変だろ?」
ぐちゃぐちゃに溶け合って、全部混じり合って一つになる。それのどこがいけないのか分からない。
――こうやって、ナマエの初めてをオレがもらって……ずっと考えていたことだけど、やっぱり嬉しい。ナマエもやっぱり女の子なんだなって、オレのが入っておっかなびっくりで、あのセンパイとかいう男にぶち破られていなくて本当によかった。ナマエのはじめて全部、オレがいいから。
ナマエの腰が反って、お腹に肋骨が浮き出ている。この薄いお腹の奥にオレがいて、外からはあんまりわからないけどこのふわふわした肌の下に、全部入ろうとしている……というか、入れようとしている、オレが。
オレの動きに合わせて彼女の全身はビクビクと動いた。ズ、と腰を動かすと、シーツを握りしめたナマエの目が虚ろになった。どこか遠くに飛んで行っちゃいそうで、オレは必死になってナマエの頬をぺちぺち叩く。
「ねえ、まだ寝ちゃ駄目」
「お゛っ……、ぅ、ぉ、ぁ…………」
頭が沸騰しそうだ。ナマエの膣から溢れた血と愛液と汗の混じった液体が、ベッドのシーツに纏わり付いて、おねしょしたみたいにじっとりと湿っている。しばらく派手に弄くっていたせいで、もう大分前に出したそれはすでに冷たい。
「も、ちょい……♡ 頑張って♡ もう少しで全部入るから♡」
「も、お……入んないってぇ! ばかしね! お゛っ――ぁ、ひっ……ぃ、っ……♡」
そうは言いつつも言葉とは裏腹に、ナマエの膣は少しづつオレという異物を受け入れ始めていた。やっぱりセックスって、こんな小さなおまんこの穴にオレのが入るのかなって本当に、本当に心配だった。だって下手をしたらナマエに怪我――殺してしまう危険性だってあったから。
オレたち恋人同士なんだからお互いに協力しあうべきだろ? ナマエのおまんこが存外聞き分けがよくて、本当に助かった。ナマエだって普通に性欲、とかあって……オレの愛撫でちゃんと感じてたし、やっぱりオレたち相性がいいのかも。神様がオレに与えてくれた宝物……大好きだ。
「あ゛…………っ♡ ぅ……っ♡」
「……~っ、♡ ぁ⁉ ぅ、ぉ゛っ…………♡」
ナマエはやっぱり初めてだから、ずっと喘ぎ声が切羽詰まっている。なんだかこっちが虐めて好き勝手やっているみたいな気分になってくる。
勢いのまま最奥まで腰を進めると、滑ってナマエの恥骨とぶつかって、凄い音が出た。骨まで衝撃が伝わって、ナカが不規則にぎゅっ、ぎゅっと締まった。……あ、それ、本当にヤバい……。
「~っ、…………はぁっ♡ 凄い♡ はじめてなのに……、こんなに感じて、オレのを締め付けてくるんだ……♡ ナマエ、オレとセックスできて気持ちいい? オレは……言わなくてもわかるよな? 好きだよ……♡ ナマエとセックスできて、本当に嬉しい♡」
「う゛っ、ぅう゛…………っ♡ 死ね……死ね……殺す……」
「ナマエにはオレは殺せないだろ?」
かわいそう!
ナマエの白い首筋にある頸動脈にそっと手を触れれば、ブツブツと呟いていた謎の恨み言もピタリと止まった。
「オレ、やろうと思えば今ここで……ナマエの首、落とせるよ」
「ひ……人殺し……」
「やらないよ。何言ってんだよ、やるわけないだろ。オレ、好きな子のこと殺せないよ。そんなこと絶対にしない」
「言い出したのはそっち……」
「……ナマエがひどいこと言うから、ちょっと、ね……」
「ちょっとじゃないでしょ……。あなたが言うと洒落にならないんだけど……」
ナマエの声は震えていた。頬には幾度も流れた涙の跡があるのに、更に彼女の瞳からボロボロと、大粒の涙が零れてくる。好きな子のことを泣かせたいわけじゃないんだけど、オレのせいでナマエがこんなことになっているのが、ちょっと嬉しくて……。よくないんだけど、やっぱり……。
「好き、ってナマエの口から聞きたいんだよ」
「いっ、い、嫌だ……」
「オレ、ずっと好きだって言ってるのに……。すき、好きだよ。ずっと好きだったんだ。何回だって言ってあげるから、ナマエもオレに……な? わかるだろ?」
「っ、ふ、や、やだ……。なんでわたしが、そんなことを……」
子供みたいに鼻を鳴らしてナマエは泣き出した。……実は今日まで、ナマエが泣いてるとこ、見たことないんだよな……オレ。ベルリンにいた時はナマエはいつも余裕があるっていうか、オレに対してお姉さんぶってたから、泣いてるところなんて一回だって見たことがなかった。
「そんなに、嫌なんだ……」
「う゛っ、う゛ぅっ……。だ、誰のせいだと……ジェイド、あなた自分がやってること、分かってないんでしょ……。な、なんでお、また硬くなってんの゛っ、ぉ……♡」
「あ~……。ごめん。これはちょっと、引くよな」
本当に、オレの頭がおかしくなったみたいだ。オレっていつもナマエのせいで脳みそを引っかき回されて、頭がおかしくなっている気がする。昔、オレのことを頭をよくしてあげるとか何とか言って、すごくかわいがってくれていたのに……。ナマエのせいで、オレ、全部ひっくり返されて……でも、ナマエが望んでいる物は全部与えられるようになったから、これでいいはずなんだけど……駄目かな。
「…………」
「~っ、♡ ……んっ……、ぁ……」
オレはしばらくピストンを辞めてじっと待っていた。ナマエは眉間に皺を寄せながら、悩ましげな表情でじっと目をつむっていた。
動かないでいると、ナマエの膣が勝手に蠢いてオレのことを搾り取ろうとしているのがよくわかった。彼女の口の端から零れるような小さな喘ぎ声のせいで、オレはじっと絶えていたけれど、イライラしていた。
……なんで、オレが好きっていっても同じように返してくれないんだろう。オレはナマエが自分から求めてくるまで、このまま我慢して動かないでいるつもりだ。根比べなら多分、オレの方に分がある。訓練で鍛えた精神力をこういうところで使うのは……いいことではないと思うけれど。
「腰が勝手に動いてる……」
「っ、してないしっ! 人聞きの悪い!」
「……そっか。……ていうか、さ。ナマエの声結構出てたけど、隣の人に聞かれちゃったりしてないかなってさ。オレ、気になってる。ナマエは?」
「う、あ……。なん、で、そんなこと言うわけっ……!」
そう言いながらナマエの腰は気持ちいいところを探しているのか、無意識に少し揺れていた。オレのを締め付けてきゅっと硬くなったり、体重がかかっていいところに当たるとナマエの口からは「ひっ……」としゃっくりみたいな喘ぎ声が上がった。喘ぎって言っていいのかな。喉から押しつぶしたような、首を絞められているような声を聞く度に、自分でやっておきながら大丈夫なのかと心配になってくる。
「……なぁ。本当にオレのこと嫌い?」
「き、嫌い……に決まってるじゃん。好きだって言うならわたしの嫌がることとか普通しないでしょ……ぉ、ぁ、っ……♡ い、意味わかんないし……。昔の可愛かったジェイド、にっ、戻してよ……」
「駄目だよ……。オレ、大人じゃないとセックスできないんだから」
「する必要ないじゃん……」
「うーん、でも、ナマエのおまんこは気持ちいいよって言ってるよ」
「う、わ……キモ」
「それにオレも……気持ちいい♡ オレ、ずっと、ナマエとこうしてたかったんだ……。オレの我が儘に付き合ってくれて本当に嬉しいよ。はじめてもオレのために置いておいてくれてさ」
「違う……っ、し、ぁ♡ っ、~…………♡」
口を開きっぱなしにしながら喘ぐナマエを見ていると、本当にだらしなくてかわいいな、と思う。普通人の欠点なんて見ていていいものじゃないけど。自分のすきな人のものならなんだって、好きだ。
「ねぇ、お願いだから。好きって、言って欲しいんだ。一回だけでいいからさ、頼むよ……。そうじゃないとオレ、終われないよ」
「終わる……って、……………………あ~……」
「お、オレさ! 早漏でもないんだけど、多分、ナマエとちゃんとセックスしないと駄目なんだ! ……さっきからすごいナカがさ、ギチギチだし……う゛、も、本当に……ずっと我慢してるの知らないだろ⁉ 一人でずっとオレのちんこ使ってオナニーしてさ! 人の気も知らずに、さっきまで処女だったのになんでそんなにスケベなんだよ! 意味わからないのはこっちだろ……。……ちゃんと二人で一緒にイきたいんだよ、駄目かな……?」
「い、一回したら、ちゃんと終わる……?」
「……多分もう、出ないと思う」
「……………………」
ナマエはずっと怒っていた。怒っていた、というのは表情を見てオレがそう思っただけで、実際のところは怖がっていたのかもしれない。ナマエは可愛い顔をしているけど、普通の時は無表情というよりいつもムスっとしていたから、滅多に笑わない。今だって呆れたような顔をして、じっと無言でオレじゃない場所を見ていた。天井……見上げていた。オレのことを見てほしいけれど、ナマエはずっとオレがいない場所を見つめていた。まるでオレなんていないみたいに。声だけしか聞こえていない相手とセックスしているみたいだった。彼女はずっと、歯医者の椅子に座った時みたいな顔を、していた。
ナマエはそっと上半身を起こす。オレの顔にじっと近づいてくる。
着ているというよりは、最早上に引っかけていると表現した方が正しいシャツの隙間から、ナマエの白い肌が見え隠れしていた。そこに乱れた髪がだらんと張り付くように垂れていて、そこに触れたかったけれどじっと我慢した。ナマエはオレのを挿入したままだったので、少しでも動くと眉間の皺が深くなった。起き上がるのはしんどかっただろうに、堪えるような表情のまま、オレの顔に近寄ってくる。さっきまで諦めたようにだらんと伸びていた腕がオレの肩に触れる。シーツを握っていたせいで、ところどころが赤い。
「ナマエ……」
「す、き。――これでいい? 本当に――気持ち悪くなったね、ジェイド」
とっとと終わらせてよ。
吐き捨てるような声で、確かにそう言った。
「…………っ、あ、ああ……」
「なんで、泣いてんの……。泣きたいのはこっち、なんだけどっ」
「す、好き……で、オレずっと、ナマエのことが、好きで……っ。我慢できなくて、ごめん、好き、好きなんだよ……」
ナマエの冷めた目がこっちをじっと見ていた。好きな人と一緒にいたくて繋がりたくて何が駄目なんだろう、でもナマエが怒っているからオレはわけもわからずずっと謝り続けるしかなくて、オレの手はナマエの腰を掴んで身体が勝手に動くみたいにずっと腰が動いていた。その間ずっと悲しかったけど、なんでオレだけここまで苦しんでいるのかも、わからなかった。
「……ぁ、お゛っ……♡ こ、ころして……」
「ううっ……。す、好きなんだよ……。オレを受け入れて、ナマエ……」
口では嫌がってるけど、身体の方はオレのを好きだって言ってる。ぐちゃぐちゃに溶け合って気持ちいい。これだけ愛してるのに、何回言っても伝わらない、とか訳が分からないな。ナマエの中はまるでそれ単体が意思を持って動いているんじゃないかと思うくらい、暖かくてじっとりとしていて、オレのを締め付けてぎゅっと抱きしめてくれていた。つるつるしてそうな見た目なのに、擦るとちょっとざらついていて、意識を下半身だけに集中させていると、本当にすぐ持って行かれそう、だと思った。
「はーっ♡ 気持ちいい♡ ナマエも、気持ちいいよな♡ オレたち、やっぱり相性最高じゃないか♡」
「ん゛っ、ぉ……♡ も、もう嫌……っ、ぇ、あ゛…………♡」
「……ん、オレも……そろそろ……」
「お、終われ……、終わって……、は、はやくっ……ぅ゛、っ、ぁ゛…………~♡」
こ、腰が重い……。溜まってたの全部、ナマエの中にぶちまけたい……。そろそろ、本当に、全部漏れそう……。
「――ッ、あ、射精る……」
「う゛っ……♡ ぁ、は、やく……終われッ!」
頭の中が真っ白になる。目の前で火花がバチバチ鳴るような衝撃が走って、気がつくとぎゅっと目を閉じていた。
「ぅ、ぁ、あ゛…………♡ なっが、長過ぎ……」
「あ、っ、ごめ……」
血が上りすぎてフラフラする。ゴム越しだけどナマエのナカがビクビクして、オレのを全部吸い取ろうとして動いているのが分かった。本人の口からは荒い息使いしか聞こえてこないし、全身から力が抜けてベッドに文字通り全部を預けて横たわっている。
心臓の鼓動みたいにナカがビクビクしていて、それだけでまたイライラしてきたけど、さすがに身体が悲鳴を上げている。
「も、もう無理……」
「やらないよ! さすがに無理だ……オレも」
「は、や、く、抜きなよ」
「え、あ、うん……。ごめん……」
「チッ」
ぞろ……とナカから引き抜くと、コンドームに溜まった自分の出した精子の量が嫌でも見えてしまって気まずかった。ナマエはそれを一瞥すると、フン、と馬鹿にしたような声を出す。
「は、恥ずかしいな……」
「遅漏、馬鹿、キモい、見せるな。……下着とって、ジェイドが投げたんでしょ」
「うん……」
セックスが終わった後ってこんな感じなんだろうか。不機嫌でイライラしている彼女の言うことだから、全部聞いてあげないと……いけない気がするし、オレなんかよりナマエの方が大変だったから、全部オレの方が頑張らないと……。やってあげないと……。
「……あなた、とんでもないことをしたね。自分がやったことわかってる?」
「えっ……と、まあ、ちょっと性急すぎたかな、とは」
「携帯壊して、わたしの人間関係にもちょっかいかけて、無理矢理セックスして、馬鹿じゃないの?」
「ご、ごめん……」
「誤るなら、最初からしなきゃいいのに……。…………う、ぅう……、さ、最悪……。わ、わたしのこと、全部壊してっ……全部、全部台無しにした!」
クソ! と叫びながら、ナマエは子供みたいに泣き出した。吠えてる犬みたいだった。
「お、オレのせい……。オレのせい、なんだよな」
「そうだって言ってるだろ! 終わったんだから帰れ! もう二度と会いたくない……ジェイド、クソ……ッ。化け物が……」
「ナマエのせい、だろ……」
「も、もう嫌だって言ってるのに……。なんで同じ話ばっかりするの」
「ナマエがオレにちょっかいかけなきゃ……! あの時、オレの心をめちゃくちゃにしなきゃこんなことオレだってしてない! ナマエが悪い! か、彼氏なんて作って……オレのことまるで知らないみたいに……。少なくとも、オレたち友達だったのに!」
目の前がぐにゃぐにゃと歪んだ。今日だけで何回頭が痛くなったんだろう。ずっとオレの頭の中にナマエがいて、あの時と同じ顔でじっとこっちを見下ろしている。今目の前にいるナマエはベッドに彫刻みたいに横たわって、オレの全てを見据えたような目で、昔の時と同じあの目で、達観した神様みたいな目でこっちを見ている! 同情とか哀れみとか、なんでもいいからナマエから得られる物ならなんだってよかった。オレは本当に、ただそれだけでよかった。なんなら、どこかの誰かに触れられた後だって気が狂いそうだけど、オレを見ててくれるならなんだってよかった。普通のことがわからないから彼女に全部教えてもらったのに、全部理解するためにどれだけ頑張ったか、ナマエは知らないからこんな風にオレのことを、全部なかったことにしようとして、捨てようとしたんだ。
ひどい話だ。
「オレだって……なかったことにできたらこんなに苦しまなかったのに……。先輩たちみたいに、普通に女を使い捨てみたいに……、真剣にならなくて済んだはずなんだ……。真面目にずっと思ってたオレが、馬鹿みたいだ」
「実際に馬鹿じゃん。こんなに馬鹿な人、わたし知らない。わたしの手に負えない」
はあ、とナマエは再びため息をついた。
それだけでも存分に様になっていた。絵画の中の女神みたいに、身なりはボロボロだったけれど、内から光っているみたいに、本当に綺麗だった。こうしたのがオレだと思うと恐れ多い。でも、ナマエだってただの人なんだから、処女を失ったらそれなりにやつれたように見えるのは当たり前だ。
布団の端からはみ出た足が、やけに眩しく光って見える。もう、何もかもがおかしい。オレの目がおかしくなってる。ナマエのせいで、全部歪んで見える。キュビズムの絵画みたいに全部ぶっ壊した後に積み上げて戻ってこないような。
「な、なんでもするから……捨てないで」
「……重っ」
「オレ……ナマエに捨てられたら、もう、どうなるか分からない」
「わたしがいなくても、普通に頑張れば? 超人なんだから、黙ってドイツを守ってたらいいんじゃないの。レイパーが正義とか何とか言ってるの、ちゃんちゃらおかしいけれどね」
「これから……これからも、オレはナマエが好きだよ……。ずっと好きだったんだ。諦められるわけないだろ」
オレがグロテスクで男らしくない涙を流していると、ナマエは再び大きなため息をついた。ため息をついたというよりは、不機嫌のアピールとしてそうしているのだということは嫌という程わかる。でも、どうしたらナマエにオレのことをちゃんと分かって貰えるか全然見当もつかなくて、全部ナマエから教えなかったせいでこうなっているんだと思うと、ほどけない糸みたいにがんじがらめになっているのがちょっと、許せなくて、余計に好きになる。好きだからどうしようもない。オレの中でどんどんナマエの存在が大きくなっていくから、離れてもそうだから、ずっと光っているから。しょうがないだろ。
「……思い出から出てこなかったらよかったのに」
ナマエが飽きたおもちゃを見るような目で、オレのことを見ている。彼女の背後にあるコンクリートの壁の向こうから、隣の家のテレビの音が聞こえてきた。
「す、すごいよナマエ……♡ オレたち、やっと繋がれた♡ うれしいな、ナマエは……ちょっとしんどいよな、ごめん」
「最悪っ! さいあくさいあく! も゛う゛やだぁ……っ」
「非道いこと言わないで欲しいなぁ。でも、オレだけ気持ちよくてナマエに負担掛けてるのは、ごめん。こればっかりは男と女なんだから、仕方ないんだ」
ナマエの身体は、まあ、女の子にしては普通なんだけどやっぱり、オレなんかと比べると小さくて、その上でやっぱり処女だったから、オレのを挿入れるとかなりキツかった。
なるべく痛くしないように前戯とか、舐めたり……色々頑張ったんだけど、ナマエは本人なりに必死に抵抗してくるし、どこがいいとかも恥ずかしがって教えてくれないから結構大変だった。
暴れられてもオレの前だったら何も意味がないのに……。なんで意味のないことをするんだろう。ナマエはオレより賢いんだから、ちゃんと理解していて当たり前だと思うんだけど、やっぱりナマエもセックスに関してはよく分かってないのかな。
オレは精一杯優しくしてあげてるつもりだけど、どうしても体格差とか、そもそも女性は受け入れる側だし、配慮が足りないのかも。……でもオレだってナマエがはじめてだし、練習……とか、そういうことじゃないと思う、から。どうしても不慣れでナマエに迷惑をかけるのは致し方ない。
「繋がれて、すごい……♡ ナマエのおまんこ、キツキツだ……♡ オレの、まだ全部は入ってないけど、ん゛っ……、っ、あ、もってかれそ……♡」
「ぅ、ぁ……、え゛……っ、んぅっ……♡」
呼吸すら忘れて顔面蒼白になりながら、オレのを必死に受け入れているナマエの表情すら愛おしい。白くて細い首に汗が流れて、前髪もおでこに張り付いている。そういえばこの部屋、なんだか暑いな……。セックスしてるせいなのか、元からこうなのか、わからないけど、まあ、いいや。
ナマエの中はすごかった。さっきも指だけ入れた時ですら異物を押し出す力がすごくて、勢いだけで進めたら怪我をさせてしまうんじゃないかって心配になったし。中は暖かいっていうか……ぬるい? お湯に浸かっている時みたいにナマエの中の体温がオレよりも暖かくて、ただでさえ気持ちいいのに人肌の暖かさを意識すると硬く張り詰めるような感じがした。
指一本だけでもいっぱいいっぱいで、ナマエはそんなにオナニーもしたことないのかもしれないって思うとオレ、それだけで出してしまいそうだなって思った。聞いたら怒るから一応言わないけど。
……オレは、正直どっちでもいい。性欲とかあったら解消しようとするのは普通だし、ナマエがおもちゃとか使って、オレのこと考えてオナニーしてくれてたら、う、最高……かもしれない。今度頼んでみようかな。
せっかく恋人になれたんだし、今だってこうやって二人ではじめてのセックスできてるんだから。
……普通のセックスに飽きてきたら、こういうのもやってみたい! オレ、ナマエとするならなんだっていい。なんでもやれる!
――なんでもって、具体的にどうしたいのかあんまり考えつかないけど……。今だってこうやって正常位で挿入して、ナマエが落ち着くまで待ってあげてるくらいだし。まだまだこれから。
「え゛、うぅ……っ♡ ぉ…………♡」
「ね、ナマエ……。そろそろ動いてもいい? 悪いんだけどさ、オレ、もう……辛いんだ。ナマエだって辛いだろうけどさ、な……っ?」
「嫌、抜いてよ……。もう嫌、嫌い、あんたなんて嫌い……」
「うーん、まぁ、辞めてあげられるならもうそうしてるんだけど……。今、オレ、ナマエとセックスしたいんだ。だからさ、もうちょっと頑張って欲しいんだ。だってほら……、この後トイレ借りて抜くのもさ、変だろ?」
ぐちゃぐちゃに溶け合って、全部混じり合って一つになる。それのどこがいけないのか分からない。
――こうやって、ナマエの初めてをオレがもらって……ずっと考えていたことだけど、やっぱり嬉しい。ナマエもやっぱり女の子なんだなって、オレのが入っておっかなびっくりで、あのセンパイとかいう男にぶち破られていなくて本当によかった。ナマエのはじめて全部、オレがいいから。
ナマエの腰が反って、お腹に肋骨が浮き出ている。この薄いお腹の奥にオレがいて、外からはあんまりわからないけどこのふわふわした肌の下に、全部入ろうとしている……というか、入れようとしている、オレが。
オレの動きに合わせて彼女の全身はビクビクと動いた。ズ、と腰を動かすと、シーツを握りしめたナマエの目が虚ろになった。どこか遠くに飛んで行っちゃいそうで、オレは必死になってナマエの頬をぺちぺち叩く。
「ねえ、まだ寝ちゃ駄目」
「お゛っ……、ぅ、ぉ、ぁ…………」
頭が沸騰しそうだ。ナマエの膣から溢れた血と愛液と汗の混じった液体が、ベッドのシーツに纏わり付いて、おねしょしたみたいにじっとりと湿っている。しばらく派手に弄くっていたせいで、もう大分前に出したそれはすでに冷たい。
「も、ちょい……♡ 頑張って♡ もう少しで全部入るから♡」
「も、お……入んないってぇ! ばかしね! お゛っ――ぁ、ひっ……ぃ、っ……♡」
そうは言いつつも言葉とは裏腹に、ナマエの膣は少しづつオレという異物を受け入れ始めていた。やっぱりセックスって、こんな小さなおまんこの穴にオレのが入るのかなって本当に、本当に心配だった。だって下手をしたらナマエに怪我――殺してしまう危険性だってあったから。
オレたち恋人同士なんだからお互いに協力しあうべきだろ? ナマエのおまんこが存外聞き分けがよくて、本当に助かった。ナマエだって普通に性欲、とかあって……オレの愛撫でちゃんと感じてたし、やっぱりオレたち相性がいいのかも。神様がオレに与えてくれた宝物……大好きだ。
「あ゛…………っ♡ ぅ……っ♡」
「……~っ、♡ ぁ⁉ ぅ、ぉ゛っ…………♡」
ナマエはやっぱり初めてだから、ずっと喘ぎ声が切羽詰まっている。なんだかこっちが虐めて好き勝手やっているみたいな気分になってくる。
勢いのまま最奥まで腰を進めると、滑ってナマエの恥骨とぶつかって、凄い音が出た。骨まで衝撃が伝わって、ナカが不規則にぎゅっ、ぎゅっと締まった。……あ、それ、本当にヤバい……。
「~っ、…………はぁっ♡ 凄い♡ はじめてなのに……、こんなに感じて、オレのを締め付けてくるんだ……♡ ナマエ、オレとセックスできて気持ちいい? オレは……言わなくてもわかるよな? 好きだよ……♡ ナマエとセックスできて、本当に嬉しい♡」
「う゛っ、ぅう゛…………っ♡ 死ね……死ね……殺す……」
「ナマエにはオレは殺せないだろ?」
かわいそう!
ナマエの白い首筋にある頸動脈にそっと手を触れれば、ブツブツと呟いていた謎の恨み言もピタリと止まった。
「オレ、やろうと思えば今ここで……ナマエの首、落とせるよ」
「ひ……人殺し……」
「やらないよ。何言ってんだよ、やるわけないだろ。オレ、好きな子のこと殺せないよ。そんなこと絶対にしない」
「言い出したのはそっち……」
「……ナマエがひどいこと言うから、ちょっと、ね……」
「ちょっとじゃないでしょ……。あなたが言うと洒落にならないんだけど……」
ナマエの声は震えていた。頬には幾度も流れた涙の跡があるのに、更に彼女の瞳からボロボロと、大粒の涙が零れてくる。好きな子のことを泣かせたいわけじゃないんだけど、オレのせいでナマエがこんなことになっているのが、ちょっと嬉しくて……。よくないんだけど、やっぱり……。
「好き、ってナマエの口から聞きたいんだよ」
「いっ、い、嫌だ……」
「オレ、ずっと好きだって言ってるのに……。すき、好きだよ。ずっと好きだったんだ。何回だって言ってあげるから、ナマエもオレに……な? わかるだろ?」
「っ、ふ、や、やだ……。なんでわたしが、そんなことを……」
子供みたいに鼻を鳴らしてナマエは泣き出した。……実は今日まで、ナマエが泣いてるとこ、見たことないんだよな……オレ。ベルリンにいた時はナマエはいつも余裕があるっていうか、オレに対してお姉さんぶってたから、泣いてるところなんて一回だって見たことがなかった。
「そんなに、嫌なんだ……」
「う゛っ、う゛ぅっ……。だ、誰のせいだと……ジェイド、あなた自分がやってること、分かってないんでしょ……。な、なんでお、また硬くなってんの゛っ、ぉ……♡」
「あ~……。ごめん。これはちょっと、引くよな」
本当に、オレの頭がおかしくなったみたいだ。オレっていつもナマエのせいで脳みそを引っかき回されて、頭がおかしくなっている気がする。昔、オレのことを頭をよくしてあげるとか何とか言って、すごくかわいがってくれていたのに……。ナマエのせいで、オレ、全部ひっくり返されて……でも、ナマエが望んでいる物は全部与えられるようになったから、これでいいはずなんだけど……駄目かな。
「…………」
「~っ、♡ ……んっ……、ぁ……」
オレはしばらくピストンを辞めてじっと待っていた。ナマエは眉間に皺を寄せながら、悩ましげな表情でじっと目をつむっていた。
動かないでいると、ナマエの膣が勝手に蠢いてオレのことを搾り取ろうとしているのがよくわかった。彼女の口の端から零れるような小さな喘ぎ声のせいで、オレはじっと絶えていたけれど、イライラしていた。
……なんで、オレが好きっていっても同じように返してくれないんだろう。オレはナマエが自分から求めてくるまで、このまま我慢して動かないでいるつもりだ。根比べなら多分、オレの方に分がある。訓練で鍛えた精神力をこういうところで使うのは……いいことではないと思うけれど。
「腰が勝手に動いてる……」
「っ、してないしっ! 人聞きの悪い!」
「……そっか。……ていうか、さ。ナマエの声結構出てたけど、隣の人に聞かれちゃったりしてないかなってさ。オレ、気になってる。ナマエは?」
「う、あ……。なん、で、そんなこと言うわけっ……!」
そう言いながらナマエの腰は気持ちいいところを探しているのか、無意識に少し揺れていた。オレのを締め付けてきゅっと硬くなったり、体重がかかっていいところに当たるとナマエの口からは「ひっ……」としゃっくりみたいな喘ぎ声が上がった。喘ぎって言っていいのかな。喉から押しつぶしたような、首を絞められているような声を聞く度に、自分でやっておきながら大丈夫なのかと心配になってくる。
「……なぁ。本当にオレのこと嫌い?」
「き、嫌い……に決まってるじゃん。好きだって言うならわたしの嫌がることとか普通しないでしょ……ぉ、ぁ、っ……♡ い、意味わかんないし……。昔の可愛かったジェイド、にっ、戻してよ……」
「駄目だよ……。オレ、大人じゃないとセックスできないんだから」
「する必要ないじゃん……」
「うーん、でも、ナマエのおまんこは気持ちいいよって言ってるよ」
「う、わ……キモ」
「それにオレも……気持ちいい♡ オレ、ずっと、ナマエとこうしてたかったんだ……。オレの我が儘に付き合ってくれて本当に嬉しいよ。はじめてもオレのために置いておいてくれてさ」
「違う……っ、し、ぁ♡ っ、~…………♡」
口を開きっぱなしにしながら喘ぐナマエを見ていると、本当にだらしなくてかわいいな、と思う。普通人の欠点なんて見ていていいものじゃないけど。自分のすきな人のものならなんだって、好きだ。
「ねぇ、お願いだから。好きって、言って欲しいんだ。一回だけでいいからさ、頼むよ……。そうじゃないとオレ、終われないよ」
「終わる……って、……………………あ~……」
「お、オレさ! 早漏でもないんだけど、多分、ナマエとちゃんとセックスしないと駄目なんだ! ……さっきからすごいナカがさ、ギチギチだし……う゛、も、本当に……ずっと我慢してるの知らないだろ⁉ 一人でずっとオレのちんこ使ってオナニーしてさ! 人の気も知らずに、さっきまで処女だったのになんでそんなにスケベなんだよ! 意味わからないのはこっちだろ……。……ちゃんと二人で一緒にイきたいんだよ、駄目かな……?」
「い、一回したら、ちゃんと終わる……?」
「……多分もう、出ないと思う」
「……………………」
ナマエはずっと怒っていた。怒っていた、というのは表情を見てオレがそう思っただけで、実際のところは怖がっていたのかもしれない。ナマエは可愛い顔をしているけど、普通の時は無表情というよりいつもムスっとしていたから、滅多に笑わない。今だって呆れたような顔をして、じっと無言でオレじゃない場所を見ていた。天井……見上げていた。オレのことを見てほしいけれど、ナマエはずっとオレがいない場所を見つめていた。まるでオレなんていないみたいに。声だけしか聞こえていない相手とセックスしているみたいだった。彼女はずっと、歯医者の椅子に座った時みたいな顔を、していた。
ナマエはそっと上半身を起こす。オレの顔にじっと近づいてくる。
着ているというよりは、最早上に引っかけていると表現した方が正しいシャツの隙間から、ナマエの白い肌が見え隠れしていた。そこに乱れた髪がだらんと張り付くように垂れていて、そこに触れたかったけれどじっと我慢した。ナマエはオレのを挿入したままだったので、少しでも動くと眉間の皺が深くなった。起き上がるのはしんどかっただろうに、堪えるような表情のまま、オレの顔に近寄ってくる。さっきまで諦めたようにだらんと伸びていた腕がオレの肩に触れる。シーツを握っていたせいで、ところどころが赤い。
「ナマエ……」
「す、き。――これでいい? 本当に――気持ち悪くなったね、ジェイド」
とっとと終わらせてよ。
吐き捨てるような声で、確かにそう言った。
「…………っ、あ、ああ……」
「なんで、泣いてんの……。泣きたいのはこっち、なんだけどっ」
「す、好き……で、オレずっと、ナマエのことが、好きで……っ。我慢できなくて、ごめん、好き、好きなんだよ……」
ナマエの冷めた目がこっちをじっと見ていた。好きな人と一緒にいたくて繋がりたくて何が駄目なんだろう、でもナマエが怒っているからオレはわけもわからずずっと謝り続けるしかなくて、オレの手はナマエの腰を掴んで身体が勝手に動くみたいにずっと腰が動いていた。その間ずっと悲しかったけど、なんでオレだけここまで苦しんでいるのかも、わからなかった。
「……ぁ、お゛っ……♡ こ、ころして……」
「ううっ……。す、好きなんだよ……。オレを受け入れて、ナマエ……」
口では嫌がってるけど、身体の方はオレのを好きだって言ってる。ぐちゃぐちゃに溶け合って気持ちいい。これだけ愛してるのに、何回言っても伝わらない、とか訳が分からないな。ナマエの中はまるでそれ単体が意思を持って動いているんじゃないかと思うくらい、暖かくてじっとりとしていて、オレのを締め付けてぎゅっと抱きしめてくれていた。つるつるしてそうな見た目なのに、擦るとちょっとざらついていて、意識を下半身だけに集中させていると、本当にすぐ持って行かれそう、だと思った。
「はーっ♡ 気持ちいい♡ ナマエも、気持ちいいよな♡ オレたち、やっぱり相性最高じゃないか♡」
「ん゛っ、ぉ……♡ も、もう嫌……っ、ぇ、あ゛…………♡」
「……ん、オレも……そろそろ……」
「お、終われ……、終わって……、は、はやくっ……ぅ゛、っ、ぁ゛…………~♡」
こ、腰が重い……。溜まってたの全部、ナマエの中にぶちまけたい……。そろそろ、本当に、全部漏れそう……。
「――ッ、あ、射精る……」
「う゛っ……♡ ぁ、は、やく……終われッ!」
頭の中が真っ白になる。目の前で火花がバチバチ鳴るような衝撃が走って、気がつくとぎゅっと目を閉じていた。
「ぅ、ぁ、あ゛…………♡ なっが、長過ぎ……」
「あ、っ、ごめ……」
血が上りすぎてフラフラする。ゴム越しだけどナマエのナカがビクビクして、オレのを全部吸い取ろうとして動いているのが分かった。本人の口からは荒い息使いしか聞こえてこないし、全身から力が抜けてベッドに文字通り全部を預けて横たわっている。
心臓の鼓動みたいにナカがビクビクしていて、それだけでまたイライラしてきたけど、さすがに身体が悲鳴を上げている。
「も、もう無理……」
「やらないよ! さすがに無理だ……オレも」
「は、や、く、抜きなよ」
「え、あ、うん……。ごめん……」
「チッ」
ぞろ……とナカから引き抜くと、コンドームに溜まった自分の出した精子の量が嫌でも見えてしまって気まずかった。ナマエはそれを一瞥すると、フン、と馬鹿にしたような声を出す。
「は、恥ずかしいな……」
「遅漏、馬鹿、キモい、見せるな。……下着とって、ジェイドが投げたんでしょ」
「うん……」
セックスが終わった後ってこんな感じなんだろうか。不機嫌でイライラしている彼女の言うことだから、全部聞いてあげないと……いけない気がするし、オレなんかよりナマエの方が大変だったから、全部オレの方が頑張らないと……。やってあげないと……。
「……あなた、とんでもないことをしたね。自分がやったことわかってる?」
「えっ……と、まあ、ちょっと性急すぎたかな、とは」
「携帯壊して、わたしの人間関係にもちょっかいかけて、無理矢理セックスして、馬鹿じゃないの?」
「ご、ごめん……」
「誤るなら、最初からしなきゃいいのに……。…………う、ぅう……、さ、最悪……。わ、わたしのこと、全部壊してっ……全部、全部台無しにした!」
クソ! と叫びながら、ナマエは子供みたいに泣き出した。吠えてる犬みたいだった。
「お、オレのせい……。オレのせい、なんだよな」
「そうだって言ってるだろ! 終わったんだから帰れ! もう二度と会いたくない……ジェイド、クソ……ッ。化け物が……」
「ナマエのせい、だろ……」
「も、もう嫌だって言ってるのに……。なんで同じ話ばっかりするの」
「ナマエがオレにちょっかいかけなきゃ……! あの時、オレの心をめちゃくちゃにしなきゃこんなことオレだってしてない! ナマエが悪い! か、彼氏なんて作って……オレのことまるで知らないみたいに……。少なくとも、オレたち友達だったのに!」
目の前がぐにゃぐにゃと歪んだ。今日だけで何回頭が痛くなったんだろう。ずっとオレの頭の中にナマエがいて、あの時と同じ顔でじっとこっちを見下ろしている。今目の前にいるナマエはベッドに彫刻みたいに横たわって、オレの全てを見据えたような目で、昔の時と同じあの目で、達観した神様みたいな目でこっちを見ている! 同情とか哀れみとか、なんでもいいからナマエから得られる物ならなんだってよかった。オレは本当に、ただそれだけでよかった。なんなら、どこかの誰かに触れられた後だって気が狂いそうだけど、オレを見ててくれるならなんだってよかった。普通のことがわからないから彼女に全部教えてもらったのに、全部理解するためにどれだけ頑張ったか、ナマエは知らないからこんな風にオレのことを、全部なかったことにしようとして、捨てようとしたんだ。
ひどい話だ。
「オレだって……なかったことにできたらこんなに苦しまなかったのに……。先輩たちみたいに、普通に女を使い捨てみたいに……、真剣にならなくて済んだはずなんだ……。真面目にずっと思ってたオレが、馬鹿みたいだ」
「実際に馬鹿じゃん。こんなに馬鹿な人、わたし知らない。わたしの手に負えない」
はあ、とナマエは再びため息をついた。
それだけでも存分に様になっていた。絵画の中の女神みたいに、身なりはボロボロだったけれど、内から光っているみたいに、本当に綺麗だった。こうしたのがオレだと思うと恐れ多い。でも、ナマエだってただの人なんだから、処女を失ったらそれなりにやつれたように見えるのは当たり前だ。
布団の端からはみ出た足が、やけに眩しく光って見える。もう、何もかもがおかしい。オレの目がおかしくなってる。ナマエのせいで、全部歪んで見える。キュビズムの絵画みたいに全部ぶっ壊した後に積み上げて戻ってこないような。
「な、なんでもするから……捨てないで」
「……重っ」
「オレ……ナマエに捨てられたら、もう、どうなるか分からない」
「わたしがいなくても、普通に頑張れば? 超人なんだから、黙ってドイツを守ってたらいいんじゃないの。レイパーが正義とか何とか言ってるの、ちゃんちゃらおかしいけれどね」
「これから……これからも、オレはナマエが好きだよ……。ずっと好きだったんだ。諦められるわけないだろ」
オレがグロテスクで男らしくない涙を流していると、ナマエは再び大きなため息をついた。ため息をついたというよりは、不機嫌のアピールとしてそうしているのだということは嫌という程わかる。でも、どうしたらナマエにオレのことをちゃんと分かって貰えるか全然見当もつかなくて、全部ナマエから教えなかったせいでこうなっているんだと思うと、ほどけない糸みたいにがんじがらめになっているのがちょっと、許せなくて、余計に好きになる。好きだからどうしようもない。オレの中でどんどんナマエの存在が大きくなっていくから、離れてもそうだから、ずっと光っているから。しょうがないだろ。
「……思い出から出てこなかったらよかったのに」
ナマエが飽きたおもちゃを見るような目で、オレのことを見ている。彼女の背後にあるコンクリートの壁の向こうから、隣の家のテレビの音が聞こえてきた。
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