未設定の場合は「ミョウジ ナマエ」表記になります
ヴェスパー部隊の食べログ
Name Change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
長くなったので二分割してます
※
「ねぇ、私は頑張りましたよ。ちゃんとやりました。だから、褒めてください」
ナイフを振り回していた女から凶器を取り上げ、ペイターはご褒美をねだる子供のような口調で、そう言った。
女は入社した日以降、様々なハンディを埋めるために再手術に挑んだ。スネイルの元にいると、様々な情報が手に入りやすい。その点について、他の隊員より有利だった。
しかし、素のスペックの時点で女とペイターの間には埋められない溝があった。
だから、こうして壁際まで追い詰められている。
「化粧しても外面誤魔化せないくらい、殴ってくれるんでしょう? ほら、約束は守ってくださいよ」
「うっ……う゛ぅっ……」
「ほら、泣かないで。抵抗しないから、殴ってください。力一杯、できる限り。女の子の力でも、強化してるから大丈夫ですよ」
力の入らない一撃が、ペイターの頬に当たった。頬の肉の感触が、女の手に伝わる。
「へなちょこだ。でも大丈夫。……最初は、慣らしからいきましょうね」
「いやだぁっ……! お前のことなんて、嫌いだし、セックスもしたくないっ!」
大きな声で叫んだ女の顔の横に、拳がめり込んだ。壁にヒビが入るのではないか、という音がする。
「ひっ……」
「これくらい、これくらいですよ。頑張ってください、ちゃんとやればできるから」
女は目を閉じた。ちゃんと殴らないと、次に拳が飛んでくるのは自分の顔かもしれない。
「っ……!」
出鱈目に、力一杯殴る。
「っう……!」
目を開けると、ペイターの顔から鼻血が垂れている様子が見えた。
「あ、あぁ……あ゛っ……」
「最高、です……。やればできるじゃないですか」
青白い顔に赤い血はよく映えて見える。
「殴り方も昔のままですね、変わらない……」
女の太ももに、ペイターの勃起した性器が擦り付けられる。布二枚挟んでも感じる気色悪さに、完全に意識を持っていかれる。
「すっ、すみません……。久しぶりで、興奮して、止まらなくて……っ! 気持ち悪いですよね、はぁっ……でも、おさまらないんです……♡」
「今まで自分がやってきたことがどれだけ野蛮だったか、完全に理解したわ。わたしってビョーキだったんだな」
「大丈夫、ですよ……。今回は、同意の上ですっ……から♡ 勃起したちんこ、ちっさい手でビンタして欲しいです……」
「キモい……変態……」
「力がこもってない! 言葉も! 暴力も! 全部適当だ! 嘘っぱちだ!」
完全に発狂し出したペイターを前に、女も合わせて叫び出す。二人の獣じみた吠えが反響して、非常に気味が悪い。
邪教の儀式でも行っていると勘違いされて通報されそうだ。
「あ゛ーっ! これ以上、どうしろって……? 何したら出てってくれんだよ⁉︎」
「言葉攻めもしてくれないならぁっ……う゛っ……精一杯、力込めて、僕を……殴って!」
はぁはぁ喘ぎながら詰め寄るペイターに対して、本能的に手が出てしまった。
「あぁ♡ 最高……です♡」
「ッ、ちがっ……これは違うっ……!」
「違わないでしょうっ! 何が違うんですか? 何と比べてそんなことを言ってるんですか? 貴方は昔からこうだった。ずっと、ずっとそれは変わらないんです、私を殴って、気絶させて、それが一番いいんですよ!」
ペイターが自分を煽っているのだということを、女は百も承知していた。それでも、本能のままに手が出てしまう。本能ではないと理性が否定するが、殴りながらヤるのが、一番気持ちいいことを体はよく知っていた。
自分より強い存在を甚振って、泣かせるのが好きだ。それだけが、自分の存在がここにあるのだということを認知させてくれる。
骨が砕けるのではないかと心配になるくらい、拳は執拗に顔の弱い部分を狙って正確な軌道を描いた。強化されて、研ぎ澄まされた神経が、人体の弱点を的確についた攻撃を繰り出す。
「すごい力だ……。今……貴方の手術は何世代目でしたっけ?」
「十」
「あはは……、私と……一緒ですね」
「どーせ、次のやつがもうくるよ」
「じゃあ、一緒に受けましょうね。約束ですよ」
「スネイルがいいって言ったらね……」
「他の男の名前を出すなっ! ……あ、あぁ……出さないで……ください……っ! お願いします……」
「わたしが他の人と寝ても、許すんじゃなかったっけ……」
「それは昔の話です……。今はもう、無理です。寛容な男にはなれません……。なれそうもありませんし、なろうとも思わないな……」
血が出てもお構いなしに殴ったので、女の拳にも血が付着している。
部屋に満ちている鉄の匂いが臭くてたまらない。嗅ぎ慣れた匂いだとしても、部屋の中で充満されると、息苦しくてたまらなくなる。
「部屋、換気しないと。臭くなる」
「後でいくらでもしていいですから……っ! 今は、お情けを……はぁっ……ここで、今、だしてもいいですか……?」
「今? なんで?」
「それは結婚するまで……だめですよ」
「キモい勘違い禁止。結婚も嫌だっての。抜かないで帰ってよ」
「無理ですよ、女子寮の廊下で爆発します」
「……じゃあ、挿入しなかったら、いい。ティッシュに出して」
床に転がっていたボックスティッシュから数枚取り出すと、ペイターの眼前に突きつける。
「ってか、マジでわたし殴りすぎだな。ウケる。ヤバいよ、誤魔化しきれねえだろこれ」
顔は醜く腫れ上がり、歯も数本折れているかもしれない。そんな惨状を見ながら、女は平気なフリをした。そうしないと、まだ何か追加で注文をつけてきそうで恐ろしいからだ。
「すっ……、すみません……♡ 階段で転んだことにしますからっ……! 迷惑はかけません……!」
「今までの人生、死ぬほど迷惑かけられたけどね」
「許して……くれませんか?」
「嫌だよ、無理だし」
「う゛っ……じゃあ死ぬまで、ちゃんと、責任とります……♡」
「いらないし。さっさと出して帰ってよ」
「じゃ、じゃあ……胸だけ、見せてください……すぐ出して帰るのでっ……♡」
「……しょうがないな」
部屋着の上をたくし上げると、ノーブラの状態だったので、女の胸がペイターの眼前に現れた。日にさらされることのない肌には日焼け痕などはなく、産毛が薄ら光に透けて白く輝いていた。これといって特徴らしい特徴もない、たかが乳房だったが、されど乳房。ペイターの目線はそこに釘付けになる。性器をしごく手つきが素早くなった。
「胸だけだと……処女みたいだ♡」
「キショいこと言ってないで、はよ抜け。ってかお前も、やっぱ男だなぁ。おっぱい好きなんて、ガキくさい」
こうして口でもいじめてやると、興奮することを知っている。早く終わってほしい。そして、もう二度と会わないようになってほしい。
「……う゛っ♡ む、無理です……っ♡ でます……♡」
ペイターは、急に女の手を掴んで、空いている方の手で、ちんこをしごいている方の自分の手の上に重ねて置くように拘束した。
「はっ……? え、あ、無理っ……! どけろオナ猿! 猿の分際でわたしを拘束するな馬鹿!」
「貴方と一つになって……あ゛っ……♡ ちっちゃい手で……操縦桿を握って……ぇ゛っ……♡ 敵にレーザー当ててるところ見ると、も、もう……だめです♡ 好きで……おかしくなるっ♡ あ゛ぁ゛っ……あ゛〜〜♡♡♡」
大声で叫びながら、ペイターは射精した。しばらく我慢して溜まっていたのか、その勢いは凄まじく、ティッシュに収まりきらない量の精子が飛び散って、女の下半身も濡れた。
「……はぁっ……♡ き、ぎもぢい゛っ……ですっ……♡」
「……汚してんじゃねえよ、拭けよ、ほら、早く。あッ⁉︎ 舌でやれってことじゃないって……! このアホ! そんなのしたら余計汚れるっての!」
「やっぱり……、セックスでは貴方に敵いませんね……♡ 絶対途中で私が負けるんです♡」
「もういいから、早く帰れ」
ペイターは後処理を簡潔に済ませると、先走りで汚れた下着を躊躇なく再び履いた。
そういうところが、女には理解できない。神経に触る人だ。
「すみません、洗面台だけ借りてもいいですか?」
「……絶対、蛇口以外触るなよ」
「そんな、変質者じゃないんですから」
ペイターは顔を洗い、持参してきたらしい衛生用品で顔の怪我に対して、素早く丁寧な処置を行った。後ろでそれを見ていた女は、その手際の良さに素直に感心する。
──自分を助けた時も、こんな感じだったのだろうか。
人事をやるより、衛生部門にいた方がいいかもしれない。
そんな妄想をしたが、自分から殴られに行く変質者が怪我人の世話をしてはいけないだろう、とまともな自分がツッコミを入れる。入院患者に性玩具を差し入れるようなやつだ。医療倫理もクソもない。
「貴方の時は、肺に穴も空いてましたからね」
「……へぇ、それでよく一ヶ月で出てこれたよな」
「我が社の安全装置は世界一ですから」
「馬鹿、それがよかったら穴なんて開かないんだよ」
こうして軽口を叩き合っていると、目の前にいるのが精神異常のマゾヒストだなどと考えられなくなる。まるで、大学の時に戻ったみたいな──。
(絆されてるんじゃない、わたし。こいつは敵で、わたしは次の作戦が終わったらヴェスパーをやめる……。こいつとは、また赤の他人になる)
顔に一発軽くビンタを入れる。気合いを入れ直す。絶対に、こいつとは仲良くならない。セックスも、これきりしない。
「次の異動でお前のとこに配属されないように祈るよ。一緒にいるくらいなら、もう一回最前線に出た方がマシ」
「そうですね、スネイルは貴方を手元に置きたがるでしょうね。ムカつくなぁ……」
「おい、彼氏面禁止」
こういうと、また言い返してくると思った。その予想は外れて、ペイターは親みたいなことを言い出した。
「明日からは、ちゃんと出社してくださいよ」
「ん……、いいよ。わかった」
「あれ、やけに素直ですね」
「行かないと、またこういうことさせられそうだからな。それに、溜まってる仕事もあるし……。忙しくなるな、次もスネイルが立案した作戦だろ?」
「えぇと……、そうですね。なんてやつだったか、忘れましたけど」
「忘れんなよ、仮にも隊長のくせに。ま、どこ行ってもやることは変わらないけどな」
「…………」
「え、マジで忘れた?」
「あはは……」
「笑って誤魔化すなよ!」
頭をかきながら、ペイターは誤魔化し笑いをした。こういうところがご愛嬌で、好かれる要因なんだろうな、と冷静に分析する。
(やっぱ、嫌いだな……)
自分にはこんなあざとい仕草はできない。これは一種の才能なのだろう。
(わたしも昔は、こんな風に見られてたのかな……)
ペイターと違って、愛想を振りまいても都合がよさそうな女に見られて、馬鹿にされるのがオチだった。
愛されることと舐められることは、紙一重だ。その境界線の間で、無意識か自覚的かはわからないがうまくたち回れる器用さを素直に羨ましいと思う。
それと同時に、それがないから自分はここまで落ちぶれたのだとも、思った。
「第八隊長就任、おめでとさん」
「え、なんですかいきなり」
「恩を売っておく。スネイルがいつキレてわたしをどっかヤバいとこに送らないとも限らないしさ……。例えば、ほら、『壁』とか。アリーナのランキングに載るようなヤバい独立傭兵とか、そういうの。いらないって思ったら、そういうのの相手する肉壁になりそうだし?」
「……よほど、死にたくないんですね?」
「えっ。あぁ、うん……。え、お前もそうなんじゃないの? 命がないと、何にもならないでしょ……。何? 自分は死にたいってこと?」
「大丈夫ですよ。貴方は私が死なせません」
真剣な瞳が女を一心に見つめている。顔が怪我でベコベコにされていなければ、きっと美しく様になっただろう。
(こーいう抜けてるとこが、他の奴らにはウケがいいんだろうな)
「…………彼氏面、マジでキモいんだよ」
爆笑したペイターの口から、奥歯が一本洗面台に落っこちた。
※
「ねぇ、私は頑張りましたよ。ちゃんとやりました。だから、褒めてください」
ナイフを振り回していた女から凶器を取り上げ、ペイターはご褒美をねだる子供のような口調で、そう言った。
女は入社した日以降、様々なハンディを埋めるために再手術に挑んだ。スネイルの元にいると、様々な情報が手に入りやすい。その点について、他の隊員より有利だった。
しかし、素のスペックの時点で女とペイターの間には埋められない溝があった。
だから、こうして壁際まで追い詰められている。
「化粧しても外面誤魔化せないくらい、殴ってくれるんでしょう? ほら、約束は守ってくださいよ」
「うっ……う゛ぅっ……」
「ほら、泣かないで。抵抗しないから、殴ってください。力一杯、できる限り。女の子の力でも、強化してるから大丈夫ですよ」
力の入らない一撃が、ペイターの頬に当たった。頬の肉の感触が、女の手に伝わる。
「へなちょこだ。でも大丈夫。……最初は、慣らしからいきましょうね」
「いやだぁっ……! お前のことなんて、嫌いだし、セックスもしたくないっ!」
大きな声で叫んだ女の顔の横に、拳がめり込んだ。壁にヒビが入るのではないか、という音がする。
「ひっ……」
「これくらい、これくらいですよ。頑張ってください、ちゃんとやればできるから」
女は目を閉じた。ちゃんと殴らないと、次に拳が飛んでくるのは自分の顔かもしれない。
「っ……!」
出鱈目に、力一杯殴る。
「っう……!」
目を開けると、ペイターの顔から鼻血が垂れている様子が見えた。
「あ、あぁ……あ゛っ……」
「最高、です……。やればできるじゃないですか」
青白い顔に赤い血はよく映えて見える。
「殴り方も昔のままですね、変わらない……」
女の太ももに、ペイターの勃起した性器が擦り付けられる。布二枚挟んでも感じる気色悪さに、完全に意識を持っていかれる。
「すっ、すみません……。久しぶりで、興奮して、止まらなくて……っ! 気持ち悪いですよね、はぁっ……でも、おさまらないんです……♡」
「今まで自分がやってきたことがどれだけ野蛮だったか、完全に理解したわ。わたしってビョーキだったんだな」
「大丈夫、ですよ……。今回は、同意の上ですっ……から♡ 勃起したちんこ、ちっさい手でビンタして欲しいです……」
「キモい……変態……」
「力がこもってない! 言葉も! 暴力も! 全部適当だ! 嘘っぱちだ!」
完全に発狂し出したペイターを前に、女も合わせて叫び出す。二人の獣じみた吠えが反響して、非常に気味が悪い。
邪教の儀式でも行っていると勘違いされて通報されそうだ。
「あ゛ーっ! これ以上、どうしろって……? 何したら出てってくれんだよ⁉︎」
「言葉攻めもしてくれないならぁっ……う゛っ……精一杯、力込めて、僕を……殴って!」
はぁはぁ喘ぎながら詰め寄るペイターに対して、本能的に手が出てしまった。
「あぁ♡ 最高……です♡」
「ッ、ちがっ……これは違うっ……!」
「違わないでしょうっ! 何が違うんですか? 何と比べてそんなことを言ってるんですか? 貴方は昔からこうだった。ずっと、ずっとそれは変わらないんです、私を殴って、気絶させて、それが一番いいんですよ!」
ペイターが自分を煽っているのだということを、女は百も承知していた。それでも、本能のままに手が出てしまう。本能ではないと理性が否定するが、殴りながらヤるのが、一番気持ちいいことを体はよく知っていた。
自分より強い存在を甚振って、泣かせるのが好きだ。それだけが、自分の存在がここにあるのだということを認知させてくれる。
骨が砕けるのではないかと心配になるくらい、拳は執拗に顔の弱い部分を狙って正確な軌道を描いた。強化されて、研ぎ澄まされた神経が、人体の弱点を的確についた攻撃を繰り出す。
「すごい力だ……。今……貴方の手術は何世代目でしたっけ?」
「十」
「あはは……、私と……一緒ですね」
「どーせ、次のやつがもうくるよ」
「じゃあ、一緒に受けましょうね。約束ですよ」
「スネイルがいいって言ったらね……」
「他の男の名前を出すなっ! ……あ、あぁ……出さないで……ください……っ! お願いします……」
「わたしが他の人と寝ても、許すんじゃなかったっけ……」
「それは昔の話です……。今はもう、無理です。寛容な男にはなれません……。なれそうもありませんし、なろうとも思わないな……」
血が出てもお構いなしに殴ったので、女の拳にも血が付着している。
部屋に満ちている鉄の匂いが臭くてたまらない。嗅ぎ慣れた匂いだとしても、部屋の中で充満されると、息苦しくてたまらなくなる。
「部屋、換気しないと。臭くなる」
「後でいくらでもしていいですから……っ! 今は、お情けを……はぁっ……ここで、今、だしてもいいですか……?」
「今? なんで?」
「それは結婚するまで……だめですよ」
「キモい勘違い禁止。結婚も嫌だっての。抜かないで帰ってよ」
「無理ですよ、女子寮の廊下で爆発します」
「……じゃあ、挿入しなかったら、いい。ティッシュに出して」
床に転がっていたボックスティッシュから数枚取り出すと、ペイターの眼前に突きつける。
「ってか、マジでわたし殴りすぎだな。ウケる。ヤバいよ、誤魔化しきれねえだろこれ」
顔は醜く腫れ上がり、歯も数本折れているかもしれない。そんな惨状を見ながら、女は平気なフリをした。そうしないと、まだ何か追加で注文をつけてきそうで恐ろしいからだ。
「すっ……、すみません……♡ 階段で転んだことにしますからっ……! 迷惑はかけません……!」
「今までの人生、死ぬほど迷惑かけられたけどね」
「許して……くれませんか?」
「嫌だよ、無理だし」
「う゛っ……じゃあ死ぬまで、ちゃんと、責任とります……♡」
「いらないし。さっさと出して帰ってよ」
「じゃ、じゃあ……胸だけ、見せてください……すぐ出して帰るのでっ……♡」
「……しょうがないな」
部屋着の上をたくし上げると、ノーブラの状態だったので、女の胸がペイターの眼前に現れた。日にさらされることのない肌には日焼け痕などはなく、産毛が薄ら光に透けて白く輝いていた。これといって特徴らしい特徴もない、たかが乳房だったが、されど乳房。ペイターの目線はそこに釘付けになる。性器をしごく手つきが素早くなった。
「胸だけだと……処女みたいだ♡」
「キショいこと言ってないで、はよ抜け。ってかお前も、やっぱ男だなぁ。おっぱい好きなんて、ガキくさい」
こうして口でもいじめてやると、興奮することを知っている。早く終わってほしい。そして、もう二度と会わないようになってほしい。
「……う゛っ♡ む、無理です……っ♡ でます……♡」
ペイターは、急に女の手を掴んで、空いている方の手で、ちんこをしごいている方の自分の手の上に重ねて置くように拘束した。
「はっ……? え、あ、無理っ……! どけろオナ猿! 猿の分際でわたしを拘束するな馬鹿!」
「貴方と一つになって……あ゛っ……♡ ちっちゃい手で……操縦桿を握って……ぇ゛っ……♡ 敵にレーザー当ててるところ見ると、も、もう……だめです♡ 好きで……おかしくなるっ♡ あ゛ぁ゛っ……あ゛〜〜♡♡♡」
大声で叫びながら、ペイターは射精した。しばらく我慢して溜まっていたのか、その勢いは凄まじく、ティッシュに収まりきらない量の精子が飛び散って、女の下半身も濡れた。
「……はぁっ……♡ き、ぎもぢい゛っ……ですっ……♡」
「……汚してんじゃねえよ、拭けよ、ほら、早く。あッ⁉︎ 舌でやれってことじゃないって……! このアホ! そんなのしたら余計汚れるっての!」
「やっぱり……、セックスでは貴方に敵いませんね……♡ 絶対途中で私が負けるんです♡」
「もういいから、早く帰れ」
ペイターは後処理を簡潔に済ませると、先走りで汚れた下着を躊躇なく再び履いた。
そういうところが、女には理解できない。神経に触る人だ。
「すみません、洗面台だけ借りてもいいですか?」
「……絶対、蛇口以外触るなよ」
「そんな、変質者じゃないんですから」
ペイターは顔を洗い、持参してきたらしい衛生用品で顔の怪我に対して、素早く丁寧な処置を行った。後ろでそれを見ていた女は、その手際の良さに素直に感心する。
──自分を助けた時も、こんな感じだったのだろうか。
人事をやるより、衛生部門にいた方がいいかもしれない。
そんな妄想をしたが、自分から殴られに行く変質者が怪我人の世話をしてはいけないだろう、とまともな自分がツッコミを入れる。入院患者に性玩具を差し入れるようなやつだ。医療倫理もクソもない。
「貴方の時は、肺に穴も空いてましたからね」
「……へぇ、それでよく一ヶ月で出てこれたよな」
「我が社の安全装置は世界一ですから」
「馬鹿、それがよかったら穴なんて開かないんだよ」
こうして軽口を叩き合っていると、目の前にいるのが精神異常のマゾヒストだなどと考えられなくなる。まるで、大学の時に戻ったみたいな──。
(絆されてるんじゃない、わたし。こいつは敵で、わたしは次の作戦が終わったらヴェスパーをやめる……。こいつとは、また赤の他人になる)
顔に一発軽くビンタを入れる。気合いを入れ直す。絶対に、こいつとは仲良くならない。セックスも、これきりしない。
「次の異動でお前のとこに配属されないように祈るよ。一緒にいるくらいなら、もう一回最前線に出た方がマシ」
「そうですね、スネイルは貴方を手元に置きたがるでしょうね。ムカつくなぁ……」
「おい、彼氏面禁止」
こういうと、また言い返してくると思った。その予想は外れて、ペイターは親みたいなことを言い出した。
「明日からは、ちゃんと出社してくださいよ」
「ん……、いいよ。わかった」
「あれ、やけに素直ですね」
「行かないと、またこういうことさせられそうだからな。それに、溜まってる仕事もあるし……。忙しくなるな、次もスネイルが立案した作戦だろ?」
「えぇと……、そうですね。なんてやつだったか、忘れましたけど」
「忘れんなよ、仮にも隊長のくせに。ま、どこ行ってもやることは変わらないけどな」
「…………」
「え、マジで忘れた?」
「あはは……」
「笑って誤魔化すなよ!」
頭をかきながら、ペイターは誤魔化し笑いをした。こういうところがご愛嬌で、好かれる要因なんだろうな、と冷静に分析する。
(やっぱ、嫌いだな……)
自分にはこんなあざとい仕草はできない。これは一種の才能なのだろう。
(わたしも昔は、こんな風に見られてたのかな……)
ペイターと違って、愛想を振りまいても都合がよさそうな女に見られて、馬鹿にされるのがオチだった。
愛されることと舐められることは、紙一重だ。その境界線の間で、無意識か自覚的かはわからないがうまくたち回れる器用さを素直に羨ましいと思う。
それと同時に、それがないから自分はここまで落ちぶれたのだとも、思った。
「第八隊長就任、おめでとさん」
「え、なんですかいきなり」
「恩を売っておく。スネイルがいつキレてわたしをどっかヤバいとこに送らないとも限らないしさ……。例えば、ほら、『壁』とか。アリーナのランキングに載るようなヤバい独立傭兵とか、そういうの。いらないって思ったら、そういうのの相手する肉壁になりそうだし?」
「……よほど、死にたくないんですね?」
「えっ。あぁ、うん……。え、お前もそうなんじゃないの? 命がないと、何にもならないでしょ……。何? 自分は死にたいってこと?」
「大丈夫ですよ。貴方は私が死なせません」
真剣な瞳が女を一心に見つめている。顔が怪我でベコベコにされていなければ、きっと美しく様になっただろう。
(こーいう抜けてるとこが、他の奴らにはウケがいいんだろうな)
「…………彼氏面、マジでキモいんだよ」
爆笑したペイターの口から、奥歯が一本洗面台に落っこちた。