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ヴェスパー部隊の食べログ
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無理やり・クンニ・モブと夢主のセックス(未遂)
「……オキーフ、どうかしたのか?」
「…………」
時刻は正午。場所は社内食堂。ヴェスパー第四隊長であるラスティは、同僚であるオキーフとともにランチにありついていた──のだが、どうにも同席している相手の様子がおかしい。
明らかに体がこわばり、視線もぎこちない。カラトリーを握る手が僅かに震えている。極度の緊張状態にあるように見えた。
何かとんでもないもの……例えるならば山で熊と遭遇した時のような怯え方に、何に反応しているのかと気になってしまう。
ラスティはオキーフの視線の先にある物を捉え、思わず笑いそうになるのを寸前で堪えた。そこにいたのは、いかにも新入社員です! と言わんばかりの青臭い女子社員だった。壁に向かって今日の定食メニューをつついて、時折眠そうに手元の端末を見つめている。特段変わった様子は見受けられない。
少なくとも、ラスティの目にはどこにでもいそうな普通の女性に見えた。変わり映えのしない、どこにでもいそうな──。
「あの子だろうか? あのおひとり様席に座って、日替わりメニューを食べている……」
「…………あの女は、やめておけ」
ラスティが半分からかうような口調で言ったのに対して、オキーフの返答はかなり食い気味で真剣な声色をしていた。
普段、滅多に表情を変えない男があからさまに狼狽して緊張している。ここが戦地の真っ只中であるかのような表情を見て、好奇心で追求しようとしている場合ではないのだとわかった。
──人には触れない方がいいこともある。
きっと彼にもまた、何かがあったのだろう。
内容が内容なので、気にはなったが今は一旦諦めた方が良さそうだと判断する。
あの怯え方、よほど「何か」があるのか、それとも女性全般に対して「こう」なのか、ラスティはまだ彼と親しい付き合いをするようになって日が浅いため、判定することは難しかった。少なくとも、彼が人間に対してこんな態度を取る姿を見たことがない。
それから、今回の件に関して触れるのはやめたのだが、この問題はラスティの心にごく僅かな痼りを残した。
一体どんな関係なのだろう。恋人? まさか、そんなことはないはずだが──。それとも、何か深く傷つくようなことでも言われたのだろうか。
ラスティの好奇心は膨らむばかりであった。仕事柄、大勢の人間と接する機会が多く、本人の気性も人好きをする性質だったので、噂好きの女子高生のようなくだらない疑問でも、気になったら真相を解明したくなるのだ。
だが、その好奇心が後に彼の命取りになってしまうことを、知るものは誰もいない──。少なくとも、今の時点では、誰も。
※
オキーフの不審な様子を見てから、何日か過ぎたあとのことだった。定時時刻から数時間ほど残業をした帰り、帰宅しようと廊下を歩いていた時だった。ラスティは、資料室の扉が開きっぱなしになっていることに気づいた。
それは、ほんの僅かな隙間だった。最低限のライトのみがつけられた廊下で、その僅かに開いたあいだから漏れ出る光は、彼の目を惹いた。
ほんの少しの好奇心が猫を殺すこともある。なんとなく中にいる人物がどんな人間か、気になってしまった。近寄ってそっと中を覗いて見ると、そこでは信じられない光景が目に映った。
書架と書架の間の隙間で、逢瀬をする男女が一組。熱烈に乳繰りあっている姿があった。どう見ても性行為一歩手前といった様子で、恥も何もなく、家の中で過ごしているかのように体を弄りあっている。
ラスティは、そっとそこを離れることにした。
頭では驚いていたが、長年の経験から決して物音を立てたり、声を上げたりはしなかった。会社で「そういうこと」をする輩がいるかもしれないと考えたことはあったが、それはあくまで妄想であり、実際に事に及ぶバカはいないと考えていた。
しかし現実では、この会社にもそんな懲戒処分モノのことをしでかす人間はいたようである。
娯楽に乏しいルビコンで、男女の関係は強い中毒性のあるコンテンツなのだろう。閉鎖的な環境では、どうしてもそういうことは起こり得る。
しかし、自分には関係のないことだ。
淡々と仕事と任務をこなしていれば、それでいい。不用意な事に関わって面倒を起こしては、今までの努力が水の泡になる。
君子危うきに近寄らず。
そう思っていたのだが──。
「あのー、昨日、見てましたよね?」
面倒な事に巻き込まれた。
現在ラスティを壁際に追い詰めているのは、件の女性社員である。昼休みの食堂で、彼が「大人しそう」だと形容した女性であり、オキーフが恐れるその人であり、昨晩資料室で男の服の中に手を突っ込んで、弄っていた男女の片割れである。
昨日は彼女の姿が男の影に隠れる形で、視認ができなかったため、壁ドン(壁を叩いてアピールする事では「ない」方)をされるまでラスティはその事実に気づかなかった。
資料室に入る際、背後につける影があることには気づいていなかった。
──女がどんな手段を用いて人目を欺いたのか、皆目見当もつかない。
彼女は女性にしては上背がある方であり、ラスティとそこまで激しい体格差があるわけではなかったが、一般的に女性が男性を追い詰めるのは難しい。肉体的に難しい事を、女は精神的にイチニアシブを取ることでやってのけたのである。
(実際、彼女は最新の強化手術を受け、肉体面も強化されているので、フィジカルが一般人の旧世代型を追い詰めることは言うほど難しくはないが。一般常識としては、そうなる)
「……昨日、私が何を見ていたのかな」
「とぼけないでくださいよ。第四隊長殿、出歯亀してた癖に」
女の足がラスティの股に割って入った。そのまま膝を壁に押し当てると、女の顔が近くなっていく。
「ちゃんと正直に答えてくれたら、そこにあるUSBに関しては不問にしてあげますよ。それ、社内用の規格じゃないですよね?」
女の目線は、卓上の端末に差しっぱなしにしてあったメモリスティックに向けられている。
──迂闊だった。
肝が冷える。一瞬、心臓が跳ねたのを気取られただろうか? この程度の初歩的なミスをするなんて、ありえない。
今日は何かとミスをする日らしい。普段の自分ならこんなことはない、などと脳内で誰に向けてかわからない言い訳をする。それとも、目の前の女が今日は絶好調の日でめざとい気質なのかも……しれない。
「……わかった、何が条件だ?」
「話が早くて頭のいい人は大好きです。黙っててあげるので、セックスしましょう」
「…………」
なるほど、その手のタイプか。……などと冷静になってしまっている自分がいた。事態は深刻だ。誘いに応じてセックスをしても、この女が黙っていてくれる保証はないからだ。
平穏に、必要以上のトラブルを避けて過ごしたい。そう思っていたのに、核爆弾が向こうから突撃してきた気分だった。
「え、何それ。セックスが嫌なんですか。それとも……わたしが黙ってるかわからないから、確信が欲しいんですか? ……ていうかわたし、第四隊長の顔とちんぽしか興味ないんで、どうせヤったら全部忘れますよ。まぁ、初対面のヤリマンの言うことが信用ならないだろうし、わたし自身に信用がないのは、理解できますけど……あーどうしよっかなぁ。ちょうどそこらにわたしの上司がいて、怪しいことしてる人がいましたって報告することもできますけど? でもそれって、わたしも貴方も楽しくはないですよね……」
「わかった、わかったから……私が君の言うとおりにすれば、全ては丸く収まると、そう言いたいのはよくわかったから……」
虎穴に入らねば、虎子は得られず。
彼女は「それ」をまさしく実行しているに過ぎないのだろう。ゲーム感覚で命を握られているというのは、気分がいい物ではない。
「物分かりがいい人って、好きですよ♡」
女は耳元でそう囁いた。触れられて初めて、首筋に一筋の汗が垂れているのが分かった。
※
女は部屋に鍵をかけると、ゆっくりとこちらへと歩いて来る。一歩ごとに建材と靴の裏地が触れ合って、軽快な音を立てた。
手慣れた様子で彼女は上着を脱ぎ、ラスティのシャツのボタンも外していく。ゆっくりと、焦らすような手つきが逆に恐怖心を掻き立てる。
「あー、何がいいかな? 前々から気になってたんですよね、すごいイケメンがいるってみんな言ってて、どんな人なんだろうな、って。絶対に、食ってやろうってその時から決めてたんですよね」
「……今まで、何人とこんなことをしていたんだ。私の個人的な見解を述べさせてもらうと、君は相当に、その、遊んでいるのではないかと思うんだが」
「貴方こそ、その顔で何人泣かして来たんだか。ムカつきはしないけれど、興味はありますね」
「質問に答えるまでもない、か」
「あはは、お互い好き勝手やって生きてきたお仲間ですから。じゃあ、舐めて」
途端に凄まじい力で肩を押さえつけられ、膝立ちの体勢にさせられた。ラスティの目の前にあるのは、女の恥部だった。
「いつの間にズボンを……」
「ほら、子供じゃないんだからわたしの言ってる意味わかりますよね? フェラチオの要領で舐めりゃいんですよ。分かったならとっととクンニしろ、ほら!」
頭上から、神のお告げの如く命令される。女性の下半身をここまでまじまじと、顔の近くで見たことがなかった。
グロテスクだった。
殴る、蹴る、自白剤を打たれる。そういう類の拷問に対してならいくらか訓練を受けてきた。しかし、女性の性器を舐めるなんて、自分の人生に起こりうることだと思っていなかった!
見れば見るほど、処理された無毛の皮膚の下に子宮があり、少し屈めば所謂女性器の赤黒い面が見え隠れする。上からは興奮しているのか、乱れた息遣いが聞こえてくる。獲物を前にした肉食獣のような、唸る呼吸の音。
「本当に…………、これで黙っていてくれるんだろうな」
「あーはいはい。もういいから、さっさとまんこ舐めろよ! 後が詰まってんだからさあ!」
「…………ん゛っ⁉︎」
後が詰まっていると叫んだその意味を理解する間もなく、向こうからラスティの顔面に性器を押し付けて来た。
突然の出来事に文句を言う間もないまま、熟れた果実のように粘着質な膣口に口をつける羽目に陥ってしまった。汗と酸味が混ざったような、独特の味が口の中に広がる。このまま口を開けば、女の想定している通りのことになるだろう。
(最悪だ……)
スパイとして潜入している以上、いつかは房中で情報を仕入れることもあるだろうとある程度は考えていたが、まさか脅されてクンニする羽目になるとは考えてもいなかった……。
「ほら、ちゃんと舐めて。今鼻つけてるとこ……そこ舐めてよ。クリトリス、ガキんちょじゃないから、それくらいわかりますよね……」
どちらにしろ顔面を圧迫されている形になるので、呼吸のために少し顔をずらさなければならない。
気分は水面に顔を沈められる拷問のそれと同じだった。
「舌、ちゃんと出しなさい」
少しでもサボると、女はラスティの髪を掴んで無理やり押さえつけるので、仕方なしに舌で女に奉仕する。口の中いっぱいに毒々しい味が広がることになる。
「ちゃんとやらないと、バラしちゃいますよ〜」
べちゃべちゃと音を立てながら、猫が水を飲むような舌使いで舐める。見よう見まねも何でも、女が指示するままにするしかない。
これが好きな相手だったならば、相手に喜んで欲しくて頑張っていたかもしれない。しかし、相手は自分を脅してこんなことをさせている変質者の女なのだ。初対面のくせに、最初から厚かましい態度で接してくる、嫌な人間だ。
卑猥な水音が部屋に響いた。機械の熱と自分の体温が混じって暑苦しく感じられる。
「ん……♡ 下手くそなりに頑張ってて、いいんじゃない? まあこれなら、狼じゃなくてバター犬って感じですけどね! アッハハハ!」
女は自分の発言がツボに入ったのか、ラスティの髪を掴んで引っ張りながらケタケタと笑っていた。それに釣られて動きが散漫になると、容赦なく爪先で蹴飛ばしてくる。
「喋るな。何も考えるな。人権のない舐め犬のくせに、偉そうに行動を自分で選ぼうとするんじゃないんですよ。殺すぞ」
時折、息継ぎのように顔を膣口から離される以外は、ほぼ舌での奉仕を強いられた。その様相は本気の拷問そのものであり、女は熟練の拷問官のように手慣れた手つきでそれを行った。
そのやり口があまりにも絶妙で、酸欠で死にそうになるギリギリのところで顔を上げるタイミングであったり、ごく稀に上から漏れ出る意外にも女性らしい喘ぎ声のようなものがエッセンスとなり、自分から進んで奉仕「させていただいている」のではないかと錯覚するほどであった。
最も恐ろしいのが、このやり方があまりにもこなれているので、自分以外にもクンニを強要されてしまった人間が、女の通ってきた道に掃いて捨てるほどいそうなところだった。
この技術は数多の男たちの屍によって確立されているのだろう。この女が過去に関係を持った人間が、この会社内だけでも相当数いそうなことを考え、ゾッとした。
それと同時に、オキーフがこの女を恐れていた理由に察しがついてしまい、余計に恐ろしくなった。あの男が震えるほどの苦痛を与えたのだから、相当暴れてめちゃくちゃにしたと予想がつく。ラスティは、自分の考えが甘かったことを悔いた。
(この場合、再教育センターにでも異動したら、向いていそうだな)
などとくだらない戯言じみた考えが浮かんだが、それも機敏に察知した彼女の手によって、「無駄なことを考えるな」というお言葉と共に思考は闇に消え去った。
「あ゛ー、これさあ、顔押さえて舐めさせてるとイラマチオさせてるみたいで……興奮するかも♡」
(興奮するかも、だと……⁉︎)
ここまで必死に舐め犬に徹しているのに、未だ絶頂の兆しすら見せない女を前に、ラスティは絶望した。絶望するしかなかった。
「馬鹿素人。愛液ってのは感じてなくても弄られてりゃ自然と出るんですよ。……あーあ、なんでわたしがいい歳した大人の先輩に性教育しなくちゃいけないのか……理解に苦しむなぁ。ってことで、あともうちょい頑張ろうか♡ 頑張れ♡ 頑張れ♡ 産業スパイの先輩♡ わかってると思いますけど、ちゃんとご奉仕しないと、マジにお前の人生終わるからな」
※
「…………まぁ、及第点かな」
事が終わり、床に這いつくばるラスティを見て女はそう独りごちた。
「……これで、満足してもらえたかな」
「いや、まだ」
「まだ⁉︎」
女の凄まじい性欲に恐れをなし、ラスティは思わず口をあんぐりと開けた。先ほどまで必死に舐めしゃぶっていたせいで唇はふやけ、あごは外れそうなのだがそれでも驚きを隠せなかった。
「ちんこ入れないと。なんのためにクンニさせたかって、ありゃ前戯ですよ。セックスするって最初に言いましたよね? 常識的に考えて、普通にそれ以外ないでしょ」
力の入らないラスティの身体を床に押し倒し、強引にズボンを下ろしながら女は呟く。「何を当たり前のことを言ってるんだ」と責め立てるような口ぶりで、無茶苦茶な理論を捲し立て、異様な光で瞳が輝いている。
「そろそろ戻らないとスネイルに怒られるんで、ちゃっちゃとおっ立ててくださ──なんだぁ、もう準備完了って感じじゃないですか♡ 舐めて感じた? ド淫乱でウケる。やっぱ才能あるんだね、舐め犬に改名したらいいんじゃないですか?」
「う゛っ……」
外気に晒された男性器は、極度の緊張で凝り固まっていた。血液が一身に集まっているせいで、張り裂けそうだ。
(ありえない……! 私はこんな辱めを受けて興奮する性質だったのか……⁉︎)
泣けるものなら泣きたかった。こんなに情けない事があるだろうか。けれどここで泣いては女の思う壷であり、余計な生き恥を晒すことになる。
興奮して息が荒くなる女を前に、ラスティはグッと唇を噛み締めた。亀頭を膣口に押し付け、入るか入らないかギリギリの浅瀬で女は腰をゆっくりと動かす。
剥き出しの性器と性器が擦れ合い、ぬちゃぬちゃと卑猥な音を立てた。
──熱い。
冬場に入る風呂のような暑さ。それでいて、柔らかいゴムのような、くっついて取れない粘着剤のような粘っこさもあって、触れているだけで気が狂いそうになる。
これを全て挿入してしまったら、どうなるのか──。その考えが脳裏に浮かんでは理性が行為の実行を拒んで押し留める。
焦らすような腰使いのせいで、少しでもラスティが挿入しようとすれば本当に中に入ってしまうほど密着している。
騎乗位でまたがる女を下から見上げていると、時折目線が別の方向を向いているのがわかった。溶けそうな思考の中で、長年培ってきた勘は衰えてはいなかった。
──向こうが不利になりうる物があるなら、見つけて交渉に使わなくては……。
目の動きだけで女の視線の向かう先を見つける。それは時計だった。
(……時間を気にしているのか)
先ほど女が口走った「スネイルに怒られる」という言葉は事実なのだろう。あの男が時間に厳しいことは身に沁みて理解している。女とて、スネイルの規律の「例外」にはなりえないのだろう。
人の後をつけていきなり強姦するようなイカれた女でも、恐れるものはあるのか、とラスティは心の底から驚いた。まさに、恐れるものなどないからこんな行為に及んでいるのだと思っていたから。意外ではあるが、スネイルの説教が気絶しそうなほど面倒なことには同感する。
(では向こうのタイムリミットまで粘れば解放してもらえるのでは──?)
「本番」だけは駄目だ。それをしてしまうと、本当に超えてはならない一線を超えてしまう気がする──。今まで散々な目に遭わされたが、本当にこれだけはヤバいと理性が訴えかけてくる。
今回に限り、自分から挿入れるのはポリシーに反するのだろう。女はゆっくりと、着実に脳が溶けて来ているラスティにトドメの一撃を喰らわせようと、素股のリズムを変則的に変えてくる。
変な姿勢で脚が痛くなりそうなものを、根性だけで耐えていた。どちらも一進一退の攻防だった。
間抜けな絵面ではあるが、両者共に真剣な戦いなのである。
「うんうん、わかってますよ。本当はど淫乱のマゾ犬じゃなくて、ちゃんと格好良くて気高いパイロットだもんね♡ でもね、それをまんこで負かしてわからすのが気持ちいいんですよ♡」
「はぁっ……、やってみればっ、いいさ……。君とて焦らされているのは同じはずだからな……」
「……組み敷かれといて余裕ぶっこくんですか? 超生意気♡」
「君だって、すごい汗だ。しかも下の方も結構濡れているんじゃないか」
「半分くらい貴方の唾液ですよ……、っと。普段は前戯なしでぶち込んでもヨユー、なんですけど……せっかくだし、話題の第四隊長殿を跪かせて、屈服させようって試みですよ♡ 今まで生きてきて、誰のおまんこも舐めたことないでしょ? どんな気分でした? 死にたくなった?」
「君が今すぐ退いてくれたら、君は自殺幇助の罪で逮捕されないだろうな」
「あっははは。面白いことを言うんですね!」
女は緩やかな動きを止めた。心底愉快そうに笑っているように聞こえるが、それは上部だけだということがすぐにわかった。
まずい! と思った時にはもう遅く、ラスティの性器は虫を迎え入れる食虫植物のごとく女の膣内に飲み込まれていった。ズズズ……とナメクジが地面を這うような音を立てて、その全てが収まっていく。
まるで、それが最初からあるべき形だったと言わんばかりに。
「お゛お゛っ、あ゛あ゛あ゛ぁっ、あ゛あ゛っ♡ こっ、これはっあ゛っ……! いぎなり、そんなっ♡ お゛ぉ゛っ♡」
「調子に乗るなよ。……どっちに主導権があるか、忘れたんじゃないでしょうね。そのことは、貴方の頭がいいからちゃあんと理解してると思ってたけど、期待外れでしたね。ガッカリです。それに、そもそも貴方が夜に開けっぱなしの部屋なんて覗かなきゃこんなことになってないじゃないですか。君子危うきに近寄らずってママとパパと先生に教わってないんですかぁー?」
淡々と言いながら、女は搾り取るような膣圧とゴシゴシと抉るようなピストンでしっかりと相手を追い詰める。
「し、死ぬっ♡ 持っでい゛かれ……る゛……う゛っ……!」
「なーに言ってんだか。人間これくらいで死んでたら、命はいくつあっても足りないですよー♡ ああ、腹上死がお望みなら、別にそうしてあげても……いいですけど♡」
絞られるような圧力で、すぐにでも気を抜いたら出してしまいそうだった。おまけに、女の子宮口は先端に吸い付いて、敏感な部分をじっとりと啄むように刺激してくる。決して離さないとばかりに膣全体が柔くキツく締めてくるのだ。
息が苦しい。もう解放されたい。早く射精すれば終わるのだろうか。
こうしている間にも、女は好き勝手に動いて絶頂の兆しが見えると散漫な動作に切り替わる。目の前で恥を晒して大きな声をあげ、鳴き喘いでいる男を見て愉悦に浸っている。
「あ゛っ……あ゛ぁっ……♡ っぅ゛……♡ ぁっ……♡」
喘ぎすぎて喉が痛い。口を開けて喘いでいると、唇の端から涎が垂れてくる。女はそれを拭いながら、「赤ちゃんみたいでかーわい♡」などと呟く。
それを聞いて慌てて口を閉じようとしたが、女は動きを激しくして体を揺さぶってくる。
腹筋が攣りそうに痛い。全てが痛い。怖い。このまま膣内で射精してしまったら、本当にどうなるのだろう。
ラスティの脳内に「責任」と「立場」の二文字が浮かんでは消える。ここで中出しして彼女が妊娠したら最悪だし、この件が強姦として立件されても立場が下の女性に無理やりレイプされたというレッテルが死ぬまでついてまわる。そうなってしまった本当の理由はもちろん説明できないし、一生色眼鏡をかけて見られてしまうことになるかもしれない。必要
立場上必要以上に波風を立てたくないし、人間としての尊厳とプライドにもかかわる事案だ。
しかし、それでも気持ちいいものは気持ちよかった。悔しいほどに、女はセックスが上手かった。
(も、もう限界だ……! 最悪だっ! 本当に……自分が情けない♡)
女はラスティの頬に手を添え、にこりと微笑む。
「だいじょぶですよ、何にも考えなくってもいいんです♡ わたしのナカにびゅっびゅ♡ ってしちゃって、無責任中出ししてイっちゃえ♡ どうせ考える脳みそも残ってないだろうし♡ 馬鹿雑魚クソ早漏ちんぽになっちゃえ♡ 赤ちゃんのお部屋でぴゅ〜♡ ってしちゃおう? 全部忘れて、脳みそちんこに接続したほうが楽に生きれるんじゃないですか? わたしはそうしてますけど? どうせ人間、生きてる意味なんてないし、生殖に脳のリソースを割くのは生物として正しいんじゃないんですか」
後半は早口すぎてよく聞き取れなかったが、女はラスティの耳元に口を寄せ、「射精しちゃえ♡」「イっちゃえ♡」などと囁き出す。
「ビクビクしてる♡ 耳よわよわなんだ♡ かわいいね♡ そんなクッソ雑魚い体でよくパイロットなんて務まるなァ……」
吐き捨てるように罵られ、耳を嬲られる。ついでに腹筋に力を入れてまんこもぎゅっと締められる。
「っア゛…………イ゛ッ……」
「なーにー? 聞こえないよ。ちゃんと何がしたいか言ってくれないと、わっかんないよ♡」
「イ、イ゛ギ……イ゛がせてぐださい゛っ……♡ お、お゛っね゛がい゛します……♡ も……無理で……助けてくれ……♡」
「……はぁ、クッソ情けない上に堪え性のないマゾ犬ですね♡ 他の社員の女の子が見たら、失望しちゃうでしょうね♡ ちんこ腫らして必死こいて腰振って喘いじゃってさぁ、恥ずかしくないんですか? わたしが寛大でよかったですよね。舐め犬の先輩の世話なんて、もう御免なんで……まぁ──いいよ、まんこに射精しても♡」
「っく! ──はぁっ♡ で、射精るっ♡ う゛っ……‼︎」
ガクガクと震えながら最後の一滴まで出し終える。ここに来て初めて、肩で息をするまでに己が疲れ果ててしまっていることを知った。
「んー……、まぁまぁかな」
蛍光灯の逆光を受け、ラスティの顔をペチペチと叩きながらそう呟いた女の表情は、窺い知れない。
(これで「まあまあ」なのか──⁉︎)
ぐったりとして、口を動かす気力も起きない。
女が「誰」と比較してそう言ったのか、ラスティは分かる日がくることはないだろう。
無遠慮なまでにあっさりと引き抜かれた性器からは、女の本気汁とも精液とも分からないような白濁とした液体が滴っていた。
射精直後特有の倦怠感と、脳に一気に血が昇って意識だけが冴え渡る、いわゆる「賢者タイム」に突入したラスティは、奥で出すだけ出して事の重大さを思い知った。
揺さぶられている時から意識はしていた事だが、実際に目の前にすると動揺が抑えきれない。アフターピルでも買って手渡すべきだろう。下手したら父親になるリスクは死んでも犯したくなかった。
「あぁそれと、わたしがここでヤってたことは絶対に漏らさないでくださいねー」
真剣に考えて必死になっているラスティを横目に、女は呑気にそんなことを言う。精子を拭ったティッシュを乱暴にゴミ箱に投げ入れ、あっという間に証拠隠滅を図る。
「匂いはどうしようもないからなー換気扇でザーメンくさいのって直るっけ……」
「──の──クは──に──行った──が──」
「えー? マジで声掠れて何言ってんのかわからなくてウケる。んじゃあ後始末は任せたんで、お先に失礼しまっす」
出ない声で必死に妊娠のリスクについて訴えるラスティを無視して、女は退室していった。
台風のようにやってきて、やることをやったらすぐに消える。
ラスティは人生初の「ヤり捨てられ事件」について、死ぬまで誰にも話すことはなかった。かくして、彼の人生の汚点である出来事はこのようにして終わったのである。
Q このお話の教訓は?
A 想像もつかないような最悪の出来事に遭遇して、それを誰にも相談できない時は、災害にあったと思って諦めろ。特に、下半身と女の問題は。
「……オキーフ、どうかしたのか?」
「…………」
時刻は正午。場所は社内食堂。ヴェスパー第四隊長であるラスティは、同僚であるオキーフとともにランチにありついていた──のだが、どうにも同席している相手の様子がおかしい。
明らかに体がこわばり、視線もぎこちない。カラトリーを握る手が僅かに震えている。極度の緊張状態にあるように見えた。
何かとんでもないもの……例えるならば山で熊と遭遇した時のような怯え方に、何に反応しているのかと気になってしまう。
ラスティはオキーフの視線の先にある物を捉え、思わず笑いそうになるのを寸前で堪えた。そこにいたのは、いかにも新入社員です! と言わんばかりの青臭い女子社員だった。壁に向かって今日の定食メニューをつついて、時折眠そうに手元の端末を見つめている。特段変わった様子は見受けられない。
少なくとも、ラスティの目にはどこにでもいそうな普通の女性に見えた。変わり映えのしない、どこにでもいそうな──。
「あの子だろうか? あのおひとり様席に座って、日替わりメニューを食べている……」
「…………あの女は、やめておけ」
ラスティが半分からかうような口調で言ったのに対して、オキーフの返答はかなり食い気味で真剣な声色をしていた。
普段、滅多に表情を変えない男があからさまに狼狽して緊張している。ここが戦地の真っ只中であるかのような表情を見て、好奇心で追求しようとしている場合ではないのだとわかった。
──人には触れない方がいいこともある。
きっと彼にもまた、何かがあったのだろう。
内容が内容なので、気にはなったが今は一旦諦めた方が良さそうだと判断する。
あの怯え方、よほど「何か」があるのか、それとも女性全般に対して「こう」なのか、ラスティはまだ彼と親しい付き合いをするようになって日が浅いため、判定することは難しかった。少なくとも、彼が人間に対してこんな態度を取る姿を見たことがない。
それから、今回の件に関して触れるのはやめたのだが、この問題はラスティの心にごく僅かな痼りを残した。
一体どんな関係なのだろう。恋人? まさか、そんなことはないはずだが──。それとも、何か深く傷つくようなことでも言われたのだろうか。
ラスティの好奇心は膨らむばかりであった。仕事柄、大勢の人間と接する機会が多く、本人の気性も人好きをする性質だったので、噂好きの女子高生のようなくだらない疑問でも、気になったら真相を解明したくなるのだ。
だが、その好奇心が後に彼の命取りになってしまうことを、知るものは誰もいない──。少なくとも、今の時点では、誰も。
※
オキーフの不審な様子を見てから、何日か過ぎたあとのことだった。定時時刻から数時間ほど残業をした帰り、帰宅しようと廊下を歩いていた時だった。ラスティは、資料室の扉が開きっぱなしになっていることに気づいた。
それは、ほんの僅かな隙間だった。最低限のライトのみがつけられた廊下で、その僅かに開いたあいだから漏れ出る光は、彼の目を惹いた。
ほんの少しの好奇心が猫を殺すこともある。なんとなく中にいる人物がどんな人間か、気になってしまった。近寄ってそっと中を覗いて見ると、そこでは信じられない光景が目に映った。
書架と書架の間の隙間で、逢瀬をする男女が一組。熱烈に乳繰りあっている姿があった。どう見ても性行為一歩手前といった様子で、恥も何もなく、家の中で過ごしているかのように体を弄りあっている。
ラスティは、そっとそこを離れることにした。
頭では驚いていたが、長年の経験から決して物音を立てたり、声を上げたりはしなかった。会社で「そういうこと」をする輩がいるかもしれないと考えたことはあったが、それはあくまで妄想であり、実際に事に及ぶバカはいないと考えていた。
しかし現実では、この会社にもそんな懲戒処分モノのことをしでかす人間はいたようである。
娯楽に乏しいルビコンで、男女の関係は強い中毒性のあるコンテンツなのだろう。閉鎖的な環境では、どうしてもそういうことは起こり得る。
しかし、自分には関係のないことだ。
淡々と仕事と任務をこなしていれば、それでいい。不用意な事に関わって面倒を起こしては、今までの努力が水の泡になる。
君子危うきに近寄らず。
そう思っていたのだが──。
「あのー、昨日、見てましたよね?」
面倒な事に巻き込まれた。
現在ラスティを壁際に追い詰めているのは、件の女性社員である。昼休みの食堂で、彼が「大人しそう」だと形容した女性であり、オキーフが恐れるその人であり、昨晩資料室で男の服の中に手を突っ込んで、弄っていた男女の片割れである。
昨日は彼女の姿が男の影に隠れる形で、視認ができなかったため、壁ドン(壁を叩いてアピールする事では「ない」方)をされるまでラスティはその事実に気づかなかった。
資料室に入る際、背後につける影があることには気づいていなかった。
──女がどんな手段を用いて人目を欺いたのか、皆目見当もつかない。
彼女は女性にしては上背がある方であり、ラスティとそこまで激しい体格差があるわけではなかったが、一般的に女性が男性を追い詰めるのは難しい。肉体的に難しい事を、女は精神的にイチニアシブを取ることでやってのけたのである。
(実際、彼女は最新の強化手術を受け、肉体面も強化されているので、フィジカルが一般人の旧世代型を追い詰めることは言うほど難しくはないが。一般常識としては、そうなる)
「……昨日、私が何を見ていたのかな」
「とぼけないでくださいよ。第四隊長殿、出歯亀してた癖に」
女の足がラスティの股に割って入った。そのまま膝を壁に押し当てると、女の顔が近くなっていく。
「ちゃんと正直に答えてくれたら、そこにあるUSBに関しては不問にしてあげますよ。それ、社内用の規格じゃないですよね?」
女の目線は、卓上の端末に差しっぱなしにしてあったメモリスティックに向けられている。
──迂闊だった。
肝が冷える。一瞬、心臓が跳ねたのを気取られただろうか? この程度の初歩的なミスをするなんて、ありえない。
今日は何かとミスをする日らしい。普段の自分ならこんなことはない、などと脳内で誰に向けてかわからない言い訳をする。それとも、目の前の女が今日は絶好調の日でめざとい気質なのかも……しれない。
「……わかった、何が条件だ?」
「話が早くて頭のいい人は大好きです。黙っててあげるので、セックスしましょう」
「…………」
なるほど、その手のタイプか。……などと冷静になってしまっている自分がいた。事態は深刻だ。誘いに応じてセックスをしても、この女が黙っていてくれる保証はないからだ。
平穏に、必要以上のトラブルを避けて過ごしたい。そう思っていたのに、核爆弾が向こうから突撃してきた気分だった。
「え、何それ。セックスが嫌なんですか。それとも……わたしが黙ってるかわからないから、確信が欲しいんですか? ……ていうかわたし、第四隊長の顔とちんぽしか興味ないんで、どうせヤったら全部忘れますよ。まぁ、初対面のヤリマンの言うことが信用ならないだろうし、わたし自身に信用がないのは、理解できますけど……あーどうしよっかなぁ。ちょうどそこらにわたしの上司がいて、怪しいことしてる人がいましたって報告することもできますけど? でもそれって、わたしも貴方も楽しくはないですよね……」
「わかった、わかったから……私が君の言うとおりにすれば、全ては丸く収まると、そう言いたいのはよくわかったから……」
虎穴に入らねば、虎子は得られず。
彼女は「それ」をまさしく実行しているに過ぎないのだろう。ゲーム感覚で命を握られているというのは、気分がいい物ではない。
「物分かりがいい人って、好きですよ♡」
女は耳元でそう囁いた。触れられて初めて、首筋に一筋の汗が垂れているのが分かった。
※
女は部屋に鍵をかけると、ゆっくりとこちらへと歩いて来る。一歩ごとに建材と靴の裏地が触れ合って、軽快な音を立てた。
手慣れた様子で彼女は上着を脱ぎ、ラスティのシャツのボタンも外していく。ゆっくりと、焦らすような手つきが逆に恐怖心を掻き立てる。
「あー、何がいいかな? 前々から気になってたんですよね、すごいイケメンがいるってみんな言ってて、どんな人なんだろうな、って。絶対に、食ってやろうってその時から決めてたんですよね」
「……今まで、何人とこんなことをしていたんだ。私の個人的な見解を述べさせてもらうと、君は相当に、その、遊んでいるのではないかと思うんだが」
「貴方こそ、その顔で何人泣かして来たんだか。ムカつきはしないけれど、興味はありますね」
「質問に答えるまでもない、か」
「あはは、お互い好き勝手やって生きてきたお仲間ですから。じゃあ、舐めて」
途端に凄まじい力で肩を押さえつけられ、膝立ちの体勢にさせられた。ラスティの目の前にあるのは、女の恥部だった。
「いつの間にズボンを……」
「ほら、子供じゃないんだからわたしの言ってる意味わかりますよね? フェラチオの要領で舐めりゃいんですよ。分かったならとっととクンニしろ、ほら!」
頭上から、神のお告げの如く命令される。女性の下半身をここまでまじまじと、顔の近くで見たことがなかった。
グロテスクだった。
殴る、蹴る、自白剤を打たれる。そういう類の拷問に対してならいくらか訓練を受けてきた。しかし、女性の性器を舐めるなんて、自分の人生に起こりうることだと思っていなかった!
見れば見るほど、処理された無毛の皮膚の下に子宮があり、少し屈めば所謂女性器の赤黒い面が見え隠れする。上からは興奮しているのか、乱れた息遣いが聞こえてくる。獲物を前にした肉食獣のような、唸る呼吸の音。
「本当に…………、これで黙っていてくれるんだろうな」
「あーはいはい。もういいから、さっさとまんこ舐めろよ! 後が詰まってんだからさあ!」
「…………ん゛っ⁉︎」
後が詰まっていると叫んだその意味を理解する間もなく、向こうからラスティの顔面に性器を押し付けて来た。
突然の出来事に文句を言う間もないまま、熟れた果実のように粘着質な膣口に口をつける羽目に陥ってしまった。汗と酸味が混ざったような、独特の味が口の中に広がる。このまま口を開けば、女の想定している通りのことになるだろう。
(最悪だ……)
スパイとして潜入している以上、いつかは房中で情報を仕入れることもあるだろうとある程度は考えていたが、まさか脅されてクンニする羽目になるとは考えてもいなかった……。
「ほら、ちゃんと舐めて。今鼻つけてるとこ……そこ舐めてよ。クリトリス、ガキんちょじゃないから、それくらいわかりますよね……」
どちらにしろ顔面を圧迫されている形になるので、呼吸のために少し顔をずらさなければならない。
気分は水面に顔を沈められる拷問のそれと同じだった。
「舌、ちゃんと出しなさい」
少しでもサボると、女はラスティの髪を掴んで無理やり押さえつけるので、仕方なしに舌で女に奉仕する。口の中いっぱいに毒々しい味が広がることになる。
「ちゃんとやらないと、バラしちゃいますよ〜」
べちゃべちゃと音を立てながら、猫が水を飲むような舌使いで舐める。見よう見まねも何でも、女が指示するままにするしかない。
これが好きな相手だったならば、相手に喜んで欲しくて頑張っていたかもしれない。しかし、相手は自分を脅してこんなことをさせている変質者の女なのだ。初対面のくせに、最初から厚かましい態度で接してくる、嫌な人間だ。
卑猥な水音が部屋に響いた。機械の熱と自分の体温が混じって暑苦しく感じられる。
「ん……♡ 下手くそなりに頑張ってて、いいんじゃない? まあこれなら、狼じゃなくてバター犬って感じですけどね! アッハハハ!」
女は自分の発言がツボに入ったのか、ラスティの髪を掴んで引っ張りながらケタケタと笑っていた。それに釣られて動きが散漫になると、容赦なく爪先で蹴飛ばしてくる。
「喋るな。何も考えるな。人権のない舐め犬のくせに、偉そうに行動を自分で選ぼうとするんじゃないんですよ。殺すぞ」
時折、息継ぎのように顔を膣口から離される以外は、ほぼ舌での奉仕を強いられた。その様相は本気の拷問そのものであり、女は熟練の拷問官のように手慣れた手つきでそれを行った。
そのやり口があまりにも絶妙で、酸欠で死にそうになるギリギリのところで顔を上げるタイミングであったり、ごく稀に上から漏れ出る意外にも女性らしい喘ぎ声のようなものがエッセンスとなり、自分から進んで奉仕「させていただいている」のではないかと錯覚するほどであった。
最も恐ろしいのが、このやり方があまりにもこなれているので、自分以外にもクンニを強要されてしまった人間が、女の通ってきた道に掃いて捨てるほどいそうなところだった。
この技術は数多の男たちの屍によって確立されているのだろう。この女が過去に関係を持った人間が、この会社内だけでも相当数いそうなことを考え、ゾッとした。
それと同時に、オキーフがこの女を恐れていた理由に察しがついてしまい、余計に恐ろしくなった。あの男が震えるほどの苦痛を与えたのだから、相当暴れてめちゃくちゃにしたと予想がつく。ラスティは、自分の考えが甘かったことを悔いた。
(この場合、再教育センターにでも異動したら、向いていそうだな)
などとくだらない戯言じみた考えが浮かんだが、それも機敏に察知した彼女の手によって、「無駄なことを考えるな」というお言葉と共に思考は闇に消え去った。
「あ゛ー、これさあ、顔押さえて舐めさせてるとイラマチオさせてるみたいで……興奮するかも♡」
(興奮するかも、だと……⁉︎)
ここまで必死に舐め犬に徹しているのに、未だ絶頂の兆しすら見せない女を前に、ラスティは絶望した。絶望するしかなかった。
「馬鹿素人。愛液ってのは感じてなくても弄られてりゃ自然と出るんですよ。……あーあ、なんでわたしがいい歳した大人の先輩に性教育しなくちゃいけないのか……理解に苦しむなぁ。ってことで、あともうちょい頑張ろうか♡ 頑張れ♡ 頑張れ♡ 産業スパイの先輩♡ わかってると思いますけど、ちゃんとご奉仕しないと、マジにお前の人生終わるからな」
※
「…………まぁ、及第点かな」
事が終わり、床に這いつくばるラスティを見て女はそう独りごちた。
「……これで、満足してもらえたかな」
「いや、まだ」
「まだ⁉︎」
女の凄まじい性欲に恐れをなし、ラスティは思わず口をあんぐりと開けた。先ほどまで必死に舐めしゃぶっていたせいで唇はふやけ、あごは外れそうなのだがそれでも驚きを隠せなかった。
「ちんこ入れないと。なんのためにクンニさせたかって、ありゃ前戯ですよ。セックスするって最初に言いましたよね? 常識的に考えて、普通にそれ以外ないでしょ」
力の入らないラスティの身体を床に押し倒し、強引にズボンを下ろしながら女は呟く。「何を当たり前のことを言ってるんだ」と責め立てるような口ぶりで、無茶苦茶な理論を捲し立て、異様な光で瞳が輝いている。
「そろそろ戻らないとスネイルに怒られるんで、ちゃっちゃとおっ立ててくださ──なんだぁ、もう準備完了って感じじゃないですか♡ 舐めて感じた? ド淫乱でウケる。やっぱ才能あるんだね、舐め犬に改名したらいいんじゃないですか?」
「う゛っ……」
外気に晒された男性器は、極度の緊張で凝り固まっていた。血液が一身に集まっているせいで、張り裂けそうだ。
(ありえない……! 私はこんな辱めを受けて興奮する性質だったのか……⁉︎)
泣けるものなら泣きたかった。こんなに情けない事があるだろうか。けれどここで泣いては女の思う壷であり、余計な生き恥を晒すことになる。
興奮して息が荒くなる女を前に、ラスティはグッと唇を噛み締めた。亀頭を膣口に押し付け、入るか入らないかギリギリの浅瀬で女は腰をゆっくりと動かす。
剥き出しの性器と性器が擦れ合い、ぬちゃぬちゃと卑猥な音を立てた。
──熱い。
冬場に入る風呂のような暑さ。それでいて、柔らかいゴムのような、くっついて取れない粘着剤のような粘っこさもあって、触れているだけで気が狂いそうになる。
これを全て挿入してしまったら、どうなるのか──。その考えが脳裏に浮かんでは理性が行為の実行を拒んで押し留める。
焦らすような腰使いのせいで、少しでもラスティが挿入しようとすれば本当に中に入ってしまうほど密着している。
騎乗位でまたがる女を下から見上げていると、時折目線が別の方向を向いているのがわかった。溶けそうな思考の中で、長年培ってきた勘は衰えてはいなかった。
──向こうが不利になりうる物があるなら、見つけて交渉に使わなくては……。
目の動きだけで女の視線の向かう先を見つける。それは時計だった。
(……時間を気にしているのか)
先ほど女が口走った「スネイルに怒られる」という言葉は事実なのだろう。あの男が時間に厳しいことは身に沁みて理解している。女とて、スネイルの規律の「例外」にはなりえないのだろう。
人の後をつけていきなり強姦するようなイカれた女でも、恐れるものはあるのか、とラスティは心の底から驚いた。まさに、恐れるものなどないからこんな行為に及んでいるのだと思っていたから。意外ではあるが、スネイルの説教が気絶しそうなほど面倒なことには同感する。
(では向こうのタイムリミットまで粘れば解放してもらえるのでは──?)
「本番」だけは駄目だ。それをしてしまうと、本当に超えてはならない一線を超えてしまう気がする──。今まで散々な目に遭わされたが、本当にこれだけはヤバいと理性が訴えかけてくる。
今回に限り、自分から挿入れるのはポリシーに反するのだろう。女はゆっくりと、着実に脳が溶けて来ているラスティにトドメの一撃を喰らわせようと、素股のリズムを変則的に変えてくる。
変な姿勢で脚が痛くなりそうなものを、根性だけで耐えていた。どちらも一進一退の攻防だった。
間抜けな絵面ではあるが、両者共に真剣な戦いなのである。
「うんうん、わかってますよ。本当はど淫乱のマゾ犬じゃなくて、ちゃんと格好良くて気高いパイロットだもんね♡ でもね、それをまんこで負かしてわからすのが気持ちいいんですよ♡」
「はぁっ……、やってみればっ、いいさ……。君とて焦らされているのは同じはずだからな……」
「……組み敷かれといて余裕ぶっこくんですか? 超生意気♡」
「君だって、すごい汗だ。しかも下の方も結構濡れているんじゃないか」
「半分くらい貴方の唾液ですよ……、っと。普段は前戯なしでぶち込んでもヨユー、なんですけど……せっかくだし、話題の第四隊長殿を跪かせて、屈服させようって試みですよ♡ 今まで生きてきて、誰のおまんこも舐めたことないでしょ? どんな気分でした? 死にたくなった?」
「君が今すぐ退いてくれたら、君は自殺幇助の罪で逮捕されないだろうな」
「あっははは。面白いことを言うんですね!」
女は緩やかな動きを止めた。心底愉快そうに笑っているように聞こえるが、それは上部だけだということがすぐにわかった。
まずい! と思った時にはもう遅く、ラスティの性器は虫を迎え入れる食虫植物のごとく女の膣内に飲み込まれていった。ズズズ……とナメクジが地面を這うような音を立てて、その全てが収まっていく。
まるで、それが最初からあるべき形だったと言わんばかりに。
「お゛お゛っ、あ゛あ゛あ゛ぁっ、あ゛あ゛っ♡ こっ、これはっあ゛っ……! いぎなり、そんなっ♡ お゛ぉ゛っ♡」
「調子に乗るなよ。……どっちに主導権があるか、忘れたんじゃないでしょうね。そのことは、貴方の頭がいいからちゃあんと理解してると思ってたけど、期待外れでしたね。ガッカリです。それに、そもそも貴方が夜に開けっぱなしの部屋なんて覗かなきゃこんなことになってないじゃないですか。君子危うきに近寄らずってママとパパと先生に教わってないんですかぁー?」
淡々と言いながら、女は搾り取るような膣圧とゴシゴシと抉るようなピストンでしっかりと相手を追い詰める。
「し、死ぬっ♡ 持っでい゛かれ……る゛……う゛っ……!」
「なーに言ってんだか。人間これくらいで死んでたら、命はいくつあっても足りないですよー♡ ああ、腹上死がお望みなら、別にそうしてあげても……いいですけど♡」
絞られるような圧力で、すぐにでも気を抜いたら出してしまいそうだった。おまけに、女の子宮口は先端に吸い付いて、敏感な部分をじっとりと啄むように刺激してくる。決して離さないとばかりに膣全体が柔くキツく締めてくるのだ。
息が苦しい。もう解放されたい。早く射精すれば終わるのだろうか。
こうしている間にも、女は好き勝手に動いて絶頂の兆しが見えると散漫な動作に切り替わる。目の前で恥を晒して大きな声をあげ、鳴き喘いでいる男を見て愉悦に浸っている。
「あ゛っ……あ゛ぁっ……♡ っぅ゛……♡ ぁっ……♡」
喘ぎすぎて喉が痛い。口を開けて喘いでいると、唇の端から涎が垂れてくる。女はそれを拭いながら、「赤ちゃんみたいでかーわい♡」などと呟く。
それを聞いて慌てて口を閉じようとしたが、女は動きを激しくして体を揺さぶってくる。
腹筋が攣りそうに痛い。全てが痛い。怖い。このまま膣内で射精してしまったら、本当にどうなるのだろう。
ラスティの脳内に「責任」と「立場」の二文字が浮かんでは消える。ここで中出しして彼女が妊娠したら最悪だし、この件が強姦として立件されても立場が下の女性に無理やりレイプされたというレッテルが死ぬまでついてまわる。そうなってしまった本当の理由はもちろん説明できないし、一生色眼鏡をかけて見られてしまうことになるかもしれない。必要
立場上必要以上に波風を立てたくないし、人間としての尊厳とプライドにもかかわる事案だ。
しかし、それでも気持ちいいものは気持ちよかった。悔しいほどに、女はセックスが上手かった。
(も、もう限界だ……! 最悪だっ! 本当に……自分が情けない♡)
女はラスティの頬に手を添え、にこりと微笑む。
「だいじょぶですよ、何にも考えなくってもいいんです♡ わたしのナカにびゅっびゅ♡ ってしちゃって、無責任中出ししてイっちゃえ♡ どうせ考える脳みそも残ってないだろうし♡ 馬鹿雑魚クソ早漏ちんぽになっちゃえ♡ 赤ちゃんのお部屋でぴゅ〜♡ ってしちゃおう? 全部忘れて、脳みそちんこに接続したほうが楽に生きれるんじゃないですか? わたしはそうしてますけど? どうせ人間、生きてる意味なんてないし、生殖に脳のリソースを割くのは生物として正しいんじゃないんですか」
後半は早口すぎてよく聞き取れなかったが、女はラスティの耳元に口を寄せ、「射精しちゃえ♡」「イっちゃえ♡」などと囁き出す。
「ビクビクしてる♡ 耳よわよわなんだ♡ かわいいね♡ そんなクッソ雑魚い体でよくパイロットなんて務まるなァ……」
吐き捨てるように罵られ、耳を嬲られる。ついでに腹筋に力を入れてまんこもぎゅっと締められる。
「っア゛…………イ゛ッ……」
「なーにー? 聞こえないよ。ちゃんと何がしたいか言ってくれないと、わっかんないよ♡」
「イ、イ゛ギ……イ゛がせてぐださい゛っ……♡ お、お゛っね゛がい゛します……♡ も……無理で……助けてくれ……♡」
「……はぁ、クッソ情けない上に堪え性のないマゾ犬ですね♡ 他の社員の女の子が見たら、失望しちゃうでしょうね♡ ちんこ腫らして必死こいて腰振って喘いじゃってさぁ、恥ずかしくないんですか? わたしが寛大でよかったですよね。舐め犬の先輩の世話なんて、もう御免なんで……まぁ──いいよ、まんこに射精しても♡」
「っく! ──はぁっ♡ で、射精るっ♡ う゛っ……‼︎」
ガクガクと震えながら最後の一滴まで出し終える。ここに来て初めて、肩で息をするまでに己が疲れ果ててしまっていることを知った。
「んー……、まぁまぁかな」
蛍光灯の逆光を受け、ラスティの顔をペチペチと叩きながらそう呟いた女の表情は、窺い知れない。
(これで「まあまあ」なのか──⁉︎)
ぐったりとして、口を動かす気力も起きない。
女が「誰」と比較してそう言ったのか、ラスティは分かる日がくることはないだろう。
無遠慮なまでにあっさりと引き抜かれた性器からは、女の本気汁とも精液とも分からないような白濁とした液体が滴っていた。
射精直後特有の倦怠感と、脳に一気に血が昇って意識だけが冴え渡る、いわゆる「賢者タイム」に突入したラスティは、奥で出すだけ出して事の重大さを思い知った。
揺さぶられている時から意識はしていた事だが、実際に目の前にすると動揺が抑えきれない。アフターピルでも買って手渡すべきだろう。下手したら父親になるリスクは死んでも犯したくなかった。
「あぁそれと、わたしがここでヤってたことは絶対に漏らさないでくださいねー」
真剣に考えて必死になっているラスティを横目に、女は呑気にそんなことを言う。精子を拭ったティッシュを乱暴にゴミ箱に投げ入れ、あっという間に証拠隠滅を図る。
「匂いはどうしようもないからなー換気扇でザーメンくさいのって直るっけ……」
「──の──クは──に──行った──が──」
「えー? マジで声掠れて何言ってんのかわからなくてウケる。んじゃあ後始末は任せたんで、お先に失礼しまっす」
出ない声で必死に妊娠のリスクについて訴えるラスティを無視して、女は退室していった。
台風のようにやってきて、やることをやったらすぐに消える。
ラスティは人生初の「ヤり捨てられ事件」について、死ぬまで誰にも話すことはなかった。かくして、彼の人生の汚点である出来事はこのようにして終わったのである。
Q このお話の教訓は?
A 想像もつかないような最悪の出来事に遭遇して、それを誰にも相談できない時は、災害にあったと思って諦めろ。特に、下半身と女の問題は。