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ヴェスパー部隊の食べログ
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「なんで自分が呼び出されたかわかってます?」
「…………」
オキーフは目の前に立っている女がその手に握っている端末を見つめた。肌身離さず携帯していたことが仇となって、今の自分が追い詰められてしまっている。迂闊だったと後悔するよりも先に、女はそれを見せつけるようにオキーフの眼前に突きつける。
「これでどうなるか分かりますよね? ……まさか同じ会社の人だとは思ってなかったんで、結構意外でしたけど。余計に厳しい立場になっちゃいましたね♡ オキーフ長官♡」
「何が目的だ」
「一日わたしのワンちゃんになってください」
「……」
『オキーフ、何がどうあれ条件を呑むしかないようですよ』
(どうにか切り抜ける方法は)
『このようなシチュエーションに対するナビゲーション機能を搭載しているとでも? こちらとしても異常事態だということは分かっていますか?』
「……」
オールマインドの逆ギレを聞きながら、オキーフは静かに目の前の女の目を見つめた。つくづく役に立たないAIである。
「ん゛っ……はぁっ……」
「声、押さえて下さいよぉ。バレるとこっちまでパクられちゃいますって」
オキーフと女は手を繋いで広場を歩いていた。一般市民から素性のよく分からないような人間――ありとあらゆる人種が入り交じったこの場所は、よくある商業区画と呼ばれるような区画である。
女は片方の手をポケットに突っ込み、中でローターのスイッチを弄くっていた。先ほど公衆トイレでオキーフのアナルに挿入したディルドと乳首に付けられたローターが、女の手つきに連動するように微細に動いていた。
「公然わいせつでしょっ引かれたくないですよね」
「……当たり前だっ……っ♡」
『貴重な手駒が逮捕されて使えなくなるのは、こちらとしても困りますからね』
オールマインドの張り詰めたような声とは真逆に、女の声色はこのギリギリの状況――誰かにバレたら一発アウトであるというシチュエーションを存分に謳歌しているように聞こえた。
二人とも身バレ防止のためにマスクを付けて変装していたが、それでも見る人が見れば気づかれてしまうような素人の変装である。
この場所に見知った相手――それこそアーキバスの社員や直属の隊員などがいたら、本当に最悪どころでは済まされない。
「言っておきますけど……いくらオキーフさんがクソマゾのメスイキ大好きな雑魚オスだからって、公共の場でお漏らしとかは、やめてくださいね♡ ……フリじゃないですよ」
「はっ、お前が……、こんなことをやろうとしなければ……っ、あ……っ、……~っ」
「うわっ、お前だって! 怖ぁい♡」
女がこそこそと耳元で囁きながら、手元のスイッチの段階をガチャガチャと弄くっているのは、目に見えなくても身をもって理解していた。規格外のサイズを無理矢理ぶち込まれて、気持ちがいいどころか内側から引き裂かれるような痛みで立っているのがやっとだった。しかし、それでこの女が納得するはずもない。自分より体格が大きいオスが、自分の前で前屈みになって苦痛にもだえているのが楽しくて仕方がない、といった様子で楽しそうに笑っていた。
周囲には犬を散歩させている家族連れなども大勢いた。天気は良好で、平和な日曜の昼下がり――といった様相をしている。季節も温暖なのでほとんどの人間が薄い格好をしていたが、彼だけ……オキーフだけが気候にそぐわない長い丈の上着を着用していた。さほど目立つわけではないが、周囲からは確実に浮いていた。されど通り過ぎる人の群れが彼の様子を気に掛けることはなく、女だけが不自然に硬い動きと苦しげな表情を間近で堪能していた。
「オキーフさん、結構いい生地ですよねぇ、これ。汚しちゃったらごめんなさいね♡」
女はオキーフの背後に手を伸ばすと、上着に触れるフリをして肩甲骨の辺りに指を這わせた。微細な動きだが、それでも全身が痺れるように敏感な彼にとっては、ちょっとした動きでも快楽をそそる要素になり得てしまう。
「ちょっと休憩しませんか? あのベンチとか、ちょうど空いてますよ」
「……好きに、しろ……ッ」
「ちょっと歩き過ぎちゃった♡」
背中に腕を回したまま、二人は広場にあるベンチに腰を下ろす。
「……ッ♡ っ、ふ、ぁ……ッ♡」
「えへへ♡ お尻、気持ちいいですか? 感じてます? 座っただけで、わたしはなんにしてないですよぉ♡」
女の言うとおりだった。彼女の手はフリーで、ポケットの中に入っているローターのスイッチは先ほどから何も弄られていない。着席した衝撃で……情けない声が絶えきれずに出てしまっただけである。
「かーわい♡ 我慢できて偉いですね~♡」
『先ほどの声量は二十デシベル程度です。枝葉が擦れる音程度でしょうか』
オールマインドが淡々と事実だけを告げる。
今自身の配下に降りかかっている最悪の状況を、必要な犠牲であると認識して切り捨てるつもりであるらしい。――薄情なシステムだ、と毎度ながら思う。
女は猫のようにすり寄ってきた。五感が平常時よりも研ぎ澄まされているせいか、香ってきた女自身の匂い――清潔な石けんを思わせるような爽やかな香りに混じって、興奮した動物じみたむせるような体臭がオキーフの嗅覚を刺激した。狩りをする獣を思わせるようなギラギラした光が、目の奥であやしく煌めいている。
「こうしてるとなんだか……すっごく仲良しのカップルみたいですよね♡」
彼女の右手がオキーフの太ももにそっと重なった。手つきこそ若いカップルがじゃれている時のそれではあるが、過去の所業から考えると……それは死刑を宣告されているのと同義だった。
「なに? 緊張してます? 長官ならこういうの、結構慣れてるんじゃないかなって思ってましたけど♡ あっ、でも、出会い系を使うくらいだからあんまりなのかな、こういうのは……」
『同年代の平均データから参照するとオキーフの交際経験は』
「うるさい、黙れ……」
「えーっ! ワンちゃんのくせになんだか偉そうじゃないですか?」
「違う……お前に言ったわけでは」
「じゃあ誰に言ってるんですかねー?」
――わたし以外の女、とかかな?
それもあながち間違いではない。オールマインドが頭の中で警鐘を鳴らすが、形だけだ。リペアキットで回復するわけでもない失態である。普段彼がこのような凡ミスを犯すことはないが、今の状況が状況なので、頭が普段通りに動くわけもなかった。
「ちょっとお仕置きしますけど、大人なオキーフ長官なら我慢できますよね♡ 人前でお漏らしするような――それこそほんものの犬みたいなこと、ぜーったいないですよね♡」
「……ッ、や、やめろ……」
「えー? なんて? 聞こえなーい!」
女の指に力が込められた。強弱を操るスイッチの一番強い部分――ロックがかかっている領域まで指先にリキを入れてグッと押し込んだ。
「~ッ! お゛っ…………ッ! ぁ、あ゛っ!」
「ゲホ! ゴホゴホッ!」
瞬間、一気に振動がマックスまで強くなる。頭ごとぶち抜かれたような衝撃で、喉の奥から本気イキの汚い声が出てしまった。普段絶対に使わない箇所が引きつって甘い痺れと共に、背筋にナイフが突き立てられたかのような悪寒がした。
頭が虚ろになっていく。
女が慌てて大げさな咳払いをしていたのと、元から騒がしい場所だったのが幸いして、彼の喘ぎ声が第三者に注目されることはなかった。
しかし、それでも女が手を緩めることはなかった。信頼していたのか。それとも――焦らして爆発寸前で止まれると過信していたのだろうか。
「――あ、あ゛……」
『とんでもないことを――オキーフ……』
「え、嘘……」
三者三様の反応を見せる中、女だけが頭を冷静に回していた。お漏らししてしまった子供を叱る親のような顔で、とっさに手を引いて彼を立ち上がらせる。
「ほんっとう、ありえないんですけど」
ぶちまけた下着が強烈な冷えを伴って、射精直後の脳みそに事実を突きつけてきた。
「我慢できなかったんですか?」
「…………」
返す言葉がない。女はオキーフの手を引いて、人気のない場所まで連れて行った。局部を隠すような長い丈の上着だったのが幸いして、周囲に惨状が見えるようなことはない。しかし、本当に全てを放出してしまったせいでこのままではいられない。
「こーするつもりだったから、着替えはありますけど……残ったやつをそのまま持って帰るわけにもいかないしなぁ」
「…………」
「なっさけない。ありえないですよ。大の大人が往来でお漏らし、とか……。近くにホテルあるし、そこで洗って帰りましょう」
女はブツブツと言いながら、手際よくナビを立ち上げる。――最初に会った時と同じような流れだ、と羞恥で消え去りたいという感情で支配された頭で思い出す。
「で、でもぉ、まあ、いーですよ♡ わたしに一つ借りってことで、会社でもヨロシクしてくださいね~♡」
『わたしが見てきた中で最悪を更新していますね』
化け物の思想はAIを超越するものである。これが所謂イレギュラーでしょうか、と呟くオールマインドの声と、女の嬉しそうに跳ねる足取りが痛いほど目に染みた。
「こ、こんなお漏らししちゃうようなおじさん、わたししか……面倒見れませんからね……♡」
ホテルに到着するなり、女は嬉しそうにオキーフを押し倒した。自分の上着を脱ごうともせず、真っ先にオキーフのズボンに手をかける。
「脱がしますよ~♡」
『彼女が手早く済ませてくれることを願いましょう』
休憩コース、五時間。
五時間のうち何時間まで虐げられるのだろう。考えるだけで頭痛がしてくる。
抵抗を諦め、女にされるがままに脱がされた。射精してベタベタとした精子が下着にこびりついていたので、脱がされること自体に特段抵抗感はない。問題は、相手がガッツリ着込んでいるのに自分だけが下半身を向きだしにして情けない姿でいることだ。
「やっぱ結構デカ……♡ でも子供のお漏らしより情けないことして、恥ずかしい人♡ 堪え性のない雑魚オス♡ せっかくわたしより身長も体格もおっきいのに抵抗せずに押し倒されちゃって、かわいそ♡ 普通のセックスじゃもう役に立たないかもですねー♡」
「…………誰のせいだと思ってるんだ」
「あっははは♡ 煽るのうまーい♡ そんなにわたしに虐められたいですかぁ?」
『――彼女の体温上昇を確認。手っ取り早く満足させてください』
「えへへ、今日は新しいおもちゃ持ってきたんですよ。どうせホテル行きたいなって思ってたから……♡ 予定より早いけど……。はじめて使うおもちゃ、早く試したくなってきちゃって」
女は機能性も何もないような可愛らしい鞄の中から、不釣り合いな細い「何か」を取り出した。
「おしっこの穴に……これ、入れよっか♡」
「…………勘弁しろ」
「ええー? なんで? おもらしへのお仕置きにぴったりじゃないですか?」
『ステンレス製の……尿道ブジーと呼称される器具ですね。通常は尿道狭窄症の患者への治療に使われるような医療器具ですが……これは明らかにアダルトグッズです』
「これの使い方、言わなくっても身体で理解すればいいですよね♡」
黒くて細長いそれを、女はぴったりと穴に押し当てた。思わず背筋が強張る。
「怖くないですよ……♡ 大丈夫ですって♡」
女の言う大丈夫がこれまで本当に大丈夫であった試しはなかった。
「う゛……っ、そこは入れる穴では……」
「うっせーな。アナルに散々ぶち込まれておいて何を今更カマトトぶってんだよオッサン、いいから黙ってマゾオスの宿命を受け入れろって。おかしくなってもわたしがちゃんと面倒みるから大丈夫ですよぉ♡」
女に触れられて、素直に硬直した性器をゆるゆると押さえられながら、狙撃さながらの真剣さで女はブジーを穴に挿入していく。
「ん゛っ……お゛ぁっ……♡」
「わーお、結構簡単ですね。才能あるんじゃない?」
褒められても何も嬉しくなかった。
ゆるゆると奥に進んでいく。アナルや乳首を責められるのとはまた別――雑な手コキで刺激されている時よりも数倍強烈な快感がズシリと響くように下半身に溜まっていく。
「ちょっと見られて触れただけで、先走り出てきちゃってますよ~♡ あーみっともない♡ そこが嫌いじゃないですけど……っと、お、わぁ♡」
「ふっ……~ッ、は……♡」
「大丈夫ですよ♡ 怖くないですから♡ わたしに任せてお前はヒンヒン喘いでればいいんだよ」
今までに感じたことのないような濃厚な快楽がオキーフの脳を痺れさせた。
「あっ、こっちも大事ですよね♡」
「……ッ! ん゛っ? あ゛ぁっ……♡」
女が思い出したようにポケットからスイッチを取り出した。ホテルまでの移動の間止められていた電源が再びオンに切り替わり、板の上で跳びはねる死にかけの魚のようにオキーフの中で暴れ出した。
「~…………ッ♡ お゛……ぃ……ッ♡」
「ほーらほらほら、欲しかったんでしょ? これじゃないとイけないんですよね~♡ もう女のまんこにつっこんでどうこうできると思うなよ」
尻から前立腺にかけての責めに意識が持って行かれる。そちらに集中して必死に声をかみ殺していると、女の「あっ」というつぶやきを耳が拾った。嫌な予感を察知してすぐに体勢を立て直そうとするが、すぐに固まったように身体が動かなくなる。
「わー、思ったより入っちゃった♡」
「お゛っ……♡ い、今何を……ッ」
「えーなんか、すごいゴリって感じがするんですけど、これ、何かなぁ? わかります……?」
『前立腺ですね』
早押しクイズのようにオールマインドが答えた。彼女にこの声は届いているわけがないのだが、女はニヤニヤと笑いながらブジーの先端を指で摘まんで揺らしている。
「えへへっ♡ すごーい♡ やっぱり長官って才能がおありなんですね……っ! やっぱりヴェスパーの番号付きってコッチでもすごいんだぁ♡ こんなマゾばっかりの集団にボコボコにされてる田舎の惑星の人たちってほんっとうにかわいそ♡ こんなのばっかり取り立てて使ってる上層部も馬鹿ばっかりですよねぇ!」
ギャハハと女は声高に笑った。下品な笑い声と押し殺しきれないオキーフの喘ぎ声が、狭い部屋に響き渡る。
「メスイキ頑張れ♡ 前立腺――男の人の一番弱点の雌イキスポット押されてイっちゃえ♡ かっこいい長官の一番みっともないところ、わたしだけに見せてくださいよお♡ あははっ♡」
「しゃ、射精させてくれ……」
「えっ? メスイキ頑張るんじゃなかったっけ?」
「くっ、苦し……い゛っ……♡ 情けを……ッ、お゛
ッ……」
「……やっぱりつまんないですね、長官は」
言ってもないことを勝手に約束させられた挙げ句、早く楽にして欲しいという望みも受け入れられない。オキーフはこのまま気絶したい――早く殺して欲しいとすら思った。しかし彼は訓練を受けた軍人であるので、そう簡単に気を失って難を逃れることもできなかった。拷問に対処する方法を学んでいたが、性的な辱めに対する訓練は受けていなかった。――もっとも、スパイに尿道責めに対する耐性をつけさせるハンドラーがいたらおかしい話ではあるが。
『根性ですよ、根性』
オールマインドは案の定まったく役に立たない。
「トントン、トントン、ほらわかります? 先っちょで前立腺を刺激すると――すっごくビクビクしてますよね?」
「お゛っ……あ゛ぁっ……♡ 本当に……っ、もうッ♡」
「…………」
オキーフは思わず女の手首を掴んだ。見下ろす彼女の興奮冷めやらぬ表情が、高ぶって瞳孔が開いた目と目がじっと見つめ合う。
「ほんっとうに、どうしようもないですね」
「あ゛ぁっ……♡ お゛ぉ゛っ、う゛っ……~ッ♡」
「死んじゃえ」
玩具の紐を引っ張るように、ズルズルとブジーが抜けていく。途端にせき止められていた精子が洪水のようにドロドロとシーツに流れ出て、濁流の如き勢いでみっともなく射精した。
「…………まー、はじめてにしては上出来なんですかねぇ?」
「……ッ、…………」
女は腰を痙攣させながらあられもない様相で本気イキしている上司を見下ろした。つまらない、と口では言いつつもはじめて試した割には上手くいったと満足げな表情を浮かべている。
『終わりました?』
「……どうしてこんなことを、俺が……」
その言葉はどちらにも向けられたものだった。
女は自分の額に浮き出た汗を拭い、絶望しきった男を見下ろして一言告げた。
「あなたは楽しくないんですか?」
「…………」
他人の感情が理解できないのだろうか。それともわざと煽っているのか。オールマインドに問うてみたところで明確な答えがあるわけでもなく、オキーフはそのまま口を閉ざした。
「…………」
オキーフは目の前に立っている女がその手に握っている端末を見つめた。肌身離さず携帯していたことが仇となって、今の自分が追い詰められてしまっている。迂闊だったと後悔するよりも先に、女はそれを見せつけるようにオキーフの眼前に突きつける。
「これでどうなるか分かりますよね? ……まさか同じ会社の人だとは思ってなかったんで、結構意外でしたけど。余計に厳しい立場になっちゃいましたね♡ オキーフ長官♡」
「何が目的だ」
「一日わたしのワンちゃんになってください」
「……」
『オキーフ、何がどうあれ条件を呑むしかないようですよ』
(どうにか切り抜ける方法は)
『このようなシチュエーションに対するナビゲーション機能を搭載しているとでも? こちらとしても異常事態だということは分かっていますか?』
「……」
オールマインドの逆ギレを聞きながら、オキーフは静かに目の前の女の目を見つめた。つくづく役に立たないAIである。
「ん゛っ……はぁっ……」
「声、押さえて下さいよぉ。バレるとこっちまでパクられちゃいますって」
オキーフと女は手を繋いで広場を歩いていた。一般市民から素性のよく分からないような人間――ありとあらゆる人種が入り交じったこの場所は、よくある商業区画と呼ばれるような区画である。
女は片方の手をポケットに突っ込み、中でローターのスイッチを弄くっていた。先ほど公衆トイレでオキーフのアナルに挿入したディルドと乳首に付けられたローターが、女の手つきに連動するように微細に動いていた。
「公然わいせつでしょっ引かれたくないですよね」
「……当たり前だっ……っ♡」
『貴重な手駒が逮捕されて使えなくなるのは、こちらとしても困りますからね』
オールマインドの張り詰めたような声とは真逆に、女の声色はこのギリギリの状況――誰かにバレたら一発アウトであるというシチュエーションを存分に謳歌しているように聞こえた。
二人とも身バレ防止のためにマスクを付けて変装していたが、それでも見る人が見れば気づかれてしまうような素人の変装である。
この場所に見知った相手――それこそアーキバスの社員や直属の隊員などがいたら、本当に最悪どころでは済まされない。
「言っておきますけど……いくらオキーフさんがクソマゾのメスイキ大好きな雑魚オスだからって、公共の場でお漏らしとかは、やめてくださいね♡ ……フリじゃないですよ」
「はっ、お前が……、こんなことをやろうとしなければ……っ、あ……っ、……~っ」
「うわっ、お前だって! 怖ぁい♡」
女がこそこそと耳元で囁きながら、手元のスイッチの段階をガチャガチャと弄くっているのは、目に見えなくても身をもって理解していた。規格外のサイズを無理矢理ぶち込まれて、気持ちがいいどころか内側から引き裂かれるような痛みで立っているのがやっとだった。しかし、それでこの女が納得するはずもない。自分より体格が大きいオスが、自分の前で前屈みになって苦痛にもだえているのが楽しくて仕方がない、といった様子で楽しそうに笑っていた。
周囲には犬を散歩させている家族連れなども大勢いた。天気は良好で、平和な日曜の昼下がり――といった様相をしている。季節も温暖なのでほとんどの人間が薄い格好をしていたが、彼だけ……オキーフだけが気候にそぐわない長い丈の上着を着用していた。さほど目立つわけではないが、周囲からは確実に浮いていた。されど通り過ぎる人の群れが彼の様子を気に掛けることはなく、女だけが不自然に硬い動きと苦しげな表情を間近で堪能していた。
「オキーフさん、結構いい生地ですよねぇ、これ。汚しちゃったらごめんなさいね♡」
女はオキーフの背後に手を伸ばすと、上着に触れるフリをして肩甲骨の辺りに指を這わせた。微細な動きだが、それでも全身が痺れるように敏感な彼にとっては、ちょっとした動きでも快楽をそそる要素になり得てしまう。
「ちょっと休憩しませんか? あのベンチとか、ちょうど空いてますよ」
「……好きに、しろ……ッ」
「ちょっと歩き過ぎちゃった♡」
背中に腕を回したまま、二人は広場にあるベンチに腰を下ろす。
「……ッ♡ っ、ふ、ぁ……ッ♡」
「えへへ♡ お尻、気持ちいいですか? 感じてます? 座っただけで、わたしはなんにしてないですよぉ♡」
女の言うとおりだった。彼女の手はフリーで、ポケットの中に入っているローターのスイッチは先ほどから何も弄られていない。着席した衝撃で……情けない声が絶えきれずに出てしまっただけである。
「かーわい♡ 我慢できて偉いですね~♡」
『先ほどの声量は二十デシベル程度です。枝葉が擦れる音程度でしょうか』
オールマインドが淡々と事実だけを告げる。
今自身の配下に降りかかっている最悪の状況を、必要な犠牲であると認識して切り捨てるつもりであるらしい。――薄情なシステムだ、と毎度ながら思う。
女は猫のようにすり寄ってきた。五感が平常時よりも研ぎ澄まされているせいか、香ってきた女自身の匂い――清潔な石けんを思わせるような爽やかな香りに混じって、興奮した動物じみたむせるような体臭がオキーフの嗅覚を刺激した。狩りをする獣を思わせるようなギラギラした光が、目の奥であやしく煌めいている。
「こうしてるとなんだか……すっごく仲良しのカップルみたいですよね♡」
彼女の右手がオキーフの太ももにそっと重なった。手つきこそ若いカップルがじゃれている時のそれではあるが、過去の所業から考えると……それは死刑を宣告されているのと同義だった。
「なに? 緊張してます? 長官ならこういうの、結構慣れてるんじゃないかなって思ってましたけど♡ あっ、でも、出会い系を使うくらいだからあんまりなのかな、こういうのは……」
『同年代の平均データから参照するとオキーフの交際経験は』
「うるさい、黙れ……」
「えーっ! ワンちゃんのくせになんだか偉そうじゃないですか?」
「違う……お前に言ったわけでは」
「じゃあ誰に言ってるんですかねー?」
――わたし以外の女、とかかな?
それもあながち間違いではない。オールマインドが頭の中で警鐘を鳴らすが、形だけだ。リペアキットで回復するわけでもない失態である。普段彼がこのような凡ミスを犯すことはないが、今の状況が状況なので、頭が普段通りに動くわけもなかった。
「ちょっとお仕置きしますけど、大人なオキーフ長官なら我慢できますよね♡ 人前でお漏らしするような――それこそほんものの犬みたいなこと、ぜーったいないですよね♡」
「……ッ、や、やめろ……」
「えー? なんて? 聞こえなーい!」
女の指に力が込められた。強弱を操るスイッチの一番強い部分――ロックがかかっている領域まで指先にリキを入れてグッと押し込んだ。
「~ッ! お゛っ…………ッ! ぁ、あ゛っ!」
「ゲホ! ゴホゴホッ!」
瞬間、一気に振動がマックスまで強くなる。頭ごとぶち抜かれたような衝撃で、喉の奥から本気イキの汚い声が出てしまった。普段絶対に使わない箇所が引きつって甘い痺れと共に、背筋にナイフが突き立てられたかのような悪寒がした。
頭が虚ろになっていく。
女が慌てて大げさな咳払いをしていたのと、元から騒がしい場所だったのが幸いして、彼の喘ぎ声が第三者に注目されることはなかった。
しかし、それでも女が手を緩めることはなかった。信頼していたのか。それとも――焦らして爆発寸前で止まれると過信していたのだろうか。
「――あ、あ゛……」
『とんでもないことを――オキーフ……』
「え、嘘……」
三者三様の反応を見せる中、女だけが頭を冷静に回していた。お漏らししてしまった子供を叱る親のような顔で、とっさに手を引いて彼を立ち上がらせる。
「ほんっとう、ありえないんですけど」
ぶちまけた下着が強烈な冷えを伴って、射精直後の脳みそに事実を突きつけてきた。
「我慢できなかったんですか?」
「…………」
返す言葉がない。女はオキーフの手を引いて、人気のない場所まで連れて行った。局部を隠すような長い丈の上着だったのが幸いして、周囲に惨状が見えるようなことはない。しかし、本当に全てを放出してしまったせいでこのままではいられない。
「こーするつもりだったから、着替えはありますけど……残ったやつをそのまま持って帰るわけにもいかないしなぁ」
「…………」
「なっさけない。ありえないですよ。大の大人が往来でお漏らし、とか……。近くにホテルあるし、そこで洗って帰りましょう」
女はブツブツと言いながら、手際よくナビを立ち上げる。――最初に会った時と同じような流れだ、と羞恥で消え去りたいという感情で支配された頭で思い出す。
「で、でもぉ、まあ、いーですよ♡ わたしに一つ借りってことで、会社でもヨロシクしてくださいね~♡」
『わたしが見てきた中で最悪を更新していますね』
化け物の思想はAIを超越するものである。これが所謂イレギュラーでしょうか、と呟くオールマインドの声と、女の嬉しそうに跳ねる足取りが痛いほど目に染みた。
「こ、こんなお漏らししちゃうようなおじさん、わたししか……面倒見れませんからね……♡」
ホテルに到着するなり、女は嬉しそうにオキーフを押し倒した。自分の上着を脱ごうともせず、真っ先にオキーフのズボンに手をかける。
「脱がしますよ~♡」
『彼女が手早く済ませてくれることを願いましょう』
休憩コース、五時間。
五時間のうち何時間まで虐げられるのだろう。考えるだけで頭痛がしてくる。
抵抗を諦め、女にされるがままに脱がされた。射精してベタベタとした精子が下着にこびりついていたので、脱がされること自体に特段抵抗感はない。問題は、相手がガッツリ着込んでいるのに自分だけが下半身を向きだしにして情けない姿でいることだ。
「やっぱ結構デカ……♡ でも子供のお漏らしより情けないことして、恥ずかしい人♡ 堪え性のない雑魚オス♡ せっかくわたしより身長も体格もおっきいのに抵抗せずに押し倒されちゃって、かわいそ♡ 普通のセックスじゃもう役に立たないかもですねー♡」
「…………誰のせいだと思ってるんだ」
「あっははは♡ 煽るのうまーい♡ そんなにわたしに虐められたいですかぁ?」
『――彼女の体温上昇を確認。手っ取り早く満足させてください』
「えへへ、今日は新しいおもちゃ持ってきたんですよ。どうせホテル行きたいなって思ってたから……♡ 予定より早いけど……。はじめて使うおもちゃ、早く試したくなってきちゃって」
女は機能性も何もないような可愛らしい鞄の中から、不釣り合いな細い「何か」を取り出した。
「おしっこの穴に……これ、入れよっか♡」
「…………勘弁しろ」
「ええー? なんで? おもらしへのお仕置きにぴったりじゃないですか?」
『ステンレス製の……尿道ブジーと呼称される器具ですね。通常は尿道狭窄症の患者への治療に使われるような医療器具ですが……これは明らかにアダルトグッズです』
「これの使い方、言わなくっても身体で理解すればいいですよね♡」
黒くて細長いそれを、女はぴったりと穴に押し当てた。思わず背筋が強張る。
「怖くないですよ……♡ 大丈夫ですって♡」
女の言う大丈夫がこれまで本当に大丈夫であった試しはなかった。
「う゛……っ、そこは入れる穴では……」
「うっせーな。アナルに散々ぶち込まれておいて何を今更カマトトぶってんだよオッサン、いいから黙ってマゾオスの宿命を受け入れろって。おかしくなってもわたしがちゃんと面倒みるから大丈夫ですよぉ♡」
女に触れられて、素直に硬直した性器をゆるゆると押さえられながら、狙撃さながらの真剣さで女はブジーを穴に挿入していく。
「ん゛っ……お゛ぁっ……♡」
「わーお、結構簡単ですね。才能あるんじゃない?」
褒められても何も嬉しくなかった。
ゆるゆると奥に進んでいく。アナルや乳首を責められるのとはまた別――雑な手コキで刺激されている時よりも数倍強烈な快感がズシリと響くように下半身に溜まっていく。
「ちょっと見られて触れただけで、先走り出てきちゃってますよ~♡ あーみっともない♡ そこが嫌いじゃないですけど……っと、お、わぁ♡」
「ふっ……~ッ、は……♡」
「大丈夫ですよ♡ 怖くないですから♡ わたしに任せてお前はヒンヒン喘いでればいいんだよ」
今までに感じたことのないような濃厚な快楽がオキーフの脳を痺れさせた。
「あっ、こっちも大事ですよね♡」
「……ッ! ん゛っ? あ゛ぁっ……♡」
女が思い出したようにポケットからスイッチを取り出した。ホテルまでの移動の間止められていた電源が再びオンに切り替わり、板の上で跳びはねる死にかけの魚のようにオキーフの中で暴れ出した。
「~…………ッ♡ お゛……ぃ……ッ♡」
「ほーらほらほら、欲しかったんでしょ? これじゃないとイけないんですよね~♡ もう女のまんこにつっこんでどうこうできると思うなよ」
尻から前立腺にかけての責めに意識が持って行かれる。そちらに集中して必死に声をかみ殺していると、女の「あっ」というつぶやきを耳が拾った。嫌な予感を察知してすぐに体勢を立て直そうとするが、すぐに固まったように身体が動かなくなる。
「わー、思ったより入っちゃった♡」
「お゛っ……♡ い、今何を……ッ」
「えーなんか、すごいゴリって感じがするんですけど、これ、何かなぁ? わかります……?」
『前立腺ですね』
早押しクイズのようにオールマインドが答えた。彼女にこの声は届いているわけがないのだが、女はニヤニヤと笑いながらブジーの先端を指で摘まんで揺らしている。
「えへへっ♡ すごーい♡ やっぱり長官って才能がおありなんですね……っ! やっぱりヴェスパーの番号付きってコッチでもすごいんだぁ♡ こんなマゾばっかりの集団にボコボコにされてる田舎の惑星の人たちってほんっとうにかわいそ♡ こんなのばっかり取り立てて使ってる上層部も馬鹿ばっかりですよねぇ!」
ギャハハと女は声高に笑った。下品な笑い声と押し殺しきれないオキーフの喘ぎ声が、狭い部屋に響き渡る。
「メスイキ頑張れ♡ 前立腺――男の人の一番弱点の雌イキスポット押されてイっちゃえ♡ かっこいい長官の一番みっともないところ、わたしだけに見せてくださいよお♡ あははっ♡」
「しゃ、射精させてくれ……」
「えっ? メスイキ頑張るんじゃなかったっけ?」
「くっ、苦し……い゛っ……♡ 情けを……ッ、お゛
ッ……」
「……やっぱりつまんないですね、長官は」
言ってもないことを勝手に約束させられた挙げ句、早く楽にして欲しいという望みも受け入れられない。オキーフはこのまま気絶したい――早く殺して欲しいとすら思った。しかし彼は訓練を受けた軍人であるので、そう簡単に気を失って難を逃れることもできなかった。拷問に対処する方法を学んでいたが、性的な辱めに対する訓練は受けていなかった。――もっとも、スパイに尿道責めに対する耐性をつけさせるハンドラーがいたらおかしい話ではあるが。
『根性ですよ、根性』
オールマインドは案の定まったく役に立たない。
「トントン、トントン、ほらわかります? 先っちょで前立腺を刺激すると――すっごくビクビクしてますよね?」
「お゛っ……あ゛ぁっ……♡ 本当に……っ、もうッ♡」
「…………」
オキーフは思わず女の手首を掴んだ。見下ろす彼女の興奮冷めやらぬ表情が、高ぶって瞳孔が開いた目と目がじっと見つめ合う。
「ほんっとうに、どうしようもないですね」
「あ゛ぁっ……♡ お゛ぉ゛っ、う゛っ……~ッ♡」
「死んじゃえ」
玩具の紐を引っ張るように、ズルズルとブジーが抜けていく。途端にせき止められていた精子が洪水のようにドロドロとシーツに流れ出て、濁流の如き勢いでみっともなく射精した。
「…………まー、はじめてにしては上出来なんですかねぇ?」
「……ッ、…………」
女は腰を痙攣させながらあられもない様相で本気イキしている上司を見下ろした。つまらない、と口では言いつつもはじめて試した割には上手くいったと満足げな表情を浮かべている。
『終わりました?』
「……どうしてこんなことを、俺が……」
その言葉はどちらにも向けられたものだった。
女は自分の額に浮き出た汗を拭い、絶望しきった男を見下ろして一言告げた。
「あなたは楽しくないんですか?」
「…………」
他人の感情が理解できないのだろうか。それともわざと煽っているのか。オールマインドに問うてみたところで明確な答えがあるわけでもなく、オキーフはそのまま口を閉ざした。
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