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エロあるよ笑
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(前回までのあらすじ)
テスト前なのに全然勉強に身が入らないことを危惧したわたしは、合鍵を使ってムリナールさんが住む家に侵入……じゃない、お邪魔したのだった……!
おじさんって見た感じ頭良さそうな顔してるし、教えるのも上手そうな感じがするし、そういうのできそうじゃない? お家でイチャイチャしながら勉強できるしって、わたしって天才すぎないか?
◆
「あ、おかえりなさいー」
「……………………」
帰宅したムリナールさんを迎えに玄関まで行ったけど、彼はわたしを見るなり固まってしまった。
お仕事から帰ってきて今の時間だから、今日はあんまり残業させられなかったみたいでよかった! 好きな人がクタクタになってるところなんてあんまりみたくないもんね。
「…………なぜ、私の家にいる」
「ムリナールさんに勉強見て貰おうと思って!」
「…………理屈が理解できない」
ムリナールさんの眉間の皺が余計に深くなる。手に持っている鞄を持ってあげようと近づいたけど、華麗にスルーされた。
「だって、家だと集中できないんだもん……」
うちだと今日は家族も誰もいないし。勉強を教えてくれる人がいてくれないとやる気出すの無理だし。学校の自習室は今の時間は開いてないし、図書館はうちからもムリナールさんの家からも遠いからここにいるのが一番いいかなって思ったんだけど。
「………………帰りなさい」
「えーっ!」
絞り出すように言われた言葉を聞いて、わたしは心の底からショックを受けた。勝手にお家に上がったのは悪いと思ってるけど、合鍵を貰えたのはそういうことだと思ってたから、なんか……無理なんだけど!
「やなんだけど! うち帰っても一人だし、もう外も真っ暗だし!」
それにちゃんと、家に入った段階でメッセージも入れておいた。今日はうちにいますよーって。多分忙しいからスルーされたんだろうけど、お仕事中ならともかく電車の中でくらいは、わたしのメッセージを確認してほしいな。
「…………」
「こんな暗い中一人で帰って、襲われでもしたらどうするんですか?」
「………………わかった、わかったから」
ムリナールさんは自分の手元の時計を見て、諦めたように大きなため息をついた。
「今回だけだからな」
「わーい!」
お泊まりになること前提で下着とか着替えも持ってきたし、なんならわたし用の洗顔とかは全部ムリナールさんのお家に置いちゃってるもんね。ムリナールさんはこう見えて結構押しに弱いし、わたしのこと大好きなんだよね、ねっ。
思わず抱きついて、お仕事帰りのムリナールさんを堪能する。
胸に顔を埋めてグリグリやりながらすーっと息を吸い込むと、ムスク系の香水の匂いに混じってちょっとだけ汗の匂いが感じられて、なんだかドキっとする。
普段はあんまりこういう男の人って感じの香りはしないから、なんだか新鮮だ。
……ていうか、丸一日働いた後の彼に抱きついたことなんて今までなかったし、この匂いちょっと……ムラっとくるかも♡ いつまでもムリナールさんの匂い嗅いでたいな……なんて思うのは変態っぽい? でも本能に直接訴えかけてくる、みたいなちょっと香辛料みたいな感じもして、ずっと嗅いでたら癖になりそう……。
わたしの頭を軽くなでつけながら、ムリナールさんは腰のリボンの紐に少しだけ触れた。
「ところで、そのエプロンは?」
「夜ご飯を作ってました」
「…………勉強は?」
「普段出来合いの物ばっか食べてますよね? それだと栄養が偏りますよ」
またお説教されそうになったから、おじさんの痛いところをついて誤魔化す。何事にもいえることだけど、相手の弱いところを狙って攻撃して、反撃を許さないようにすることこそが必勝法だ。
料理なんて普段全然しないけどムリナールさんに食べて貰えるって思ったら、新婚さんみたいだなーって思ってちょっとドキドキしちゃった。エプロンも普段家で使ってるやつじゃなくてちょっとフリフリしたかわいいやつにしちゃったし。こういうところが子供っぽいって思われるかもしれないけど、形から入るのって大事だから!
「あっ、そうだ」
「……?」
「ご飯にします? お風呂にします? それとも……キャーッ!」
「…………なんの真似だ?」
「そんな言わせないでくださいよー!」
古式奥ゆかしい恥ずかしい台詞を勝手に喋って、一人で照れてしまう。でもこれだけは言いたかったんだもん!
お仕事帰りのムリナールさんとお話できるのってなかなかないし、しかもここはムリナールさんのお家だし!
これからわたしが進学するなりお仕事するなりで、もしかしたらムリナールさんがわたしの帰りを待つような生活になるかもしれないから、これを言えるチャンスはあんまりないかもしれない。
一人で舞い上がるわたしをよそに、ムリナールさんはコートを脱いで荷物もちゃんとあるべき場所に戻してきて、ついでに手も洗ってきたみたいだった。
さっきの茶番は完全にスルーして、リビングダイニングのテーブルにディナーのセッティングをしている。
ムリナールさんは、わたしの我が儘を諦めた後はいつも行動が早い。
「ナマエは盛り付けをやってくれ。飲み物は何がいい?」
「えっと、水でいいです」
おじさんの家にわたしの好きな甘い系のジュースとか置いてるわけないしね。
「……わかった」
もう一度作ったやつを暖めなおして、食器棚から二枚に増えたお皿を用意していく。これ、前に買い物に行ったとき無理を言って一揃え買ってくれたセットだったっけ……。女の人向けのかわいい雑貨屋さんにムリナールさんが入ると、すごく目立っていたのを思い出して、ちょっとだけ思い出し笑いをしちゃう。
ムリナールさんが使ってる白い無地のやつの中で、わたしのカラトリーだけが異彩を放っていた。
「えへへ……」
だらしなく緩んだ口元があんまり見られてないといいな。
「ど、どうでしょう……?」
見た目は変じゃないはずだ。ちゃんとお料理本のレシピ通り作ったから、多分味も変じゃない、はず……。だと思いたい!
「…………悪くない」
「美味しいですよね?」
「……美味しい、という評価を下しても問題ないだろう」
「言い方、結構捻くれてますねぇ」
「家庭科のテストならいい点数を取れるんじゃないか」
「た、食べ終わったら教えてくれますよね……?」
「……明日は休みだから、付き合っても構わない」
「わーい!」
そう言いながら、ムリナールさんは次々とわたしの用意した主菜と副菜、あとスープもちゃんと食べてくれている。
……よかった、変な味じゃないっぽくて。
おじさんって毎日スーパーのお惣菜とか外食で済ませることが多いから、見ていて結構心配になる。栄養に気をつけないと、年が年だし健康とか大丈夫なのかな? って気になっちゃうよ。
「次はムリナールさんの作ったのが食べたいなー」
「……善処しよう」
「お料理って出来るタイプですか?」
「まぁ、人並みには……」
ムリナールさんの自己基準ってあんまりアテにならないんだよね。わたしはふーん、と思いながら頭の中でエプロンを着けてキッチンに立つムリナールさんの姿を思い浮かべる。
……いい、悪くない。黒いエプロンとかつけて、ムニエルとか作ってほしい……。
「手が止まっているようだが……」
「えっ、あっ、はい! 食べます!」
せっかくだし、冷める前に食べないと……!
わたしって一回道が逸れちゃうと軌道修正するのが難しいタイプだから。
ムリナールさんはそんなわたしの手綱を握るので疲れないかな? って時々思う。
年上だからって甘えてばっかりなのもよくないよね、社会人っていっつもお疲れっぽいし、わたしも早く大人にならないとなぁ……。
「……口に汚れが」
「す、すみません……」
ナプキンで口を拭うと、赤いソースが思いっきりついていた。
恥ずかしい! こんなんじゃ、わたしが赤ちゃんみたいじゃん……。
「……」
食べ方も上品で綺麗なムリナールさんを見ていると、流石いいとこの家の人だなぁって思う。
なんでそんな凄い人がサラリーマンなんてやって、ハゲたおっさんとかに頭を下げてるのかわからない。聞いても答えてくれなさそうだし、わたしもわざわざ余計なことは聞かないけど。
「…………」
なんでこんなすごい人が、わたしなんかと付き合ってくれてるのかな。考えれば不安になってくるので、ご飯の残りを胃の中に納めることに集中することにした。
「お風呂沸くまで時間あるんで、ちょーっとだけみて貰っていいですか?」
「ああ、どの問題だ?」
「えっと、この問2のやつで……」
ソファのところのローテーブルに参考書とノートを広げて、今度のテストの範囲のところを教えてもらうことにした。
「…………」
深く考え込むように問題文を読むムリナールさんの顔が、めっちゃかっこよくてまじまじと見つめてしまう。
真剣そのもの、みたいな顔に弱いんだよね。
一応定期テストの範囲だからめちゃくちゃ難題が出るってわけでもないけど、この教科はわたしの苦手な科目だから、人に教えて貰って解説を読まないとちょっと理解しにくい。
「…………」
しばらくした後、テキストをテーブルに戻された。
「あのー、解説ってお願いできますか?」
「……この問題の公式は、私が学生時代に使われていたそれと全く同じ物だが、卒業してから今に至るまで一度もそれを実務で使ったことはない」
「え、えーと……」
それってつまり……
「忘れちゃっててわかんないってこと、ですよね……?」
「……………………そうだ」
う、うーん!
ブスっとしたおじさんを見ていると、なんだかいらないことでプライドを傷つけてしまったみたいに見えてきて、ちょっといたたまれないっていうか、めんどくさい……。
「えっとじゃあ、ここに答えがあるんでそれを見て教えてもらってもいいですか……?」
「……できる限りは努力してみるが、お前の望み通りに事を運べるかは保証しかねる」
ネチネチめんどくせー!
「で、でも、ムリナールさんが教えてくれないとわたしわかんないですよー」
「ネットで調べれば回答を得られるのでは? 私に聞く意味はなかったのではないか」
「この問題の解法がまんま載ってるっていうのは、ないんじゃないんですかね……。と、とりあえずこれ、読んでみてください」
そう言いながら解答が載っている冊子を手渡してみるけど、それを受け取って目を通すムリナールさんの顔が、こころなしかいつもより険しい表情になっている気がしてなんだか胃がきゅっとなってしまった。いや、わたしは全然悪くないんだけどね?
「……………………」
……なんだか、スーツの上を脱いでシャツだけになったムリナールさんを見ていると学校の先生を思い出してしまう。無愛想だし言い方も堅苦しいし皮肉言うしわたしみたいな子供は嫌いだろうから、教師とあんま向いてなさそ~……なんだけど、ムリーナルさんが先生だったらどんな感じなんだろう。やっぱ厳しいのかな。それとも意外と真面目で真摯なところで慕われたりするのかな。
「……わかった」
しばらくぼーっと見つめて間に、おじさんはどうやら問題を理解できたらしい。
わたしのペンケースからかわいいシャーペンを取り出して、淡々と解いているところを見せられる。
「……で、ここに代入したらいいんですか?」
「そういうことになる」
「なるほど……。大体わかりました! ありがとうございます!」
「造作もない」
いや、さっきこの問題全然解けてなかったですよね? なんて指摘する勇気はわたしにはなく……。
久々にちょっと楽しそうにしているムリナールさんを見て、こっちも嬉しくなる。
数学だけじゃなくて国語とかアーツ学の方も教えてくれたら超助かるんだけどな。
だから、向こうのテンションを萎えさせるようなことは絶対に言わない。ムリナールさんはお仕事帰りで疲れてるし、無理いって面倒見てもらってるのはこっちの方だから。
「えっとじゃあ、次はこっち……」
わたしが新しい問題を見せると、再びムリナールさんはそれにじっと見入ってしまった。文章題だし読むのもちょっと時間がかかるかな。
――真剣な顔してるムリナールさんってかっこいいな。普段の仕事の時とか新聞に目を通してる時もこんな仏頂面でじっと一点を見つめてる。
何も知らない人は怖いって思うかもしれないけど、わたしは好き。こういうところはわたしだけわかってればいいよね。
「……ナマエも考えなさい」
「はぁい」
集中していないことはとっくにバレていたらしい。
わたしはシャーペンの頭をカチカチとノックしながら、真っ白いノートの新しいページに文字を走らせる。
「…………そろそろ、お風呂沸いたんじゃないかな」
一通りわからないところを教えてもらって、区切りがついたのでわたしはそっと立ち上がり、給湯器のモニターを見に行った。
ムリナールさんはお小言をいうでもなく、机の上の消しカスとかを片付けている。
「あー、十分前にもう沸いちゃってますよ」
早く入らないと暖房が勿体ないですね、とわたしは続ける。
「……残りはもういいのか?」
「結構進んだ方だと思いますけど……。それに、後のは明日でもよくないですか?」
「駄目だ。今日中に終わらせなさい」
「えーっ」
ムリナールさんは正しいんだけど、さぁ……。一応勉強を見て貰うって名目で来てる以上、おじさんの言うとおりにするのが筋っていうのは理解できる。でもなー、教えて貰うっていってもムリナールさんって本当の教師って訳じゃないし、テンポよくパッパとやれないし、それに、なんか……思ってたよりラブラブって感じにもなれなかったからちょっと消化不良ていうか、期待値以下? って感じだ。
失礼な考えだっていうのは分かってるけど、やっぱわたしも他の子みたいにカフェで勉強デートとか、そういうのしてみたいなぁ。
「でっ、でも、お風呂に入ってからでも勉強はできますよ? 先に入りましょうよ~」
最近光熱費とかも上がってるらしいし、お風呂で寒いのは嫌だからお湯を入れると同時に暖房も入れっぱなしにしてある。ムリナールさんの懐具合はそんなに困ってないだろうけど、そんなにいい家の子供じゃないわたしはやっぱり、エネルギーがもったいないじゃんとか考えてしまう。
それに、今日一日色々頑張りすぎて疲れたから、早くお風呂に入りたい!
「……そこまでして、入りたいのか」
「えぇ……風呂キャンセル界隈ですか……?」
「……界隈? 何……?」
ムリナールさんがとんでもないことを言い出した気がして、つい若者言葉を使ってしまった。案の定全く理解されなかったけど、好きな人が疲れてるからといってお風呂入らないようになるのは、ちょっとな……流石に……うん。
「えー! 逆になんでですか? お風呂入ったら気持ちいいし、入らなかったら気持ち悪くないですか?」
「……………………うちの浴槽は狭いぞ」
「いいですよ別に。多分うちのお風呂の方がムリナールさんのよりちっちゃいですよ」
「……わかった。ナマエがそう言うのなら」
ムリナールさんはガバっと立ち上がると、自分の部屋に入っていった。
えっ? 何かするの? と思って待っていたら、すぐに戻ってきた。手にはパジャマと下着……わたしのルームウェアもある。
「脱衣所にタオルはあるから、先に入っていなさい」
「え、あ、じゃあお先にいただきますね……」
「ああ……」
ムリナールさんに手渡されたモコモコのインナーと、持参した下着と洗顔とかのセットを持って、お風呂に入る。よいしょ、と着替えて湯船に浸かるとすごく気持ちよかった!
風呂キャンセル疑惑があったからどんなものかと思ってたけど、おじさんは水回りを結構綺麗にしてるタイプらしかった。わたしは結構潔癖っていうか気にする方だから、ムリナールさんがちゃんとしていてくれて嬉しかった。
入浴剤も好きに入れちゃって、お風呂の色が濁ってくるのをぼーっと見ていると、不意に脱衣所のドアがガチャ、と開く音がした。
ムリナールさん? なんで?
……あー、でも、わたしが湯船で溺れてないか心配で見に来たとか、あの人なら言いかねないな……。
「湯加減はどうだ」
「大丈夫です。めっちゃ気持ちいいです」
「そうか」
その声と同時に浴室の半透明のドアが開く。
「――へ?」
「この浴槽は一人使用を前提としているらしい。少し詰めて貰えるか」
「は、はははははっ、はっ、なんで入って……⁉」
「…………? 何を言っているんだ、そのつもりでうちに来たんじゃないのか。はぁ……こんな図体ばかり大きい中年男と一緒に入るのが嫌だと言うなら、私は辞退するが……。お前が拒否するなら無理にとは……」
わー! わーっ! 始まっちゃったよ、ムリナールさんのネガティブが……。
部屋中が蒸気でむわっとしてるし、申し訳程度に前はタオルで隠してるけど、普段着込んだ格好で隠れているムリナールさんの体を明るいところで目に入れてしまって、叫ばなかったわたしを褒めてほしい。あと、こんなでっかい人と二人で入って大丈夫なの? このバスタブ……。
……当然のように一緒にお風呂入るなんて考えてたんだ……。結構スケベなんだな、ムリナールおじさん……。おじさんの割には、いや、おじさんだからか……。
「い、いいい、いいですよ……別に」
「……よかった」
断ってまたネチネチ言われたらめんどくさいし、お風呂に入るくらいならいいかな、と思ってわたしは足をぎゅっと曲げる。シャワーで体をさっと洗ってから、ムリナールさんは浴槽に足を踏み入れた。
「…………」
案の定、水がドバドバと溢れて排水口に流れていく。わたし、結構高い入浴剤持ってきたんですけど……ね……。ここの家主がやったことだから文句は言えないよ。
「失礼……」
ムリナールさんはお風呂だというのに足を折り曲げて、座った。わたしとおじさんで、風呂の面積を二分する形になる。
「……………………」
あの、ここからどうしろと。
「……一緒に入るのは、初めてだな」
「そーですね……。えぇ……」
「狭くて申し訳ないが、私にはどうにもできない。我慢してくれ」
「え、あ、はい。大丈夫、です……」
おじさんと別々で入ったら問題なかったよね?
冷静になってみると、全裸で密着しかかってて結構ヤバいな、これ。湿気た浴室でムリナールさんの髪もぺたっとおでこにくっついてて、なんだかかわいい。顔の下にくっついてる体の筋肉が、いつ鍛えてるんだろうって疑問になるくらいにはしっかりしてて、たくましくて、マジで男の人……って感じがする。
「……」
お互い無言で、じーっとしてたらちょっと時間が過ぎた。わたしがムリナールさんのことをじっと見てるみたいに、向こうもわたしのことをしっかり見てきてて、なんだか恥ずかしい。わたしの体なんて見ても別に面白くないと思うんだけどなぁ。別にスタイルがいいとかでもないし、む、ムダ毛の処理は昨日やってきたから大丈夫だと思うけど……。
ていうか、さ……。距離近いしバスタブはミチミチだし、で、めっちゃムリナールさんの素肌とふれあっちゃうんですけど……。
何にも鍛えてないわたしと、大人で剣術とかやってる男の人とで全然体の硬さが違うし、触った時の体温とかもいつもより暖かくて、なんだか変な気持ちになってくる……♡
ムリナールさんが邪魔になった前髪を後ろになでつけたとき、わたしは言葉では上手く言い表せないような興奮を覚えた。
な、なにそれー⁉ わたしの前で今までそんなことしたことあった⁉
……いや、あったわ。いつ、どことかは完全に忘れたけど、前にえっちした時にその仕草を見た気が……する……。
「――っ!」
思い出したら興奮しちゃって、思わず息が荒くなる。こんなことのせいで頭が馬鹿になってきたわたしとは違って、ムリナールさんは顔だけちょっと赤くなってる以外は普段と変わらない。平常時の無表情・仏頂面を貫いている。
――風呂なんて勝手に入ってきて、スケベ親父だと思ったのに!
なんだかわたしだけがムラムラしてるみたいで苛つくんですけど!
わたしは肩までちゃんと浸かっていた体を上げて、ムリナールさんの首の近くの壁に手を置いた。
「ナマエ……」
「ど、どーなんですか……。お風呂で好きな女の裸を見て、何にも思わないんですか?」
「…………」
今のわたしは濁った湯船から体を出しているので、ムリナールさんの目の前はわたしのおっぱいしか見えていないはずだ。……ムリナールさんは前に執拗にここだけ弄くってたことがあるから、多分、これで結構おちんちんもイラっとくるはず。……なんか、わたしだけがドキドキしてるの、恥ずかしいし。向こうも恥ずかしい思いをすればいいんだ!
「……なんか言ってくださいよ!」
口からはーはーって息が出るの止められない♡ 我慢できなくなって壁ドンをやめて、ムリナールさんの固い胸板に自分の胸を擦りつける。
「…………えっちしたいって思ったから、入ってきたんですよね?」
天然ボケを装うのは絶対に許されないからね? ていうか、お風呂に入ってくる時点でぜーんぜんごまかせてないし……。
「……お前は、したいのか」
胸と胸が擦れ合って、勃ってきた乳首もぎゅって潰されて、自分でやってくることだけど結構キツい……♡ 時々ムリナールさんの乳首とも当たって、感じちゃうし、軽くだけどイきそうになる……♡
この人、ぜーったい自分からエッチしたいですなんて言うつもりないんだ!
ずるいっ! ずるいずるいずるいーっ!
「ん゛っ……♡ ほんとはムリナールさんがわたしとえっちしたいだけなんじゃないんですか……?♡ そんな姑息な手段には、乗らないんでっ♡」
ムリナールさんとえっちしたい♡ 最近ご無沙汰だし、勉強ずっと頑張ってたから一人でスる時間もなかったし、正直むらむらして溜まってるから早く抜きたい♡ おちんちんでお腹の奥までぎゅーってされて、一番深いところを虐められたい♡
「…………」
向こうの大きな手がわたしの頬に添えられた。
ちょっとびっくりして、わたしは動きを止める。お湯も熱いし、ムリナールさんの体もわたしの体も熱すぎて、でも手だけがちょっとひんやりしていて気持ちがいい……♡ おじさんって冷え性なのかな。
わ……、と思っていたらムリナールさんの顔がぐっと近づいてくる。キスされる……! と思ったけど、その唇はわたしの口にはいかないで、掻き上げた髪の奥にある方の耳に近づいて止まった。
「……私からはその言葉は言えない。……意味は分かるな?」
あ゛ーっ♡ もうっ♡ ずるいずるい♡ 大人ってことを利用してわたしに恥ずかしいこと言わせる気だっ♡ 最初からこのつもりで全部やってたんだ♡ 姑息な人だなぁ、おじさんはっ!♡
「む、ムリナールさんは、ご飯もお風呂もわたしもほしいんだ♡ 欲張りさんですね♡」
「……先ほどの提言が無効でないのなら」
「いーですよ♡ しょうがないから、えっちしてあげますね、あなた……♡」
もうこうなっちゃえば、ヤケだ! ずっとお腹の奥がイライラしてた責任を取って貰わないと♡
「……その呼び方は、悪くない」
ムリナールさんはわたしの腰に手を添えると、軽々と持ち上げて自分の膝の上に乗せた。
水の中にいるせいで姿勢がいつもより不安定だ。
ずるっと滑りそうになったから、咄嗟に肩に手を置いたらそのたくましさにクラっときそうになる。
「う…………♡」
お腹のところにムリナールさんのバキバキに勃起したおちんちんが当たって、ちょっとぬるっとしてるし、お湯の中なのにそこだけ熱を発してるみたいに熱い……♡
「やっぱ、わたしでこーふんしてるじゃないですかぁ……っ…………♡」
普段こんなおっきいのをお腹の奥までいれてるんだと思うと、背筋がゾクゾクしてくる。このでかいので子宮を貫いて、内蔵持ち上げてガクガク揺らされたい♡
「好きな女性で興奮して、何か不都合でもあるのか」
「ほんとーに、口だけはお達者ですね♡」
普段は結構後ろ向きっていうか、わたしとの関係を気にしてネガティブな皮肉ばっかり言ってるムリナールさんだけど、こうやって開き直ってしまえば普段は絶対に言ってくれないような言葉を恥ずかしげもなく口に出してくれる。
だからムリナールさんとえっちするの好き、なんだよね……。
ムリナールさんの顔中にキスしながら、もっともっと♡って体をくっつける。向こうはおじさんだからこっちがリードしてあげないと♡
「……、んっ、んぅ……♡ っ、ふぅ♡ …………、す、すきっ♡」
お湯の温度と自分たちの温度が混ざり合って、溶けそうに熱い♡ っていうか、このままどろどろに溶け合って混ざって一つになっちゃいそう……♡
「…………ふーっ♡ ぁ、あ゛、っ、ん゛っ♡」
「……滑っている」
わたしの股のところに、ムリナールさんの手が伸びる。ムリナールさんの太ももに股を擦りつけて腰ヘコオナニーしちゃってるから、それはもう紛れもなくわたしのおまんこから出た愛液なんだけど……。
「ナマエが持ってきた入浴剤か?」
意地悪くムリナールさんは指先に纏わせてこっちに見せつけてくる。お風呂の照明の反射のせいで、それがどれくらいねっとりした質量なのかちゃんと分かっちゃうし。
「っ、んっ♡ やだっ♡ ちがっ♡ あんま見せないでよっ♡」
恥ずかしくて顔をそらしていたら、優しくつかまれてそっと正面を向かされる。全然力なんてこもってないのに、ムリナールさんの手で触られたらなんでも言うこと聞いちゃう自分が恥ずかしい。
「……悪かった。そんなに感じてくれていたなんて知らなかった」
「も、そ、ゆの恥ずかしい……からっ♡ 嫌いになりますよっ♡」
「ナマエに嫌われてしまうのは、困るな」
こういう時に優しい顔されると困る! こっちが困るっ♡
ムリナールさんの顔をちゃんと見て脳に焼き付けておきたいのに、風呂全体が濃い霧に包まれてるみたいになぜかモヤモヤしてるし、頭も熱に魘されてるときみたいにぼーっとするから、あんまりはっきりと目の前が見えない……。
なんかもうさっきのもどうでもよくなってきたし、てかさっきの手で頭の耳撫でながら、片方でおまんこさわり始めるの辞めてほしい♡ 流石に性器ほどじゃないけど、耳のところも触れるとビクってなっちゃうから、あんまり触られたくないのに……♡ ムリナールさんもわたしとおんなじ種族だから分かってくれてるとは思うんだけど。
……いや、あれはわかっててやってるのか……。
わたしはこの通りムリナールさんにメロメロでゾッコンだから、何をされても許してしまう。
「……、ふ、んっ……♡」
ムリナールさんの指が、わたしの膣の中にそろそろと侵入してくる。一本目は、わりとそのまま入った。二本目は、そろそろと遠慮がちに。やっぱりいつまでもここに手を入れるのは緊張するんだろう。わたしとえっちするようになってから常に短く切られるようになった爪を見ていると、常に満足感で胸が満たされるようになる。
「…………っはぁ♡ そ、そこ、は……♡」
指でクリトリスの裏を触られると、思わず口から動物みたいな喘ぎ声が出た。
わたしの弱点を的確に、少ない手で責めてくる。こうしてると、ムリナールさんってわたしより経験豊富な大人なんだな、とか思っちゃって余計に気持ちよくなっちゃう……♡
「ん゛っ、う゛ぅ、う゛っ!♡ お゛、……ぅ……、イ゛っ……♡」
「……気持ちいいか?」
「はいっ♡ すきっ♡ そこ、気持ちいいですっ♡」
「……ああ、わかった。それと、ちゃんと呼吸をしなさい」
「は、はいっ♡」
こう言われて初めて、自分が息を止めて必死になっていたことに気づいた。言われるがままにすーっと息を吸うと、五感が交尾用に変わって敏感になっているせいなのか、ムリナールさんのにおいが鼻の奥まで通ってきた。うぅ、匂いだけで軽くイっちゃいそうで無理っ♡
「あ゛ー、っ、……♡ はぁっ♡♡ お゛っ♡ ……、ふーっ♡」
こうやってる間にも、わたしのおまんこの中はムリナールさんの指で好きかって虐められて、はやくおちんちん入れてくださいって媚びるみたいに締め付けちゃってて、ちゃんと息を整える暇なんて与えてもらえない。
おまんこの壁のぞりぞりするところを指で押されて、酷い声が出る。自分でもこんな獣みたいな恥ずかしい声、ムリナールさんに聞かれたくない♡ 手加減なしの本気交尾すぎて、普段だったら絶対出ないような声出しちゃう……♡
「う゛ーーっ♡ う、っぅ……♡」
自分の手で口を塞ごうとしたら、ムリナールさんにちゅーされてしまった。そのまま唇を舌で割られて、口内にぬめっとした薄い舌が入ってくる。
「……ん、ぅ、ん……♡」
おまんこ指で触られながら、大人のキスするのきもちいい……♡
ちょっとざらっとしたムリナールさんの舌で口の中……歯とかをなぞられると、それだけで腰が浮いてしまいそうになる。
頭がふわふわと溶けてきて、視界もぼやっとしてきたところで思いきりクリトリスを潰されて、喉の奥から酷い声が出てしまった。
「あ゛、え……♡ なんでぇ♡」
「すまない。可愛かったものだから、つい」
そう言いながら、さっきのクリトリスとその裏の部分を指でネチネチ虐めてくるのは変わりない♡ 謝ったらなんでもしていいって思ってない?♡
「ん゛ん゛っ♡ イ、イっぢゃいそ、なんです、けど……♡ お゛、ぉ~…………♡ だめ、やだっ♡ へんになるっ♡ ぅ、お゛、ぉぉ~♡」
男の人のおちんちんみたいに興奮して勃起してるのをグリグリ押さえつけられて、指の腹で暴れるなって脅されてる♡ しかもおまんこからの刺激で裏側もぎゅー♡ってされて、クリトリス丸ごと包囲されてぎゅぎゅっ♡って虐められてるから、逃げ場ないっ♡
ムリナールさんの親指が大きいから、クリトリスだけじゃなくて尿道口まで押さえられてるから、ちょっと漏らしたのバレてるかも……♡
勃起したクリが皮の外に出たがってるけど、トントンっていうか、もう早押しのボタンを押すくらいの強さで叩かれてるから、顔出せない♡ 軽くイってるのにちゃんとした決定打を貰えずに、ずっと軽イキで脳ドロドロに溶かされて、お預け食らって脳みそ溶けそう……♡
ぬちぬちぬちっ♡
自分の股からすごい粘っこい音がするから、もう聞いてるだけ頭馬鹿になっちゃいそうだ……♡
おまんこの入り口からどろ~っと白い本気汁が溢れてきて、指と穴の隙間からお湯も一緒に入って膣の中にあついのが混じるから、頭おかしくなっちゃいそうなんですけど♡
「……すごいな」
「こ、れ、わたしのじゃな……あ゛っ♡♡ お湯、ですからぁっ♡」
「……そうか?」
お湯とは違うねちゃっとした汁をぐっと膣の中に戻されて、余計のナカの滑りがよくなってしまう。
「一回……イった方がいいんじゃいか」
「え゛、えぇっ……♡ …………、あ゛♡ は、い、っ♡ ムリナールさ、の、言うとおりにしますっ……♡」
ムリナールさんの言葉通りに、それともう早く楽にしてほしくて自分からイきますなんて敗北宣言出して、おまんこも自分の発言に従うように、中に入ってる指の感覚がより鋭利に感じられてしまうようになった……♡
――なんかこれ、自分が都合のいいオナホみたいでやなんだけど♡ ぜーったいわたし以外にしないでよ、おじさん♡ こんなこと言ったらわたし以外の女の子みんなドン引きする、からね……♡
――そもそも、わたしじゃない人のところに行っちゃうムリナールさんなんていないからこーいう嫉妬も意味ない無駄なことなんだけど、さぁ……。
「、……ぉ……ぁっ♡ や、だぁっ……♡」
腰がビクついて快感から逃れようと引いてしまいそうになるけど、ムリナールさんの力で元の位置をキープしたままにされてしまった。
もうどこにも逃げられないぞってされて、そのせいで余計に膣が指をきゅ~♡って締めつけてしまう。
「…………動かしにくいんだが」
も、文句だけ言いやがって~♡
こんな言葉にもわたしのおまんこはきゅっと反応して、動きにくいなんて文句言われてるのに喜んで反応してて、ほんとに恥ずかしい……♡
動かしにくいなんて言ってるけど、指先でおまんこの弱いところをぞりぞりするのは全然辞めてないじゃん♡
「……そろそろか」
おまんこもクリも限界まで潰されて責められて、も、もう無理……ぃ……♡
「イ゛、イ゛ぎますっ……!♡ い、くイくっ♡ マジでも、も、無理ぃ♡ う゛、うう゛っ~~♡♡♡」
喉の奥から恥ずかしい声が出てきてしまった。
本当にこの声だけはおじさんに聞いてほしくないんだけど、お風呂場だから余計に響いてしまって恥ずかしい……。生き恥だぁ……。
「ん゛っ、ぅぅ~♡ ふぅっ……♡ は、ぁ、あぁ……♡」
イったせいでちょろちょろとお漏らしみたいに潮も出てきた。普段なら飛びちって恥ずかしい思いをするけど、今日は水の中に出したから、それはない。……どっちにしろ、恥ずかしいことには変わりないんだけど。
「……漏らしたか」
ムリナールさんの指がちょうど尿道口にあるから、思い切り当たってしまった。実験結果でも言うみたいにムリナールさんが言うものだから、なんだかわたしが本当におしっこ漏らしちゃったみたいで、嫌なんだけど……。
「……ぅ、っ、ん……♡ はぁ……」
まだ断片的に出続けるイキ潮をじっと見下ろして、ムリナールさんは冷静だった。
「あ、あんま見ないで……くださ……ぁっ♡」
「それはできない」
「あ゛っ、ぁぁ……♡」
やがてぴしゃ、ぴしゃ、と漏らしていたのが止まって、大きく肩で息をする。全力でダッシュした後みたいに呼吸が整わないわたしに、ムリナールさんはそっと触れるだけのキスをしてくれた。
「ムリナール、さ……♡」
「逆上せそうだな……」
ムリナールさんはぐてっと寄りかかっていたわたしの腰に手を回して、ぐっと持ち上げた。
「は、ぇ……」
「出るぞ」
わたしを軽々と持ち上げて、浴室の外まで出る。一応歩けるんだけど、介護されてるみたい。
ぼーっと立ってたら柔らかいバスタオルで全身拭かれて、自分がもってきたのじゃないバスローブを着せられた。
「したぎ、は……」
「必要なのか……?」
「あ、あー……。はい、そ、ですね……」
そ、そうだった……。わたしだけイってはい終わりですっていう話でもないんだった。
当たり前のことだっていう風に突きつけられて、一人で恥ずかしくなる。
「えっと、じゃあ、あのう……お勉強は……?」
「それも考えてある」
「はぁ……」
ムリナールさん、どういうつもりなんだろう。
えっちした後なんて疲れて寝るしかないんだけど、それでも無理矢理起こして勉強会とか? 本当にそれをやりそうなのが怖いな……。
ニアールって騎士のお家だし、きっと軍人みたいな訓練ばっかりさせられて、他の人もそれができるんだって勘違いしてるのかもしれない。
――まぁどっちにしろ、えっちするのは確定事項で譲らない姿勢が結構嬉しかったりする。普段あんなに淡泊そうなのに、めっちゃわたしのこと好きじゃん……♡
(続)
テスト前なのに全然勉強に身が入らないことを危惧したわたしは、合鍵を使ってムリナールさんが住む家に侵入……じゃない、お邪魔したのだった……!
おじさんって見た感じ頭良さそうな顔してるし、教えるのも上手そうな感じがするし、そういうのできそうじゃない? お家でイチャイチャしながら勉強できるしって、わたしって天才すぎないか?
◆
「あ、おかえりなさいー」
「……………………」
帰宅したムリナールさんを迎えに玄関まで行ったけど、彼はわたしを見るなり固まってしまった。
お仕事から帰ってきて今の時間だから、今日はあんまり残業させられなかったみたいでよかった! 好きな人がクタクタになってるところなんてあんまりみたくないもんね。
「…………なぜ、私の家にいる」
「ムリナールさんに勉強見て貰おうと思って!」
「…………理屈が理解できない」
ムリナールさんの眉間の皺が余計に深くなる。手に持っている鞄を持ってあげようと近づいたけど、華麗にスルーされた。
「だって、家だと集中できないんだもん……」
うちだと今日は家族も誰もいないし。勉強を教えてくれる人がいてくれないとやる気出すの無理だし。学校の自習室は今の時間は開いてないし、図書館はうちからもムリナールさんの家からも遠いからここにいるのが一番いいかなって思ったんだけど。
「………………帰りなさい」
「えーっ!」
絞り出すように言われた言葉を聞いて、わたしは心の底からショックを受けた。勝手にお家に上がったのは悪いと思ってるけど、合鍵を貰えたのはそういうことだと思ってたから、なんか……無理なんだけど!
「やなんだけど! うち帰っても一人だし、もう外も真っ暗だし!」
それにちゃんと、家に入った段階でメッセージも入れておいた。今日はうちにいますよーって。多分忙しいからスルーされたんだろうけど、お仕事中ならともかく電車の中でくらいは、わたしのメッセージを確認してほしいな。
「…………」
「こんな暗い中一人で帰って、襲われでもしたらどうするんですか?」
「………………わかった、わかったから」
ムリナールさんは自分の手元の時計を見て、諦めたように大きなため息をついた。
「今回だけだからな」
「わーい!」
お泊まりになること前提で下着とか着替えも持ってきたし、なんならわたし用の洗顔とかは全部ムリナールさんのお家に置いちゃってるもんね。ムリナールさんはこう見えて結構押しに弱いし、わたしのこと大好きなんだよね、ねっ。
思わず抱きついて、お仕事帰りのムリナールさんを堪能する。
胸に顔を埋めてグリグリやりながらすーっと息を吸い込むと、ムスク系の香水の匂いに混じってちょっとだけ汗の匂いが感じられて、なんだかドキっとする。
普段はあんまりこういう男の人って感じの香りはしないから、なんだか新鮮だ。
……ていうか、丸一日働いた後の彼に抱きついたことなんて今までなかったし、この匂いちょっと……ムラっとくるかも♡ いつまでもムリナールさんの匂い嗅いでたいな……なんて思うのは変態っぽい? でも本能に直接訴えかけてくる、みたいなちょっと香辛料みたいな感じもして、ずっと嗅いでたら癖になりそう……。
わたしの頭を軽くなでつけながら、ムリナールさんは腰のリボンの紐に少しだけ触れた。
「ところで、そのエプロンは?」
「夜ご飯を作ってました」
「…………勉強は?」
「普段出来合いの物ばっか食べてますよね? それだと栄養が偏りますよ」
またお説教されそうになったから、おじさんの痛いところをついて誤魔化す。何事にもいえることだけど、相手の弱いところを狙って攻撃して、反撃を許さないようにすることこそが必勝法だ。
料理なんて普段全然しないけどムリナールさんに食べて貰えるって思ったら、新婚さんみたいだなーって思ってちょっとドキドキしちゃった。エプロンも普段家で使ってるやつじゃなくてちょっとフリフリしたかわいいやつにしちゃったし。こういうところが子供っぽいって思われるかもしれないけど、形から入るのって大事だから!
「あっ、そうだ」
「……?」
「ご飯にします? お風呂にします? それとも……キャーッ!」
「…………なんの真似だ?」
「そんな言わせないでくださいよー!」
古式奥ゆかしい恥ずかしい台詞を勝手に喋って、一人で照れてしまう。でもこれだけは言いたかったんだもん!
お仕事帰りのムリナールさんとお話できるのってなかなかないし、しかもここはムリナールさんのお家だし!
これからわたしが進学するなりお仕事するなりで、もしかしたらムリナールさんがわたしの帰りを待つような生活になるかもしれないから、これを言えるチャンスはあんまりないかもしれない。
一人で舞い上がるわたしをよそに、ムリナールさんはコートを脱いで荷物もちゃんとあるべき場所に戻してきて、ついでに手も洗ってきたみたいだった。
さっきの茶番は完全にスルーして、リビングダイニングのテーブルにディナーのセッティングをしている。
ムリナールさんは、わたしの我が儘を諦めた後はいつも行動が早い。
「ナマエは盛り付けをやってくれ。飲み物は何がいい?」
「えっと、水でいいです」
おじさんの家にわたしの好きな甘い系のジュースとか置いてるわけないしね。
「……わかった」
もう一度作ったやつを暖めなおして、食器棚から二枚に増えたお皿を用意していく。これ、前に買い物に行ったとき無理を言って一揃え買ってくれたセットだったっけ……。女の人向けのかわいい雑貨屋さんにムリナールさんが入ると、すごく目立っていたのを思い出して、ちょっとだけ思い出し笑いをしちゃう。
ムリナールさんが使ってる白い無地のやつの中で、わたしのカラトリーだけが異彩を放っていた。
「えへへ……」
だらしなく緩んだ口元があんまり見られてないといいな。
「ど、どうでしょう……?」
見た目は変じゃないはずだ。ちゃんとお料理本のレシピ通り作ったから、多分味も変じゃない、はず……。だと思いたい!
「…………悪くない」
「美味しいですよね?」
「……美味しい、という評価を下しても問題ないだろう」
「言い方、結構捻くれてますねぇ」
「家庭科のテストならいい点数を取れるんじゃないか」
「た、食べ終わったら教えてくれますよね……?」
「……明日は休みだから、付き合っても構わない」
「わーい!」
そう言いながら、ムリナールさんは次々とわたしの用意した主菜と副菜、あとスープもちゃんと食べてくれている。
……よかった、変な味じゃないっぽくて。
おじさんって毎日スーパーのお惣菜とか外食で済ませることが多いから、見ていて結構心配になる。栄養に気をつけないと、年が年だし健康とか大丈夫なのかな? って気になっちゃうよ。
「次はムリナールさんの作ったのが食べたいなー」
「……善処しよう」
「お料理って出来るタイプですか?」
「まぁ、人並みには……」
ムリナールさんの自己基準ってあんまりアテにならないんだよね。わたしはふーん、と思いながら頭の中でエプロンを着けてキッチンに立つムリナールさんの姿を思い浮かべる。
……いい、悪くない。黒いエプロンとかつけて、ムニエルとか作ってほしい……。
「手が止まっているようだが……」
「えっ、あっ、はい! 食べます!」
せっかくだし、冷める前に食べないと……!
わたしって一回道が逸れちゃうと軌道修正するのが難しいタイプだから。
ムリナールさんはそんなわたしの手綱を握るので疲れないかな? って時々思う。
年上だからって甘えてばっかりなのもよくないよね、社会人っていっつもお疲れっぽいし、わたしも早く大人にならないとなぁ……。
「……口に汚れが」
「す、すみません……」
ナプキンで口を拭うと、赤いソースが思いっきりついていた。
恥ずかしい! こんなんじゃ、わたしが赤ちゃんみたいじゃん……。
「……」
食べ方も上品で綺麗なムリナールさんを見ていると、流石いいとこの家の人だなぁって思う。
なんでそんな凄い人がサラリーマンなんてやって、ハゲたおっさんとかに頭を下げてるのかわからない。聞いても答えてくれなさそうだし、わたしもわざわざ余計なことは聞かないけど。
「…………」
なんでこんなすごい人が、わたしなんかと付き合ってくれてるのかな。考えれば不安になってくるので、ご飯の残りを胃の中に納めることに集中することにした。
「お風呂沸くまで時間あるんで、ちょーっとだけみて貰っていいですか?」
「ああ、どの問題だ?」
「えっと、この問2のやつで……」
ソファのところのローテーブルに参考書とノートを広げて、今度のテストの範囲のところを教えてもらうことにした。
「…………」
深く考え込むように問題文を読むムリナールさんの顔が、めっちゃかっこよくてまじまじと見つめてしまう。
真剣そのもの、みたいな顔に弱いんだよね。
一応定期テストの範囲だからめちゃくちゃ難題が出るってわけでもないけど、この教科はわたしの苦手な科目だから、人に教えて貰って解説を読まないとちょっと理解しにくい。
「…………」
しばらくした後、テキストをテーブルに戻された。
「あのー、解説ってお願いできますか?」
「……この問題の公式は、私が学生時代に使われていたそれと全く同じ物だが、卒業してから今に至るまで一度もそれを実務で使ったことはない」
「え、えーと……」
それってつまり……
「忘れちゃっててわかんないってこと、ですよね……?」
「……………………そうだ」
う、うーん!
ブスっとしたおじさんを見ていると、なんだかいらないことでプライドを傷つけてしまったみたいに見えてきて、ちょっといたたまれないっていうか、めんどくさい……。
「えっとじゃあ、ここに答えがあるんでそれを見て教えてもらってもいいですか……?」
「……できる限りは努力してみるが、お前の望み通りに事を運べるかは保証しかねる」
ネチネチめんどくせー!
「で、でも、ムリナールさんが教えてくれないとわたしわかんないですよー」
「ネットで調べれば回答を得られるのでは? 私に聞く意味はなかったのではないか」
「この問題の解法がまんま載ってるっていうのは、ないんじゃないんですかね……。と、とりあえずこれ、読んでみてください」
そう言いながら解答が載っている冊子を手渡してみるけど、それを受け取って目を通すムリナールさんの顔が、こころなしかいつもより険しい表情になっている気がしてなんだか胃がきゅっとなってしまった。いや、わたしは全然悪くないんだけどね?
「……………………」
……なんだか、スーツの上を脱いでシャツだけになったムリナールさんを見ていると学校の先生を思い出してしまう。無愛想だし言い方も堅苦しいし皮肉言うしわたしみたいな子供は嫌いだろうから、教師とあんま向いてなさそ~……なんだけど、ムリーナルさんが先生だったらどんな感じなんだろう。やっぱ厳しいのかな。それとも意外と真面目で真摯なところで慕われたりするのかな。
「……わかった」
しばらくぼーっと見つめて間に、おじさんはどうやら問題を理解できたらしい。
わたしのペンケースからかわいいシャーペンを取り出して、淡々と解いているところを見せられる。
「……で、ここに代入したらいいんですか?」
「そういうことになる」
「なるほど……。大体わかりました! ありがとうございます!」
「造作もない」
いや、さっきこの問題全然解けてなかったですよね? なんて指摘する勇気はわたしにはなく……。
久々にちょっと楽しそうにしているムリナールさんを見て、こっちも嬉しくなる。
数学だけじゃなくて国語とかアーツ学の方も教えてくれたら超助かるんだけどな。
だから、向こうのテンションを萎えさせるようなことは絶対に言わない。ムリナールさんはお仕事帰りで疲れてるし、無理いって面倒見てもらってるのはこっちの方だから。
「えっとじゃあ、次はこっち……」
わたしが新しい問題を見せると、再びムリナールさんはそれにじっと見入ってしまった。文章題だし読むのもちょっと時間がかかるかな。
――真剣な顔してるムリナールさんってかっこいいな。普段の仕事の時とか新聞に目を通してる時もこんな仏頂面でじっと一点を見つめてる。
何も知らない人は怖いって思うかもしれないけど、わたしは好き。こういうところはわたしだけわかってればいいよね。
「……ナマエも考えなさい」
「はぁい」
集中していないことはとっくにバレていたらしい。
わたしはシャーペンの頭をカチカチとノックしながら、真っ白いノートの新しいページに文字を走らせる。
「…………そろそろ、お風呂沸いたんじゃないかな」
一通りわからないところを教えてもらって、区切りがついたのでわたしはそっと立ち上がり、給湯器のモニターを見に行った。
ムリナールさんはお小言をいうでもなく、机の上の消しカスとかを片付けている。
「あー、十分前にもう沸いちゃってますよ」
早く入らないと暖房が勿体ないですね、とわたしは続ける。
「……残りはもういいのか?」
「結構進んだ方だと思いますけど……。それに、後のは明日でもよくないですか?」
「駄目だ。今日中に終わらせなさい」
「えーっ」
ムリナールさんは正しいんだけど、さぁ……。一応勉強を見て貰うって名目で来てる以上、おじさんの言うとおりにするのが筋っていうのは理解できる。でもなー、教えて貰うっていってもムリナールさんって本当の教師って訳じゃないし、テンポよくパッパとやれないし、それに、なんか……思ってたよりラブラブって感じにもなれなかったからちょっと消化不良ていうか、期待値以下? って感じだ。
失礼な考えだっていうのは分かってるけど、やっぱわたしも他の子みたいにカフェで勉強デートとか、そういうのしてみたいなぁ。
「でっ、でも、お風呂に入ってからでも勉強はできますよ? 先に入りましょうよ~」
最近光熱費とかも上がってるらしいし、お風呂で寒いのは嫌だからお湯を入れると同時に暖房も入れっぱなしにしてある。ムリナールさんの懐具合はそんなに困ってないだろうけど、そんなにいい家の子供じゃないわたしはやっぱり、エネルギーがもったいないじゃんとか考えてしまう。
それに、今日一日色々頑張りすぎて疲れたから、早くお風呂に入りたい!
「……そこまでして、入りたいのか」
「えぇ……風呂キャンセル界隈ですか……?」
「……界隈? 何……?」
ムリナールさんがとんでもないことを言い出した気がして、つい若者言葉を使ってしまった。案の定全く理解されなかったけど、好きな人が疲れてるからといってお風呂入らないようになるのは、ちょっとな……流石に……うん。
「えー! 逆になんでですか? お風呂入ったら気持ちいいし、入らなかったら気持ち悪くないですか?」
「……………………うちの浴槽は狭いぞ」
「いいですよ別に。多分うちのお風呂の方がムリナールさんのよりちっちゃいですよ」
「……わかった。ナマエがそう言うのなら」
ムリナールさんはガバっと立ち上がると、自分の部屋に入っていった。
えっ? 何かするの? と思って待っていたら、すぐに戻ってきた。手にはパジャマと下着……わたしのルームウェアもある。
「脱衣所にタオルはあるから、先に入っていなさい」
「え、あ、じゃあお先にいただきますね……」
「ああ……」
ムリナールさんに手渡されたモコモコのインナーと、持参した下着と洗顔とかのセットを持って、お風呂に入る。よいしょ、と着替えて湯船に浸かるとすごく気持ちよかった!
風呂キャンセル疑惑があったからどんなものかと思ってたけど、おじさんは水回りを結構綺麗にしてるタイプらしかった。わたしは結構潔癖っていうか気にする方だから、ムリナールさんがちゃんとしていてくれて嬉しかった。
入浴剤も好きに入れちゃって、お風呂の色が濁ってくるのをぼーっと見ていると、不意に脱衣所のドアがガチャ、と開く音がした。
ムリナールさん? なんで?
……あー、でも、わたしが湯船で溺れてないか心配で見に来たとか、あの人なら言いかねないな……。
「湯加減はどうだ」
「大丈夫です。めっちゃ気持ちいいです」
「そうか」
その声と同時に浴室の半透明のドアが開く。
「――へ?」
「この浴槽は一人使用を前提としているらしい。少し詰めて貰えるか」
「は、はははははっ、はっ、なんで入って……⁉」
「…………? 何を言っているんだ、そのつもりでうちに来たんじゃないのか。はぁ……こんな図体ばかり大きい中年男と一緒に入るのが嫌だと言うなら、私は辞退するが……。お前が拒否するなら無理にとは……」
わー! わーっ! 始まっちゃったよ、ムリナールさんのネガティブが……。
部屋中が蒸気でむわっとしてるし、申し訳程度に前はタオルで隠してるけど、普段着込んだ格好で隠れているムリナールさんの体を明るいところで目に入れてしまって、叫ばなかったわたしを褒めてほしい。あと、こんなでっかい人と二人で入って大丈夫なの? このバスタブ……。
……当然のように一緒にお風呂入るなんて考えてたんだ……。結構スケベなんだな、ムリナールおじさん……。おじさんの割には、いや、おじさんだからか……。
「い、いいい、いいですよ……別に」
「……よかった」
断ってまたネチネチ言われたらめんどくさいし、お風呂に入るくらいならいいかな、と思ってわたしは足をぎゅっと曲げる。シャワーで体をさっと洗ってから、ムリナールさんは浴槽に足を踏み入れた。
「…………」
案の定、水がドバドバと溢れて排水口に流れていく。わたし、結構高い入浴剤持ってきたんですけど……ね……。ここの家主がやったことだから文句は言えないよ。
「失礼……」
ムリナールさんはお風呂だというのに足を折り曲げて、座った。わたしとおじさんで、風呂の面積を二分する形になる。
「……………………」
あの、ここからどうしろと。
「……一緒に入るのは、初めてだな」
「そーですね……。えぇ……」
「狭くて申し訳ないが、私にはどうにもできない。我慢してくれ」
「え、あ、はい。大丈夫、です……」
おじさんと別々で入ったら問題なかったよね?
冷静になってみると、全裸で密着しかかってて結構ヤバいな、これ。湿気た浴室でムリナールさんの髪もぺたっとおでこにくっついてて、なんだかかわいい。顔の下にくっついてる体の筋肉が、いつ鍛えてるんだろうって疑問になるくらいにはしっかりしてて、たくましくて、マジで男の人……って感じがする。
「……」
お互い無言で、じーっとしてたらちょっと時間が過ぎた。わたしがムリナールさんのことをじっと見てるみたいに、向こうもわたしのことをしっかり見てきてて、なんだか恥ずかしい。わたしの体なんて見ても別に面白くないと思うんだけどなぁ。別にスタイルがいいとかでもないし、む、ムダ毛の処理は昨日やってきたから大丈夫だと思うけど……。
ていうか、さ……。距離近いしバスタブはミチミチだし、で、めっちゃムリナールさんの素肌とふれあっちゃうんですけど……。
何にも鍛えてないわたしと、大人で剣術とかやってる男の人とで全然体の硬さが違うし、触った時の体温とかもいつもより暖かくて、なんだか変な気持ちになってくる……♡
ムリナールさんが邪魔になった前髪を後ろになでつけたとき、わたしは言葉では上手く言い表せないような興奮を覚えた。
な、なにそれー⁉ わたしの前で今までそんなことしたことあった⁉
……いや、あったわ。いつ、どことかは完全に忘れたけど、前にえっちした時にその仕草を見た気が……する……。
「――っ!」
思い出したら興奮しちゃって、思わず息が荒くなる。こんなことのせいで頭が馬鹿になってきたわたしとは違って、ムリナールさんは顔だけちょっと赤くなってる以外は普段と変わらない。平常時の無表情・仏頂面を貫いている。
――風呂なんて勝手に入ってきて、スケベ親父だと思ったのに!
なんだかわたしだけがムラムラしてるみたいで苛つくんですけど!
わたしは肩までちゃんと浸かっていた体を上げて、ムリナールさんの首の近くの壁に手を置いた。
「ナマエ……」
「ど、どーなんですか……。お風呂で好きな女の裸を見て、何にも思わないんですか?」
「…………」
今のわたしは濁った湯船から体を出しているので、ムリナールさんの目の前はわたしのおっぱいしか見えていないはずだ。……ムリナールさんは前に執拗にここだけ弄くってたことがあるから、多分、これで結構おちんちんもイラっとくるはず。……なんか、わたしだけがドキドキしてるの、恥ずかしいし。向こうも恥ずかしい思いをすればいいんだ!
「……なんか言ってくださいよ!」
口からはーはーって息が出るの止められない♡ 我慢できなくなって壁ドンをやめて、ムリナールさんの固い胸板に自分の胸を擦りつける。
「…………えっちしたいって思ったから、入ってきたんですよね?」
天然ボケを装うのは絶対に許されないからね? ていうか、お風呂に入ってくる時点でぜーんぜんごまかせてないし……。
「……お前は、したいのか」
胸と胸が擦れ合って、勃ってきた乳首もぎゅって潰されて、自分でやってくることだけど結構キツい……♡ 時々ムリナールさんの乳首とも当たって、感じちゃうし、軽くだけどイきそうになる……♡
この人、ぜーったい自分からエッチしたいですなんて言うつもりないんだ!
ずるいっ! ずるいずるいずるいーっ!
「ん゛っ……♡ ほんとはムリナールさんがわたしとえっちしたいだけなんじゃないんですか……?♡ そんな姑息な手段には、乗らないんでっ♡」
ムリナールさんとえっちしたい♡ 最近ご無沙汰だし、勉強ずっと頑張ってたから一人でスる時間もなかったし、正直むらむらして溜まってるから早く抜きたい♡ おちんちんでお腹の奥までぎゅーってされて、一番深いところを虐められたい♡
「…………」
向こうの大きな手がわたしの頬に添えられた。
ちょっとびっくりして、わたしは動きを止める。お湯も熱いし、ムリナールさんの体もわたしの体も熱すぎて、でも手だけがちょっとひんやりしていて気持ちがいい……♡ おじさんって冷え性なのかな。
わ……、と思っていたらムリナールさんの顔がぐっと近づいてくる。キスされる……! と思ったけど、その唇はわたしの口にはいかないで、掻き上げた髪の奥にある方の耳に近づいて止まった。
「……私からはその言葉は言えない。……意味は分かるな?」
あ゛ーっ♡ もうっ♡ ずるいずるい♡ 大人ってことを利用してわたしに恥ずかしいこと言わせる気だっ♡ 最初からこのつもりで全部やってたんだ♡ 姑息な人だなぁ、おじさんはっ!♡
「む、ムリナールさんは、ご飯もお風呂もわたしもほしいんだ♡ 欲張りさんですね♡」
「……先ほどの提言が無効でないのなら」
「いーですよ♡ しょうがないから、えっちしてあげますね、あなた……♡」
もうこうなっちゃえば、ヤケだ! ずっとお腹の奥がイライラしてた責任を取って貰わないと♡
「……その呼び方は、悪くない」
ムリナールさんはわたしの腰に手を添えると、軽々と持ち上げて自分の膝の上に乗せた。
水の中にいるせいで姿勢がいつもより不安定だ。
ずるっと滑りそうになったから、咄嗟に肩に手を置いたらそのたくましさにクラっときそうになる。
「う…………♡」
お腹のところにムリナールさんのバキバキに勃起したおちんちんが当たって、ちょっとぬるっとしてるし、お湯の中なのにそこだけ熱を発してるみたいに熱い……♡
「やっぱ、わたしでこーふんしてるじゃないですかぁ……っ…………♡」
普段こんなおっきいのをお腹の奥までいれてるんだと思うと、背筋がゾクゾクしてくる。このでかいので子宮を貫いて、内蔵持ち上げてガクガク揺らされたい♡
「好きな女性で興奮して、何か不都合でもあるのか」
「ほんとーに、口だけはお達者ですね♡」
普段は結構後ろ向きっていうか、わたしとの関係を気にしてネガティブな皮肉ばっかり言ってるムリナールさんだけど、こうやって開き直ってしまえば普段は絶対に言ってくれないような言葉を恥ずかしげもなく口に出してくれる。
だからムリナールさんとえっちするの好き、なんだよね……。
ムリナールさんの顔中にキスしながら、もっともっと♡って体をくっつける。向こうはおじさんだからこっちがリードしてあげないと♡
「……、んっ、んぅ……♡ っ、ふぅ♡ …………、す、すきっ♡」
お湯の温度と自分たちの温度が混ざり合って、溶けそうに熱い♡ っていうか、このままどろどろに溶け合って混ざって一つになっちゃいそう……♡
「…………ふーっ♡ ぁ、あ゛、っ、ん゛っ♡」
「……滑っている」
わたしの股のところに、ムリナールさんの手が伸びる。ムリナールさんの太ももに股を擦りつけて腰ヘコオナニーしちゃってるから、それはもう紛れもなくわたしのおまんこから出た愛液なんだけど……。
「ナマエが持ってきた入浴剤か?」
意地悪くムリナールさんは指先に纏わせてこっちに見せつけてくる。お風呂の照明の反射のせいで、それがどれくらいねっとりした質量なのかちゃんと分かっちゃうし。
「っ、んっ♡ やだっ♡ ちがっ♡ あんま見せないでよっ♡」
恥ずかしくて顔をそらしていたら、優しくつかまれてそっと正面を向かされる。全然力なんてこもってないのに、ムリナールさんの手で触られたらなんでも言うこと聞いちゃう自分が恥ずかしい。
「……悪かった。そんなに感じてくれていたなんて知らなかった」
「も、そ、ゆの恥ずかしい……からっ♡ 嫌いになりますよっ♡」
「ナマエに嫌われてしまうのは、困るな」
こういう時に優しい顔されると困る! こっちが困るっ♡
ムリナールさんの顔をちゃんと見て脳に焼き付けておきたいのに、風呂全体が濃い霧に包まれてるみたいになぜかモヤモヤしてるし、頭も熱に魘されてるときみたいにぼーっとするから、あんまりはっきりと目の前が見えない……。
なんかもうさっきのもどうでもよくなってきたし、てかさっきの手で頭の耳撫でながら、片方でおまんこさわり始めるの辞めてほしい♡ 流石に性器ほどじゃないけど、耳のところも触れるとビクってなっちゃうから、あんまり触られたくないのに……♡ ムリナールさんもわたしとおんなじ種族だから分かってくれてるとは思うんだけど。
……いや、あれはわかっててやってるのか……。
わたしはこの通りムリナールさんにメロメロでゾッコンだから、何をされても許してしまう。
「……、ふ、んっ……♡」
ムリナールさんの指が、わたしの膣の中にそろそろと侵入してくる。一本目は、わりとそのまま入った。二本目は、そろそろと遠慮がちに。やっぱりいつまでもここに手を入れるのは緊張するんだろう。わたしとえっちするようになってから常に短く切られるようになった爪を見ていると、常に満足感で胸が満たされるようになる。
「…………っはぁ♡ そ、そこ、は……♡」
指でクリトリスの裏を触られると、思わず口から動物みたいな喘ぎ声が出た。
わたしの弱点を的確に、少ない手で責めてくる。こうしてると、ムリナールさんってわたしより経験豊富な大人なんだな、とか思っちゃって余計に気持ちよくなっちゃう……♡
「ん゛っ、う゛ぅ、う゛っ!♡ お゛、……ぅ……、イ゛っ……♡」
「……気持ちいいか?」
「はいっ♡ すきっ♡ そこ、気持ちいいですっ♡」
「……ああ、わかった。それと、ちゃんと呼吸をしなさい」
「は、はいっ♡」
こう言われて初めて、自分が息を止めて必死になっていたことに気づいた。言われるがままにすーっと息を吸うと、五感が交尾用に変わって敏感になっているせいなのか、ムリナールさんのにおいが鼻の奥まで通ってきた。うぅ、匂いだけで軽くイっちゃいそうで無理っ♡
「あ゛ー、っ、……♡ はぁっ♡♡ お゛っ♡ ……、ふーっ♡」
こうやってる間にも、わたしのおまんこの中はムリナールさんの指で好きかって虐められて、はやくおちんちん入れてくださいって媚びるみたいに締め付けちゃってて、ちゃんと息を整える暇なんて与えてもらえない。
おまんこの壁のぞりぞりするところを指で押されて、酷い声が出る。自分でもこんな獣みたいな恥ずかしい声、ムリナールさんに聞かれたくない♡ 手加減なしの本気交尾すぎて、普段だったら絶対出ないような声出しちゃう……♡
「う゛ーーっ♡ う、っぅ……♡」
自分の手で口を塞ごうとしたら、ムリナールさんにちゅーされてしまった。そのまま唇を舌で割られて、口内にぬめっとした薄い舌が入ってくる。
「……ん、ぅ、ん……♡」
おまんこ指で触られながら、大人のキスするのきもちいい……♡
ちょっとざらっとしたムリナールさんの舌で口の中……歯とかをなぞられると、それだけで腰が浮いてしまいそうになる。
頭がふわふわと溶けてきて、視界もぼやっとしてきたところで思いきりクリトリスを潰されて、喉の奥から酷い声が出てしまった。
「あ゛、え……♡ なんでぇ♡」
「すまない。可愛かったものだから、つい」
そう言いながら、さっきのクリトリスとその裏の部分を指でネチネチ虐めてくるのは変わりない♡ 謝ったらなんでもしていいって思ってない?♡
「ん゛ん゛っ♡ イ、イっぢゃいそ、なんです、けど……♡ お゛、ぉ~…………♡ だめ、やだっ♡ へんになるっ♡ ぅ、お゛、ぉぉ~♡」
男の人のおちんちんみたいに興奮して勃起してるのをグリグリ押さえつけられて、指の腹で暴れるなって脅されてる♡ しかもおまんこからの刺激で裏側もぎゅー♡ってされて、クリトリス丸ごと包囲されてぎゅぎゅっ♡って虐められてるから、逃げ場ないっ♡
ムリナールさんの親指が大きいから、クリトリスだけじゃなくて尿道口まで押さえられてるから、ちょっと漏らしたのバレてるかも……♡
勃起したクリが皮の外に出たがってるけど、トントンっていうか、もう早押しのボタンを押すくらいの強さで叩かれてるから、顔出せない♡ 軽くイってるのにちゃんとした決定打を貰えずに、ずっと軽イキで脳ドロドロに溶かされて、お預け食らって脳みそ溶けそう……♡
ぬちぬちぬちっ♡
自分の股からすごい粘っこい音がするから、もう聞いてるだけ頭馬鹿になっちゃいそうだ……♡
おまんこの入り口からどろ~っと白い本気汁が溢れてきて、指と穴の隙間からお湯も一緒に入って膣の中にあついのが混じるから、頭おかしくなっちゃいそうなんですけど♡
「……すごいな」
「こ、れ、わたしのじゃな……あ゛っ♡♡ お湯、ですからぁっ♡」
「……そうか?」
お湯とは違うねちゃっとした汁をぐっと膣の中に戻されて、余計のナカの滑りがよくなってしまう。
「一回……イった方がいいんじゃいか」
「え゛、えぇっ……♡ …………、あ゛♡ は、い、っ♡ ムリナールさ、の、言うとおりにしますっ……♡」
ムリナールさんの言葉通りに、それともう早く楽にしてほしくて自分からイきますなんて敗北宣言出して、おまんこも自分の発言に従うように、中に入ってる指の感覚がより鋭利に感じられてしまうようになった……♡
――なんかこれ、自分が都合のいいオナホみたいでやなんだけど♡ ぜーったいわたし以外にしないでよ、おじさん♡ こんなこと言ったらわたし以外の女の子みんなドン引きする、からね……♡
――そもそも、わたしじゃない人のところに行っちゃうムリナールさんなんていないからこーいう嫉妬も意味ない無駄なことなんだけど、さぁ……。
「、……ぉ……ぁっ♡ や、だぁっ……♡」
腰がビクついて快感から逃れようと引いてしまいそうになるけど、ムリナールさんの力で元の位置をキープしたままにされてしまった。
もうどこにも逃げられないぞってされて、そのせいで余計に膣が指をきゅ~♡って締めつけてしまう。
「…………動かしにくいんだが」
も、文句だけ言いやがって~♡
こんな言葉にもわたしのおまんこはきゅっと反応して、動きにくいなんて文句言われてるのに喜んで反応してて、ほんとに恥ずかしい……♡
動かしにくいなんて言ってるけど、指先でおまんこの弱いところをぞりぞりするのは全然辞めてないじゃん♡
「……そろそろか」
おまんこもクリも限界まで潰されて責められて、も、もう無理……ぃ……♡
「イ゛、イ゛ぎますっ……!♡ い、くイくっ♡ マジでも、も、無理ぃ♡ う゛、うう゛っ~~♡♡♡」
喉の奥から恥ずかしい声が出てきてしまった。
本当にこの声だけはおじさんに聞いてほしくないんだけど、お風呂場だから余計に響いてしまって恥ずかしい……。生き恥だぁ……。
「ん゛っ、ぅぅ~♡ ふぅっ……♡ は、ぁ、あぁ……♡」
イったせいでちょろちょろとお漏らしみたいに潮も出てきた。普段なら飛びちって恥ずかしい思いをするけど、今日は水の中に出したから、それはない。……どっちにしろ、恥ずかしいことには変わりないんだけど。
「……漏らしたか」
ムリナールさんの指がちょうど尿道口にあるから、思い切り当たってしまった。実験結果でも言うみたいにムリナールさんが言うものだから、なんだかわたしが本当におしっこ漏らしちゃったみたいで、嫌なんだけど……。
「……ぅ、っ、ん……♡ はぁ……」
まだ断片的に出続けるイキ潮をじっと見下ろして、ムリナールさんは冷静だった。
「あ、あんま見ないで……くださ……ぁっ♡」
「それはできない」
「あ゛っ、ぁぁ……♡」
やがてぴしゃ、ぴしゃ、と漏らしていたのが止まって、大きく肩で息をする。全力でダッシュした後みたいに呼吸が整わないわたしに、ムリナールさんはそっと触れるだけのキスをしてくれた。
「ムリナール、さ……♡」
「逆上せそうだな……」
ムリナールさんはぐてっと寄りかかっていたわたしの腰に手を回して、ぐっと持ち上げた。
「は、ぇ……」
「出るぞ」
わたしを軽々と持ち上げて、浴室の外まで出る。一応歩けるんだけど、介護されてるみたい。
ぼーっと立ってたら柔らかいバスタオルで全身拭かれて、自分がもってきたのじゃないバスローブを着せられた。
「したぎ、は……」
「必要なのか……?」
「あ、あー……。はい、そ、ですね……」
そ、そうだった……。わたしだけイってはい終わりですっていう話でもないんだった。
当たり前のことだっていう風に突きつけられて、一人で恥ずかしくなる。
「えっと、じゃあ、あのう……お勉強は……?」
「それも考えてある」
「はぁ……」
ムリナールさん、どういうつもりなんだろう。
えっちした後なんて疲れて寝るしかないんだけど、それでも無理矢理起こして勉強会とか? 本当にそれをやりそうなのが怖いな……。
ニアールって騎士のお家だし、きっと軍人みたいな訓練ばっかりさせられて、他の人もそれができるんだって勘違いしてるのかもしれない。
――まぁどっちにしろ、えっちするのは確定事項で譲らない姿勢が結構嬉しかったりする。普段あんなに淡泊そうなのに、めっちゃわたしのこと好きじゃん……♡
(続)