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えたーなる
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「おい、そこは俺の席だ」
朝練を終えて教室へ入ると、自分の席に別のやつが座っていた。座っていたのは顔しか知らないようなクラスメイトで、ぬぼーっとした顔でスマートフォンを弄っていた。
「え、ごめんごめん。ここって前まで私の席だったんだけど、もしかして席替えあった?」
「あぁ。つい昨日にな」
「あーそうなんだ。私昨日休んでたんだよね。人吉君は私の席知ってる?」
「人吉?」
何だこいつ、俺の名前を間違えて覚えているじゃないか。まぁかくいう自分も、こいつの名前を覚えてはいない。今まで同じクラスになったこともなく、会話らしい会話をしたのも初めてだったからだ。
「え、人吉君だよね」
「違う。俺は日吉だ。六日の日に吉凶の吉」
「へぇー、そうなんだ。名前間違えてごめんね」
「えっとーーあんたの席は」
「ミョウジ。日吉くん、私はミョウジナマエだよ」
自分も覚えていないことを指摘されて、少々気まずくなったが、俺はミョウジの席を指さした。
「やったー! 窓際だ」
ミョウジは内職がしやすい後ろの窓際の席を喜んでいた。
本当に中学生か? というくらい子供っぽい(まぁ同い年でこういう奴はごまんといるが、女子でこんなはしゃぎ方をするのは珍しい)気がして、なぜかこちらが恥ずかしい。
「なぁ、今日は一限体育だろ。着替えに行ったらどうなんだ」
余計なお節介のようなことを言ってしまって、後悔する。なぜこんなどうでもいいやつに、わざわざ貸を作ってしまうようなことを、俺はーー
「私今日見学だから、いいんだー」
やっぱり余計なお節介だったじゃないか。体育館シューズを机のよこに吊るして、寝たふりをした。
「日吉がミョウジと喋ってるーー」
そんなことを誰かが言った気がした。気が散って仕方ない。
俺の席からは、ミョウジの背中がよく見えた。
この三日間それを見て、わかったことがある。
まず、ミョウジは授業中に活発に発言するタイプではない。そして、授業中、長袖の中にイヤホンを仕込んでひたすら何かを聞いている。ラジオか、普通の音楽か、いや、あいつなら盗聴の音声でもあり得るかもしれない。とにかく、何かを聞いている。しかも真顔で。
他には、友達はそこそこいるようだが、同じクラスではなく、他の学年や別のクラスにしかいないこと。昼食は学食で食べること。それくらいか。付け足すと、部活には入っていないらしい。それと、帰りには必ず駅前のゲーセン(ゲームセンターの略。言わなくてもわかるだろ、それくらい)に寄るそうだ。これは同じクラスの男と話しているのを聞いてしまったから知っている。
ミョウジは変わった奴だった。俺が言うのも変だが、氷帝には変人が多い。金持ちの子供が多いせいか、他に要因があるのかどちらなのかはわからないが、とにかく他の学校だと間違いなく「浮く」奴がここではのんびりと過ごしている。その様子はまるで牧場。また、進学率もそれなりにいいおかげか勉強のできる奴がおおい。頭が良くなると、性格までおかしくなるのか。もしくは、性格がおかしいから頭が良くなるのか。
考えても仕方のないことを考え、席替えをしてから約一ヶ月。俺はミョウジの背中を見ては馬鹿な考えを脳内で繰り返す、といった無意味な行動をとっては暇を潰していた。
「さて、来週からテスト期間だ。部活はねぇから部室に来るんじゃねぇぞ」
跡部さんがそう言って、今日は解散した。休日の練習もなく、課題をやったらあとは復習でもしてテストに備えるしかない。
「今回のテスト範囲、結構広いよね。日吉はどう? 勉強してる?」
更衣室から出ていくと、鳳がドアのすぐ横で立っていた。大方、宍戸さんを待っていたのだろう。
「……あー、それなりに、な」
「そうなんだ。俺は全然ダメだよー。頑張らないとね」
「鳳が? 珍しいな」
鳳は頭をかきながら、照れ臭そうに笑った。
「もしよかったらさ、明日あたりにでも図書館に行こうよ」
「あぁ、別に構わない……と、今日は用事があるんだった。また明日な」
朝練を終えて教室へ入ると、自分の席に別のやつが座っていた。座っていたのは顔しか知らないようなクラスメイトで、ぬぼーっとした顔でスマートフォンを弄っていた。
「え、ごめんごめん。ここって前まで私の席だったんだけど、もしかして席替えあった?」
「あぁ。つい昨日にな」
「あーそうなんだ。私昨日休んでたんだよね。人吉君は私の席知ってる?」
「人吉?」
何だこいつ、俺の名前を間違えて覚えているじゃないか。まぁかくいう自分も、こいつの名前を覚えてはいない。今まで同じクラスになったこともなく、会話らしい会話をしたのも初めてだったからだ。
「え、人吉君だよね」
「違う。俺は日吉だ。六日の日に吉凶の吉」
「へぇー、そうなんだ。名前間違えてごめんね」
「えっとーーあんたの席は」
「ミョウジ。日吉くん、私はミョウジナマエだよ」
自分も覚えていないことを指摘されて、少々気まずくなったが、俺はミョウジの席を指さした。
「やったー! 窓際だ」
ミョウジは内職がしやすい後ろの窓際の席を喜んでいた。
本当に中学生か? というくらい子供っぽい(まぁ同い年でこういう奴はごまんといるが、女子でこんなはしゃぎ方をするのは珍しい)気がして、なぜかこちらが恥ずかしい。
「なぁ、今日は一限体育だろ。着替えに行ったらどうなんだ」
余計なお節介のようなことを言ってしまって、後悔する。なぜこんなどうでもいいやつに、わざわざ貸を作ってしまうようなことを、俺はーー
「私今日見学だから、いいんだー」
やっぱり余計なお節介だったじゃないか。体育館シューズを机のよこに吊るして、寝たふりをした。
「日吉がミョウジと喋ってるーー」
そんなことを誰かが言った気がした。気が散って仕方ない。
俺の席からは、ミョウジの背中がよく見えた。
この三日間それを見て、わかったことがある。
まず、ミョウジは授業中に活発に発言するタイプではない。そして、授業中、長袖の中にイヤホンを仕込んでひたすら何かを聞いている。ラジオか、普通の音楽か、いや、あいつなら盗聴の音声でもあり得るかもしれない。とにかく、何かを聞いている。しかも真顔で。
他には、友達はそこそこいるようだが、同じクラスではなく、他の学年や別のクラスにしかいないこと。昼食は学食で食べること。それくらいか。付け足すと、部活には入っていないらしい。それと、帰りには必ず駅前のゲーセン(ゲームセンターの略。言わなくてもわかるだろ、それくらい)に寄るそうだ。これは同じクラスの男と話しているのを聞いてしまったから知っている。
ミョウジは変わった奴だった。俺が言うのも変だが、氷帝には変人が多い。金持ちの子供が多いせいか、他に要因があるのかどちらなのかはわからないが、とにかく他の学校だと間違いなく「浮く」奴がここではのんびりと過ごしている。その様子はまるで牧場。また、進学率もそれなりにいいおかげか勉強のできる奴がおおい。頭が良くなると、性格までおかしくなるのか。もしくは、性格がおかしいから頭が良くなるのか。
考えても仕方のないことを考え、席替えをしてから約一ヶ月。俺はミョウジの背中を見ては馬鹿な考えを脳内で繰り返す、といった無意味な行動をとっては暇を潰していた。
「さて、来週からテスト期間だ。部活はねぇから部室に来るんじゃねぇぞ」
跡部さんがそう言って、今日は解散した。休日の練習もなく、課題をやったらあとは復習でもしてテストに備えるしかない。
「今回のテスト範囲、結構広いよね。日吉はどう? 勉強してる?」
更衣室から出ていくと、鳳がドアのすぐ横で立っていた。大方、宍戸さんを待っていたのだろう。
「……あー、それなりに、な」
「そうなんだ。俺は全然ダメだよー。頑張らないとね」
「鳳が? 珍しいな」
鳳は頭をかきながら、照れ臭そうに笑った。
「もしよかったらさ、明日あたりにでも図書館に行こうよ」
「あぁ、別に構わない……と、今日は用事があるんだった。また明日な」