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えたーなる
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いやらしいまでに夏だなあ、と思う。
手元のスマホでなんとなく海の写真を撮って、そんなことを考えた。
それをウマスタにアップロードしようか迷って、結局下書きに突っ込んだ。わたしのアカウントのフォロワー数は全然大した数じゃない。そのうえ、わたしのファンはわたしのプライベートな写真なんて求めていない。
ただ淡々と、レースの話だけをしているアカウントなのだから、しょうがない。
海辺の写真なんて載せても、別に面白くはないだろう。
周りの人たちは、思い思いに自撮りを撮ったりして、はしゃいでいる。わたしも同じチームの人に誘われて、なんとなくグループの輪に入ってみたりするけれど、正直浮かれない。彼女らは優しいから、わたしに気を遣ってくれているのだということはわかる。その優しさが、辛かった。
わたしたちトレセン学園の生徒は、毎年夏になると田舎の海に行って、夏合宿という行事に参加する。っていうか、させられる。
行ってみると結構楽しかったりするんだけどね、まあ。
でも毎年毎年、夏の貴重な時間を練習に費やしてるって考えると、ちょっとモヤモヤする。トレセンの生徒じゃない普通の女の子の夏の過ごし方を、わたしはもう思い出せない。
今、合宿所に荷物を置いて、ベランダに出ているんだけど、まあまあ古いんだよね、この施設。掃除は行き届いてるし、綺麗なんだけど、割と年季の入った雰囲気を感じざるを得ない。
ベッドの布団カバーを撫でて、窓から浜辺を見る。もう水着に着替えてトレーニングを始めているグループもあるようだ。他人事のように見下ろしていると、ガチャ、という音とともに誰かが入ってきた。
「おやおや、同室はキミだったか。よろしく頼むよ」
ベッドの上に大きな荷物を下ろし、わたしの顔を見てアグネスタキオンはそう言った。
「ああ……どうもよろしく」
「さっき、トレーナーくんが急いで下に来るよう言っていたよ。じゃあ、また後で会おう」
彼女はなんと、その場で制服を脱ぎ出した。わたしがぎょっとしていると、あっという間に、逃げるように外に出ていった。制服の下に、水着を着ていたようだ。
普通、水着に着替えるのは外の更衣室を使うはずなのだが、この人にはそういう常識が通用しないのだろう。
わたしも、合宿用の荷物を手に部屋の外に出る。同じような学園の生徒たちが、期待と熱意に胸を膨らませ、外へ向かっていた。
ただ一人、わたしだけが疲れたような顔をしていた。
直前に出走した宝塚記念の着順は、思い出すだけで悲惨だ。
手元のスマホでなんとなく海の写真を撮って、そんなことを考えた。
それをウマスタにアップロードしようか迷って、結局下書きに突っ込んだ。わたしのアカウントのフォロワー数は全然大した数じゃない。そのうえ、わたしのファンはわたしのプライベートな写真なんて求めていない。
ただ淡々と、レースの話だけをしているアカウントなのだから、しょうがない。
海辺の写真なんて載せても、別に面白くはないだろう。
周りの人たちは、思い思いに自撮りを撮ったりして、はしゃいでいる。わたしも同じチームの人に誘われて、なんとなくグループの輪に入ってみたりするけれど、正直浮かれない。彼女らは優しいから、わたしに気を遣ってくれているのだということはわかる。その優しさが、辛かった。
わたしたちトレセン学園の生徒は、毎年夏になると田舎の海に行って、夏合宿という行事に参加する。っていうか、させられる。
行ってみると結構楽しかったりするんだけどね、まあ。
でも毎年毎年、夏の貴重な時間を練習に費やしてるって考えると、ちょっとモヤモヤする。トレセンの生徒じゃない普通の女の子の夏の過ごし方を、わたしはもう思い出せない。
今、合宿所に荷物を置いて、ベランダに出ているんだけど、まあまあ古いんだよね、この施設。掃除は行き届いてるし、綺麗なんだけど、割と年季の入った雰囲気を感じざるを得ない。
ベッドの布団カバーを撫でて、窓から浜辺を見る。もう水着に着替えてトレーニングを始めているグループもあるようだ。他人事のように見下ろしていると、ガチャ、という音とともに誰かが入ってきた。
「おやおや、同室はキミだったか。よろしく頼むよ」
ベッドの上に大きな荷物を下ろし、わたしの顔を見てアグネスタキオンはそう言った。
「ああ……どうもよろしく」
「さっき、トレーナーくんが急いで下に来るよう言っていたよ。じゃあ、また後で会おう」
彼女はなんと、その場で制服を脱ぎ出した。わたしがぎょっとしていると、あっという間に、逃げるように外に出ていった。制服の下に、水着を着ていたようだ。
普通、水着に着替えるのは外の更衣室を使うはずなのだが、この人にはそういう常識が通用しないのだろう。
わたしも、合宿用の荷物を手に部屋の外に出る。同じような学園の生徒たちが、期待と熱意に胸を膨らませ、外へ向かっていた。
ただ一人、わたしだけが疲れたような顔をしていた。
直前に出走した宝塚記念の着順は、思い出すだけで悲惨だ。