勉強会


『寒い』といって纏わりついてきた烈火の狙いは分かっているつもりだった。

リビングで黙々と勉強中だった水鏡は、烈火の訪問でもそれをやめることなく続けていた。
かまって欲しかったのかどうなのか、烈火は水鏡に近づいた。

背中から抱えられるようにして座らされ、何の躊躇も無くシャツの中に侵入してきた手のひらに水鏡が眉を寄せてからしばらくも経たないうちに、烈火の唇が水鏡の首に落ちる。

「…ん……っ」

耳たぶを噛まれ、その後ろに舌が這うと鳥肌が立った。

「水鏡」

低く響く声と同時に、胸を撫でていた手が腹まで落ちるが、ズボンに入り込んでくると思っていた手は意外にもそこで止まり、ウエストの辺りを彷徨う。
それは撫でるというより、くすぐるような触れ方で。

「…烈火」

「なに」

寒いからくっついてきた事は、まあいいとしても。…この状況は何だ。
しかも、『寒い寒い』と触れてきた手は水鏡の身体よりも熱く、その熱が水鏡に移っていく始末。
もっといい口実は見つからなかったのか。水鏡は溜息をついた。

「お前…、『寒い』んだろ?」

「寒い」

「僕の身体を触る意味はあるのか?」

「お前の体、あったけぇもん」

「…」

烈火の体のほうが熱いんじゃないかと伝えると、「気のせい気のせい」と流された。

抱きしめられている腕から逃れようと水鏡が力を入れると、腹にあった手が再び胸まで上がってくる。

「…っ!」

両方の手のひらで、押さえるように触れられ、動けなくなってしまう。今動けば、自分で自分を刺激してしまう事になるからだ。
水鏡は、自分の顔が赤くなっていくのに気がついた。

「逃げんなよ?」

少し笑いのこもった台詞。
うつむいた水鏡の頬にキスをすると、晒されたうなじに吸い付いてくる。
顔を上げその唇から逃れようとした時、胸にあった烈火の手が動き先端をつまんだ。

「あっ…!…っ…」

思わず出てしまった大きめの声を塞ぐため、両手を口に持っていくがそれを見た烈火はうなじから耳へ、舌を滑り込ませた。

「…ぃやだ…っ!」

直に聞こえる水音と、生暖かい舌での愛撫。胸を刺激していた指も徐々に強くなっていく。
口から手を外し、烈火の両手を掴むが逆に弾くようにされ全身が痺れた。

「う…っ、…ぁ」

膝が浮き、低いテーブルにぶつかる。その上にあるシャーペンが床に落ちるのが見えた。

わざとらしく耳元で音を立てる烈火が少し笑ったような気がした。
その舌も止まる事はなく、水鏡を追い詰めていく。
しかし頭を振り、それもどうにか逃げる事ができると、首を曲げ水鏡は烈火を睨み付けた。

「…お…っまえ!」

「……んだよ、邪魔すんな」

「ふざけるな…っ」

「本気だから邪魔すんな」

「烈…っ…」

烈火の片方の手が水鏡のあごを掴み、無理やり唇を重ねられる。
噛み付くようにされ強引に入ってくる舌は熱く、体と同じようにその熱も彼に移っていった。



背中から感じる烈火の体温が水鏡の体に移ってくると、水鏡は力強く目を瞑る。
首に感じる息遣いが神経を刺激して。

「ちゃんと見てろよ」

「…は…っ…」

烈火が水鏡の頬を撫でた。滑らせ、鎖骨に触れる。

「見てろ。俺がいつもどうやって触ってるか」

今日はそのために後ろから触ってるんだから。

いつもいつも目を開けさせる烈火が、いつになく真剣な口調で言った。

「どうしたら自分が感じるか、勉強してもらうからな」

「…っ」

と、いつもの表情に戻り悪戯っぽく口の端で笑うと。水鏡のズボンの中に手を入れた。




END
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