窓際問答

日差しも明るく差し込む午後二時。
半端に開けられた窓から時折吹き込む緩やかな風にレースのカーテンが揺れ、リビングの床を撫でていく。
午後のひとときを過ごすのにうってつけであろう心地よい風に吹かれるこの部屋の主は、普段なら寝転んで読書でもしているのだが。今日は、部屋の様子が違った。

「……っあ…」

目の前にある絨毯に爪を立て、肘をついた状態で男に組み敷かれていた。







それはいつものように、突然の訪問から始まった。
いつ作ったのか、水鏡すら知らない合鍵を使って自分の部屋であるかのように入ってきた烈火に何の用か尋ねると、滅多にしない冷たい目をして彼は薄く笑ったのだった。

「何の用、だって?俺が来ちゃマズイ理由でもあんのかよ」

そんな事は言っていない。烈火が約束も無しに来れば、水鏡がいつも聞いていることだし。何の悪気だってないのだ。
そんな烈火の反応に、水鏡はすぐ気がついた。こいつは、何かに怒っている。

水鏡は顔を上げて烈火を見つめた。

「機嫌悪いな、何かあったか」

水鏡の言葉に烈火は歯を見せて笑ったが、その様子を見ても、やはりいつもと違う感じは拭えなかった。

「べつに。ただ……」

言うなり腰を下ろして、水鏡の傍に座った。水鏡が烈火に視線を合わせると、彼の右腕が伸びてきて胸倉をつかまれる。

「…っ!」

ぐっと顔を近くに寄せられ、低めの声で呟いた。

「やらせて」





烈火の一言に反応する間もなく、襟を引かれ押し倒されると。シャツを破かんばかりの勢いで脱がされた。抵抗しようと両腕を突っぱねてみても、片腕とは思えない力で拘束され、器用に足を使い反転させられる。

「痛いっ…!」

「うるせえな」

後ろから手で口を塞がれる。髪の毛の隙間を掻い潜ってうなじに唇が落ちてくると、耳の下辺りに電流が走ったかのような痺れが起きた。

「……うう…っん」

腕の力や押さえつけ方は非常に乱暴なのに、どうしてか触れるところには優しかった。
首筋から背中の窪みにかけて丁寧に唇を這わせると、再び耳元に戻り舌を突っ込む。生暖かい愛撫に堪えきれず首を振ると、耳たぶを少し強く噛まれて熱い息を流し込まれた。

「ふう…、……うっ…」

「嫌いじゃないだろ?」

半分笑いが含まれた台詞だった。

「なあ?水鏡……」
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