キャンディー
「……『飴』じゃ、駄目だったんだよね」
「は?」
「だから、『キャンディー』じゃなきゃ、駄目だったのよ」
と、包みのラベルを指差した。確かに『キャンディー』と表示してある。
「で、探してたのか」
「うん」
「何で」
「え?だって、ラッキーアイテムが『キャンディー』だったから」
「……」
……ラッキー、……アイテム?
数回まばたきをし、水鏡は思考を巡らせた。
「……占いか?」
「そ」
烈火は笑う。楽しそうにする烈火から視線を外し、水鏡は小さく首を振った。
TVでたまにやる占いコーナーを見ていても、「占いなんて信じねぇ」と散々言っていたのは誰だったか。
同じ星座の奴全員が同じ運命だったら驚きだろ、と馬鹿にしていたのは誰だったか……。
今、この場で占い師に謝れ。
イチゴキャンディーの包みを開けずにもてあそんでいると、既に一つ口に含んでいる烈火に奪われる。
「イチゴなんて、可愛いの選んで……」
あーあ、全くよぉ……。独り言を言いつつ封を開け、そのまま水鏡の口元に運ばれた。
「何」
「あーん」
「いやだ」
「食え」
「やだ」
はっきりと断る水鏡の台詞にわざとらしく口を歪ませてから、烈火は身を乗り出して水鏡に近づき彼の顎を掴んだ。
「……っ」
「はい、あーん」
無遠慮に唇に触れたかと思えば、強引に押し込められる。烈火の指先が思ったより入ってきて驚くと、すぐに離れた。
水鏡の唾液に少し濡れた指を舐めてから
「うまい?」
作られた、甘ったるいイチゴの味がした。懐かしいような、喉に悪いような。
「……まぁまぁだな」
それでも素直な感想を言う。
満足そうにする烈火の顔が近づいてきて、今度は直接唇が重なって。
しばらくすると、ゆっくり離れた。
「うまいか?」
「……」
「どうなのよ」
「……烈火」
キャンディーが口に入っているせいでうまく喋る事ができず眉を寄せ、烈火の制服をつかんで、軽く口を開ける。
2つもいらない
じゃ、返して
再び重なる時には、夕日も沈み。
水鏡からの『懐かしく甘い』口づけを、烈火はひたすら味わった。
さそり座のあなた
全体運……○
勉強運……△
恋愛運……◎
ラッキーアイテム……キャンディー
END
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