キャンディー


今日の運勢

さそり座のあなた
全体運……○
勉強運……△
恋愛運……◎

ラッキーアイテム……




キャンディー




『一緒に帰ろう』と烈火から水鏡へメールが届いたのは、5時間目の最中だった。

「……」

またさぼりか、と眉を寄せて携帯を閉じた水鏡もまた当然のように授業中である。
自分の世界に入り、話に夢中になっている社会科教師を横目で見てからすぐに視線を表へ移し、小さく溜息をついた。



その後すぐにもう一通届いた内容は、『放課後行くから』という簡単なもの。
空も薄暗くなってきた5時。待つのが面倒なら帰ればいいものを、大人しく教室にいる自分が少し可笑しかった。
教室にはもちろん残っている生徒はおらず、水鏡は一人机に伏せって彼の気配を待った。


それからどれくらい経ったか。ガラガラ、という扉の音で意識が戻ると同時に、自分がいつの間にか眠っていた事に気づく。

「ごめん、遅れた」

「……遅い」

ごめんて、と苦笑する烈火の顔を見つつ、なぜ素直に待っていたのか理由が見つからない事に軽く疑問を感じた。それも、ほんの少しの事で、烈火が目の前の椅子の背もたれを抱えるように座り向かい合うと、その手の中の物に目が行った。

「?」

「何がいいか迷ってて……」

烈火の両手から零れて机の上に散らばったのは、色とりどりの可愛いフィルムに包まれた小さい『物』。

「……烈火」

それを見つめて水鏡が呟くが、烈火は楽しそうに言った。

「メロンとイチゴとオレンジ、ミルクもあるし。……どれがいい?」

「烈火」

「なに?」

「これは、……なんだ?」

烈火は水鏡の台詞に一瞬目を大きくしてから、机の上の『物』を一つ取る。

「やだ、水鏡。キャンディー、知ってるべ?」

それをクルクルと回しながらのからかうような烈火の言葉には水鏡は返事をせず、彼と同じように机の上のキャンディーを取った。

「イチゴがいいの?」

烈火は水鏡の包みを確認すると、じゃあ俺はー……と悩み始める。

「……」

これがいいか、どれにしようとぶつぶつ呟いている烈火をよそに、水鏡は眉を寄せた。

これだけ待たせておいて、飴を買ってただと?

罪の無いイチゴキャンディーを睨んだ。

すると、ふいに烈火が顔を上げ、水鏡を見つめてくる。
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