A wonderful day -AFTER-
「小金井にも、言っておかなきゃいけないな」
思い出したように烈火に言った。
「何を?」
「出禁解除」
そういえば小金井にも『水鏡宅出入禁止令』を出していた事を思い出した。
それを聞いた烈火は、片手をひらひらさせる。
「あー、別にいいだろ」
「でも…」
「図に乗るぞ、奴は」
「人の事言えないだろ…」
呆れた様子で、眺める。一番調子に乗りやすいのは、何処の誰だ。
「俺はいーの」
お前が決めるな、と言いかけたが、面倒臭いのでやめた。きっと、「まぁまぁ」といって、流されるに決まっているからだ。まったくこの男は……。
「ところで」
もやもや考え事をしていた水鏡は、烈火の声で顔を上げた。
「もうそろそろ、限界だけど」
「は?」
「『は?』じゃなくて……」
何の話だか、よく分からなかったが、烈火が近づいてきたところで理解できた。
遠慮なく頬に触れてきて、無意識に上げてしまった手をつかまれる。
「…れ……」
少し強めに握られると、どういうわけか心臓が痛かった。
「…っ」
「許してくれたついでに、触るのも許してくれると非常に嬉しいんだけど……」
近づく唇が目の前に来た時、水鏡は真正面から烈火を捉える。
「……そういうのは、触る前に訊くものだろ…」
「あー、…そうか…」
触れる唇に全身の神経が集中した。すぐに舌が滑り込んできて絡め取られる。
「…っ…ん」
深くなるにつれ無意識に頭が下がってしまう、それを烈火は下から掬うようにして奥まで求めた。歯列をなぞり、敏感な上顎に舌を這わせれば嫌だと言わんばかりに顔を離そうとする。
「水鏡…」
一旦唇を離し、脇の下から腕を入れる。足の間に身体を割るように入れ、隙間なく抱きしめた。再び唇を合わせると、今度は水鏡の腕がねだる様に首に回される。
「…っ…」
「…」
背中に回された烈火の腕は腰に回り、敏感な部分が触れ合う形になった。烈火の熱に慣れている体は、怖いくらい反応した。少し触れていないだけで倍増する快感が、体中を走り、支配する。信じられないほどの眩暈にどうにかなりそうだった。
押し倒されても水鏡の腕は烈火の首を離すことはなく。
「…ふ…っ、…んん…」
キスが欲しい。
混じる唾液を飲み込むのも面倒で、溢れれば烈火が舌で追い、また重なる。
麻痺するほど味わって、離れたときには目元が熱かった。
「…は…、っ…ぁ」
「…いつになく積極的だこと…っ…」
「……るさいっ…」
ニヤつく烈火はそのまま、水鏡の首筋にキスを落とした。噛み付き、吸い付く。痛みを感じるほどに。
「…いっ…」
でも、それ以上に痺れるのはなぜなのか。
体中を余すとこなく撫でられ、顔中にはキスの雨。両手で水鏡の顔を包み烈火は薄く笑うと、唇に噛み付くように口付けた。離れて目が合うと、ひどくむかつく顔をしていたので、仕返しをしてやった。
無言で、お互いを味わった。