Word of Love


「簡単なことなんだけど…」

珍しく口ごもる烈火が新鮮だった。

「あのな…」

「待て」

「?」

「出来ないことはしない、…からな」

少し驚いた顔をした後、烈火は笑った。

「いや、出来るよ」

どうだか…。

「俺、お前が好きなんだけど」

「…はぁ」

そんなのは知っている。何度も聞かされてきたんだし。

「でも。お前からね、聞かないだろ。そういうの」

「……いやだ」

「何も言ってないだろ、まだ…」

苦笑する烈火。
だが、予想はついてしまった。つまり、「言え」という事だろう。
その、告白というやつを。

「言いたくない?」

「…」

無言で頷く。この関係になってからそれを口にしたことなんてほとんどない。
何を今更、改まって言わなくちゃいけないのか。気まずいにも程がある。

「あれだけ、俺が好きだって言っても?」

「…ぁ」

そうか、あれはそういうことだったのか。
数日前からやたら自分のことを褒めて。色々な所を好きだと言っていたのは、これを言わせるためだったのか。
抱かれているときの違和感はこれだったのかもしれない。
その烈火の行為を思い出すと、自然と笑いがこみ上げてくる。

「お前も、つまらないことするんだな。烈火」

「…悪かったな」

つまらなくて。と、拗ねる仕草をした。
それでも、そこまでしてもやっぱり言って欲しいのだろうか。こんな陳腐な台詞を。

「烈火」

「ん?」

「そんなに言って欲しいか」

「そりゃ…、そうだな」

「たったの三文字だ。安いとは思わないのか」

『好きだ』という言葉に何の意味があるのか。未だに掴めていない自分がいる。
だからきっと、口にするのに抵抗があるのかもしれない。
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