Word of Love
その夜。
烈火が家にやってきたのは夜遅くになってからだった。日付も間もなく変わろうとしている。
「風子が心配してた」
「は?なにが」
リビングでTVを見ながら寛いでいる烈火が、横にいる水鏡を見た。
その視線には振り向かず、水鏡はTV画面を見つめる。
「お前が最近、静かだって」
パーティーが出来るか出来ないかの心配なのだが、あえてそれは口には出さない。
その水鏡の台詞を聞いた烈火は、軽く首をかしげた。
「そうかぁ?」
「見えるらしい、あいつには」
烈火は「ふーん」と、隣の綺麗な顔を眺める。
「お前もそう思う?」
「…」
いきなり自分に質問されるとは思っていなかったので、少し驚いた。
視線をTVから外し、烈火を横目で見る。
「…少しは、そう…なんじゃないか」
「へぇー」
「なに」
笑いが含まれた烈火の感嘆に、眉を寄せる。
「いや、別に」
「…」
「…そういえばさ、水鏡」
「?」
ふと話題が変わった。
「俺、明日誕生日なんだけど」
「…知ってる」
「あ、知ってる?」
「だから?」
「『だから』って…、冷たいね、お前…」
ガクッと頭を落とす烈火。
他にどう反応すればいいのか水鏡には分からなかったから、こういう台詞を吐いたのだが。
烈火にとっては、ちょっと冷たかったらしい。
「俺、欲しいものがあってさ」
あぁ、そういうことか。
水鏡は納得した。
「それでお前に…」
「僕にどうしろって?」
「話が早いね、水鏡」
こいつの欲しいものが、金で買うようなものじゃないことぐらい一緒にいれば想像ぐらいつく。
烈火はTVをリモコンで消すと、水鏡に向き直った。それにつられて、水鏡も正面に烈火をとらえる。