Word of Love

「でもさ」

「?」

「もったいないべ」

何が。
とは、声には出さなかった。烈火の言葉の続きを聞く。

「俺、お前の身体好きだから。隠すのがもったいない…と思う」

「…馬鹿馬鹿しい…」

だから寝ている自分の服を脱がしたというのか。ただの変態だ。
しかも可笑しいことに、裸の自分の姿を見ながら缶ジュースを飲んでいたのだ。
水鏡は枕に顔を埋め、烈火から視線を外した。
どこのオヤジだ、お前は…。

「だからー、その格好が好きなのよ。俺」

「脱がすか?普通…」

「いや、それを見ながらこう…」

と、缶を水鏡に見せた。

(だめだ、こいつ…)

救いようがない。
いつだってそうだ、水鏡が「うるさい」といってもしつこく感想を言う。行為の途中でも後でも前でも。それは変わらずで。

「服、着たい?」

「あぁ」

「寒い?」

「あぁ」

「そっか…」

烈火はゆっくり立ち上がると、横になっている水鏡に近づいた。ベッドに足を掛けるとスプリングの音が聞こえる。
足元に固まっておいてあった掛け布団を手に取り、滑らかな肌に滑らせるように覆っていく。
しかし、服を着ることは許されていないようで。

「服なんて、着なくていいだろ」

水鏡に布団を掛けると、そのままベッドに腰をかけた。

「馬鹿かお前。服は着るためにあるんだ。着ないでどうする」

横向きになり、烈火を見上げる形で呟いた。何を当たり前のことを言わせるんだ、この男は。
すると烈火は少し目を大きくした。

「…脱がすためにあるんじゃねーの?」

「…そう思ってるのはお前だけだ」

残念だったな。

「そう?」

返事をするのも億劫で、瞬きをすることで意を表した。

そのまましばらく目を瞑っていると、顔の近くに気配を感じた。
目を開けると烈火の手が近づいていて、細い水鏡の髪を撫でる様に梳いていく。
すぐに、眠気が襲ってきた。
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