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第六章

「ただいま…」

自分の家の玄関に、おそるおそる入る私。


…りっちゃんの家であったことを思い出し、

少し身構える。


何か異変があるのが…こわい。

台所には、パパとママがいた。


「ただいま…パパママ…」

おそるおそる声をかけてみる。

「ああ、お帰り」

…普通だ。

…でも油断はできない…。


「今日はあなたの大好きなカレーライスよ」

「え?う、うん…」


久しぶりに帰ってきたというのに、

パパとママは全然驚かなかった。


「……。

え、えっと、私、部屋に戻ってるね」


「ええ、ご飯できたら呼ぶわね」

「うん」







私は二階の自分の部屋へと向かった。

…部屋には私の荷物があった。


(……私の…荷物がある。東京にあったはずの荷物が。


お気に入りの本や洋服、そして家具。


…だけれど見慣れない物もちらほら混じっている。


例えば机の横のコルクボード。

…そこには数枚写真がプッシュピンでとめられていた。



(りっちゃんと…私だ…。

…でも、りっちゃんと私の距離が近すぎる…。

これじゃ恋人の距離だよ…。

なによりも…こんな写真とった覚えない…)



階段を降り、台所にいる母親に尋ねる。


「ねえ、りっちゃんは…どうして死んだんだっけ…?」


「…急にどうしたの、紗奈…」

「教えてママ…」


「りっちゃんは、去年、事故で…」


「……そう」


「私、りっちゃんと、恋人同士だったの…?」


パパとママは顔を見合わせる。


紗奈は一体どうしたんだ?という表情。


「ううん…なんでもない。

私、部屋に戻るね」


「え、ええ…」



トントンと階段をのぼる。


そもそもこの部屋…”私の部屋”は入ったとたん違和感があった。

そう…”生活感”がありすぎるのだ…。


ついさっきまで、誰かが暮らしていたような…。

そして私の物のようなものもあるが、そうでないものも混じっている。



ここは私の部屋なようで…

私の部屋じゃない…。



流石にただ事ではない何かを感じ取っていた。











その時ふと、”背表紙が真っ黒な本”が目にはいった。


(…何これ…)



本棚から取り出してみると、表紙も、裏表紙も、外側全てが真っ黒だった…。

その本が何故かとても気になり、パラパラと数ページめくってみる。

そこには文字は解読できないが、

謎の儀式のようなもののイラストと、

悪魔…のようなイラストが描かれていた。



(こんな本は…私…知らない…。

一体誰のものなの…?


この部屋は…誰のもの…?)

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