第四章

病院に着いてしばらくすると、

病院の人に、今から警察がくると言われた。

私はここでは死んだ人間。

説明が大変だし、事情聴収などで拘束されて

身動きがとれなくなる可能性がある。



りっちゃんは集中治療室。

そばにいることもできない。




(どうしよう…。

とりあえずここは離れた方がいいかな…。



ううんと…)



きょろきょろとあたりを見回す。





(…非常口…。


外に、繋がっているのかな…。


…鍵、かかってない。


こういうところって開けて外に出ても、大丈夫なのかな…?



…特に注意書きもないし、

鍵があいてるってことは、大丈夫だよね)



私は非常口の扉を開け、外に出た。





(あ、風…気持ちいい…)


心地のよい風に、ちょっとだけほっとする。



(病院の空気は…苦手。


なんだか、悪いことばかり考えちゃって…)




「律、大変なことになっちゃったね~」

突然現れ、話しかけてくるラビス。

ラビスは宙に浮いている。


「ラビス…」




「それにしてもあんな律、めずらしいよね。

戦いとか苦手なのに、怪しい奴に向かっていくなんてさ。

あそこで逃がしちゃったら、また紗奈ちゃんが危ないって、思ったんだろうね~。

まあ、紗奈ちゃん殺した犯人かどうかは分かんないけどさ。

よっぽど紗奈ちゃんを守れなかったのが、悔しかったんだろうね」





「ラビ…あの時、いたんだ…」

「うん」

「ど…して…どうしてりっちゃんを助けてくれなかったの…。

あなたの力なら、人間なんてどうってことなく倒せるんじゃないの…?」


声が震える。
涙がにじむ。


「え?だって契約は律を君の世界に連れて行ったり、

帰ってきたり…

行き来できるようにするってとこまでだし?

むしろ律には、はやく死んでもらった方が、

魂はやく手に入っちゃうからね。クスクス…」



「…そんな…そんなのって…」


「ごめんね僕、悪魔だから。

クスクス…」

「……」


(…ラビスには…いつのまにか少しだけ…気を許してしまっていた。

…でもラビスは、やっぱり…悪魔だ…)



「ところでさ、一人でこわいでしょ…?
僕が守ってあげようか…?

契約してくれたら、僕全力で守ってあげちゃうんだけどな?」


「近づかないで。

誰が…あなたなんかに…」


「クスクス。じゃあ一人でがんばってね?
また危険な目にあっちゃうかもしれないけどー」


そういうとラビは私の目の前から姿を消した。


「……」





ラビがいなくなると、ぶるっと寒気がした。


あんなやつでも、話相手がいるだけましだったんだろうか…。




どうしよう…

これから一体どうすれば…

私一人で、何ができる…?




警察を頼ろうにも、私は死んだ人間…。
一体どう説明すれば…。



とりあえず、警察に相談だけでも…。

…でも、何も手掛かりなんてつかんでない…。



今日一日、私は一体何をしていたんだろ…。

無力…すぎるよ…。


りっちゃんも、こんな思い…してたのかな…?



…りっちゃん…。


りっちゃんお願い……。



無事でいて……。





”ゴッ”…


あっ…と思った時には、もう遅かった。


頭に鈍痛がし、

意識が遠くなっていくのを感じた。




…人の気配…。

おちる…黒い影…。



私は誰かに、頭を…殴られ…


そのまま意識を…手放した。
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