第四章

ホームセンターに寄った後、

私たちは、晩ご飯の買い物をし、りっちゃんの家に帰ってきた。


今日の晩ご飯はりっちゃんのリクエストのビーフシチューだ。


疲れてるだろうから、食べて帰る?って

りっちゃんは聞いたけど、

なんだかんだいつも作っているから、そこまで苦じゃない。



アパートにつくと、りっちゃんの部屋に向かった。


りっちゃんの部屋は102号室だから

すぐに部屋にたどり着いて楽だ。



「じゃあさっそくご飯作るね」


「何か手伝おうか?」


「ううん。
いつも作ってるから大丈夫だよ。
りっちゃんは、あっちの部屋でゆっくりしててよ」


「う、うん」



(一人分じゃなくて、誰かの分作るのって

久しぶりだな…。


ビーフシチューか…。

そういえばこっちの世界のりっちゃんも、

ビーフシチューが好きだったような気がする…。


…1人分以外は久しぶりだから、分量とか間違わないように、

気を付けないとね。




「はい、どーぞ」

「わーおいしそうだな」


出来上がった料理をテーブルの上に置くと、

りっちゃんは子供のように目を輝かせた。


「なんか…感動だな…

紗奈の手料理が食べられるなんて…。

…結局僕たち、一緒に暮らしたことは、なかったから…」


そういうとりっちゃんは少しだけさみしそうな顔をした。




「ん、口に合うかどうか分からないけれど…」


「ありがとう、紗奈…。


それじゃ、いっただっきまーす」


スプーンを手にしたりっちゃんが、ビーフシチューを食べようとした、


その時、


急にりっちゃんの手が止まる。


「え、え、どうかした?」


「……」





りっちゃんの視線はご飯を離れ、ベランダの方をみていた。


急に立ち上がり、りっちゃんはベランダの方へ。


そこには怪しい人影があり、

その人影は、りっちゃんの様子に気づくと、

逃げ出した。



「…待て…!!」


りっちゃんがベランダの戸を開け、人影に突進した。


人影はよろめく。


「くそ…」




人影は再び逃げだした。


りっちゃんも後を追う。

私も慌ててその後に続いた。




電灯でかすかだが背格好が見える。


人影…

多分男…は中肉中背。歳は…ちょっと暗くてよくわからないが、

りっちゃんよりは上…な気がした。



男はそのまま逃げ続けると思ったが、道が行きどまりだったのか、

急に方向転換し、私とりっちゃんの方に向かってきた。


「…!!」



もみあう男とりっちゃん。


りっちゃんは男を投げ飛ばす。


「かはっ…」




(ど、どうしよう…どうすれば…)


「だ、誰か…誰かきてください…!!」


走ってきたのと、

胸がバクバクいっているせいで、

声がうわずってしまう。


(そ、そうだ、緊急用のブザー…)

私は防犯ブザーを取り出し、それを鳴らす。


辺りにブザーの音が鳴り響く。




「うっ…」


りっちゃんのうめく声。



りっちゃんの脇腹から、血が滴る…。



「りっちゃん…!?」


「だめだ紗奈、来るな…!!」


絞り出すようなりっちゃんの声。


男は私を突き飛ばし、その場から逃げ出した…。




…私はりっちゃんに駆け寄った。

もみ合っていた男は、ナイフでりっちゃんを…。



「りっちゃん…りっちゃん、しっかりして…!!」
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