第三章

まずは私の家にいくことになった。


りっちゃんが言うには、
こっちの世界の紗奈もどうやら東京で一人暮らしをしていて、
りっちゃんとは恋人同士ではあるが、遠距離恋愛だったとのこと。


今いるりっちゃんの家は、東京にあるのだけれど、
パラレルワールドの私がこの世を去った後、
事件をいろいろ調べるために、急きょ借りたものらしい。

ちなみに部屋は1階の、102号室だ。


…今現在、私の部屋は定期的に警察が出入りしているらしい。


パラレルワールドとはいえ、

自分の部屋に知らない人たちが出入りしているというのは、

なんだかちょっと複雑だ…。



幸い、今日は警察の出入りはなさそうだったので、

私達はさっそく部屋に入り、いろいろ調べてみることに。

…しかし特にこれといったものは見つからなかった。



あえて気づいたことを言うなら、

りっちゃんとは恋人同士だったんだな、と思ったくらいか。




学校にも行ってみたが、

特に有力な手掛かりは得られなかった。



…素人が聞き込みするぐらいで犯人が見つかるなら、

警察がとっくに見つけているってことだろう…。




因みにりっちゃんは既にもう何度か聞き込みをしていたみたいだ。

「君の視点なら、なにか違和感を感じるかもしれないから」

ということで来てみたが、

とりあえずあからさまな異変を感じる人や

おかしな動きをする人もいなかった…。



…っといっても、ここは、私の世界とは別世界だし、

どこまで自分の感覚を、あてにしていいのかは分からないけれど…。



ラビスはずっとついてきて、クスクス笑っている。

犯人さがしに、特に協力する気はないようだ。



次に向かったのはバイト先であるカフェだ。

といっても、ここで働いていたのはここの世界の紗奈だけで、

私はここでは働いておらず、店の人は皆初対面だった。


(…うーん…初対面だけど何か分かることあるかなぁ…)




カフェは個人経営のお店らしく、

おしゃれだが、店内はそこまで広くない。


テーブルとテーブルの間隔も、

2人で横に並んで歩くのはためらわれる狭さだ。




とりあえず中に入り、話を聞くことに。

奥の方へと案内されたその時、中から出てきたお客の一人と

どんっとぶつかってしまった。


「あ、すみません」
男性の声。

と、同時に、
ぶつかった衝撃でサングラスが外れる。

「きゃ…」

私はあわててそれを拾うと、ささっと顔に付け直した。


(危ない危ない…りっちゃんのだからちょっとゆるめなんだよね…)



チラッとぶつかった人を見る私。

「す、すみません…」

とりあえず声をかけてみる。


ぶつかった人…”男性”は…

私の方をみて、驚いている…ようにみえた。


「あ、ああ、いえこちらこそ…」


そういうと男性はそそくさと出口に向かい、扉を開けると、

外に出ていった。


(…なんだろう…今の人、私の顔をみて、動揺していた…?)




「りっちゃん、ちょっと…」

「え…?」


りっちゃんに今あったことを話す。


「私、ちょっと、追いかけてみようかな…?」

「ん…一緒に行こう、紗奈」

「うん」





結局2人で追いかけてみたものの、
ぶつかった男性の姿は、既にどこかに消えてしまっていた。


「……」


その後、予定通りカフェで聞き込みをしてみたのだが、

大した手掛かりを得ることはなかった。



「…暗くなってきちゃったね。

…今日はもう帰ろうか」

「…そうだね」
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