第二章

そんな感じで私はりっちゃん、ラビと一緒に

”私が死んでしまった世界”に来た。


降り立ったのは、パラレルワールドのりっちゃんの家だ。



「そういえば、こんなにほいほいきちゃって、

世界の歪み、とか大丈夫なのかなぁ…」


「君が死ぬかもしれないのに、世界の歪みとか言ってられないよ」

りっちゃんがピシャリと言った。


「…ま、まあそうなんだけどさ、

ちょっと気になったっていうか…」


「まあ余程のことをしない限り、

世界が滅びるほど歪んだりはしないから大丈夫だよ。紗奈ちゃん♪」


ラビが笑いながらそういった。



なんとなくりっちゃんの部屋を見渡す。

りっちゃんの机の上には…”私”の写真が飾られていた…。



「…ところで私はあなたの紗奈じゃないんだけど、

あなたの紗奈のことは、いいの…?


まだ未解決なのに…」



わたしはちょっと引っかかったことを口にした。



「実は紗奈が死んでからすぐに君のところに行ったわけじゃない。

もう半年以上たってるんだ…。
でも犯人はまだ捕まっていない。



それどころか、僕まで容疑者になってる。

僕はどうすることもできない気持ちにいら立っていた。

大事な人を守れなかった悔しさも…。

犯人をみつけられない無力さも…。


半年間…僕はひたすら、紗奈を守れなかった自分を責めて責めて…

…泣いていただけだよ…」


「りっちゃん…」



「そんな時、ラビが現れて、紗奈の生きてる世界があるけど、

今すぐ助けないと、危ないっていうから…。


こんなこと言っちゃうと、君にとっては、あれかもしれないけど、

最初は”時間を巻き戻してほしい”っていったんだ。

今度は絶対助けたいからって…。

…自分の世界の紗奈を…。



でも、ラビは”隣り合っている世界”に行くのは実は簡単だけど、

時間を巻き戻すのは、かなり大変だって…。

僕一人の魂じゃパワーが足りないって。

…いや”報酬として見合わない”…っていったかな?



…僕は別に紗奈のことを忘れたわけでも、

君と一緒にここで暮らしたいわけでもない…。

ただ、パラレルワールドに生きている紗奈がいて、殺されそうになるかもって聞いたとき、

やっぱり助けなきゃって…。

いてもたってもいられなくなっただけさ。


それに君といれば、膠着状態になっている現状を打破して、

犯人に近づけるかもしれないからね」


「そ…か」



それを聞いてちょっとだけさみしくなった。



前にパラレルワールドの紗奈が言ってたことが、
ちょっとだけ分かった、かもしれない。

目の前のりっちゃんは、りっちゃんにすごく似てるけど、

同じ世界で共に生きてきた、りっちゃんじゃ…ないんだなって…。

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