第五章

「な、きさま…」


りっちゃんはいきなり男を蹴り飛ばし、

男を床に這いつくばらせ、ナイフを吹っ飛ばした。



そしてそのまま男をガスガスとけりつける。


しばらくしてこっちの方を振り向くと


「大丈夫だった?」


と、声をかけてきた。



「り、りっちゃん…!?

ど、どうしてここに…?

け、怪我は…怪我は大丈夫なの…!?」


「ん~まああんま大丈夫じゃないよ。

ってか残念。僕ラビだよ~

律の体を借りて、助けにきたよ。クスクス~」


「え…

ラビス…?」


「うん」


「……」



「ね、こわかったでしょ?

助けてほしい…?


「……」


このままじゃ、そこにいる男に、何されるか分からないよ…?

まだとどめ刺してないし~」


「……」


「ほら、この世界の紗奈ちゃんは、死んじゃってるわけだし…?」



(こわい…けど悪魔なんかに助けられたくない…!!)



「ラビ、僕の魂なら持ってっていいから、

紗奈には手を出すな」


「おっと、律

あんまり表に出てくると、体もたないよ」


「ラビ。紗奈には手を出すな」


「クスクス。

じゃあこの体で、律が、がんばっちゃう?」


「うっ…」


「それじゃ、がんばってね~」


りっちゃんはふらつき、床に倒れそうになる。



「りっちゃん…!?

りっちゃん大丈夫…!?」


りっちゃんの服から、血が滲み出る。


「……!

りっちゃん…血が…」



「ラビが…僕の体から離れたから…

傷が開いた…」



「そ、そんな…

ラビ、ひどい…!!」



「紗奈、僕なら大丈夫だから…。


紗奈を守るためなら、こんな傷なんて…。

僕は…僕の世界の紗奈は…

守れなかったから…」



瞳を潤ませるりっちゃん。




「きさま…」


男がりっちゃんに近づいてくる。


りっちゃんは男を殴りつける。



「り、りっちゃん、パラレルワールドの紗奈を殺したのは、

多分そいつだよ。

気を付けて…!!」


「……」

りっちゃんの表情が怒りに変わった。

そして男に…つかみかかる。



「どうして…紗奈を殺した…。


警察なんて必要ない…。


僕の手で…殺してやる…」



りっちゃんは男の胸倉をつかみ、ひっぱりあげた。

男も負けじと反撃する。

もみあう2人。

「りっちゃん…!」


(…っ。りっちゃんに加勢したいのに、手足を縛られていて、何もできない…)


…しばらく2人は互角くらいに戦っていたが、


一瞬のふいをつき、りっちゃんは男を投げ飛ばした。


「う、ぐぅ…」

男のうめき声。


男は気絶したのか、ガクッとうなだれた。

と、共に、膝をつき…そして倒れるりっちゃん。


「…りっちゃん…?」


りっちゃんの体から血が、どんどん溢れ出てくる。



「クスクス。僕がいないと動けないというか、

意識が保てないレベルで傷おってるし?

まあそうなるよね~」


「ぅ…く…」

りっちゃんが苦しそうにうめく。





「ラビ、なんとかして…!!
りっちゃんが死んじゃう…!」


「契約する…?

僕優しいからとりあえず魂、半分でいいよ?」


「……。


…する、するよ…。

だから、りっちゃんを、助けて…」




「OK。契約成立だよ」



そう言うとラビスは、りっちゃんの体に重なった。






ラビスが乗り移ったからなのか、りっちゃんの出血は止まった。

「よーしじゃあ次は、

そいつが目を覚ます前に拘束しないとね~ふんふん」


そういうとラビスはロープのような謎の道具を生成し、

手も使わずに男をグルグルと縛り上げた。


「はい、いっちょあがりぃ」




その後ラビは、

私を拘束していたロープも私に近づくこともなく

スパッと切ってくれ、

倉庫のシャッターも鋭いキックでぶちやぶり、

あっという間にそこから脱出することができた。


「んーとりあえず、ピンチは切り抜けたと思うけど?」

「う、うん…ありがと。

と、とりあえず、病院と、警察に連絡する…」



(って…携帯電話がない…)


「こ、公衆電話は…」


おろおろする私。


「はいはい、電話ならここにあるよん」


ラビスがスッと携帯電話を差し出してきた。




「後、律は僕が連れて帰るから大丈夫だよ♪

来た時も飛んできたし。翼で」

「え……。

まさかりっちゃんの姿で…?」

「うん、屋根の上をポンポン跳んだりね」


「うわ……」


(も、目撃者…とかいないよね…??空飛ぶりっちゃんの…)
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