第五章

はっと気が付くと

視界は真っ暗だった。


…少し頭がズキズキする…。

そして手や足は何かに縛られているのか動かせない。


(えっと…私…どうなったんだっけ)


ガタ、ゴト、と地面が揺れる。


(…ここは車の中…?








しまった…

りっちゃんのことで頭がいっぱいで…。


もともと狙われていたのは…パラレルワールドの…私…。




どこに行くんだろう…。

どこかに着いたら…

私は殺されるんだろうか…)



どうすることも出来ずに、車が止まるのをひたすら待つ。


しばらくすると車は停止した。




(…とりあえず寝ているふりをして、様子を伺うしかない…か…)




体を持ち上げられ、

どこかの冷たい床に降ろされる。



そして目隠しや口に付けられていた何かが外されると、

あごをくいっと持ち上げられた。


(何…?顔を見ているの…?)




こわさのあまり、思わず顔を背けそうになる。

(だ、だめ…寝てるふり…)



あごをくいっと持ち上げた”誰か”は私から手を離すと、

ガサゴソと荷物をあさりだした。


…手元がキラリと光る。


私はゴロゴロと転がり、不格好によけた。





「起きていたのか…」


男性の…低い声…


顔は隠している。



転がって、少し離れてみたものの、手足を縛られている以上、

逃げ出すことも出来ない…。



心臓は激しく音をたてていた。





「お前はなんだ。

どうして生きている…?

確かにこの手で殺したと思ったが…」





「……」



「…答えないか。

まあいい。


最初はさすがに驚いたが、

ただの人間のようだしな。


大方、姉妹か双子かというところだろう」




(パラレルワールドの私を殺したのは、こいつ…?

私の顔をみて、驚いて、

何者かを調べる為に、わざと私をここまで運んだの…?)




「…あなたは…誰…?」



「……なるほど。

その様子だと、俺が殺したということは

特につかんでいなかったようだな。


…かわいそうだが

君にはここで死んでもらうよ」


もう一度ナイフをかまえる男。




(…殺される…。


…どうすることもできない…




こわい…こわいよ…


助けて…


助けて…りっちゃん…!!)




"ガシャーン"…
そこにガラスの割れる激しい音が鳴り響いた。


「なんだ!?」っと男の声。



私はいつのまにか固く閉じていた目を開いた。

倉庫…らしき場所の天窓のガラスが派手に割れ、

そこから何者かが入ってきたようだ。


明かりといえば月明かりとランタンのみ。

その薄暗い明かりに照らし出された人物は…。


「…えっ!?りっちゃん!?」


なんと、そこには、りっちゃんが立っていた…。
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