第三章

ホテル到着。

「本当に、ありがとう…ございます」

「後これ、俺の連絡先。

何かあったら連絡して。

…っと思ったけど、携帯電話もないんだっけ…」

「う、うん…」

「あ、でも、お金さえあれば

公衆電話が使えるかな。

はい」

お金を渡される。

(受け取っていいものか…)


「うぅ…必ず返しますので…」

再び涙目になる私。

するとカナトさんは

ふわっと私の頭をなでた。

「……」

思わずカナトさんを見上げる私。


「あ、ごめんね、思わず…」

「え、いえ…」

(び、びっくりした…)


「……。

それじゃあね。紗奈ちゃん」

そういうとカナトさんはホテル外へと続く自動ドアに足を向けた。



ギュ。


私は思わず
カナトさんの服のはしをつかむ。


「…えっ」

驚くカナトさん。


「…どうしたの…?

行って欲しくない…?」


こく、こく

思わず、うなずく私…。


また一人ぼっちになるの…こわい…。



カナトさんはまたもや何かを考えている。

「…よし、分かった。
君の部屋の近くに、泊まれるかどうか聞いてみるよ」


カナトさんはそのままスタスタ、フロントへと向かっていった。


「……」


カナトさんがこっちを向き、笑いかけてくる。

部屋はどうやらとれたみたいだ。








「それじゃ、俺、隣の部屋にいるから」


「う、うん…。

ありが…とう…」


「いや。今日はゆっくり休んで」


「…うん」


そう言葉を交わすと

私は301号室、カナトさんは302号室の部屋へと入っていった。







私は部屋のベッドの上でカナトさんとのことを思い出していた。


(…あまりの心細さに

私、とんでもないわがままを言っちゃった気がする…)


いろいろな感情が心を占め、

顔が熱くなっていくのを感じた。


(…それでも、嫌な顔一つしないで、付き合ってくれた…

…優しい…人なんだ。


私、カナトさんといると…安心する…みたい)


…そうこう考えているうちに

私はとろけるようにベッドに沈み込み、

いつの間にか眠ってしまっていた。
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