第三章

傘も持っていなかった私は、

とりあえず近くの公園に向かうと

屋根のついているイスの上に座った。



(寒い…寒いよ…。

私…これからどうしたら…)

涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。


「うっ…ひっく…ぐす…」


泣いてもどうにもならないことはわかっていたけど、

涙はどんどんこぼれおちていく…。




そこにザクザクと地面を踏みしめる音が聞こえた。



「…お前、こんなところでどうしたんだ。

…泣いてるのか…?」



急に声をかけられ、ビクッとなる私。



顔をあげると…黒髪長身の、きれいな顔立ちの男の人が、

傘を持って立っていた。



「……」

「家出少女か…?」


「……。

家出…じゃないけど…行くところがないの…」


「……」

「……」

そこにぐぐーっとお腹が鳴る音が鳴り響いた。
もちろん私のお腹だ。


「何も食べてないのか…?」

優しく尋ねる声に、私はこくこくとうなづいた。
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