第七章

ふらっと倒れるパラレル紗奈。


「う、ごほっ…」




「あらら…これは…

ざっくり、決まっちゃったかな…」

ラビスが言う。
立てないパラレル紗奈。


「……」


「……」




「そ…んなこと分かってるよ…

もう一度…一目でいいから…

会いたかっただけだよ…



ごほっ…


好きだった…


愛してた…


もう一度…声聞きたかった…。


うっうっ」


「……」




「ねえ紗奈ちゃん。

別にここの世界の律と仲良くなったっていいんだよ。

パラレルワールドの律って言ったって全然別人ってわけじゃないからさ。

パラレルワールドの人達はどこかで”その人達本人”と繋がってるんだ。


だからね、大丈夫だよ紗奈ちゃん。

これからここの世界の律と思い出作ろ♪」


「そんなことはさせない…!」


カナトさんは四角の物体を破りラビスを攻撃した。


「カナトさん…!!」

(髪の毛の色が…変わってる…)




「へえ…その結界を破れる人間って実はあんまりいないんだよ。

すごいね。

…めんどくさいけど、邪魔されたくないから

君から先に、片付けることにするね♪」



カナトさんとラビスが戦う。

…ラビスの方が強い。


カナトさんはラビスに鋭い攻撃を受け、

海の方へと蹴り落された。


「カナトさん…!!」



「あは、あは、おっかしーっ


それじゃ対決の続きやろっか?」


「やだ、やだ…カナトさん…!!」


「…ん、それとも、あいつと同じとこにいく…?」


ラビスは私をふわっと抱きしめると
宙に浮いた。


下は真冬の海。


「クスクス。

ね、僕が手を放したら、どうなると思う?

ほら、僕にもっとしっかりつかまらなきゃ…

おちちゃうよ…?」


(や…)



「なめるなよ…」

ラビスを吹っ飛ばすカナトさん。


私は気が付くと…カナトさんの腕の中にいた。

(…テレポート…?)



「ぐっ…なん…だと…」


「ラビくん…!!」

パラレル紗奈が叫ぶ。




カナトさんは私を地面におろすと、

再びラビと戦う。


「…くそ…貴様…力をセーブしてたな…?


油断…した…


ごほっごほっ…」


地面のあるところまで戻ってくるラビ。





「ラビくん…大丈夫!?」

パラレル紗奈が叫ぶ。



「く…そ…。

パワーが出し切れない…

紗奈ちゃん、

もしかしてもうこの世界への執着、失くしてない…?」


「……」


パラレル紗奈は無言のままラビから視線を外した。





「はぁ…

もうちょっと欲望に忠実かと思ったけど…これは困ったね」

「……」



「…この世界では、お前たち悪魔は

契約者からパワーを引き出すしかないからな…。


残念だったな。


…大人しく魔界に帰ってもらうぞ」



カナトさんが謎の呪文を唱える。



「ぐっ…くそ


はぁはぁ…



こんなやつに…

追いつめられるとは…」


「ラビくん…!!」



「はあはあ…ぅ…。


…く、そ…呼吸が…できない…」


パラレル紗奈の方を見るラビス。


「…紗奈ちゃん。

悪いけど契約は破棄だ。

…僕は魔界に帰る」




「え…まって…

ラビく…」


「…じゃーね」


ふっと消えるラビス。


「ラビくん…!!」


辺り一帯を取り巻いていた黒の気配が消える。


「……うっうっ…」


パラレル紗奈は、メソメソと泣いていた。


その姿は、とてもよわよわしくみえた。
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