第六章

「…くそ…逃がしたか…。

……。

大丈夫…?

紗奈ちゃん」

声をかけてくる青年。


「う、うん…。

あの…カナトさん…だよね?

…髪と瞳の色が…」



「あ、ああこれ…

…もうすぐ元に戻るよ」



そうカナトさんが言うのと同時くらいに、

カナトさんの瞳と髪の色がすぅっと見慣れた色に戻り、

カナトさんを包む、光り輝くようなオーラも消えた。



「……」


「……」


しばらく沈黙が私とカナトさんを襲う。



「…あの、カナトさんは…

”パラレルワールドパトローラー”…っていう存在なの?」


「…ああ」

「それは一体…」



「…パラレルワールド間の異変を察知して、世界を守るって感じかな…。

…あんまり詳しいことは話せないんだけど…」


「瞳や髪の色が変わっていたのは、どうして…?」


「普段制御している力を解放すると、あんな感じになるんだ」

「そう、なんだ…」


「…こわい…?」

「う、ううん…」


(そんなことはないけど…

ちょっと、びっくりした…)



「紗奈ちゃんさっきのやつに、なにか言われた?」


「……。

ここはパラレルワールドの世界だって。

私と、ここの世界の私を、交換したって」


「…なるほど…」


「さっきの人が、カナトさんには何者かわかっているの…?」


「あいつは多分”悪魔”だ」


「…悪魔…?」


「ああ」



「もしかしてカナトさんは、いろいろなこと、

知っていたの?」

「うん、大体は」


「…そうなんだ」


「でもいきなりパラレルワールドだって言ったって、

信じないと思ったから…

様子、みてた」


「…だから、ずっと一緒にいてくれたんだね」

「…そういうことになるね」


(なんだ…私のこと気にしてくれてたわけじゃなくて、

パラレルワールドパトローラーっていう存在だから、

一緒にいてくれてただけ、なのかな…?)



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