第六章

「あはあは…おっかしーっ!!」

「だ、だれ!!」

聞き覚えのない声にビクッとなる。


「僕?
さあ?誰でしょう」

後ろには今、声を発したらしき謎の少年。

只ならぬ気配。謎の威圧感。

そしてみたことのない衣装…。


何よりも奇妙なことに…。

その人物は…黒い翼をはやし、宙に浮いていた…。


「……!」



「だ、れ…?」


私は少し、後ずさりしながら声を出す。


窓も、部屋の扉も閉まっているのに…。


「どこから…入ってきたの…?」


「クスクス。

いいね、その反応。

実はさ、この部屋に、ずーっといたんだよね。


姿を消していただけで♪」


「……」


「こっちの世界の君もさ、

最初は、すごーくびっくりしてたよ。

自分で呼び出したのにね」


「え…」



「僕はラビス。

ラビって呼んでね♪」


「……」


「あー大丈夫こわがらなくていいよ。

いきなり魂抜いたりなんかはしないからさ」


ニコニコと笑みを浮かべる。


「どういう…こと…?」


「ん?今の状況ってこと?」


「……」

「教えて欲しいの?」


「…あなたが関係しているの…?」


「うん、そうだね」

「……」



「いいよ、教えてあげる。

僕がさ、この世界の紗奈ちゃんと、君を交換したんだ♪

要するに、住む世界をとっかえたってことね」


(な、に…?)



視界がグラっとなる。

「おっと、危ない危ない」

ふらつく私を、ラビスと名乗った少年に支えられる。


「さ、さわらないで!!」

ラビという少年の手をはねのける。


「ふーなんか、すっごく嫌われてるなぁ。

まあ君とは初対面だからこんなものかぁ…」

「……」


「こっちの世界の紗奈ちゃんとは、実は結構仲良しなんだけどね」


「……」




「よいしょっと」

ベッドに座るラビ。

「ん?まだよく分かんない?

つまりね、ここは君にとって、君の世界じゃない

パラレルワールド世界なんだよ。

まあ君とここの世界の紗奈ちゃんは

そこまで大差ないけどね。


まあ、あえて違いをのべるとしたら、

こっちの世界では律が死んでて、

紗奈ちゃんは東京には行かずに地元に残ったってことかな」


「……」



頭がついていかない…。

…”パラレルワールド世界”…?


…でもそうだとすると、

いろいろな不可解な現象に…。

説明がついてしまっている…。




「交換って…

どうして…?

私は…元の世界に戻れるの…?」


「んー紗奈ちゃん次第かな。

あ、こっちの世界の紗奈ちゃんのことね。

僕はこっちの世界の紗奈ちゃんと契約したんだよね。

僕に、死んだら魂をくれる代わりに、律の生きている世界に行きたいって。

そんな感じ。

まあ要するに肉体が滅びたら、紗奈ちゃんは僕のモノってことだね♪」

「……」


「だからさ、今のところは戻れないって感じかな?ふふふ」




「…私の意思はどうなるの…?

私だって…りっちゃんが死んでる世界なんて…嫌よ。


私を元の世界に戻して!!」


「え、何?僕と契約するの?」


「し、しないわ。するわけないでしょう?」


「だよねぇ。

じゃあ無理だね」


「……」




「ところでさ、この世界の紗奈ちゃんと、君って、

実は無関係のようでいて、

繋がってるんだよ?」


「え…?」


「僕は君を…少しだけだけど操れる」


「……」


ラビが
そういったとたん。


私は金縛りにあったように動けなくなった。
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