第五章

「どうしたの、紗奈ちゃん。

顔、真っ青だよ…」


「カナトさん…。


りっちゃんが…りっちゃんが…


りっちゃんが…いないの…」


「…え…?」


「りっちゃんなら、二日前に…会ったのに…

去年…死んだって…


なんで…?

あの日…あんなに楽しかったのに…。

わけ…わかんないよ…」


また…ぽろぽろと涙がこぼれおちた。



「どうしよう、どうしよう…カナトさん。

パパやママにも会うのこわいよ…」



全身が冷えていく。

手先が…震える…。


「……」

心配そうに私を見つめるカナトさん。


「紗奈ちゃん…」


(…こわい…

こわいよ…)

ガクガクと震える私を見かねてか、

カナトさんは近くの喫茶店にでも行って落ち着こうと提案してくれた。










「あ、えと…

ご…めんねカナトさん。

取り乱しちゃって…」


「いや…」


温かいドリンクを飲んで、

少しだけ冷静さを取り戻した私。


(一体…何が起こっているの…?

りっちゃんは…どうなってしまったの…?

もし、パパとママに会ったら…。

…私を見てなんて言うんだろう…。



どうしよう、もし、あなたなんか知らない、なんて言われたりしたら…。

…何かパパやママに…異変があったら…)


また瞳がうるみ始める…。


「…紗奈ちゃん…」


心配そうにみつめるカナトさん。


(ああ…私、ずっとカナトさんのこと、振り回しちゃってるな…。

…だめだ、このままじゃ…。



…こわい…けど…)



「カナトさん、私、

両親に、会ってくるね」


「大丈夫…?」


「うん…。

このまま逃げてたって…何も分からないままだから…」


「…そうだね」




「…カナトさん、

流石に家族の前までくるといろいろ大変だろうし、
もしかしたら時間かかっちゃうかもしれないから

この喫茶店で待っててくれないかな?」


「…分かったそうするよ」


(…逆に、どなたですか?って言われて…

あっという間に、家から追い出されるかもしれないけれど…)


そんな考えもよぎるが、すぐに打ち消す。


「それじゃ、行ってくるね」

「うん」


私はカナトさんと別れると、自分の実家へと向かった。

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