短編
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【眠り姫】
ものすごくふわふわとしたベッドが気持ちいい。
とろりとした頭はまだ半分以上夢の中。
ただ、ふわふわで柔らかくて暖かいベッドの中にずーっといたいなぁと思う。
体勢をほんの少しだけ変えながらうっすらと目を開けた瞬間、はっと私の意識は覚醒した。
飛び起きるっていうか、そのまま固まる。
……ここは私のベッドじゃないようです。
布団の色が違うし、私のベッドはこんなに広くないし、こんなにふわふわしてない。
なによりも天井が違う。
「……」
ベッドの中でかちんと固まった私は、目だけを動かしてそーっと辺りを見回した。
広い部屋。
大きな本棚。
高い天井。
立派な机。
そして、帽子掛けには変な帽子。
……これはまさか……。
頭の中がものすごい勢いで回転を始めた時だった。
「やぁ、お目覚めかな。お嬢さん」
その声に頭の中はぴたりと止まった。
かわりに「やっぱり、でもどうして?」という思いがガンガンと頭をたたくように浮かぶ。
毛布を肩まで引っ張りあげたまま、そっと起き上がってみた。
部屋の中央にあるソファで、上着と帽子のないラフな姿のブラッドが本を片手に私を見ていた。
「おはよう」
「……おはようございます」
とりあえずそう言ってみたけれど、全くもってどういう状況だかわからない。思い出せない。
混乱しまくる私をみてブラッドが笑った。
「意外と目覚めるのが早かったな。疲れ果てたようだったから、もっと眠っていてもいいのに」
「……え、えーと……私、疲れ果ててましたっけ?」
どうして?何にそんな疲れ果てたの私!?(怖くて思い出したくないかも)
するとブラッドは意味深に笑った。
「ふふふ。私に言わせるつもりか?名無しさん、君もけっこういい性格をしているね」
その言葉にさーっと血の気が引いた。
うそうそ!絶対嘘だ。
そんなおかしな間違いをするわけがない!(と思う)
思わず布団をぎゅっと掴む私に、ブラッドは追い打ちをかけた。
「まさか名無しさんがあんな風になるとは思いもしなかった。楽しませてもらったよ」
「いやー!!!うそうそ!!!何が!?」
ブラッドの言葉に思わず大声をあげて布団に顔をうずめると、必死に間違いがあるはずないという理由をかき集めた。
「ありえないありえない!絶対そんなおかしなことしてないもん!私とブラッドがそんなことになるわけないっ!」
ぶつぶつ言う私をよそに、ブラッドは優雅に紅茶を飲みながらさらりと言った。
「そんなに嫌がられるとは心外だな。私は、君に信頼してもらえていると思っていたんだが」
「信頼してるからって、そういう関係になるわけないでしょう!?あー、もうやだ!うそ! 自分が嫌だ!!」
そういうのは間違っている。
お互いに好き、とかじゃないといけないに決まってる!!
あぁ、もういくらブラッドがちょっとカッコいいからって、私は一体なにをしちゃってるんだろう!?(誰か嘘だと言って!!)
半泣きになりながら自己嫌悪に陥る私に、ブラッドが言った。
「そういう関係とはどういうことだ? 名無しさん」
「……え?」
「私の前で眠ってしまうくらい、君は私を信頼してくれているんだろう?」
彼はそう言って読みかけの本を閉じた。
「私とのお茶会の最中に居眠りをするなんて、君くらいのものだよ名無しさん」
「お茶会?」
「信頼されているというか、ないがしろにされていると言った方がいいのかもしれないがね」
彼はそう言って苦笑した。
私はテーブルに置いてあるティーポットを見て、ふと思い出した。
そうだ、私はブラッドに良い茶葉が入ったからとブラッドの部屋でのお茶会に誘われたのだ。
でも、仕事あけで疲れ果てていて、眠くて仕方なかった。
確かブラッドと向き合って紅茶を飲んでいたはずだけど……。
「話しかけても、まるで会話が成立していなかったな。君の的外れな答えはなかなか面白かったよ」
半分眠っていたようだったからね、とブラッドは言いながら思い出すように顔を緩めた。
「……えぇと、私寝ちゃった、ってこと? ただそれだけ?」
「あぁ。もう寝た方がいいと言ったら、大丈夫と眠りながら答えていたぞ。面白かった」
「そっかー」
一気に脱力した。
そのままベッドに倒れこむ。
あー、びっくりした。
そうだよね、そんな間違いが起こるわけがない。ブラッドが私を相手にするわけないし、落ち着いてみればちゃんと服を着てるし。
それにしたって意地悪な言い方するなーブラッド。
私が勘違いするのを見て、絶対面白がってたんだろうな。
あれ?
私自分でベッドまで歩いたのかな?全然記憶にないんだけど……。
天井を見ながらそんな事を考えていたら、目の前にふっとブラッドの顔が現れた。
「!?」
びっくりして起き上がろうとするが、それよりも早くブラッドは私を押さえつける。
「さっきはなにかを勘違いしたようだね、名無しさん」
ほら、来たよ。
意地悪く笑うブラッドを見て、むっと口を尖らせる。
「ブラッドが変な言い方するからでしょ」
「ふふふ。そうか? 真実を言ったまでだがね」
「……性格悪い」
「よく言われるよ」
楽しそうに笑う彼にドキリとする。
「でも、眠っている君に手も出さず、ちゃんとベッドで眠らせてあげたんだ。私ともあろうものが、まるで聖人君子のようだとは思わないか?」
そう言いながら、ブラッドは私の頬にそっと触れた。
「だが、性に合わないことをするのはよくないな」
彼は妖艶に笑うと、頬から髪の毛へと指を滑らせた。
私の心臓がものすごい勢いで動きだし、顔が熱くなるのが自分でもわかる。
「名無しさんが目を覚ますのを待っているのは退屈で仕方なかったよ」
重なる手のひらが熱い。
「眠っている君もいいが、起きている君の方が好きなんだ」
静かに笑ってそう言うと、彼はそっと私に唇を寄せた。
ものすごくふわふわとしたベッドが気持ちいい。
とろりとした頭はまだ半分以上夢の中。
ただ、ふわふわで柔らかくて暖かいベッドの中にずーっといたいなぁと思う。
体勢をほんの少しだけ変えながらうっすらと目を開けた瞬間、はっと私の意識は覚醒した。
飛び起きるっていうか、そのまま固まる。
……ここは私のベッドじゃないようです。
布団の色が違うし、私のベッドはこんなに広くないし、こんなにふわふわしてない。
なによりも天井が違う。
「……」
ベッドの中でかちんと固まった私は、目だけを動かしてそーっと辺りを見回した。
広い部屋。
大きな本棚。
高い天井。
立派な机。
そして、帽子掛けには変な帽子。
……これはまさか……。
頭の中がものすごい勢いで回転を始めた時だった。
「やぁ、お目覚めかな。お嬢さん」
その声に頭の中はぴたりと止まった。
かわりに「やっぱり、でもどうして?」という思いがガンガンと頭をたたくように浮かぶ。
毛布を肩まで引っ張りあげたまま、そっと起き上がってみた。
部屋の中央にあるソファで、上着と帽子のないラフな姿のブラッドが本を片手に私を見ていた。
「おはよう」
「……おはようございます」
とりあえずそう言ってみたけれど、全くもってどういう状況だかわからない。思い出せない。
混乱しまくる私をみてブラッドが笑った。
「意外と目覚めるのが早かったな。疲れ果てたようだったから、もっと眠っていてもいいのに」
「……え、えーと……私、疲れ果ててましたっけ?」
どうして?何にそんな疲れ果てたの私!?(怖くて思い出したくないかも)
するとブラッドは意味深に笑った。
「ふふふ。私に言わせるつもりか?名無しさん、君もけっこういい性格をしているね」
その言葉にさーっと血の気が引いた。
うそうそ!絶対嘘だ。
そんなおかしな間違いをするわけがない!(と思う)
思わず布団をぎゅっと掴む私に、ブラッドは追い打ちをかけた。
「まさか名無しさんがあんな風になるとは思いもしなかった。楽しませてもらったよ」
「いやー!!!うそうそ!!!何が!?」
ブラッドの言葉に思わず大声をあげて布団に顔をうずめると、必死に間違いがあるはずないという理由をかき集めた。
「ありえないありえない!絶対そんなおかしなことしてないもん!私とブラッドがそんなことになるわけないっ!」
ぶつぶつ言う私をよそに、ブラッドは優雅に紅茶を飲みながらさらりと言った。
「そんなに嫌がられるとは心外だな。私は、君に信頼してもらえていると思っていたんだが」
「信頼してるからって、そういう関係になるわけないでしょう!?あー、もうやだ!うそ! 自分が嫌だ!!」
そういうのは間違っている。
お互いに好き、とかじゃないといけないに決まってる!!
あぁ、もういくらブラッドがちょっとカッコいいからって、私は一体なにをしちゃってるんだろう!?(誰か嘘だと言って!!)
半泣きになりながら自己嫌悪に陥る私に、ブラッドが言った。
「そういう関係とはどういうことだ? 名無しさん」
「……え?」
「私の前で眠ってしまうくらい、君は私を信頼してくれているんだろう?」
彼はそう言って読みかけの本を閉じた。
「私とのお茶会の最中に居眠りをするなんて、君くらいのものだよ名無しさん」
「お茶会?」
「信頼されているというか、ないがしろにされていると言った方がいいのかもしれないがね」
彼はそう言って苦笑した。
私はテーブルに置いてあるティーポットを見て、ふと思い出した。
そうだ、私はブラッドに良い茶葉が入ったからとブラッドの部屋でのお茶会に誘われたのだ。
でも、仕事あけで疲れ果てていて、眠くて仕方なかった。
確かブラッドと向き合って紅茶を飲んでいたはずだけど……。
「話しかけても、まるで会話が成立していなかったな。君の的外れな答えはなかなか面白かったよ」
半分眠っていたようだったからね、とブラッドは言いながら思い出すように顔を緩めた。
「……えぇと、私寝ちゃった、ってこと? ただそれだけ?」
「あぁ。もう寝た方がいいと言ったら、大丈夫と眠りながら答えていたぞ。面白かった」
「そっかー」
一気に脱力した。
そのままベッドに倒れこむ。
あー、びっくりした。
そうだよね、そんな間違いが起こるわけがない。ブラッドが私を相手にするわけないし、落ち着いてみればちゃんと服を着てるし。
それにしたって意地悪な言い方するなーブラッド。
私が勘違いするのを見て、絶対面白がってたんだろうな。
あれ?
私自分でベッドまで歩いたのかな?全然記憶にないんだけど……。
天井を見ながらそんな事を考えていたら、目の前にふっとブラッドの顔が現れた。
「!?」
びっくりして起き上がろうとするが、それよりも早くブラッドは私を押さえつける。
「さっきはなにかを勘違いしたようだね、名無しさん」
ほら、来たよ。
意地悪く笑うブラッドを見て、むっと口を尖らせる。
「ブラッドが変な言い方するからでしょ」
「ふふふ。そうか? 真実を言ったまでだがね」
「……性格悪い」
「よく言われるよ」
楽しそうに笑う彼にドキリとする。
「でも、眠っている君に手も出さず、ちゃんとベッドで眠らせてあげたんだ。私ともあろうものが、まるで聖人君子のようだとは思わないか?」
そう言いながら、ブラッドは私の頬にそっと触れた。
「だが、性に合わないことをするのはよくないな」
彼は妖艶に笑うと、頬から髪の毛へと指を滑らせた。
私の心臓がものすごい勢いで動きだし、顔が熱くなるのが自分でもわかる。
「名無しさんが目を覚ますのを待っているのは退屈で仕方なかったよ」
重なる手のひらが熱い。
「眠っている君もいいが、起きている君の方が好きなんだ」
静かに笑ってそう言うと、彼はそっと私に唇を寄せた。
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