アンケートお礼その2
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【3.特別】
真冬のクローバーの塔に遊びに来てみたら、廊下でばったりグレイに出会った。
これから休憩だという彼は、じゃあ一緒に珈琲でも飲もう、と言ってくれた。
「貴重な休憩時間をもらっちゃってすみません」
なんだか申し訳なくて謝ると、彼は笑って「気にしなくていい」と言う。
「でも、珈琲までごちそうになっちゃって。本当なら私が『お疲れ様』って淹れてあげる方なのに」
「客である君に珈琲を淹れさせるわけないだろう。
名無しさんに来てもらえると嬉しいし、どうせ自分でも飲もうと思っていたんだ」
「そっか、ありがとう」
あー、優しいなぁ、大人だなぁ。
私はそう思いながら、珈琲を出してくれたグレイにお礼を言った。
彼は自分のカップを机に置くと、私の隣りに座る。
「久しぶりだな、名無しさん」
「うん。ほんと。相変わらず忙しいの?」
「そうだな。まぁ、いつも通り。相変わらずだ」
ソファに座ったグレイはそう言って煙草に火をつけた。
私は彼の煙草を吸っている姿を見るのが好きだ。
絵になるとはこのことだと思う。
「グレイ、あまり無理しないでね」
私の言葉に、グレイは一瞬何かを考え込むような表情を見せる。
それからふぅっとたばこの煙を吐き出した。
「ありがとう。だが俺よりも明らかに無理をしてる人がすぐそばにいるな」
そう言って苦笑いする。
……誰だろう?
「ナイトメアとか?」
「そう。今日も40度の高熱を出したのに薬を拒んで脱走をしたんだ」
「……無理しすぎだね。でも、意外と普通の人より丈夫なのかもね」
「かもな」
そう言いあって笑う。
「あ、そうだ。グレイ、甘いもの食べる? 疲れてるならちょうどいいかも」
「甘いもの?」
「うん、ほら、今街はバレンタインで盛り上がっているんだよ。知ってましたか?」
「バレンタイン……そういえばそんなことを騒いでいたな……ナイトメア様が」
煙を吐き出しながらグレイがそうつぶやいた。
私はカバンをごそごそかき回して、塔に来る前に買ったバレンタインチョコを取り出す。
「はい、どうぞ」
小さな箱を差し出すと、彼は煙草の火を消した。
そしてすっと手を伸ばす。
「ありがとう、名無しさん」
その時、私の手からチョコの小箱がかたんと小さな音を立てて床に転がった。
渡したつもりで、彼が受け取るよりも先に手を離してしまったのだ。
「あ!ご、ごめん!」
「いや、俺こそすまない」
私は床に落ちた小箱を慌てて拾いあげた。
「ほんとにごめん。プレゼントを落とすなんて申し訳ない……他の方をあげる」
中身は無事かもしれないけれど、落としたものをプレゼントなんて失礼だ。
私はカバンの中を覗き込んだ。
バレンタインフェアに負けて、他にもいくつか買い込んだのだ。
するとグレイは私の手ごと小箱を掴んだ。
「いや、いい。俺はこれをもらおう」
手を掴まれたことにびっくりして、思わず固まると彼はじっと私の手を見つめたまま言った。
「……冷たい手だ」
「えっと……あの、グレイ?」
どうしたらいいかわからず名前を呼ぶと、彼はそっと私を見る。
「君は残酷だな」
「え?」
「落としたものを取り換えてくれる優しさは残酷だ」
どうやらプレゼントのことを言っているらしいけれど、どういう意味だろう?
「俺のためだけに用意してくれたわけではない、ということがわかってしまったからな」
確かにグレイだけではなく、ナイトメアやユリウスにもあげようと思ってチョコを買った。
自分の分まで買ってしまった。
それはどうやらいけなかったらしい。
「名無しさん、そんな顔をしないでくれ。別に君を責めているわけじゃない。……ただ、少し悔しいというか、残念なだけだ」
グレイは自嘲気味に笑うと、私をまっすぐに見た。
「俺はまだ君の特別になれていないんだな」
はっきりとそう言われて私の視界はぐらりと揺れた気がした。
まさかそんなことをグレイから言われるなんて思ってもいなかったからだ。
ドキドキする私に、彼はふっと笑う。
「だからこそ、俺は君が落としたこのチョコレートをもらうよ。
名無しさんにとってこのチョコレートは他のものよりも、ある意味特別になったはずだからな」
グレイはそう言うと、そっと私の頬に触れて囁くように言った。
「名無しさん。落としたことを気に病んで、俺のことだけ考えてくれればいい」
グレイらしからぬ発言に、何も言えずただただ彼を見つめる。
すると、彼は困ったように笑った。
「……俺も大人げないな」
君に関しては余裕がないんだ。
そう言ってグレイは私の髪にキスをした。
真冬のクローバーの塔に遊びに来てみたら、廊下でばったりグレイに出会った。
これから休憩だという彼は、じゃあ一緒に珈琲でも飲もう、と言ってくれた。
「貴重な休憩時間をもらっちゃってすみません」
なんだか申し訳なくて謝ると、彼は笑って「気にしなくていい」と言う。
「でも、珈琲までごちそうになっちゃって。本当なら私が『お疲れ様』って淹れてあげる方なのに」
「客である君に珈琲を淹れさせるわけないだろう。
名無しさんに来てもらえると嬉しいし、どうせ自分でも飲もうと思っていたんだ」
「そっか、ありがとう」
あー、優しいなぁ、大人だなぁ。
私はそう思いながら、珈琲を出してくれたグレイにお礼を言った。
彼は自分のカップを机に置くと、私の隣りに座る。
「久しぶりだな、名無しさん」
「うん。ほんと。相変わらず忙しいの?」
「そうだな。まぁ、いつも通り。相変わらずだ」
ソファに座ったグレイはそう言って煙草に火をつけた。
私は彼の煙草を吸っている姿を見るのが好きだ。
絵になるとはこのことだと思う。
「グレイ、あまり無理しないでね」
私の言葉に、グレイは一瞬何かを考え込むような表情を見せる。
それからふぅっとたばこの煙を吐き出した。
「ありがとう。だが俺よりも明らかに無理をしてる人がすぐそばにいるな」
そう言って苦笑いする。
……誰だろう?
「ナイトメアとか?」
「そう。今日も40度の高熱を出したのに薬を拒んで脱走をしたんだ」
「……無理しすぎだね。でも、意外と普通の人より丈夫なのかもね」
「かもな」
そう言いあって笑う。
「あ、そうだ。グレイ、甘いもの食べる? 疲れてるならちょうどいいかも」
「甘いもの?」
「うん、ほら、今街はバレンタインで盛り上がっているんだよ。知ってましたか?」
「バレンタイン……そういえばそんなことを騒いでいたな……ナイトメア様が」
煙を吐き出しながらグレイがそうつぶやいた。
私はカバンをごそごそかき回して、塔に来る前に買ったバレンタインチョコを取り出す。
「はい、どうぞ」
小さな箱を差し出すと、彼は煙草の火を消した。
そしてすっと手を伸ばす。
「ありがとう、名無しさん」
その時、私の手からチョコの小箱がかたんと小さな音を立てて床に転がった。
渡したつもりで、彼が受け取るよりも先に手を離してしまったのだ。
「あ!ご、ごめん!」
「いや、俺こそすまない」
私は床に落ちた小箱を慌てて拾いあげた。
「ほんとにごめん。プレゼントを落とすなんて申し訳ない……他の方をあげる」
中身は無事かもしれないけれど、落としたものをプレゼントなんて失礼だ。
私はカバンの中を覗き込んだ。
バレンタインフェアに負けて、他にもいくつか買い込んだのだ。
するとグレイは私の手ごと小箱を掴んだ。
「いや、いい。俺はこれをもらおう」
手を掴まれたことにびっくりして、思わず固まると彼はじっと私の手を見つめたまま言った。
「……冷たい手だ」
「えっと……あの、グレイ?」
どうしたらいいかわからず名前を呼ぶと、彼はそっと私を見る。
「君は残酷だな」
「え?」
「落としたものを取り換えてくれる優しさは残酷だ」
どうやらプレゼントのことを言っているらしいけれど、どういう意味だろう?
「俺のためだけに用意してくれたわけではない、ということがわかってしまったからな」
確かにグレイだけではなく、ナイトメアやユリウスにもあげようと思ってチョコを買った。
自分の分まで買ってしまった。
それはどうやらいけなかったらしい。
「名無しさん、そんな顔をしないでくれ。別に君を責めているわけじゃない。……ただ、少し悔しいというか、残念なだけだ」
グレイは自嘲気味に笑うと、私をまっすぐに見た。
「俺はまだ君の特別になれていないんだな」
はっきりとそう言われて私の視界はぐらりと揺れた気がした。
まさかそんなことをグレイから言われるなんて思ってもいなかったからだ。
ドキドキする私に、彼はふっと笑う。
「だからこそ、俺は君が落としたこのチョコレートをもらうよ。
名無しさんにとってこのチョコレートは他のものよりも、ある意味特別になったはずだからな」
グレイはそう言うと、そっと私の頬に触れて囁くように言った。
「名無しさん。落としたことを気に病んで、俺のことだけ考えてくれればいい」
グレイらしからぬ発言に、何も言えずただただ彼を見つめる。
すると、彼は困ったように笑った。
「……俺も大人げないな」
君に関しては余裕がないんだ。
そう言ってグレイは私の髪にキスをした。