アンケートお礼その3
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【2.お互い様】
お茶会をしようと誘われ、ブラッドの部屋に行った。
しかし部屋の主は不在。
何か悪い仕事に出かけているらしい。
部屋で待っているように言われたので、私はソファに座って本を読むことにした。
ブラッドと恋人になってから、たまにこういうことがある。
気分屋でわがままな彼ではあるけれど、私との約束を放棄するということは滅多にない。
とはいえ、どうしても外せない仕事や用事というものがあるらしい。
何かあっても大抵はエリオットに処理を押し付けているけれど、今回のようにブラッド本人が出なくてはならない場面になると、私はこうして待ちぼうけを食らうことになるのだった。
でもおかげでかなりの読書家になった。
本を読むスピードも上がったし、集中力もものすごくついた。
おかげで、ブラッドが部屋に帰ってきたことにも気づかなかったくらいだ。
「ずいぶん集中しているようだね、お嬢さん」
「うわぁっ!?」
背後から突然そう声をかけられた私は、本気でびっくりしてソファから10センチくらい飛び上がった。
振り返ると、面白そうに私を見ているブラッドが立っている。
「あ~、びっくりしたー。おかえりー。っていうかびっくりして死ぬかと思った。心臓がバクバクしてるんですけど!?」
心臓を押さえて口を尖らせると、ブラッドは「それは失礼。驚かすつもりはなかったんだがね」と笑った。
そして背後から私の肩越しに、持っている本を覗き込む。
「今回は何を読んでいるんだ?」
「この間読んでた本の続き。あれもおもしろかったけど、こっちもおもしろいね」
本の表紙を見せながら言う。
「あぁ、それか」と頷いてブラッドは私から離れると、帽子と上着を脱いでそばの椅子にぽんと置いた。
恋人になって結構経つというのに、彼の何気ない仕草や行動にドキドキしてしまう。
いつか慣れるものなのかなぁと思いながら彼の様子を見ていたら、ふいにこちらを見たブラッドと目が合った。
ドキッとしてぱっと視線を逸らす。
……まずい。あからさまに目を逸らしちゃった。
そんな私をブラッドは面白がって見ているに違いない。
そう思ってちらりともう一度彼を見ると…………ほらね。意地悪な顔して笑ってますよ。
あー、またからかわれる。面白がられるぞ。やだなぁ。
ブラッドは何も言わなかったけれど、私の気持ちをすべて理解していたらしい。
ふっと笑って私を見る。
照れ隠しに私はじろりとブラッドを睨みつけて、読んでいた本に視線を戻した。
無理矢理文字を追うけれど、頭の中は「あー、私ってどれだけブラッドのことが好きなんだろう」
という敗北感(?)でいっぱいだった。
私ばっかりがいつも照れたり、恥ずかしがったりしている気がする。
私なんかがブラッドのペースを崩せるわけはないと思うけど、いつも余裕綽々な彼に私が必死について行っていると思うとなんだかさみしい。
そんなことを考えていたら、座っていたソファが軋む。
見ると、ブラッドが私の隣りに座っていた。
「名無しさん。私が戻ってきたのに、また読書を始めるのか?」
「ちょっときりのいい所まで読みたいなぁと思って……」
とはいえすでに頭は物語から離れているので、いますぐやめたっていい。
でも、なんだかここで素直に「はいじゃあやめます」とは言えない私。(可愛くないなぁ)
半ば意地になって読書をすることにした私に、ブラッドは「そうか」とうなずいた。
「……」
「……」
「……」
「……」
私たちの間に沈黙の時間が流れる。
ブラッドは大人しく隣りに座っていた。
視線を感じるので絶対なにか言ってくるだろうと身構えていたけれど、何も言ってこない。
拍子抜けした私は逆に意識してしまう。
限界を迎えたのは私の方だった。
「あー、もうなんか逆に気になる!」
そう言って私が本を閉じると、ブラッドはわざとらしく言った。
「おや、もういいのか?」
「その無言の圧力がすさまじいの。やめて」
マフィアのボスということを差っ引いても、彼から見つめられると落ち着かない。
私の反応にブラッドが楽しそうに笑う。
「別に圧力などかけていないぞ?名無しさんが心行くまで読書を楽しめばいいと静かにしていたつもりだが」
「それはどうもありがとう。でももういいです。ブラッドがそんなに静かだなんて変だもん。気になる」
「ふふふ。なにかしてほしかったのか?」
そう言って彼は私から本を取り上げると、そばのテーブルにぽんと置いた。
……この流れにドキドキしてしまうのは、彼との付き合いが長くなっているからだと思う。
この後の展開を予想してしまっている自分がものすごく恥ずかしい。
「ち、違う!じろじろ見られて気になるって言ってるの!」
「必死に文字を追おうとする君がいじらしくて可愛かったから、つい見つめてしまったんだよ。見つめるだけでは不満だったかな?お嬢さん」
どうやら私が無理やり本を読もうとしていたこともわかっていたらしい。
恥ずかしさと、性格悪いやつめー!という彼への思いで私は耳がかーっと熱くなる。
すると彼が私の肩に手を置いた。
じっと私を見ながらゆっくり顔を寄せる。
「名無しさんは一体何を期待していたんだろうね?」
囁くようにそんなことを言うブラッド。
楽しそうに、でも妖艶な瞳で私を見つめる彼。
「そういうんじゃないってば!」
どう答えていいかわからなくて、恥ずかしくてとりあえずそう答えた。
そう。
期待とか、そういうことじゃない。
ただ、隣にブラッドがいたらそれだけで気になるのだ。
いつも余裕のある彼とは違う。
私ばっかりが振り回されている。
それはつまり想いの差なんじゃないかと思うと、ちょっと悲しくなった。
「そばにいると本どころじゃなくなっちゃうの。私ばっかり好きみたい」
ついぽろりとそんな言葉が口をついて出た。
・・・・・・最悪だ。恥ずかしすぎる。聞こえてたらどうしよう?
そう心配してちらりと彼を見ると、私のつぶやきはしっかりと聞こえていたらしい。
目に見えてブラッドの動きが止まった。
彼の反応が怖すぎて、私は思わず唇をかんでいた。
あー、どうしてブラッドにばっかり変な自分を見せちゃうんだろう。普段はもっとマシなはずなんだけどなぁ私。
そう落ち込んでいたけれど、不思議なことにブラッドからの反応がない。
あれ?と思って見上げると、彼は驚いたように目を見開いて私を見つめていた。
そのまま3秒くらい見つめあっていた私達だったけれど、我に返ったらしいブラッドがすっと視線を外した。
気まずそうというか、なんとも言えない表情で彼は無理やり別の所を見ているようだった。
……え、まさか、照れてるとか?
珍しいブラッドの様子を観察していると、彼は私から手を離し、口元に手を当ててこほんと一つ咳ばらいをした。
「ブラッド?」
「……そうくるとは思わなかった」
思わず声をかけると、ブラッドは視線を外したままぼそっと言った。
言葉の意味を考える前に、彼はゆっくりと私の方を向いた。
「はぁ。名無しさんには振り回されっぱなしだな」
自分でも笑えるくらいだよ、と言ってブラッドは再び私の肩に手をかける。
そしてゆっくりと顔を近づけた。
「君にだけは見せたくない姿を、どうして君にばかり見せてしまうんだろうね。まったく嫌になる」
そう言って小さく笑う。
……ブラッドもそうなの?
そう聞こうとするより早くブラッドが呟いた。
「さて……今の醜態は全部忘れてもらわないといけないな」
そう言ったかと思うと、彼は私に口づける。
そのままのしかかるように押し倒されてしまい、本気で忘れさせにかかってるなーとぼんやりと思ったけれど、深くなるキスに頭は真っ白になった。
強引な感じで始まったキスについて行くのが必死だったけれどキスの合間に目が合うと、ブラッドは私の様子を伺いつつも優しい目で私を見てくれていてどうしようもなく幸せな気持ちになってしまった。
「……やっぱり私の方が好きみたい」
「?」
「ブラッドになら、なにされたっていいって思えちゃう」
私がそう言うと、ぴたりと止まったブラッドは無言で私を見つめる。
言葉の真意を確かめようとしているみたいだったけれど、同時にかなりの動揺をしているのもわかった。
「……すごい誘い文句だぞ、自覚しているのか?」
怪訝な顔をするブラッド。
ブラッドの方がいつももっとすごいことをしょっちゅう言っているような気がするけどな、と思って彼を見つめていると彼ははぁ、とため息をついてから私を見た。
「名無しさんはわかっていない。私がどれだけ君を想っているかをね」
困ったような笑みを浮かべながらそう囁いて、彼は唇を私のそれに押し当てる。
さっきとはまるで違う優しいキスで、彼の全てが伝わった気がしたので私はそっと彼の背に手をまわした。
お茶会をしようと誘われ、ブラッドの部屋に行った。
しかし部屋の主は不在。
何か悪い仕事に出かけているらしい。
部屋で待っているように言われたので、私はソファに座って本を読むことにした。
ブラッドと恋人になってから、たまにこういうことがある。
気分屋でわがままな彼ではあるけれど、私との約束を放棄するということは滅多にない。
とはいえ、どうしても外せない仕事や用事というものがあるらしい。
何かあっても大抵はエリオットに処理を押し付けているけれど、今回のようにブラッド本人が出なくてはならない場面になると、私はこうして待ちぼうけを食らうことになるのだった。
でもおかげでかなりの読書家になった。
本を読むスピードも上がったし、集中力もものすごくついた。
おかげで、ブラッドが部屋に帰ってきたことにも気づかなかったくらいだ。
「ずいぶん集中しているようだね、お嬢さん」
「うわぁっ!?」
背後から突然そう声をかけられた私は、本気でびっくりしてソファから10センチくらい飛び上がった。
振り返ると、面白そうに私を見ているブラッドが立っている。
「あ~、びっくりしたー。おかえりー。っていうかびっくりして死ぬかと思った。心臓がバクバクしてるんですけど!?」
心臓を押さえて口を尖らせると、ブラッドは「それは失礼。驚かすつもりはなかったんだがね」と笑った。
そして背後から私の肩越しに、持っている本を覗き込む。
「今回は何を読んでいるんだ?」
「この間読んでた本の続き。あれもおもしろかったけど、こっちもおもしろいね」
本の表紙を見せながら言う。
「あぁ、それか」と頷いてブラッドは私から離れると、帽子と上着を脱いでそばの椅子にぽんと置いた。
恋人になって結構経つというのに、彼の何気ない仕草や行動にドキドキしてしまう。
いつか慣れるものなのかなぁと思いながら彼の様子を見ていたら、ふいにこちらを見たブラッドと目が合った。
ドキッとしてぱっと視線を逸らす。
……まずい。あからさまに目を逸らしちゃった。
そんな私をブラッドは面白がって見ているに違いない。
そう思ってちらりともう一度彼を見ると…………ほらね。意地悪な顔して笑ってますよ。
あー、またからかわれる。面白がられるぞ。やだなぁ。
ブラッドは何も言わなかったけれど、私の気持ちをすべて理解していたらしい。
ふっと笑って私を見る。
照れ隠しに私はじろりとブラッドを睨みつけて、読んでいた本に視線を戻した。
無理矢理文字を追うけれど、頭の中は「あー、私ってどれだけブラッドのことが好きなんだろう」
という敗北感(?)でいっぱいだった。
私ばっかりがいつも照れたり、恥ずかしがったりしている気がする。
私なんかがブラッドのペースを崩せるわけはないと思うけど、いつも余裕綽々な彼に私が必死について行っていると思うとなんだかさみしい。
そんなことを考えていたら、座っていたソファが軋む。
見ると、ブラッドが私の隣りに座っていた。
「名無しさん。私が戻ってきたのに、また読書を始めるのか?」
「ちょっときりのいい所まで読みたいなぁと思って……」
とはいえすでに頭は物語から離れているので、いますぐやめたっていい。
でも、なんだかここで素直に「はいじゃあやめます」とは言えない私。(可愛くないなぁ)
半ば意地になって読書をすることにした私に、ブラッドは「そうか」とうなずいた。
「……」
「……」
「……」
「……」
私たちの間に沈黙の時間が流れる。
ブラッドは大人しく隣りに座っていた。
視線を感じるので絶対なにか言ってくるだろうと身構えていたけれど、何も言ってこない。
拍子抜けした私は逆に意識してしまう。
限界を迎えたのは私の方だった。
「あー、もうなんか逆に気になる!」
そう言って私が本を閉じると、ブラッドはわざとらしく言った。
「おや、もういいのか?」
「その無言の圧力がすさまじいの。やめて」
マフィアのボスということを差っ引いても、彼から見つめられると落ち着かない。
私の反応にブラッドが楽しそうに笑う。
「別に圧力などかけていないぞ?名無しさんが心行くまで読書を楽しめばいいと静かにしていたつもりだが」
「それはどうもありがとう。でももういいです。ブラッドがそんなに静かだなんて変だもん。気になる」
「ふふふ。なにかしてほしかったのか?」
そう言って彼は私から本を取り上げると、そばのテーブルにぽんと置いた。
……この流れにドキドキしてしまうのは、彼との付き合いが長くなっているからだと思う。
この後の展開を予想してしまっている自分がものすごく恥ずかしい。
「ち、違う!じろじろ見られて気になるって言ってるの!」
「必死に文字を追おうとする君がいじらしくて可愛かったから、つい見つめてしまったんだよ。見つめるだけでは不満だったかな?お嬢さん」
どうやら私が無理やり本を読もうとしていたこともわかっていたらしい。
恥ずかしさと、性格悪いやつめー!という彼への思いで私は耳がかーっと熱くなる。
すると彼が私の肩に手を置いた。
じっと私を見ながらゆっくり顔を寄せる。
「名無しさんは一体何を期待していたんだろうね?」
囁くようにそんなことを言うブラッド。
楽しそうに、でも妖艶な瞳で私を見つめる彼。
「そういうんじゃないってば!」
どう答えていいかわからなくて、恥ずかしくてとりあえずそう答えた。
そう。
期待とか、そういうことじゃない。
ただ、隣にブラッドがいたらそれだけで気になるのだ。
いつも余裕のある彼とは違う。
私ばっかりが振り回されている。
それはつまり想いの差なんじゃないかと思うと、ちょっと悲しくなった。
「そばにいると本どころじゃなくなっちゃうの。私ばっかり好きみたい」
ついぽろりとそんな言葉が口をついて出た。
・・・・・・最悪だ。恥ずかしすぎる。聞こえてたらどうしよう?
そう心配してちらりと彼を見ると、私のつぶやきはしっかりと聞こえていたらしい。
目に見えてブラッドの動きが止まった。
彼の反応が怖すぎて、私は思わず唇をかんでいた。
あー、どうしてブラッドにばっかり変な自分を見せちゃうんだろう。普段はもっとマシなはずなんだけどなぁ私。
そう落ち込んでいたけれど、不思議なことにブラッドからの反応がない。
あれ?と思って見上げると、彼は驚いたように目を見開いて私を見つめていた。
そのまま3秒くらい見つめあっていた私達だったけれど、我に返ったらしいブラッドがすっと視線を外した。
気まずそうというか、なんとも言えない表情で彼は無理やり別の所を見ているようだった。
……え、まさか、照れてるとか?
珍しいブラッドの様子を観察していると、彼は私から手を離し、口元に手を当ててこほんと一つ咳ばらいをした。
「ブラッド?」
「……そうくるとは思わなかった」
思わず声をかけると、ブラッドは視線を外したままぼそっと言った。
言葉の意味を考える前に、彼はゆっくりと私の方を向いた。
「はぁ。名無しさんには振り回されっぱなしだな」
自分でも笑えるくらいだよ、と言ってブラッドは再び私の肩に手をかける。
そしてゆっくりと顔を近づけた。
「君にだけは見せたくない姿を、どうして君にばかり見せてしまうんだろうね。まったく嫌になる」
そう言って小さく笑う。
……ブラッドもそうなの?
そう聞こうとするより早くブラッドが呟いた。
「さて……今の醜態は全部忘れてもらわないといけないな」
そう言ったかと思うと、彼は私に口づける。
そのままのしかかるように押し倒されてしまい、本気で忘れさせにかかってるなーとぼんやりと思ったけれど、深くなるキスに頭は真っ白になった。
強引な感じで始まったキスについて行くのが必死だったけれどキスの合間に目が合うと、ブラッドは私の様子を伺いつつも優しい目で私を見てくれていてどうしようもなく幸せな気持ちになってしまった。
「……やっぱり私の方が好きみたい」
「?」
「ブラッドになら、なにされたっていいって思えちゃう」
私がそう言うと、ぴたりと止まったブラッドは無言で私を見つめる。
言葉の真意を確かめようとしているみたいだったけれど、同時にかなりの動揺をしているのもわかった。
「……すごい誘い文句だぞ、自覚しているのか?」
怪訝な顔をするブラッド。
ブラッドの方がいつももっとすごいことをしょっちゅう言っているような気がするけどな、と思って彼を見つめていると彼ははぁ、とため息をついてから私を見た。
「名無しさんはわかっていない。私がどれだけ君を想っているかをね」
困ったような笑みを浮かべながらそう囁いて、彼は唇を私のそれに押し当てる。
さっきとはまるで違う優しいキスで、彼の全てが伝わった気がしたので私はそっと彼の背に手をまわした。