マッドハッターズ!
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【5.彼らのお気に入り】
最近の日課になっている散歩から戻ってきた私。
いつもより少し遠くまで行って景色を堪能したまでは良かったが、帰り道で買い物中のアリスにばったり出会った。彼女の荷物を半分持って時計塔を登ったのでさすがに疲れた。
自分の足元だけを見てのろのろと進む。
「あー、門から部屋まで遠い。この家、無駄に広すぎる~」
家っていうかお屋敷だけどさぁ、と一人で文句を言っていたつもりだった。
「はははっ、ブラッド、名無しさんに文句言われてるぜー?」
え?と思って顔を上げると少し先にエリオットとブラッドがいた。
「うわっ!なにいたの!?」
慌てる私にエリオットはにやにやと笑う。
「あんたが門から入ってきたところからずっと見てたぜ」
「ずっと!?」
ずっと見られてたの?気まずすぎる。
そっと家主であるブラッドを見てみた。
物言いたげな視線にとりあえず挨拶をする。
「……ただいま戻りました」
「おかえり、名無しさん。だいぶ遠くまで散歩に出ていたようだね」
「う、うん」
「疲れている君を敷地内でさらに歩かせることに、私は申し訳なさでいっぱいだよ」
「や、いえ、その……大丈夫です元気です。素敵なお部屋をありがとうございます」
わざとらしく言うブラッドにペコペコ頭を下げていると、隣にいたエリオットが楽しそうに笑った。
「こんな立派な屋敷に文句つけるなんて名無しさんは贅沢だよな」
「えええ、エリオット……!」
なぜあなたは火に油を注ぐようなセリフを楽し気に!?
慌てて彼の口をふさごうかと思った時、ブラッドが言った。
「いや、エリオット。女性というのはわがままを言うくらいがちょうどいい。名無しさんが快適に過ごせるように入口近くに一つ家を増やして……」
「いらないですからー!!!」
とんでもない提案に思わず大声を出すと、彼らは大笑いし始めた。
「ぶはははっ!名無しさん、マジでおもしろいよなー!」
「飽きないな」
「……あの、部屋に戻っていいですかね」
もうどうでもよくなってきたのでとりあえず帰ろうとすると、エリオットが口を尖らせた。
「えー、もう行っちまうのかよ。せっかくだし一緒に飯でも食おうぜ」
「食べるというよりも休みたいんだよね、私」
「名無しさんが食べ物で釣れないとはよっぽどだ。女性を無理させてはいけないぞ。諦めろ、エリオット」
ブラッドの言葉にしぶしぶ引き下がるエリオット。
うん、まぁありがたいんだけどね、いつも食べ物で釣れると思われてるのね私。
「ま、仕方ねぇな。食いたい時に食うのが一番だし。名無しさん、今度一緒に飯食いに行こうぜ。あ、もちろんブラッドも一緒に……」
「いらん!どうせお前の行きたい店はろくなものを出さないだろう。二人で楽しんできなさい」
「えー、なんだよ、すっげーうまい店なのに」
あぁ、いつものやりとりが始まったなー。
私いつ部屋に帰れるのかなぁ。
そんなことをぼんやりと思っていたら、エリオットが私を見た。
「……つーかあんたほんとに疲れてるみたいだな。大丈夫か?」
「いや、だから今すぐ休みたいくらいに疲れてるのよほんとに」
可愛げのない言い方をしてしまうくらいに疲れている。
「そっか、ふざけてる場合じゃねぇな。悪い悪い。部屋まで連れてってやろうか?」
「えー、いいよいいよ。大丈夫」
「遠慮すんなって。あんたくらいならぱっと連れてってやるからさ」
……私を担ぐつもりかしら、この人。
ときめきも何もない感じのエリオットに呆れかけた時だった。
「エリオット。お前は食事をとるんじゃなかったのか?時間帯が変わる前にさっさと行け」
「え、でも名無しさんが……」
「お嬢さんなら私が部屋まで送るから大丈夫だ」
「え!いいってば!」
まさかの申し出!(さすがボス。予想を超えてくるわ)
私は即断ったのだが、エリオットは納得したようにうなずいた。
「ブラッドに任せりゃ名無しさんも行き倒れたりしないな」
「あぁ、もちろんだ」
いくらなんでも行き倒れたりはしないでしょうよ。
そう言いたかったが、疲れ果てていた私は突っ込む気力もなく放っておくことにした。おとなしく流れに乗っておいた方が早く帰れそうだし。
「では行こうか、お嬢さん」
「……よろしくお願いします」
肩に乗せられたブラッドの手がやたらと重く感じる私だった。
最近の日課になっている散歩から戻ってきた私。
いつもより少し遠くまで行って景色を堪能したまでは良かったが、帰り道で買い物中のアリスにばったり出会った。彼女の荷物を半分持って時計塔を登ったのでさすがに疲れた。
自分の足元だけを見てのろのろと進む。
「あー、門から部屋まで遠い。この家、無駄に広すぎる~」
家っていうかお屋敷だけどさぁ、と一人で文句を言っていたつもりだった。
「はははっ、ブラッド、名無しさんに文句言われてるぜー?」
え?と思って顔を上げると少し先にエリオットとブラッドがいた。
「うわっ!なにいたの!?」
慌てる私にエリオットはにやにやと笑う。
「あんたが門から入ってきたところからずっと見てたぜ」
「ずっと!?」
ずっと見られてたの?気まずすぎる。
そっと家主であるブラッドを見てみた。
物言いたげな視線にとりあえず挨拶をする。
「……ただいま戻りました」
「おかえり、名無しさん。だいぶ遠くまで散歩に出ていたようだね」
「う、うん」
「疲れている君を敷地内でさらに歩かせることに、私は申し訳なさでいっぱいだよ」
「や、いえ、その……大丈夫です元気です。素敵なお部屋をありがとうございます」
わざとらしく言うブラッドにペコペコ頭を下げていると、隣にいたエリオットが楽しそうに笑った。
「こんな立派な屋敷に文句つけるなんて名無しさんは贅沢だよな」
「えええ、エリオット……!」
なぜあなたは火に油を注ぐようなセリフを楽し気に!?
慌てて彼の口をふさごうかと思った時、ブラッドが言った。
「いや、エリオット。女性というのはわがままを言うくらいがちょうどいい。名無しさんが快適に過ごせるように入口近くに一つ家を増やして……」
「いらないですからー!!!」
とんでもない提案に思わず大声を出すと、彼らは大笑いし始めた。
「ぶはははっ!名無しさん、マジでおもしろいよなー!」
「飽きないな」
「……あの、部屋に戻っていいですかね」
もうどうでもよくなってきたのでとりあえず帰ろうとすると、エリオットが口を尖らせた。
「えー、もう行っちまうのかよ。せっかくだし一緒に飯でも食おうぜ」
「食べるというよりも休みたいんだよね、私」
「名無しさんが食べ物で釣れないとはよっぽどだ。女性を無理させてはいけないぞ。諦めろ、エリオット」
ブラッドの言葉にしぶしぶ引き下がるエリオット。
うん、まぁありがたいんだけどね、いつも食べ物で釣れると思われてるのね私。
「ま、仕方ねぇな。食いたい時に食うのが一番だし。名無しさん、今度一緒に飯食いに行こうぜ。あ、もちろんブラッドも一緒に……」
「いらん!どうせお前の行きたい店はろくなものを出さないだろう。二人で楽しんできなさい」
「えー、なんだよ、すっげーうまい店なのに」
あぁ、いつものやりとりが始まったなー。
私いつ部屋に帰れるのかなぁ。
そんなことをぼんやりと思っていたら、エリオットが私を見た。
「……つーかあんたほんとに疲れてるみたいだな。大丈夫か?」
「いや、だから今すぐ休みたいくらいに疲れてるのよほんとに」
可愛げのない言い方をしてしまうくらいに疲れている。
「そっか、ふざけてる場合じゃねぇな。悪い悪い。部屋まで連れてってやろうか?」
「えー、いいよいいよ。大丈夫」
「遠慮すんなって。あんたくらいならぱっと連れてってやるからさ」
……私を担ぐつもりかしら、この人。
ときめきも何もない感じのエリオットに呆れかけた時だった。
「エリオット。お前は食事をとるんじゃなかったのか?時間帯が変わる前にさっさと行け」
「え、でも名無しさんが……」
「お嬢さんなら私が部屋まで送るから大丈夫だ」
「え!いいってば!」
まさかの申し出!(さすがボス。予想を超えてくるわ)
私は即断ったのだが、エリオットは納得したようにうなずいた。
「ブラッドに任せりゃ名無しさんも行き倒れたりしないな」
「あぁ、もちろんだ」
いくらなんでも行き倒れたりはしないでしょうよ。
そう言いたかったが、疲れ果てていた私は突っ込む気力もなく放っておくことにした。おとなしく流れに乗っておいた方が早く帰れそうだし。
「では行こうか、お嬢さん」
「……よろしくお願いします」
肩に乗せられたブラッドの手がやたらと重く感じる私だった。