マッドハッターズ!
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【4.ボスだしね】
ひまだなー、散歩でもいこうかなーと思いながら廊下を歩いていたらブラッドとアリスにばったり出会った。
「あらまぁ、お二人さん!」
驚きのあまり、近所のおばちゃんみたいな言い方をしてしまう私。
彼女がたまに来てはブラッドから本を借りていくというのは知っていたが、2人が一緒にいるところをみるのは初めてだった。
時計塔に滞在している彼女がわざわざここへ来ることを考えると、それはもういい仲に決まっている(と思う)。
どうしよう、今出会ってしまった私は邪魔者かもしれないぞ?
そんな心配をする私をよそに、アリスが嬉しそうな顔で駆けてきた。
「名無しさん!久しぶりね!」
「うん、久しぶりだね」
にこにこするアリスと、なんだか気まずい私。
視界の端にいつもと変わらない様子のブラッドがちらりと映る。あぁ、邪魔してごめんなさいボス。
「えぇと2人は散歩?」
「ううん、今本を借りた所なの。それで今からお茶会をしようってことになってね」
「あぁ、そうなんだ。ゆっくりしていってね、って居候の私がいうのもなんだけど」
そう言ってその場を去ろうとした私をアリスが引き留めた。
「せっかくだし名無しさんも誘おうと思ってたのよ」
「そうなの?でも私……お邪魔じゃない?」
思わずそういう私にアリスが「お邪魔?」と首をかしげる。
するとブラッドがニヤリと笑って私を見た。
「どうせ暇なんだろう?お嬢さん」
「うん、どうせ暇です。ってこら、ボス言い方!」
思わずツッコむ私を楽しそうに見ながらも、ブラッドは綺麗に私の言葉をスルーした。
「それならば私に付き合いなさい。エリオットや門番たちも呼ぶつもりだ」
あぁ、みんなでお茶会ねとほっとする私にブラッドがさらに続ける。
「名無しさんの好きな茶菓子と飲んでもらいたい茶葉も用意してあるぞ」
「それはご親切にどうもありがとう」
「VIP待遇ね、名無しさん」
楽しそうにいうアリス。……ボス、大事なアリスにそんなこと言わせたらダメでしょ。
なんだかんだでお茶会が始まった。
席に着いた途端、双子が口を開く。
「お姉さんが遊びに来てるなんて全然知らなかったよ」
「ほんとほんと。もっと早く知っていればたくさん遊べたのにね」
「近くに来たからちょっと寄っただけよ」
双子に挟まれて座るアリスは、彼らの会話に口を挟む。これは慣れていないとなかなかできない。
「えー、つまんない。ちゃんと遊びに来てよ。そうしたら僕らお姉さんのために時間を作るのに」
「お前らの場合、時間を作るんじゃなくてさぼるってことだろ?
だいたい門番のくせになんで客が来てることも知らないんだよ。遊び歩いてたんだろ」
「うるさいな、僕らは見回りに行ってたんだよ馬鹿ウサギ」
「そうだよ、ひよこウサギ。おとなしくそこらへんの餌でも食ってろよ」
「なんだと!?」
あぁ、いつもの光景……。
間に挟まれているアリスが大変だわ~、頑張れ~と他人事のように見ていると斜め向かいのブラッドに声を掛けられる。
「いつもは君があのポジションにいるから、今日はラクだろう?」
「え、私あんなに大変なポジションに置かれてた?」
揉めている双子とエリオットに挟まれ苦笑しているアリスを見る。
「あぁ。今日はゆっくりと紅茶を楽しむといい」
割と本気で言ってくれているようで「ありがとう」と素直に言葉が出た。
確かにこうしてゆっくりと紅茶を飲むのは初めてかもしれない。
私は紅茶の綺麗な色と香りを感じてしみじみとそう思った。
「美味しい」
一口飲んだ紅茶にするりと言葉が出た。
「そうだろう?名無しさんとは好みが合うと思っていたんだ。君の味覚は正しい」
私の独り言とも言えるつぶやきに即座に反応したブラッドは、そこからこの茶葉の良さをペラペラと語り始めた。
……ゆっくりと紅茶を飲むのは初めてだと思ったけれど、まさかの紅茶トークに私は苦笑する。
「……全然ゆっくり飲めないじゃない」
適当に相槌をうちながら、私はお菓子をつまむことにした。
お茶会がお開きになり、私はアリスを滞在地である時計塔まで送ることにした。
「わざわざ送ってくれなくても大丈夫なのに」
「いいのいいの。お菓子食べ過ぎたから消費しないといけないしね」
遠慮するアリスに笑いながら答える私。
「そうとう食べたから階段をのぼってユリウスを一目見てから帰ろうかなぁ」
「確かにいい運動にはなるわね」
「ブラッドのお茶会に付き合ってたら確実に太っちゃうもん。運動しないと!」
私の言葉に「ブラッドといえば……」とアリスが私を見た。
「楽しそうに話していたわねー、名無しさんに」
「え?」
「紅茶の話」
「あぁ、うん、なんか新しい茶葉の良さを延々と語られてしまったよ。よくわからないから適当に聞いてお菓子ばっかり食べちゃったの。食べすぎたのはブラッドのせいだなぁ」
「新しい茶葉だけのせいじゃないと思うわよ。あんなに楽しそうだったのは」
そう言ってアリスはにやにやと私を見た。
「他の人には絶対見せないような優しい目で見てたのよねぇ、名無しさんのこと」
「えぇ!?」
「やたらと名無しさんに絡んでたしね。名無しさんのことが気になって仕方ないみたいよ」
「いやいや、それはないよ」
「そうかしら? ずっと名無しさんのこと見て楽しそうな顔してたけど」
「人をからかって楽しむ悪趣味なタイプなの、うちのボスは」
どう考えたって、私のことを面白い余所者という認識しかしていない。
好きとか嫌いじゃなくて、ブラッドにとっては面白いかどうかが重要なのだ。
「……他所者はおもしろいってアリスもよく言われるでしょ?」
「それはそうなんだけど、でもなんかやっぱり違う気がする、名無しさんには」
「そんなわけないよー。ほんと、私なんてからかわれてるだけだし、むしろアリスのがいい感じなんじゃないの?」
ずばりと聞くと「えー、ないわよ」と即否定されてしまった。
「だってよくブラッドと会ってるんじゃないの?」
「会ってるっていうか図書館みたいなものよ。私が行ってもいないことのほうが多いわよ。
メイドさんとかが立ち会ってくれてそれでおしまい」
「え、そうなの?」
「うん、そうなの」
全否定されました。
てっきりいい感じだと思っていたのになぁ。
「なにか楽しいことがあったら教えてね」
彼女はそう言ってにこにこっと笑った。
「……ないと思うけどなぁ。ブラッドのほうから拒否されそうだもん」
本気でそうつぶやく私。
うん、そうだな。私とは正反対のタイプ(大人の美女とかそういうの)がお好みなのではないかなと勝手に思っている。
きっとブラッドはすごく意地悪そうに笑って「君にもう少し色っぽさが身に着けば言うことはないがね」とかって皮肉交じりに拒否するだろう。
嫌味な人だなぁ、と想像上のブラッドになんだかむっとしてしまう。
「好きだけど、そういう好きじゃないんだよねぇ。だいたいブラッドみたいなタイプを好きになったら大変そうだもん」
「そうねぇ。ボスだしね」
「そうそう、ボスだしね」
ボスだしね、ということで意見が一致しこの話は終了となった私たちだった。
ひまだなー、散歩でもいこうかなーと思いながら廊下を歩いていたらブラッドとアリスにばったり出会った。
「あらまぁ、お二人さん!」
驚きのあまり、近所のおばちゃんみたいな言い方をしてしまう私。
彼女がたまに来てはブラッドから本を借りていくというのは知っていたが、2人が一緒にいるところをみるのは初めてだった。
時計塔に滞在している彼女がわざわざここへ来ることを考えると、それはもういい仲に決まっている(と思う)。
どうしよう、今出会ってしまった私は邪魔者かもしれないぞ?
そんな心配をする私をよそに、アリスが嬉しそうな顔で駆けてきた。
「名無しさん!久しぶりね!」
「うん、久しぶりだね」
にこにこするアリスと、なんだか気まずい私。
視界の端にいつもと変わらない様子のブラッドがちらりと映る。あぁ、邪魔してごめんなさいボス。
「えぇと2人は散歩?」
「ううん、今本を借りた所なの。それで今からお茶会をしようってことになってね」
「あぁ、そうなんだ。ゆっくりしていってね、って居候の私がいうのもなんだけど」
そう言ってその場を去ろうとした私をアリスが引き留めた。
「せっかくだし名無しさんも誘おうと思ってたのよ」
「そうなの?でも私……お邪魔じゃない?」
思わずそういう私にアリスが「お邪魔?」と首をかしげる。
するとブラッドがニヤリと笑って私を見た。
「どうせ暇なんだろう?お嬢さん」
「うん、どうせ暇です。ってこら、ボス言い方!」
思わずツッコむ私を楽しそうに見ながらも、ブラッドは綺麗に私の言葉をスルーした。
「それならば私に付き合いなさい。エリオットや門番たちも呼ぶつもりだ」
あぁ、みんなでお茶会ねとほっとする私にブラッドがさらに続ける。
「名無しさんの好きな茶菓子と飲んでもらいたい茶葉も用意してあるぞ」
「それはご親切にどうもありがとう」
「VIP待遇ね、名無しさん」
楽しそうにいうアリス。……ボス、大事なアリスにそんなこと言わせたらダメでしょ。
なんだかんだでお茶会が始まった。
席に着いた途端、双子が口を開く。
「お姉さんが遊びに来てるなんて全然知らなかったよ」
「ほんとほんと。もっと早く知っていればたくさん遊べたのにね」
「近くに来たからちょっと寄っただけよ」
双子に挟まれて座るアリスは、彼らの会話に口を挟む。これは慣れていないとなかなかできない。
「えー、つまんない。ちゃんと遊びに来てよ。そうしたら僕らお姉さんのために時間を作るのに」
「お前らの場合、時間を作るんじゃなくてさぼるってことだろ?
だいたい門番のくせになんで客が来てることも知らないんだよ。遊び歩いてたんだろ」
「うるさいな、僕らは見回りに行ってたんだよ馬鹿ウサギ」
「そうだよ、ひよこウサギ。おとなしくそこらへんの餌でも食ってろよ」
「なんだと!?」
あぁ、いつもの光景……。
間に挟まれているアリスが大変だわ~、頑張れ~と他人事のように見ていると斜め向かいのブラッドに声を掛けられる。
「いつもは君があのポジションにいるから、今日はラクだろう?」
「え、私あんなに大変なポジションに置かれてた?」
揉めている双子とエリオットに挟まれ苦笑しているアリスを見る。
「あぁ。今日はゆっくりと紅茶を楽しむといい」
割と本気で言ってくれているようで「ありがとう」と素直に言葉が出た。
確かにこうしてゆっくりと紅茶を飲むのは初めてかもしれない。
私は紅茶の綺麗な色と香りを感じてしみじみとそう思った。
「美味しい」
一口飲んだ紅茶にするりと言葉が出た。
「そうだろう?名無しさんとは好みが合うと思っていたんだ。君の味覚は正しい」
私の独り言とも言えるつぶやきに即座に反応したブラッドは、そこからこの茶葉の良さをペラペラと語り始めた。
……ゆっくりと紅茶を飲むのは初めてだと思ったけれど、まさかの紅茶トークに私は苦笑する。
「……全然ゆっくり飲めないじゃない」
適当に相槌をうちながら、私はお菓子をつまむことにした。
お茶会がお開きになり、私はアリスを滞在地である時計塔まで送ることにした。
「わざわざ送ってくれなくても大丈夫なのに」
「いいのいいの。お菓子食べ過ぎたから消費しないといけないしね」
遠慮するアリスに笑いながら答える私。
「そうとう食べたから階段をのぼってユリウスを一目見てから帰ろうかなぁ」
「確かにいい運動にはなるわね」
「ブラッドのお茶会に付き合ってたら確実に太っちゃうもん。運動しないと!」
私の言葉に「ブラッドといえば……」とアリスが私を見た。
「楽しそうに話していたわねー、名無しさんに」
「え?」
「紅茶の話」
「あぁ、うん、なんか新しい茶葉の良さを延々と語られてしまったよ。よくわからないから適当に聞いてお菓子ばっかり食べちゃったの。食べすぎたのはブラッドのせいだなぁ」
「新しい茶葉だけのせいじゃないと思うわよ。あんなに楽しそうだったのは」
そう言ってアリスはにやにやと私を見た。
「他の人には絶対見せないような優しい目で見てたのよねぇ、名無しさんのこと」
「えぇ!?」
「やたらと名無しさんに絡んでたしね。名無しさんのことが気になって仕方ないみたいよ」
「いやいや、それはないよ」
「そうかしら? ずっと名無しさんのこと見て楽しそうな顔してたけど」
「人をからかって楽しむ悪趣味なタイプなの、うちのボスは」
どう考えたって、私のことを面白い余所者という認識しかしていない。
好きとか嫌いじゃなくて、ブラッドにとっては面白いかどうかが重要なのだ。
「……他所者はおもしろいってアリスもよく言われるでしょ?」
「それはそうなんだけど、でもなんかやっぱり違う気がする、名無しさんには」
「そんなわけないよー。ほんと、私なんてからかわれてるだけだし、むしろアリスのがいい感じなんじゃないの?」
ずばりと聞くと「えー、ないわよ」と即否定されてしまった。
「だってよくブラッドと会ってるんじゃないの?」
「会ってるっていうか図書館みたいなものよ。私が行ってもいないことのほうが多いわよ。
メイドさんとかが立ち会ってくれてそれでおしまい」
「え、そうなの?」
「うん、そうなの」
全否定されました。
てっきりいい感じだと思っていたのになぁ。
「なにか楽しいことがあったら教えてね」
彼女はそう言ってにこにこっと笑った。
「……ないと思うけどなぁ。ブラッドのほうから拒否されそうだもん」
本気でそうつぶやく私。
うん、そうだな。私とは正反対のタイプ(大人の美女とかそういうの)がお好みなのではないかなと勝手に思っている。
きっとブラッドはすごく意地悪そうに笑って「君にもう少し色っぽさが身に着けば言うことはないがね」とかって皮肉交じりに拒否するだろう。
嫌味な人だなぁ、と想像上のブラッドになんだかむっとしてしまう。
「好きだけど、そういう好きじゃないんだよねぇ。だいたいブラッドみたいなタイプを好きになったら大変そうだもん」
「そうねぇ。ボスだしね」
「そうそう、ボスだしね」
ボスだしね、ということで意見が一致しこの話は終了となった私たちだった。