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【いつもの遊び】
買い出しを終え、時計塔の長い階段を登っていたらラッキーなことにエースに遭遇した。
「うわー!エースだぁ!久しぶりだねぇ会いたかったよー。はい、荷物持ってー」
有無を言わさず荷物を押し付ける私に、エースは
「はははっ!俺も会いたかったけど、今度は荷物のない時がいいなー」
なんだかんだ言いつつも、笑って荷物を持ってくれた。
階段を登りながら、世間話をする私達。
「ユリウスがだいぶ前から『エースが来ない』ってぼやいてたよ」
「えー、ユリウスの奴、そんなに俺に会いたがってるんだ?ユリウスのことは好きだけど、そういう好きじゃないんだよな」
「うん、ユリウスだってそういう意味で会いたがってるわけじゃないと思うよ」
エースの言葉に笑いながら答えると、エースも笑う。
「確かにだいぶ待たせちゃってるからなぁ。さすがに今日は本気のお説教を覚悟してるよ」
「うん、たっぷり叱られてください。仕事が進まないみたいで最近、結構機嫌悪いから」
「気が重いなー。こっそり部屋に入ろうかな」
「なにそれ」
「え、だから、こっそり部屋に入って『前からずっとここにいた風』を演じてみようかな、と」
「……余計怒られると思うよ。すぐバレるだろうし」
「ダメかなぁ?」
「やりたいならやってみれば?」
ということで、エースの「前からこの部屋にいましたけど、を装う作戦」をすることになった。
「とりあえず名無しさんが先に入ってよ。俺は後からこっそり入るから」
「いいけど、絶対にばれると思うよ」
「うん、いいんだよ。それはそれで楽しいから」
にこにこ笑う彼に、「ただ単にユリウスを怒らせたいだけなんじゃ?」と思う私。
でもなんか楽しそうだしいいや、ということで、私は部屋のドアを開けた。
「ユリウス、ただいま」
そっとドアを開けて中に入ると、ユリウスはいつもの作業机にいた。
いつもなら彼はちらりと視線だけをあげて、私を見る。
そしてすぐに仕事に戻るのだ。
その時にエースがささっと部屋に入り、キッチンへ隠れるという手はずになっている。
(そして、何食わぬ顔でユリウスに珈琲を持って行ってあげる、という可愛いことを企んでいる)
しかし……
「ユリウス?」
彼は視線をあげなかった。
よくよく見たら、動きが止まっている。
え?と思い固まる私に、エースも何かを感じたのかドアからそっと顔を出す。
「名無しさん、どうしたの?」
彼はそう言いながら部屋を覗き込み、動かないユリウスを見た。
「……まさかついに過労死しちゃったとか?」
「縁起でもないこと言わないでよ!」
とんでもない発言をするエースを睨みつけてから、私はそっとユリウスに近づいた。
「ユリウス?」
ドキドキしつつ彼を覗き込んだ私。
「……うわー、寝てる!」
寝顔を見た瞬間、呟いてしまった。
ユリウスは寝ていた。仕事用の机で、うとうとと。
珍しい。
ものすごーく珍しい。
普段から睡眠時間が極端に少ない人だけど、こうやって仕事中に寝ている姿を今まで見たことがなかった。
寝るにしても、ちゃんと仕事に区切りをつけるタイプなのだ。
「寝落ちするなんて、ユリウスも人間だったのね~」
私は物珍しさから、思いっきり寝ている彼を観察した。
眼鏡をかけたまま、うつむいている彼。
遠くから見れば、仕事をしているようにも見える姿勢。
でも手元は動いていないし、不自然なくらいうつむいている。
「気難しそうな顔して寝てるなぁ」
エースが興味深そうな笑みを浮かべて言った。
仕事中のうたたねだから、まるで気の休まっていない顔をしている。
寝ていても眉間にしわが寄っているなんてよっぽどだ。なんか可哀想。
「眼鏡外してやろっか?」
「えー、起きちゃうでしょ」
「でも邪魔そうだし、名無しさんが外してあげなよ」
「やだよ、起こしちゃいそうだもん」
「そーっとやればわからないよ。万が一起きちゃっても女の子に起こされるなら良いと思うぜ。俺だったらすっごく嫌がられそう」
なんだかんだで私は彼の眼鏡を外してみることにした。
起きちゃうかな?
まぁ、起きたら起きたでいいや。
そう思って彼の眼鏡のつるをそっと掴み、そろそろと引っ張ってみた。
「……」
どうかおきませんように。
そう思いながら、すすすっと眼鏡を動かしていく。
一瞬ユリウスが身じろぎをし、私もびくりとしたけれど、結局彼は起きなかった。
「……任務完了です」
眼鏡を外すことに成功し、私がふーっと汗をぬぐう真似をすると
「おー!!」とエースが小さく拍手をしてくれた。
なんだか異様に楽しい気持ちになってくる。
「次は何する?」
「はははっ!乗って来たね、名無しさん」
「うん、スリルがたまらない。今度はエースが何かしてよ」
「えー俺? 何がいいかなぁ?ラクガキとか?」
「それは……すごく面白いけど、すごく後が怖いからやめとこう」
「そう?じゃあ○○○して、×××を……」
「はい却下!」
とんでもないことを言いだすエースの言葉を遮る。
しばらくあーでもないこーでもないと作戦会議をしていたけれど、私ははっと我に返った。
「もうさ、エースが真面目に仕事を片付けておいてあげるのが一番びっくりするんじゃない?」
「そうだねぇ。寝ている間にぜーんぶ終わらせれば、叱られずに済みそうだし」
「そうだよ。『前からここにいましたけど作戦』なんて必要なくなるよ」
「でもちょっとユリウスのお説教を聞きたかったんだけどなー、俺」
「……お説教どころか、そのうち縁を切られるよ」
本気で呆れかけた時だった。
「……ん……」
かたりとネジが転がる音と共に、ユリウスの声がした。
私とエースはぱっと彼を見下ろす。
「…………」
ユリウスはゆっくりと身体をおこしてから、顔を上げる。
すぐそばでそれを見守る私とエース。
私達に気づく様子はまだなく、ぼんやりとした様子のユリウス。
そのうちに自分が眠っていたことを認識したのか、様子を伺うようにゆっくりと辺りを見回した。
「……」
「……」
「……」
私達の姿を見た瞬間に、ユリウスは固まった。
「……なっ……?」
そのまま言葉も詰まってしまったらしい。
私とエースを交互に見ている。
私達はというと、たぶん2人そろって同じ顔をしていたと思う。
ニヤニヤがとまらないというか、寝起きユリウスという貴重な状況が楽しくて仕方なかった。
そんな私達の思いに気づいたのか、自分の置かれた状況を把握したのか、ユリウスはぱっと顔を赤らめたかと思うと、おでこに手を当てながら机に崩れ落ちた。
「やぁ。おはようユリウス」
ユリウスの肩をぽんと叩きながら、エースが爽やかに声をかける。
「エース……。お前、いつの間に……」
「ははは、何言ってるんだよ。さっきからずっといたじゃないか」
悪びれもせずにエースは言った。
勝手に「さっきからここにいましたけど作戦」を決行している。
「お前がずっと寝てるから、俺も仕事できずに困ってたんだぜ?疲れてるお前を起こすなんてできないもんな。なー、名無しさん?」
「……よく言うよね」
「えー?何が?」
あきれ果てる私の肩を抱きながらエースは笑う。
私はエースの腕を振りほどいてから、ユリウスに言った。
「ユリウス、一度ちゃんと寝たら?疲れてるんじゃない?」
「……」
「そうそう、ちゃんと寝ないと名無しさんにいたずらされちゃうぜ?」
「は!ちょっとなに言ってるの!?」
「えー、さっきあんなことしちゃったくせにー。寝てるからってけっこう大胆だよな、名無しさんは」
「あんなことなんてっ……!」
ニヤニヤ笑うエースに、なんとなく動揺してしまう私。
するとユリウスが私とエースを見て、「はぁぁぁ」と深いため息をついた。
「……寝る」
珍しくそう宣言したかと思うと、疲れたように立ち上がったユリウス。
「えー、寝ちゃうの!?」
「俺が来たばっかりなのに寝るなんてつまらないこと言わないでくれよ」
「……お前はずっと前に来たんじゃなかったのか、エース?」
「はははっ!そうだっけ?」
「なんでもいいじゃない。みんなでお茶してから寝たら? 美味しいお菓子買って来たんだー」
そう言って私はお湯を沸かしにキッチンへ向かった。
「……寝ろだの、寝るなだの、どっちなんだ、名無しさん」
「お茶してから3人で寝ればいいだろ?」
ぶつぶつつぶやくユリウスを座らせながら、エースが笑う。
2人のやり取りをキッチンから見ているのは楽しい。
「なんで3人で寝る必要があるんだ」
「3人一緒の方が楽しいじゃないか。それともなに?俺と名無しさんの2人で寝てもいいの?」
エースの発言に「エースと2人で寝るなんて私はお断りー」と口を挟みながら、私は珈琲豆を挽く。
そんな私をちらりと見てからユリウスが言う。
「断られてるぞ、エース」
「はははっ。つれないよなー、名無しさんは」
からから笑うエースと、ため息をつくユリウスを見て、なんだか楽しくなってくる私だった。
買い出しを終え、時計塔の長い階段を登っていたらラッキーなことにエースに遭遇した。
「うわー!エースだぁ!久しぶりだねぇ会いたかったよー。はい、荷物持ってー」
有無を言わさず荷物を押し付ける私に、エースは
「はははっ!俺も会いたかったけど、今度は荷物のない時がいいなー」
なんだかんだ言いつつも、笑って荷物を持ってくれた。
階段を登りながら、世間話をする私達。
「ユリウスがだいぶ前から『エースが来ない』ってぼやいてたよ」
「えー、ユリウスの奴、そんなに俺に会いたがってるんだ?ユリウスのことは好きだけど、そういう好きじゃないんだよな」
「うん、ユリウスだってそういう意味で会いたがってるわけじゃないと思うよ」
エースの言葉に笑いながら答えると、エースも笑う。
「確かにだいぶ待たせちゃってるからなぁ。さすがに今日は本気のお説教を覚悟してるよ」
「うん、たっぷり叱られてください。仕事が進まないみたいで最近、結構機嫌悪いから」
「気が重いなー。こっそり部屋に入ろうかな」
「なにそれ」
「え、だから、こっそり部屋に入って『前からずっとここにいた風』を演じてみようかな、と」
「……余計怒られると思うよ。すぐバレるだろうし」
「ダメかなぁ?」
「やりたいならやってみれば?」
ということで、エースの「前からこの部屋にいましたけど、を装う作戦」をすることになった。
「とりあえず名無しさんが先に入ってよ。俺は後からこっそり入るから」
「いいけど、絶対にばれると思うよ」
「うん、いいんだよ。それはそれで楽しいから」
にこにこ笑う彼に、「ただ単にユリウスを怒らせたいだけなんじゃ?」と思う私。
でもなんか楽しそうだしいいや、ということで、私は部屋のドアを開けた。
「ユリウス、ただいま」
そっとドアを開けて中に入ると、ユリウスはいつもの作業机にいた。
いつもなら彼はちらりと視線だけをあげて、私を見る。
そしてすぐに仕事に戻るのだ。
その時にエースがささっと部屋に入り、キッチンへ隠れるという手はずになっている。
(そして、何食わぬ顔でユリウスに珈琲を持って行ってあげる、という可愛いことを企んでいる)
しかし……
「ユリウス?」
彼は視線をあげなかった。
よくよく見たら、動きが止まっている。
え?と思い固まる私に、エースも何かを感じたのかドアからそっと顔を出す。
「名無しさん、どうしたの?」
彼はそう言いながら部屋を覗き込み、動かないユリウスを見た。
「……まさかついに過労死しちゃったとか?」
「縁起でもないこと言わないでよ!」
とんでもない発言をするエースを睨みつけてから、私はそっとユリウスに近づいた。
「ユリウス?」
ドキドキしつつ彼を覗き込んだ私。
「……うわー、寝てる!」
寝顔を見た瞬間、呟いてしまった。
ユリウスは寝ていた。仕事用の机で、うとうとと。
珍しい。
ものすごーく珍しい。
普段から睡眠時間が極端に少ない人だけど、こうやって仕事中に寝ている姿を今まで見たことがなかった。
寝るにしても、ちゃんと仕事に区切りをつけるタイプなのだ。
「寝落ちするなんて、ユリウスも人間だったのね~」
私は物珍しさから、思いっきり寝ている彼を観察した。
眼鏡をかけたまま、うつむいている彼。
遠くから見れば、仕事をしているようにも見える姿勢。
でも手元は動いていないし、不自然なくらいうつむいている。
「気難しそうな顔して寝てるなぁ」
エースが興味深そうな笑みを浮かべて言った。
仕事中のうたたねだから、まるで気の休まっていない顔をしている。
寝ていても眉間にしわが寄っているなんてよっぽどだ。なんか可哀想。
「眼鏡外してやろっか?」
「えー、起きちゃうでしょ」
「でも邪魔そうだし、名無しさんが外してあげなよ」
「やだよ、起こしちゃいそうだもん」
「そーっとやればわからないよ。万が一起きちゃっても女の子に起こされるなら良いと思うぜ。俺だったらすっごく嫌がられそう」
なんだかんだで私は彼の眼鏡を外してみることにした。
起きちゃうかな?
まぁ、起きたら起きたでいいや。
そう思って彼の眼鏡のつるをそっと掴み、そろそろと引っ張ってみた。
「……」
どうかおきませんように。
そう思いながら、すすすっと眼鏡を動かしていく。
一瞬ユリウスが身じろぎをし、私もびくりとしたけれど、結局彼は起きなかった。
「……任務完了です」
眼鏡を外すことに成功し、私がふーっと汗をぬぐう真似をすると
「おー!!」とエースが小さく拍手をしてくれた。
なんだか異様に楽しい気持ちになってくる。
「次は何する?」
「はははっ!乗って来たね、名無しさん」
「うん、スリルがたまらない。今度はエースが何かしてよ」
「えー俺? 何がいいかなぁ?ラクガキとか?」
「それは……すごく面白いけど、すごく後が怖いからやめとこう」
「そう?じゃあ○○○して、×××を……」
「はい却下!」
とんでもないことを言いだすエースの言葉を遮る。
しばらくあーでもないこーでもないと作戦会議をしていたけれど、私ははっと我に返った。
「もうさ、エースが真面目に仕事を片付けておいてあげるのが一番びっくりするんじゃない?」
「そうだねぇ。寝ている間にぜーんぶ終わらせれば、叱られずに済みそうだし」
「そうだよ。『前からここにいましたけど作戦』なんて必要なくなるよ」
「でもちょっとユリウスのお説教を聞きたかったんだけどなー、俺」
「……お説教どころか、そのうち縁を切られるよ」
本気で呆れかけた時だった。
「……ん……」
かたりとネジが転がる音と共に、ユリウスの声がした。
私とエースはぱっと彼を見下ろす。
「…………」
ユリウスはゆっくりと身体をおこしてから、顔を上げる。
すぐそばでそれを見守る私とエース。
私達に気づく様子はまだなく、ぼんやりとした様子のユリウス。
そのうちに自分が眠っていたことを認識したのか、様子を伺うようにゆっくりと辺りを見回した。
「……」
「……」
「……」
私達の姿を見た瞬間に、ユリウスは固まった。
「……なっ……?」
そのまま言葉も詰まってしまったらしい。
私とエースを交互に見ている。
私達はというと、たぶん2人そろって同じ顔をしていたと思う。
ニヤニヤがとまらないというか、寝起きユリウスという貴重な状況が楽しくて仕方なかった。
そんな私達の思いに気づいたのか、自分の置かれた状況を把握したのか、ユリウスはぱっと顔を赤らめたかと思うと、おでこに手を当てながら机に崩れ落ちた。
「やぁ。おはようユリウス」
ユリウスの肩をぽんと叩きながら、エースが爽やかに声をかける。
「エース……。お前、いつの間に……」
「ははは、何言ってるんだよ。さっきからずっといたじゃないか」
悪びれもせずにエースは言った。
勝手に「さっきからここにいましたけど作戦」を決行している。
「お前がずっと寝てるから、俺も仕事できずに困ってたんだぜ?疲れてるお前を起こすなんてできないもんな。なー、名無しさん?」
「……よく言うよね」
「えー?何が?」
あきれ果てる私の肩を抱きながらエースは笑う。
私はエースの腕を振りほどいてから、ユリウスに言った。
「ユリウス、一度ちゃんと寝たら?疲れてるんじゃない?」
「……」
「そうそう、ちゃんと寝ないと名無しさんにいたずらされちゃうぜ?」
「は!ちょっとなに言ってるの!?」
「えー、さっきあんなことしちゃったくせにー。寝てるからってけっこう大胆だよな、名無しさんは」
「あんなことなんてっ……!」
ニヤニヤ笑うエースに、なんとなく動揺してしまう私。
するとユリウスが私とエースを見て、「はぁぁぁ」と深いため息をついた。
「……寝る」
珍しくそう宣言したかと思うと、疲れたように立ち上がったユリウス。
「えー、寝ちゃうの!?」
「俺が来たばっかりなのに寝るなんてつまらないこと言わないでくれよ」
「……お前はずっと前に来たんじゃなかったのか、エース?」
「はははっ!そうだっけ?」
「なんでもいいじゃない。みんなでお茶してから寝たら? 美味しいお菓子買って来たんだー」
そう言って私はお湯を沸かしにキッチンへ向かった。
「……寝ろだの、寝るなだの、どっちなんだ、名無しさん」
「お茶してから3人で寝ればいいだろ?」
ぶつぶつつぶやくユリウスを座らせながら、エースが笑う。
2人のやり取りをキッチンから見ているのは楽しい。
「なんで3人で寝る必要があるんだ」
「3人一緒の方が楽しいじゃないか。それともなに?俺と名無しさんの2人で寝てもいいの?」
エースの発言に「エースと2人で寝るなんて私はお断りー」と口を挟みながら、私は珈琲豆を挽く。
そんな私をちらりと見てからユリウスが言う。
「断られてるぞ、エース」
「はははっ。つれないよなー、名無しさんは」
からから笑うエースと、ため息をつくユリウスを見て、なんだか楽しくなってくる私だった。