マッドハッターズ!
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【2.濃い日々】
ひまだなー、散歩でもいこうかなーと思いながら正門への道を歩いていたら、目の前にエリオットを発見。
久しぶりに彼を見かけたので、なんとなく嬉しくて声をかけようと近づくことにした。
しかし、歩いているはずの彼に全然追いつかない。歩くのが早すぎません?(脚長いもんなぁ)
走るのも嫌だったので、「エリオットー!」と私は声をかけた。
その瞬間だった。
ものすごい量の水が頭から降ってきた。
まるで滝の中に入ったかのような水。
驚きと、水の勢いで私は気づいたら地面に両手をついていた。
ザザザザーっというものすごい音に、エリオットがびっくりしたように振り返った。
「なっ、なんだ!? 名無しさん!?」
「…………エリオット」
「ど、どうしたんだよ!? なんだこれ、水……!?」
「わかんない、こっちが聞きたい……なに?これ」
駆け寄ってきたエリオットに、びしょ濡れの私は呆然としたまま答える。
「えーと、なにか拭くものは……」
見回しながらなにもないと判断したらしい彼は、巻いていた自分のストールを外して私にかぶせた。
「ごめんな、こんなもんしかねぇけどとりあえずこれで拭いとけ」
「う、うん、むしろごめんね。ありがと」
その時、私たちの目の前に双子が現れた。
「あれ!? 名無しさんが水かぶったの!?」
「えぇ!? なんでなんで!? なんでひよこウサギじゃないの!?」
「……てめぇらまさか」
「なんで避けるんだよ、ひよこウサギ!!」
「そうだよ! お前のせいで名無しさんに水がかかっちゃったじゃないか!」
「あぁ!? ふざけんな! てめぇらの仕業だったんだな!」
ゆっくりと立ち上がったエリオット。
空気がびりびりとする。そうとう怒っているようだ。
「名無しさんをこんなめに遭わせるたぁ、覚悟はできてるんだろうな? クソガキ共」
「あんたこそ、自分の身代わりに名無しさんを使うなんて最低なことするね」
「僕らの名無しさんにひどいことをしたんだから、切り刻むしかないよ兄弟」
双子もいつもとは全く違う、底冷えするような静かさでエリオットを見据える。
悪いのはいたずらをした双子だ。それはどう考えてもそうに決まっている。
エリオットは悪くないし、私の代わりに怒ってくれている。
しかし、しかしですね、喧嘩する前に私の状態に気づいてほしいのです。
「あ、あの、寒いんですけど……」
にらみ合う3人の空気が怖すぎて、控えめに主張してみる。
しかし、怒り心頭の彼らに私の声は届いていないらしい。(一番怒っていいのは私のはずだよね?)
屈みこんだまま、ぶるるっと震える私。
エリオットが貸してくれたストールも濡れてしまって余計に寒い。
あまりの寒さに自分を抱くようにして腕をさすった瞬間、濡れたストールが取り上げられた。
そして、代わりにふわりとしたいい香り(バラ?)と共に暖かい物が肩にかけられた。
「!?」
ふと見ると、私の肩に白いジャケットがかけられている。
そして、見覚えのある黒いブーツが視界に映った。
そのまま視線を上げていくと、そこには案の定ブラッドがいた。
「災難だったね、お嬢さん」
そう言って、ブラッドは私の頭をぽんぽんと撫でた。
「名無しさん、風呂に入ってきなさい。そのままじゃ風邪をひくからね」
「うん、ありがとう」
そう言った瞬間にくしゃみがでた。
思わずブラッドが貸してくれた上着をぎゅっと掴む。
「かわいそうに。門番達が迷惑をかけたね」
「迷惑っていうか……初めてのパターンすぎてちょっと笑えるかも」
「心の広いお嬢さんだ」
ブラッドは優しい表情でそう言ったのだが、すぐに冷たい視線を3人へと向けた。
恐ろしい、という表現じゃ言い表せない。
ブラッドを取り巻く空気は、今までに感じたことのない物だった。これがマフィアのボス。
「ブ、ブラッド?」
ブラッドは一歩前に進み出た。
それだけだったのだが、エリオットと双子がびくりとしてブラッドを見る。
今まさにお互い武器を抜こうとしていた3人だったのだが、ブラッドの無言の迫力にびくついているようだった。
「あ、ブラッド、こいつらがさ、名無しさんをひどい目に遭わせたからぶっとばそうと……」
「ボ、ボス。僕ら名無しさんを身代りにしたコイツを切り刻んじゃおうかなって思って……」
「そ、そうだよ。ボス!」
必死に言い訳をする3人を、ブラッドは静かに見ていた。
そして一言。
「ほう?」
びくぅっ!
という音が聞こえた気がするほど、3人は固まった。
「門番たち」
「な、なに、ボス?」
「10時間帯は無報酬だ。休みもしばらくは認めない」
「え、えぇーーーー!?」
「そんな! ひどいよボス……っ!」
文句を言う双子も、ブラッドの鋭い視線で黙り込んだ。
「エリオット。お前も、5時間帯減給だ」
「え!? 俺も!?」
「ちょ、ちょっと待ってよブラッド。エリオットは何も悪くないよ」
慌てて口をはさむが、ブラッドは淡々と言葉を続ける。
「名無しさんを庇えなかったんだ。それ相応の罰が必要だろう」
「な、なにそれ! おかしいよ! エリオットはちっとも悪くな……」
「そうだな。ブラッドのいう通り、完全に気を抜いてた俺が悪かったんだ。名無しさん、庇えなくてごめんな」
「いやいやいや、おかしいから!エリオットは全然悪くないから!!」
ついていけない展開になりつつある。
あっけにとられる私の元に、いつの間にかタオルを持った仲良しのメイドさんがいた。
「お嬢様~。お風呂へ~、ご案内しますよ~~~」
「名無しさん、ゆっくり浸かってくれて構わないよ。遠慮することなどないからな」
私を見送るブラッドは、いつものだるだる~っとした彼だった。
ここに住み始めてだいぶ経つけれど、本当に毎日が予想外すぎる。濃すぎる。
「屋敷で滝行とかないわ~」
お風呂に浸かりながらなんだか笑ってしまう私だった。
ひまだなー、散歩でもいこうかなーと思いながら正門への道を歩いていたら、目の前にエリオットを発見。
久しぶりに彼を見かけたので、なんとなく嬉しくて声をかけようと近づくことにした。
しかし、歩いているはずの彼に全然追いつかない。歩くのが早すぎません?(脚長いもんなぁ)
走るのも嫌だったので、「エリオットー!」と私は声をかけた。
その瞬間だった。
ものすごい量の水が頭から降ってきた。
まるで滝の中に入ったかのような水。
驚きと、水の勢いで私は気づいたら地面に両手をついていた。
ザザザザーっというものすごい音に、エリオットがびっくりしたように振り返った。
「なっ、なんだ!? 名無しさん!?」
「…………エリオット」
「ど、どうしたんだよ!? なんだこれ、水……!?」
「わかんない、こっちが聞きたい……なに?これ」
駆け寄ってきたエリオットに、びしょ濡れの私は呆然としたまま答える。
「えーと、なにか拭くものは……」
見回しながらなにもないと判断したらしい彼は、巻いていた自分のストールを外して私にかぶせた。
「ごめんな、こんなもんしかねぇけどとりあえずこれで拭いとけ」
「う、うん、むしろごめんね。ありがと」
その時、私たちの目の前に双子が現れた。
「あれ!? 名無しさんが水かぶったの!?」
「えぇ!? なんでなんで!? なんでひよこウサギじゃないの!?」
「……てめぇらまさか」
「なんで避けるんだよ、ひよこウサギ!!」
「そうだよ! お前のせいで名無しさんに水がかかっちゃったじゃないか!」
「あぁ!? ふざけんな! てめぇらの仕業だったんだな!」
ゆっくりと立ち上がったエリオット。
空気がびりびりとする。そうとう怒っているようだ。
「名無しさんをこんなめに遭わせるたぁ、覚悟はできてるんだろうな? クソガキ共」
「あんたこそ、自分の身代わりに名無しさんを使うなんて最低なことするね」
「僕らの名無しさんにひどいことをしたんだから、切り刻むしかないよ兄弟」
双子もいつもとは全く違う、底冷えするような静かさでエリオットを見据える。
悪いのはいたずらをした双子だ。それはどう考えてもそうに決まっている。
エリオットは悪くないし、私の代わりに怒ってくれている。
しかし、しかしですね、喧嘩する前に私の状態に気づいてほしいのです。
「あ、あの、寒いんですけど……」
にらみ合う3人の空気が怖すぎて、控えめに主張してみる。
しかし、怒り心頭の彼らに私の声は届いていないらしい。(一番怒っていいのは私のはずだよね?)
屈みこんだまま、ぶるるっと震える私。
エリオットが貸してくれたストールも濡れてしまって余計に寒い。
あまりの寒さに自分を抱くようにして腕をさすった瞬間、濡れたストールが取り上げられた。
そして、代わりにふわりとしたいい香り(バラ?)と共に暖かい物が肩にかけられた。
「!?」
ふと見ると、私の肩に白いジャケットがかけられている。
そして、見覚えのある黒いブーツが視界に映った。
そのまま視線を上げていくと、そこには案の定ブラッドがいた。
「災難だったね、お嬢さん」
そう言って、ブラッドは私の頭をぽんぽんと撫でた。
「名無しさん、風呂に入ってきなさい。そのままじゃ風邪をひくからね」
「うん、ありがとう」
そう言った瞬間にくしゃみがでた。
思わずブラッドが貸してくれた上着をぎゅっと掴む。
「かわいそうに。門番達が迷惑をかけたね」
「迷惑っていうか……初めてのパターンすぎてちょっと笑えるかも」
「心の広いお嬢さんだ」
ブラッドは優しい表情でそう言ったのだが、すぐに冷たい視線を3人へと向けた。
恐ろしい、という表現じゃ言い表せない。
ブラッドを取り巻く空気は、今までに感じたことのない物だった。これがマフィアのボス。
「ブ、ブラッド?」
ブラッドは一歩前に進み出た。
それだけだったのだが、エリオットと双子がびくりとしてブラッドを見る。
今まさにお互い武器を抜こうとしていた3人だったのだが、ブラッドの無言の迫力にびくついているようだった。
「あ、ブラッド、こいつらがさ、名無しさんをひどい目に遭わせたからぶっとばそうと……」
「ボ、ボス。僕ら名無しさんを身代りにしたコイツを切り刻んじゃおうかなって思って……」
「そ、そうだよ。ボス!」
必死に言い訳をする3人を、ブラッドは静かに見ていた。
そして一言。
「ほう?」
びくぅっ!
という音が聞こえた気がするほど、3人は固まった。
「門番たち」
「な、なに、ボス?」
「10時間帯は無報酬だ。休みもしばらくは認めない」
「え、えぇーーーー!?」
「そんな! ひどいよボス……っ!」
文句を言う双子も、ブラッドの鋭い視線で黙り込んだ。
「エリオット。お前も、5時間帯減給だ」
「え!? 俺も!?」
「ちょ、ちょっと待ってよブラッド。エリオットは何も悪くないよ」
慌てて口をはさむが、ブラッドは淡々と言葉を続ける。
「名無しさんを庇えなかったんだ。それ相応の罰が必要だろう」
「な、なにそれ! おかしいよ! エリオットはちっとも悪くな……」
「そうだな。ブラッドのいう通り、完全に気を抜いてた俺が悪かったんだ。名無しさん、庇えなくてごめんな」
「いやいやいや、おかしいから!エリオットは全然悪くないから!!」
ついていけない展開になりつつある。
あっけにとられる私の元に、いつの間にかタオルを持った仲良しのメイドさんがいた。
「お嬢様~。お風呂へ~、ご案内しますよ~~~」
「名無しさん、ゆっくり浸かってくれて構わないよ。遠慮することなどないからな」
私を見送るブラッドは、いつものだるだる~っとした彼だった。
ここに住み始めてだいぶ経つけれど、本当に毎日が予想外すぎる。濃すぎる。
「屋敷で滝行とかないわ~」
お風呂に浸かりながらなんだか笑ってしまう私だった。