短編
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【居眠り】
時計塔へ遊びに行ってみたら、ものすごーく珍しいことにユリウスがいなかった。
びっくりしたけれど、仕事でまれに外へ出ることがあるから、それかもしれない。
そう考えた私は、しばらく彼の部屋で帰りを待つことにした。
大した用事はないけれど、なんだかユリウスに会いたかったのだ。
彼はいつ会いに来ても「なにしに来た?」とか「あぁ、名無しさんか。こんな所に来るなんてヒマな奴だな」と言う。
冷たい人だ。
でもなんだかんだ私を追い出そうとはしない。
冷たいくせに本当は優しいなんて、ユリウスって実はかなりのやり手なのではないかと最近は思っている。
そして私はいつのまにか、ユリウスのことが気になって仕方ないという状態に陥っていた。
まんまと落とされてしまったわけだ。(もちろん彼はそんなつもりなかっただろうけど)
しばらくソファに座って待ってみたけど、全く帰ってくる様子がない。
あまりにヒマだったのでとりあえず、ユリウスがいつも座っている仕事机に座ってみた。
「なるほどー。ここから見る部屋の景色はこんな感じなのね」なんて思っていた。
思っていたはずだったのに、気づいたら私の意識は飛んでいた。
はっと気づくと私は机にうつぶせになっていた。
どうやらいつのまにか眠っていたらしい。
あー、でもまだ眠いなぁ、もうちょっと寝ようかなぁ。
そんなことを思いながら頭を少し上げた時に、ここが自分の部屋ではないことを思い出した。
その瞬間はっと顔をあげると、肩にかけられていた毛布が床に落ちた。
ん、毛布?いつのまに?
そんな疑問を抱いた瞬間、遠くの方から声がした。
「……起きたか」
見ると少し先のソファに座っているユリウスが呆れたように私を見ていた。
眼鏡をかけ手に本を持っている所をみると、読書をしていたらしい。
「わ! ユリウス! いつのまに!? っていうかおかえりなさい」
私は体を起こしてそう言った。
「なにが『おかえりなさい』だ。人が留守の間に勝手に来ていたかと思えば、仕事の机で居眠りとはな」
起き抜けの頭には彼の毒舌などまったく効果はないらしい。スルーできる。
「うん、ごめん。っていうか、腰が痛い。うでも痛い。首も痛い……」
「当り前だ。そんな所で寝ていたんだからな」
腰をさする私に、ユリウスはため息をついた。
「……あのさ、時間帯変わってないよね?」
見た所来た時と同じ夕方だけど……
「3回変わったな」
「うそ!?」
「嘘だ」
あっさりそう言われて私はがくっとなる。
「ユリウス~」
そういう冗談言うキャラじゃないよね、あなた。
非難の意味を込めて彼を見ると、ユリウスはふふんと笑う。
「時間帯は変わっていない。3時間帯もの間名無しさんに机を占拠されたら仕事にならないからな。そろそろ叩き起こそうと思っていた所だ」
「そうだよね、ごめんなさい。仕事したかったよね」
うわ、邪魔しちゃったなぁ。
私は慌てて立ち上がったけれど、ユリウスはソファに座ったまま動かなかった。
「えぇと……仕事する?よね??」
「いや」
私の問いにユリウスは小さく首を振る。
「区切りのいいところまで、これを読む」
彼は広げている本をぽんと撫でた。
どうしよう。読書するなら帰った方がいいかなぁ。
留守中に居眠りをぶちかまし、仕事の邪魔をしたあげく、読書の邪魔までする勇気はさすがにない。
「じゃあ私は帰……」
そう言いかけた時だった。
「立っているついでだ。名無しさん、珈琲でも淹れてくれないか?」
「え?」
「名無しさんの寝ぼけた頭も珈琲を飲めば覚めるだろう」
彼はそう言うと眼鏡を押し上げて、さっさと読書を再開してしまった。
寝ぼけた頭のせいなのかもしれないけど、なんだかユリウスがものすごく嬉しいことを言ってくれた気がする。
「じゃあ、すごく美味しく淹れてあげるね」
「それは楽しみだな。期待はしていないが頑張ってくれ」
ユリウスが意地悪く笑ったけれど、全然気にならない。
だって本当は優しいって知ってるから。
そういう所が私は好き。
いつかそう言ってやろうと思いつつ、私はやかんを火にかけた。
時計塔へ遊びに行ってみたら、ものすごーく珍しいことにユリウスがいなかった。
びっくりしたけれど、仕事でまれに外へ出ることがあるから、それかもしれない。
そう考えた私は、しばらく彼の部屋で帰りを待つことにした。
大した用事はないけれど、なんだかユリウスに会いたかったのだ。
彼はいつ会いに来ても「なにしに来た?」とか「あぁ、名無しさんか。こんな所に来るなんてヒマな奴だな」と言う。
冷たい人だ。
でもなんだかんだ私を追い出そうとはしない。
冷たいくせに本当は優しいなんて、ユリウスって実はかなりのやり手なのではないかと最近は思っている。
そして私はいつのまにか、ユリウスのことが気になって仕方ないという状態に陥っていた。
まんまと落とされてしまったわけだ。(もちろん彼はそんなつもりなかっただろうけど)
しばらくソファに座って待ってみたけど、全く帰ってくる様子がない。
あまりにヒマだったのでとりあえず、ユリウスがいつも座っている仕事机に座ってみた。
「なるほどー。ここから見る部屋の景色はこんな感じなのね」なんて思っていた。
思っていたはずだったのに、気づいたら私の意識は飛んでいた。
はっと気づくと私は机にうつぶせになっていた。
どうやらいつのまにか眠っていたらしい。
あー、でもまだ眠いなぁ、もうちょっと寝ようかなぁ。
そんなことを思いながら頭を少し上げた時に、ここが自分の部屋ではないことを思い出した。
その瞬間はっと顔をあげると、肩にかけられていた毛布が床に落ちた。
ん、毛布?いつのまに?
そんな疑問を抱いた瞬間、遠くの方から声がした。
「……起きたか」
見ると少し先のソファに座っているユリウスが呆れたように私を見ていた。
眼鏡をかけ手に本を持っている所をみると、読書をしていたらしい。
「わ! ユリウス! いつのまに!? っていうかおかえりなさい」
私は体を起こしてそう言った。
「なにが『おかえりなさい』だ。人が留守の間に勝手に来ていたかと思えば、仕事の机で居眠りとはな」
起き抜けの頭には彼の毒舌などまったく効果はないらしい。スルーできる。
「うん、ごめん。っていうか、腰が痛い。うでも痛い。首も痛い……」
「当り前だ。そんな所で寝ていたんだからな」
腰をさする私に、ユリウスはため息をついた。
「……あのさ、時間帯変わってないよね?」
見た所来た時と同じ夕方だけど……
「3回変わったな」
「うそ!?」
「嘘だ」
あっさりそう言われて私はがくっとなる。
「ユリウス~」
そういう冗談言うキャラじゃないよね、あなた。
非難の意味を込めて彼を見ると、ユリウスはふふんと笑う。
「時間帯は変わっていない。3時間帯もの間名無しさんに机を占拠されたら仕事にならないからな。そろそろ叩き起こそうと思っていた所だ」
「そうだよね、ごめんなさい。仕事したかったよね」
うわ、邪魔しちゃったなぁ。
私は慌てて立ち上がったけれど、ユリウスはソファに座ったまま動かなかった。
「えぇと……仕事する?よね??」
「いや」
私の問いにユリウスは小さく首を振る。
「区切りのいいところまで、これを読む」
彼は広げている本をぽんと撫でた。
どうしよう。読書するなら帰った方がいいかなぁ。
留守中に居眠りをぶちかまし、仕事の邪魔をしたあげく、読書の邪魔までする勇気はさすがにない。
「じゃあ私は帰……」
そう言いかけた時だった。
「立っているついでだ。名無しさん、珈琲でも淹れてくれないか?」
「え?」
「名無しさんの寝ぼけた頭も珈琲を飲めば覚めるだろう」
彼はそう言うと眼鏡を押し上げて、さっさと読書を再開してしまった。
寝ぼけた頭のせいなのかもしれないけど、なんだかユリウスがものすごく嬉しいことを言ってくれた気がする。
「じゃあ、すごく美味しく淹れてあげるね」
「それは楽しみだな。期待はしていないが頑張ってくれ」
ユリウスが意地悪く笑ったけれど、全然気にならない。
だって本当は優しいって知ってるから。
そういう所が私は好き。
いつかそう言ってやろうと思いつつ、私はやかんを火にかけた。