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【曲がり角にて】
会合期間のクローバーの塔。
多くの人々が集まり、いつもよりもにぎやかだ。
そして、集まるメンツがメンツなので面倒事ももちろんいつもより多い。
「……自分の部屋くらい覚えておいてほしいものだな。城ほど広い場所ではないだろう」
私の前を歩くグレイは心底呆れたようにそう言った。
すると、グレイの隣りを歩いているエースが笑う。
「城ほど広くはないけどさ、この塔の作りってみんな同じじゃないか。全部同じで迷いやすいぜ」
「こんな狭い場所でどうしてそう迷うんだ」
「なんでだろうな? はははっ!」
「笑い事ではないと思うが」
「トカゲさんトカゲさん、騎士さんには何を言ったって無駄だよ」
私の隣りを歩いているボリスは、頭の後ろで手を組みながらそう言った。
私達は今、エースの部屋に向かって4人で廊下を歩いている。
なぜこんな状況になったのかというと、ボリスと話をしていたら、迷子のエースがやってきた。
部屋まで案内しようと思ったけれど、なんか不穏なことを企んでいそうだったので、グレイを呼んできたのだ。
「ごめんね、グレイ。仕事中なのにこんなことで呼んじゃって」
「名無しさん、俺を呼んだのは賢明な判断だ。彼と2人きりになるなんて危険すぎる」
グレイは隣のエースをちらりと見ながらそう言った。
「やだなぁ、トカゲさん。俺のことそんな風に思ってるんだ?」
「当然だ。名無しさんに近づくな」
「ちぇー。ひどいぜ。猫くんといいトカゲさんといい、俺って変な認識の仕方をされちゃってるよなー」
「変な認識ではなく、正しい認識だろう」
「あ、トカゲさん。こっち曲がると近道じゃない?」
「……」
「うわ、無視?」
前を歩くグレイとエースがそんな会話をしているのを、不思議な気持ちで眺めている私。
すると、隣のボリスが「ねぇ、名無しさん」と声をかけてきた。
「トカゲさんと騎士さんの組み合わせってなんかすっごい不思議だよね」
「うん。合ってるような合ってないような、よくわかんない感じ」
エースに対して冷静にツッコミを入れている上、うまくスルーしている姿を見ると、なかなかいいコンビな気もしてしまう。
そんなことを思ってニヤついてしまった私を、ボリスはしっかりと見ていたらしい。
「名無しさんってばすっごい楽しそう。あの2人を見てるのがそんなに嬉しいわけ?」
呆れたような声でそう言われて、私はボリスを見た。
彼は手を頭の後ろで組んだまま口を尖らせていたが、ふいに私を見てつまらなそうにこう言った。
「ねぇ名無しさん。もしかしてトカゲさんのことが好きだったりするの?」
「はぁ?」
「だって、さっき俺と2人でいた時はそんな顔で笑ってなかったし、騎士さんが来た時も普通だっただろ。
でもトカゲさんが来たとたんすっごい可愛く笑っちゃってさ」
「か、可愛くって……」
思わぬ言葉に私は言葉に詰まってしまった。
別にグレイが特別好きだというわけじゃない。
しかしボリスは本気でそう感じたらしい。私を見る目が真剣だった。
「ただ、2人の組み合わせがおもしろいなぁと思っただけだよ」
「……ふぅん」
私の言葉に納得いかない顔で相槌をするボリス。
それからしばらく無言で歩いていた私達だったけれど、廊下の曲がり角まで来た時だった。
前を歩いていたグレイとエースが角を曲がって行った瞬間、ボリスが私の手を掴んでぴたりと立ち止まった。
私も足を止める。
「ボリス?」
「なんかすっごいショックかも」
ボリスはじっと私を見つめて静かにそう言った。
びっくりしつつも廊下の曲がり角に目をやる私。
しかし、グレイもエースも私達が立ち止まったことに気づいていないようで戻ってくる様子がない。
「まだ気づいてないみたいだね、足音がどんどん遠ざかってるから」
耳をぴくぴくとさせてボリスが笑った。
あの人達ならすぐ気づきそうなのになー、と言いつつも大して気にしていないらしい。
ボリスは私の手を掴んだまま、もう片方の手で私の頬に触れる。
「もういいんじゃない? トカゲさんが騎士さんを案内してくれるし、俺たちはこのまま遊びに行っちゃおう?」
「え、えぇ?!」
「名無しさんの好きそうな場所見つけたんだ。これから連れて行ってあげる」
そう言いながら、なぜか顔を寄せてくるボリス。
私はどうしていいのかわからず固まった。
「え、いや、その……ボリス、ちょっと近いっ!」
「近い? そうかな?」
そうかな、じゃないでしょう! 近すぎます!
鼻先が触れ合いそうな距離に、思わず身を反らせた時だった。
ドンと足元で何かの音がした。そして……
「近すぎるな」
「うん、ありえない距離だ」
はっと見ると、いつの間にか戻ってきていたグレイとエースが仁王立ちして私達を見ていた。
「はははっ!やだなぁ、猫くんてば俺のこと言えないよね」
笑いながら剣に触れているエース。
「油断も隙もあったものじゃないな」
グレイはいつも通りの様子。
だと思ったら、ボリスがつまらなそうに言った。
「トカゲさん、こんなモノ投げて邪魔しないでよ」
こんなモノ?
見るとボリスの足元にナイフが一本刺さっていた。(さっきの音はこれか…!)
「わー……危険……」
唖然としてつぶやいた私。
するとグレイがつかつかとやってきた。
「危険なのは君の今の状況だ、名無しさん」
グレイはそう言いながら、腕を掴んで私をボリスから引き離す。
「あーあ。残念。あともう少しだったのに」
「猫くんに先を越されたくないし、俺もがんばらないとな。はははっ」
頭の後ろで手を組みながらあっけらかんというボリス。
そして、いつもどおり爽やかに笑うエース。
「名無しさん。しばらく1人歩きは厳禁だ」
「……わかってます」
グレイの保護者らしいセリフも、今の私はすんなりと受け止めることができたのだった。
会合期間のクローバーの塔。
多くの人々が集まり、いつもよりもにぎやかだ。
そして、集まるメンツがメンツなので面倒事ももちろんいつもより多い。
「……自分の部屋くらい覚えておいてほしいものだな。城ほど広い場所ではないだろう」
私の前を歩くグレイは心底呆れたようにそう言った。
すると、グレイの隣りを歩いているエースが笑う。
「城ほど広くはないけどさ、この塔の作りってみんな同じじゃないか。全部同じで迷いやすいぜ」
「こんな狭い場所でどうしてそう迷うんだ」
「なんでだろうな? はははっ!」
「笑い事ではないと思うが」
「トカゲさんトカゲさん、騎士さんには何を言ったって無駄だよ」
私の隣りを歩いているボリスは、頭の後ろで手を組みながらそう言った。
私達は今、エースの部屋に向かって4人で廊下を歩いている。
なぜこんな状況になったのかというと、ボリスと話をしていたら、迷子のエースがやってきた。
部屋まで案内しようと思ったけれど、なんか不穏なことを企んでいそうだったので、グレイを呼んできたのだ。
「ごめんね、グレイ。仕事中なのにこんなことで呼んじゃって」
「名無しさん、俺を呼んだのは賢明な判断だ。彼と2人きりになるなんて危険すぎる」
グレイは隣のエースをちらりと見ながらそう言った。
「やだなぁ、トカゲさん。俺のことそんな風に思ってるんだ?」
「当然だ。名無しさんに近づくな」
「ちぇー。ひどいぜ。猫くんといいトカゲさんといい、俺って変な認識の仕方をされちゃってるよなー」
「変な認識ではなく、正しい認識だろう」
「あ、トカゲさん。こっち曲がると近道じゃない?」
「……」
「うわ、無視?」
前を歩くグレイとエースがそんな会話をしているのを、不思議な気持ちで眺めている私。
すると、隣のボリスが「ねぇ、名無しさん」と声をかけてきた。
「トカゲさんと騎士さんの組み合わせってなんかすっごい不思議だよね」
「うん。合ってるような合ってないような、よくわかんない感じ」
エースに対して冷静にツッコミを入れている上、うまくスルーしている姿を見ると、なかなかいいコンビな気もしてしまう。
そんなことを思ってニヤついてしまった私を、ボリスはしっかりと見ていたらしい。
「名無しさんってばすっごい楽しそう。あの2人を見てるのがそんなに嬉しいわけ?」
呆れたような声でそう言われて、私はボリスを見た。
彼は手を頭の後ろで組んだまま口を尖らせていたが、ふいに私を見てつまらなそうにこう言った。
「ねぇ名無しさん。もしかしてトカゲさんのことが好きだったりするの?」
「はぁ?」
「だって、さっき俺と2人でいた時はそんな顔で笑ってなかったし、騎士さんが来た時も普通だっただろ。
でもトカゲさんが来たとたんすっごい可愛く笑っちゃってさ」
「か、可愛くって……」
思わぬ言葉に私は言葉に詰まってしまった。
別にグレイが特別好きだというわけじゃない。
しかしボリスは本気でそう感じたらしい。私を見る目が真剣だった。
「ただ、2人の組み合わせがおもしろいなぁと思っただけだよ」
「……ふぅん」
私の言葉に納得いかない顔で相槌をするボリス。
それからしばらく無言で歩いていた私達だったけれど、廊下の曲がり角まで来た時だった。
前を歩いていたグレイとエースが角を曲がって行った瞬間、ボリスが私の手を掴んでぴたりと立ち止まった。
私も足を止める。
「ボリス?」
「なんかすっごいショックかも」
ボリスはじっと私を見つめて静かにそう言った。
びっくりしつつも廊下の曲がり角に目をやる私。
しかし、グレイもエースも私達が立ち止まったことに気づいていないようで戻ってくる様子がない。
「まだ気づいてないみたいだね、足音がどんどん遠ざかってるから」
耳をぴくぴくとさせてボリスが笑った。
あの人達ならすぐ気づきそうなのになー、と言いつつも大して気にしていないらしい。
ボリスは私の手を掴んだまま、もう片方の手で私の頬に触れる。
「もういいんじゃない? トカゲさんが騎士さんを案内してくれるし、俺たちはこのまま遊びに行っちゃおう?」
「え、えぇ?!」
「名無しさんの好きそうな場所見つけたんだ。これから連れて行ってあげる」
そう言いながら、なぜか顔を寄せてくるボリス。
私はどうしていいのかわからず固まった。
「え、いや、その……ボリス、ちょっと近いっ!」
「近い? そうかな?」
そうかな、じゃないでしょう! 近すぎます!
鼻先が触れ合いそうな距離に、思わず身を反らせた時だった。
ドンと足元で何かの音がした。そして……
「近すぎるな」
「うん、ありえない距離だ」
はっと見ると、いつの間にか戻ってきていたグレイとエースが仁王立ちして私達を見ていた。
「はははっ!やだなぁ、猫くんてば俺のこと言えないよね」
笑いながら剣に触れているエース。
「油断も隙もあったものじゃないな」
グレイはいつも通りの様子。
だと思ったら、ボリスがつまらなそうに言った。
「トカゲさん、こんなモノ投げて邪魔しないでよ」
こんなモノ?
見るとボリスの足元にナイフが一本刺さっていた。(さっきの音はこれか…!)
「わー……危険……」
唖然としてつぶやいた私。
するとグレイがつかつかとやってきた。
「危険なのは君の今の状況だ、名無しさん」
グレイはそう言いながら、腕を掴んで私をボリスから引き離す。
「あーあ。残念。あともう少しだったのに」
「猫くんに先を越されたくないし、俺もがんばらないとな。はははっ」
頭の後ろで手を組みながらあっけらかんというボリス。
そして、いつもどおり爽やかに笑うエース。
「名無しさん。しばらく1人歩きは厳禁だ」
「……わかってます」
グレイの保護者らしいセリフも、今の私はすんなりと受け止めることができたのだった。