短編
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【発熱】
私、風邪をひいたらしいです。
そしてそのことに気づいたのは私自身ではなく、同居人のユリウスだった。
「名無しさん、お前熱でもあるんじゃないのか?」
「え?」
「いつも以上にぼんやりとしているように見えるが」
「……実は酷いこといってるよね」
苦笑する私だったけれど、確かになんだかさっきからぼぉっとする。
頬は熱いけれど、体は寒い。
椅子に座っていた私の前にユリウスがやってくる。
彼は私に視線を合わせるようにかがみこんだ。
それをただなんとなく眺めていると、彼はふむ、とため息をついた。
「目がうるんでいる。熱のせいか」
彼は私のおでこに手をやった。
乾いた大きな手がひんやりと感じた。
「そう言われてみれば、私なんだか熱っぽいかも」
「どれだけ鈍いんだお前は」
私の言葉にユリウスは呆れ顔。
そして彼は立ち上がってこう言いました。
「さっさと寝ろ。私にうつすな」
「え、それ冷たすぎない?」
そりゃあね、仕事が忙しいのはわかるけど、『私にうつすな』ってすごいセリフだよね。(酷いな)
「熱があるなら寝るのが1番だろう。いつまでも起きていてこじらせる方がタチが悪い」
「……」
もっともな意見。
確かにこれから景気よく発熱しそうな予感がする。
「わかった。じゃあ寝るけど……その前に風邪薬ってないかな?」
「確かそこの戸棚にあったと思うが」
「戸棚かぁ……ダメだ。気力がないや」
私は椅子に座ったまま戸棚を見つめた。
熱があるとわかったとたんに、立ち上がるのもしんどくなる。探し物なんてする気力がしない。
すると、ユリウスがため息をついて戸棚へ行き薬を出してきた。
「ほら、飲め」
「ありがとう、ユリウス」
コップに水まで用意してくれた彼は、すごく優しいと思う。
今なら何を言ってもやってくれる気がする。
そう思った瞬間私のいたずら心が湧き上がった。
体調を崩してもなお、ユリウスをからかうのが好きなのは、きっとユリウスのことが好きだからだろう。
「じゃあ寝るから、ちょっと引っ張って」
手を差し出すと、彼は私の手を引いて立ち上がらせてくれた。
おぉ、やはりいつもより少し優しいですね。
「ねぇ、ユリウス、珈琲飲みたいんだけど淹れてくれる?」
「病人がそんなもの飲むな」
「それじゃあお水ちょうだい?」
「ベッドまで持っていくから、さっさと寝ろ」
「わかった。じゃあお休みのキスして」
たぶん熱で私は頭がどうかしていたんだと思うけど、そんなことまで言ってみた。
すると、ユリウスは思いっきり驚いた顔をしてからふかーいため息をついた。
「名無しさん……さっさと寝ろ」
私の背中をぐいぐいと押してベッドまで歩かせるユリウス。
病人にも容赦がないなぁ、内心動揺してるかなぁ、とぼんやり思うけど頭が働かなくなってきた。
「はぁ~」
ベッドに入ると一気に脱力した。
たぶん本当に体調が悪いんだろう。
私の様子を見届けたユリウスは、ぼそぼそと文句を言う。
「全く、そこまで体調が悪くてどうして気づかないんだか」
反論する気も起きない。
ぐたりとする私を見て、彼は再度私のおでこに手を当てる。
「……自分が風邪をひいたほうがまだマシだ」
「え?」
ぼーっと天井を見ながら聞き返した時、急に視界が暗くなったと思ったらキスされた。
唇が離れ、目の前にはユリウスの顔。
「……」
「……」
しんとする部屋。
私とユリウスは無言で見つめあう。
頭が働かないのは熱のせいなのか、ユリウスのせいなのか。
「早く治せ」
そう言いながら、彼は梯子を下りて行った。
しばらくして、時計を修理する音が聞こえてきた。
かちゃかちゃと静かに響くその音に耳を傾けながら、私はそっとつぶやいた。
「うつるかもよ?」
私、風邪をひいたらしいです。
そしてそのことに気づいたのは私自身ではなく、同居人のユリウスだった。
「名無しさん、お前熱でもあるんじゃないのか?」
「え?」
「いつも以上にぼんやりとしているように見えるが」
「……実は酷いこといってるよね」
苦笑する私だったけれど、確かになんだかさっきからぼぉっとする。
頬は熱いけれど、体は寒い。
椅子に座っていた私の前にユリウスがやってくる。
彼は私に視線を合わせるようにかがみこんだ。
それをただなんとなく眺めていると、彼はふむ、とため息をついた。
「目がうるんでいる。熱のせいか」
彼は私のおでこに手をやった。
乾いた大きな手がひんやりと感じた。
「そう言われてみれば、私なんだか熱っぽいかも」
「どれだけ鈍いんだお前は」
私の言葉にユリウスは呆れ顔。
そして彼は立ち上がってこう言いました。
「さっさと寝ろ。私にうつすな」
「え、それ冷たすぎない?」
そりゃあね、仕事が忙しいのはわかるけど、『私にうつすな』ってすごいセリフだよね。(酷いな)
「熱があるなら寝るのが1番だろう。いつまでも起きていてこじらせる方がタチが悪い」
「……」
もっともな意見。
確かにこれから景気よく発熱しそうな予感がする。
「わかった。じゃあ寝るけど……その前に風邪薬ってないかな?」
「確かそこの戸棚にあったと思うが」
「戸棚かぁ……ダメだ。気力がないや」
私は椅子に座ったまま戸棚を見つめた。
熱があるとわかったとたんに、立ち上がるのもしんどくなる。探し物なんてする気力がしない。
すると、ユリウスがため息をついて戸棚へ行き薬を出してきた。
「ほら、飲め」
「ありがとう、ユリウス」
コップに水まで用意してくれた彼は、すごく優しいと思う。
今なら何を言ってもやってくれる気がする。
そう思った瞬間私のいたずら心が湧き上がった。
体調を崩してもなお、ユリウスをからかうのが好きなのは、きっとユリウスのことが好きだからだろう。
「じゃあ寝るから、ちょっと引っ張って」
手を差し出すと、彼は私の手を引いて立ち上がらせてくれた。
おぉ、やはりいつもより少し優しいですね。
「ねぇ、ユリウス、珈琲飲みたいんだけど淹れてくれる?」
「病人がそんなもの飲むな」
「それじゃあお水ちょうだい?」
「ベッドまで持っていくから、さっさと寝ろ」
「わかった。じゃあお休みのキスして」
たぶん熱で私は頭がどうかしていたんだと思うけど、そんなことまで言ってみた。
すると、ユリウスは思いっきり驚いた顔をしてからふかーいため息をついた。
「名無しさん……さっさと寝ろ」
私の背中をぐいぐいと押してベッドまで歩かせるユリウス。
病人にも容赦がないなぁ、内心動揺してるかなぁ、とぼんやり思うけど頭が働かなくなってきた。
「はぁ~」
ベッドに入ると一気に脱力した。
たぶん本当に体調が悪いんだろう。
私の様子を見届けたユリウスは、ぼそぼそと文句を言う。
「全く、そこまで体調が悪くてどうして気づかないんだか」
反論する気も起きない。
ぐたりとする私を見て、彼は再度私のおでこに手を当てる。
「……自分が風邪をひいたほうがまだマシだ」
「え?」
ぼーっと天井を見ながら聞き返した時、急に視界が暗くなったと思ったらキスされた。
唇が離れ、目の前にはユリウスの顔。
「……」
「……」
しんとする部屋。
私とユリウスは無言で見つめあう。
頭が働かないのは熱のせいなのか、ユリウスのせいなのか。
「早く治せ」
そう言いながら、彼は梯子を下りて行った。
しばらくして、時計を修理する音が聞こえてきた。
かちゃかちゃと静かに響くその音に耳を傾けながら、私はそっとつぶやいた。
「うつるかもよ?」