短編
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【発熱その後】
「うつったね」
私は目の前でダウンしているユリウスを見てつぶやいた。
「うつってない……ただのすいみんぶそくだ」
「いやぁ、それ睡眠不足って感じじゃないよ? どう見ても発熱だよ?」
頬は赤く、目は熱で潤み、声がかれている。
すごくだるそうだし、けっこうな感じで重症な気がするけど。
「この前の私の風邪がうつっちゃったんだね、きっと」
「名無しさんのかぜなどうつってない……かぜなどひいていない……」
「でもしゃべり方もおかしいよ」
ろれつが回っていない、というか全部ひらがなっぽいんですけど。
「うるさい……あたまにひびく……」
「はいはい、寝ましょうね~」
私より重症らしいユリウスをなだめながら、薬を差し出す。
それでも仕事を続けようとする彼をなんとかソファに横にさせる。
「とりあえず寝た方がいいよ。寝るのが一番だから」
この部屋のベッドは梯子を登らなくてはならないのだ。
ユリウスにはベッドまで行く気力と体力がなかったらしい。もちろん私が彼を担げるわけがない。
「ベッドじゃないけど、ちょっと我慢してね」
毛布を掛けながら声をかけたが、返事はなかった。
ただ、ちらりと私を見てから目を閉じたユリウス。
相当きついんだろうなぁ。なんか風邪をうつしちゃって申し訳ない。
そんなことを思いながら、彼の前髪を横へ流しておでこに手を当てる。
「わー、熱いね。ちょっと待ってて。今濡れタオルを……」
手を離そうとしたら、私の手にユリウスが自分のそれを重ねた。熱い手。
「ゆ、ユリウス?」
「つめたい……」
「え?」
目を閉じたまま私の手を掴んでいるユリウス。
その熱い手は私を放してくれそうもない。
立ち上がりかけていた私は、ソファの横に座り直した。
そして、ソファに肘をついてもたれながら、目を閉じているユリウスの横顔を観察する。
ここでキスしたら、また私が風邪ひくのかなぁ?
なんて考えがふと思い浮かんでしまった。
うわ、恥ずかしい人だ私!(ごめん、ユリウス)
思わず顔を伏せる。
するとユリウスは不審に思ったらしい。目を開けてちらりと私を見る。
「名無しさん? どうした?」
「え、ううん、なんでもない」
私は邪念(?)を払って、もう一度彼を見た。
薬を飲んだから、もう少しすれば楽になれるだろう。
早く効果がでればいいのにと本気で思いながら、この前ユリウスが「……自分が風邪をひいた方がまだマシだ」と言っていたことを思い出す。
確かに自分が熱にうなされている方がよっぽど気が楽だわ。
ユリウスが辛そうなのは見たくない。
……彼もそう思ってくれていたってことだよね。
そう気づいて、もうどうしようもない気持ちになる。
私はもう一度ユリウスの横顔を見た。
「早く治してよね」
治ったら抱きついてやるんだから。
「うつったね」
私は目の前でダウンしているユリウスを見てつぶやいた。
「うつってない……ただのすいみんぶそくだ」
「いやぁ、それ睡眠不足って感じじゃないよ? どう見ても発熱だよ?」
頬は赤く、目は熱で潤み、声がかれている。
すごくだるそうだし、けっこうな感じで重症な気がするけど。
「この前の私の風邪がうつっちゃったんだね、きっと」
「名無しさんのかぜなどうつってない……かぜなどひいていない……」
「でもしゃべり方もおかしいよ」
ろれつが回っていない、というか全部ひらがなっぽいんですけど。
「うるさい……あたまにひびく……」
「はいはい、寝ましょうね~」
私より重症らしいユリウスをなだめながら、薬を差し出す。
それでも仕事を続けようとする彼をなんとかソファに横にさせる。
「とりあえず寝た方がいいよ。寝るのが一番だから」
この部屋のベッドは梯子を登らなくてはならないのだ。
ユリウスにはベッドまで行く気力と体力がなかったらしい。もちろん私が彼を担げるわけがない。
「ベッドじゃないけど、ちょっと我慢してね」
毛布を掛けながら声をかけたが、返事はなかった。
ただ、ちらりと私を見てから目を閉じたユリウス。
相当きついんだろうなぁ。なんか風邪をうつしちゃって申し訳ない。
そんなことを思いながら、彼の前髪を横へ流しておでこに手を当てる。
「わー、熱いね。ちょっと待ってて。今濡れタオルを……」
手を離そうとしたら、私の手にユリウスが自分のそれを重ねた。熱い手。
「ゆ、ユリウス?」
「つめたい……」
「え?」
目を閉じたまま私の手を掴んでいるユリウス。
その熱い手は私を放してくれそうもない。
立ち上がりかけていた私は、ソファの横に座り直した。
そして、ソファに肘をついてもたれながら、目を閉じているユリウスの横顔を観察する。
ここでキスしたら、また私が風邪ひくのかなぁ?
なんて考えがふと思い浮かんでしまった。
うわ、恥ずかしい人だ私!(ごめん、ユリウス)
思わず顔を伏せる。
するとユリウスは不審に思ったらしい。目を開けてちらりと私を見る。
「名無しさん? どうした?」
「え、ううん、なんでもない」
私は邪念(?)を払って、もう一度彼を見た。
薬を飲んだから、もう少しすれば楽になれるだろう。
早く効果がでればいいのにと本気で思いながら、この前ユリウスが「……自分が風邪をひいた方がまだマシだ」と言っていたことを思い出す。
確かに自分が熱にうなされている方がよっぽど気が楽だわ。
ユリウスが辛そうなのは見たくない。
……彼もそう思ってくれていたってことだよね。
そう気づいて、もうどうしようもない気持ちになる。
私はもう一度ユリウスの横顔を見た。
「早く治してよね」
治ったら抱きついてやるんだから。