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森でピクニックをしている私とアリスとボリスとピアス。
私達は歳が近い(?)ためか、気づけばよく一緒に遊んでいる。
今日もお弁当を持って、みんなでピクニックをしていたのだが、お腹も満足したところで、何かゲームでもしようということになった。
そこで、始まったのがこの王様ゲームだった。
「せーの!」で一斉に缶に入った札を引く。
札の先に赤いマークがついていれば王様だ。
「あ!私が王様だわ!」
アリスが嬉しそうに声を上げた。
「アリスなら安心だなー」とほっとする私。
「えー、俺王様じゃなかったの?残念。すごく残念だよ」というピアス。
「頼むから、ピアスと絡むのはなしにしてくれよ」というボリス。
それぞれの意見を聞きながら、アリスはしばらく悩んでいたけれど
「よし!決めた!」とまっすぐに私達をみた。
この発表する瞬間が一番緊張するんだよね。
私達はにこにことも、ドキドキともいえる表情でアリスを見つめる。
「2番はみんなにお茶を入れてあげる!」
アリスの言葉に、ピアスが嬉しそうに叫んだ。
「わー!俺だ俺だ!2番は俺だったよ!やったねやったね!」
大喜びでピアスはみんなにおかわりのお茶を入れ始めた。
「……こんなに喜ばれちゃうとなんか微妙だわ」
「うん、普通は当たったことを残念がるのに」
「わかってないんだよ、ネズミは馬鹿だからさ」
こそこそと話し合う私達を、ピアスはきょとんとした様子で見る。
「え?なに? なになに?」
「なんでもない。お茶、ありがとう」
「どういたしまして! アリスこそ、俺の2番を当ててくれてありがとう!」
「え、いや、うん……」
「馬鹿だな」
「……ちゃんとルールをもう一度教えてあげた方がいいのかなぁ?」
「無駄だから放っておいていいよ。次行こう、次」
ボリスはそう言って札を集めると、缶の中に差し込んだ
私達はドキドキしながらお互いの顔を見つめ、それぞれ缶から飛び出している札の端を掴む。
「いくよ、せーの!」
一斉に札を引き上げる。
「うわ!私だ!!やったー!!」
赤い印の札を見た瞬間、手を挙げていた私。
実はこれをずっと待っていた。
私はボリスをみてニヤリとする。
「行くよー? それじゃあねぇ、1番は……」
そう言った瞬間、ピアスの耳がぴくっと動いた。
……なるほど、1番はピアスね。
「やっぱり1番じゃなくて、3番は……」
ピアスの耳がふっと脱力したが、今度はボリスのしっぽがぴっと止まった。さっきまでゆらゆらしていたのだ。
ボリスは3番だ。
よし……!
「3番は、王様にファーを貸してあげる!!」
声高らかに宣言した瞬間、ボリスが声を上げた。
「えー!なにそれ!おかしくない? 3番もなにも俺限定じゃん!俺が3番だって知ってたんだろ?」
「えー、知らないよ。ボリスが3番だったらいいな、とは思ったけど」
「なんか納得いかない」
「ダメだよ、王様の命令は絶対なんだからね」
私がそういうと、ボリスは「ちぇ」と言いながらもファーを外した。
「すぐに返してよ、王様」
「へへへ~!ありがと」
ボリスからファーを受け取った私は、さっそくファーを首に巻いてみた。
「うあ~!すっごいふわふわ!もこもこ!! 気持ちいい~!!」
「いいな、名無しさん。俺もそのもこもこに触ってみたいよ」
「私も」
ピアスとアリスが羨ましそうに私を見る。
「ふふーん。いいでしょう? 王様の特権!」
「よーし!私も次は王様になってボリスのファーを貸してもらおう!」
「俺も俺も! にゃんこは嫌だけど、ファーは好き!」
「……なんだか違うゲームになってない?」
苦笑するボリスをスルーして、王様ゲームはどんどんと進んだ。
「3番は王様の肩を叩いてあげる!」
「2番は1番のほっぺをつねる!」
「王様はねぇ、チーズが大好きなんだよ!」
「1番は3番にクッキーを食べさせる!」
なんだかはちゃめちゃで、途中おかしな命令(というか主張)も出たけれどそこそこ楽しくわいわいしていた。
「これで最後にしようぜ」
ボリスが缶を差し出しながら言った。
「そうだね、疲れたもんね」
「ぴ!? 俺まだ1回しか王様やってない!やってないよ!?」
「仕方ないのよ、そういうゲームだから」
全員「これが最後」と気合を込めて札を引く。
「せーの!!」
引いた札の先は2と書いてある。
ハズレだ。
私は他の3人を見る。
するとボリスが赤い印を見せながらにやりと笑った。
「俺が王様」
「えー!にゃんこが王様なの!? なんか怖いよ。嫌な予感がするよ」
「……大丈夫よ。たぶん」
「うん……そんな無茶はいくらボリスだって言わないよ、私たちには」
ピアスにつられて不安になる私とアリス。
ボリスは色々と考えていたようだけれど、やがてゆっくりとこう言った。
「2番……いや、1番と3番は……川で水を汲んでくる」
「えー、1番って俺だよ!?」
「3番は私だわ」
ピアスとアリスが声を上げた。
ラッキーなことに私は2番だ。
ボリスはからのポットを持ち上げながら言った。
「汲んできた水でお茶にしようぜ。もう空っぽだもんな」
「確かにそうね」
「わかったよ。でも川ってちょっと歩かないといけないよ?」
「王様命令だぜ? その間に俺と名無しさんで少しこの辺りを片付けとくからさ。な、名無しさん」
「うん。片付けとく」
シートの上に広げられた空っぽのお弁当箱や、紙コップなどを見て私はうなずいた。
「じゃあ行ってくるね」と言って、アリスとピアスはポットを持って歩いて行った。
「さて、じゃあ片付けちゃおっか」
そう言って、片づけを始める私とボリス。
「それにしてもピアスってホント意味が分かってなかったよね。チーズが大好きって言った瞬間の空気は忘れられないよ」
「あれはおかしかったけど、なんか哀れにも感じたよ、俺は」
「確かに」
笑いながら話をして、大体片付いたところでボリスが言った。
「それで?ほんとうの所、名無しさんは俺のファーを狙ってたんでしょ?」
「あー、うん。まぁ、そうだね。だって、ボリスって自分の番号が言われるとしっぽが止まるんだもん」
「え、マジで?」
「うん、ほら今も止まってるよ」
何か自分にあると止まるのかもねぇ、と笑うとボリスはため息をついた。
「もう仕方ないよな、こういう癖というか習性は」
「ピアスはね、耳がぴくっとするんだよ」
「あぁ、あいつは分かりやすいよな。それから、知ってる?アリスは自分の番号を言われると瞬きするんだぜ」
「え!? そうだったの?知らなかった!」
今度試してみよう。
そう思っていると、ボリスは私を見て言った。
「ちなみに名無しさんもあるんだぜ? 自分の番号を言われた時の癖」
「え!? 嘘!ほんと!?」
驚いて彼を見ると、ボリスはにやにやと笑う。
「本当。教えてあげようか?」
彼はそう言うと、本物の猫みたいに両手をついてするするっと近づいてきた。
私は思わず息を詰める。
するとボリスはくすっと笑った。
「それ。それが癖だよ」
「え?」
「唇。ほんの少しだけ開くんだよね」
彼はそう言って私の唇に人差し指を当てた。
「何かあると、息を止めるっていうか吸うっていうか、そういう癖なんじゃない?」
彼の冷たい指が私の唇をなぞる。
「ずーっと名無しさんの唇ばっかりみてたから、ちょっと触ってみたくなっちゃった」
すでに触れているのに、ボリスはそんなことを言ってにこにこと私を見る。
「まだ2人は帰って来ないから、大丈夫だと思うよ」
彼は私との距離を縮めながらそう言った。
私はそこでやっと気づく。
「……謀ったの?」
「さぁ?どうだろうね」
ボリスはそう言って笑う。
あれだけみんなの癖を見抜いている彼だ。
最後の最後で、自分が当たりくじを引くくらいの工作は簡単だろう。
「王様の命令は絶対だって、名無しさんも言ってたよね?」
なんだかやられた感があるけれど、顔を寄せるボリスを拒む気にはなれなかった。