短編
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【味方】
昼のさわやかな日差しの中、私はサーカスの森に遊びに来ていた。
今日もホワイトさんと一緒にカードをしている。
しかし、何度やっても何度やっても結果は同じだった。
「はい、俺の勝ち」
「はぁぁぁ~~~。また負けた……」
「いやいや、惜しかったよ名無しさん」
そう言っておだやか~に微笑むホワイトさん。
私はがばりと顔をあげると、彼を見た。
「なんでこんなに負けちゃうんだろう?私、何がそんなにいけないのかなぁ?」
「そんなに真剣に考えることないんじゃない?
勝負は時の運。今回はたまたま俺に運が向いているってことだよ」
「でも、ここまで勝てないのっておかしいもん。私にはよっぽど運がないってこと!?ちがうよね?
ホワイトさんがめちゃくちゃカード強いんだよね!?」
その方がまだ納得できる。(運がないなんて嫌だ!)
「まぁまぁ落ち着いてよ、名無しさん。次は君が勝つんじゃないかな?今だってすごく惜しかったし」
「そうかもしれないけど勝てそうって思っても、結局ずーっと負けてばっかりなんだもん。私だってそろそろくじけてきたよ」
落ち込みモードに入りかけた時だった。
「ジョーカー。お前、そうやってこいつをいじめるのそろそろ飽きねぇのかよ?」
それまで少し離れた所で私達を見ていたブラックさんが、呆れたように言いながらこちらに歩いてきた。
ホワイトさんは意外だというように眉を上げる。
「いじめるだなんてひどいな、ジョーカー。俺はただ、名無しさんとのカードゲームを楽しんでいるだけだよ」
「よく言うぜ。名無しさんみてーに弱い奴にそこまで時間をかけてやるようなゲームじゃねーだろ。
名無しさんのレベルに合わせてダラダラ遊んでるなんて、お前もヒマだよな。つーか本当はそんなヒマなんてないはずだよな」
「やだな、ジョーカー。もしかして僻み? 君も名無しさんと一緒にゲームを楽しみたいの?」
「やるなら君の分のカードも配るけど?」とホワイトさんは集めたカードを手早く切りながら言った。
「けっ。誰がやるか。名無しさんとゲームするくらいなら、仕事でもしてる方がマシだね」
「へぇ。じゃあ仕事熱心な君に、例の仕事を片付けてきてもらおうかな。
そろそろ行かなきゃいけないと思ってたんだけど、俺は名無しさんともう少し遊びたいから」
次のゲーム用にカードを配りながら話すホワイトさんに、ブラックさんは口を尖らせた。
「なんでてめぇの仕事を俺が始末しなきゃなんねーんだよ、ボケ」
「えー、だって仕事をしてる方がいいんでしょう? 名無しさん、ジョーカーはこう見えて仕事熱心なんだ。すごいよね」
ホワイトさんはわざとらしくそう言って私を見る。
私もつられて大きくうなずいた。
「うん!ブラックさんて偉いんだねぇ」
「2人揃って間抜けな顔でこっち見んな。ボケ」
ブラックさんが嫌そうな顔でそういうと、ホワイトさんはさらに続けた。
「名無しさん、こいつはね、褒められると照れるタイプなんだ」
「可愛いねぇブラックさん」
「殴るぞ、お前ら」
ブラックさんが本気でいらっとしてるのがわかったので、私はあわてて口を閉じる。(ホワイトさんにつられて調子に乗ってしまったよ)
しかしホワイトさんは楽しそうに続けた。
「まぁまぁ、そんなに怒らないでよジョーカー。このゲームで名無しさんに負けたら俺もすぐに仕事に行くから」
「おい。それ、つまり来ねぇってことだろ」
即ツッコミを入れるブラックさんだったけれど、そんな彼に私も即文句を言う。
「ちょっとブラックさん。それって私がホワイトさんには絶対勝てないってこと?」
「あ?他にどういう意味があるんだよ。つーか、お前ゲームに勝てると思ってんのかよ」
「やってみなくちゃわからないでしょ!?」
「……ほんっとーに救いようのねぇ馬鹿だな、名無しさん」
そう言うと、ブラックさんはずかずかと私に近づいてきた。
うわ、なに、なんか怖いんですけど!?(叩かれるんじゃないかしら!?)
そう思った時だった。
ブラックさんは私の隣りの椅子にドカッと座った。
そして長い脚を組むと、そのまま体を寄せるようにして私の手元にあるカードを覗き込む。
「てめぇじゃ何度やったってジョーカーには勝てねぇよ。大体なんだこの札並び。やる気あんのかよ。
名無しさん、お前カードゲームが弱いっていうかマジで運がねぇんだな」
「な、な……!?」
彼の行動にも言葉にも、そして距離の近さにも驚いてしまって私は言葉が何も出てこなかった。
「俺が一緒にやってやるって言ってんだ。さっさと終わらせててめぇは帰れ。何時間帯ここにいると思ってんだ。
ただでさえ迷惑なのに、てめぇの滞在地の奴が探しに来たらと思うと余計に面倒だ」
「え……、あ。うん。ごめんなさい」
なんといっていいのかわからず、とりあえず謝ってしまった。
すると、これまで楽しそうに私達を見ていたホワイトさんが言った。
「へぇ、優しい所があるじゃないジョーカー。名無しさんのために君が参加するなんてね」
「けっ。名無しさんのためなわけねーだろ。こいつがいつまでたってもお前に勝てねーから、いつもいつも俺が仕事を押し付けられるんだ」
「ふふっ。まぁいいよ。ジョーカーとこうやって対戦したことなかったし、楽しめそうだからね」
余裕なのか何なのか、ホワイトさんはいつものようににこにこと笑っている。
するとブラックさんは呆れたように肩をすくめてから、私だけに聞こえる声でぼそぼそと言った。
「……名無しさん。あいつ、ほんとに性格ねじ曲がってるから正攻法で勝とうなんて思うんじゃねぇぞ?」
「え?じゃあどうすれば……」
顔をしかめる私をちらりと見るブラックさん。
「お前は俺の言うことだけ聞いてりゃいいんだよ、弱ぇんだから。ほら、このカード捨てろ」
「え、あ、はい」
なんだかよくわからないけれど、こわいからいう通りに動いてしまう私。
でも、これ以上ないくらい頼もしい味方が付いたような気もする。
そう思ってちらりとホワイトさんを見ると、彼はいつもの調子で言った。
「名無しさんと一緒だからかな? 珍しく楽しそうだね、ジョーカー」
「うるせぇ、黙れ。楽しいわけねーだろボケ!」
素直じゃないなぁと笑うとホワイトさんは私を見た。
「名無しさん、ジョーカーと一緒になって俺をいじめるのはやめてね?」
「別にいじめたりなんてしないよ!」
「たまには仕返ししてやれよ、名無しさん。こいつの性悪は死んでも治らねぇんだ。やれるときにやっとけ」
私の言葉にブラックさんはしれっと言うのだった。
昼のさわやかな日差しの中、私はサーカスの森に遊びに来ていた。
今日もホワイトさんと一緒にカードをしている。
しかし、何度やっても何度やっても結果は同じだった。
「はい、俺の勝ち」
「はぁぁぁ~~~。また負けた……」
「いやいや、惜しかったよ名無しさん」
そう言っておだやか~に微笑むホワイトさん。
私はがばりと顔をあげると、彼を見た。
「なんでこんなに負けちゃうんだろう?私、何がそんなにいけないのかなぁ?」
「そんなに真剣に考えることないんじゃない?
勝負は時の運。今回はたまたま俺に運が向いているってことだよ」
「でも、ここまで勝てないのっておかしいもん。私にはよっぽど運がないってこと!?ちがうよね?
ホワイトさんがめちゃくちゃカード強いんだよね!?」
その方がまだ納得できる。(運がないなんて嫌だ!)
「まぁまぁ落ち着いてよ、名無しさん。次は君が勝つんじゃないかな?今だってすごく惜しかったし」
「そうかもしれないけど勝てそうって思っても、結局ずーっと負けてばっかりなんだもん。私だってそろそろくじけてきたよ」
落ち込みモードに入りかけた時だった。
「ジョーカー。お前、そうやってこいつをいじめるのそろそろ飽きねぇのかよ?」
それまで少し離れた所で私達を見ていたブラックさんが、呆れたように言いながらこちらに歩いてきた。
ホワイトさんは意外だというように眉を上げる。
「いじめるだなんてひどいな、ジョーカー。俺はただ、名無しさんとのカードゲームを楽しんでいるだけだよ」
「よく言うぜ。名無しさんみてーに弱い奴にそこまで時間をかけてやるようなゲームじゃねーだろ。
名無しさんのレベルに合わせてダラダラ遊んでるなんて、お前もヒマだよな。つーか本当はそんなヒマなんてないはずだよな」
「やだな、ジョーカー。もしかして僻み? 君も名無しさんと一緒にゲームを楽しみたいの?」
「やるなら君の分のカードも配るけど?」とホワイトさんは集めたカードを手早く切りながら言った。
「けっ。誰がやるか。名無しさんとゲームするくらいなら、仕事でもしてる方がマシだね」
「へぇ。じゃあ仕事熱心な君に、例の仕事を片付けてきてもらおうかな。
そろそろ行かなきゃいけないと思ってたんだけど、俺は名無しさんともう少し遊びたいから」
次のゲーム用にカードを配りながら話すホワイトさんに、ブラックさんは口を尖らせた。
「なんでてめぇの仕事を俺が始末しなきゃなんねーんだよ、ボケ」
「えー、だって仕事をしてる方がいいんでしょう? 名無しさん、ジョーカーはこう見えて仕事熱心なんだ。すごいよね」
ホワイトさんはわざとらしくそう言って私を見る。
私もつられて大きくうなずいた。
「うん!ブラックさんて偉いんだねぇ」
「2人揃って間抜けな顔でこっち見んな。ボケ」
ブラックさんが嫌そうな顔でそういうと、ホワイトさんはさらに続けた。
「名無しさん、こいつはね、褒められると照れるタイプなんだ」
「可愛いねぇブラックさん」
「殴るぞ、お前ら」
ブラックさんが本気でいらっとしてるのがわかったので、私はあわてて口を閉じる。(ホワイトさんにつられて調子に乗ってしまったよ)
しかしホワイトさんは楽しそうに続けた。
「まぁまぁ、そんなに怒らないでよジョーカー。このゲームで名無しさんに負けたら俺もすぐに仕事に行くから」
「おい。それ、つまり来ねぇってことだろ」
即ツッコミを入れるブラックさんだったけれど、そんな彼に私も即文句を言う。
「ちょっとブラックさん。それって私がホワイトさんには絶対勝てないってこと?」
「あ?他にどういう意味があるんだよ。つーか、お前ゲームに勝てると思ってんのかよ」
「やってみなくちゃわからないでしょ!?」
「……ほんっとーに救いようのねぇ馬鹿だな、名無しさん」
そう言うと、ブラックさんはずかずかと私に近づいてきた。
うわ、なに、なんか怖いんですけど!?(叩かれるんじゃないかしら!?)
そう思った時だった。
ブラックさんは私の隣りの椅子にドカッと座った。
そして長い脚を組むと、そのまま体を寄せるようにして私の手元にあるカードを覗き込む。
「てめぇじゃ何度やったってジョーカーには勝てねぇよ。大体なんだこの札並び。やる気あんのかよ。
名無しさん、お前カードゲームが弱いっていうかマジで運がねぇんだな」
「な、な……!?」
彼の行動にも言葉にも、そして距離の近さにも驚いてしまって私は言葉が何も出てこなかった。
「俺が一緒にやってやるって言ってんだ。さっさと終わらせててめぇは帰れ。何時間帯ここにいると思ってんだ。
ただでさえ迷惑なのに、てめぇの滞在地の奴が探しに来たらと思うと余計に面倒だ」
「え……、あ。うん。ごめんなさい」
なんといっていいのかわからず、とりあえず謝ってしまった。
すると、これまで楽しそうに私達を見ていたホワイトさんが言った。
「へぇ、優しい所があるじゃないジョーカー。名無しさんのために君が参加するなんてね」
「けっ。名無しさんのためなわけねーだろ。こいつがいつまでたってもお前に勝てねーから、いつもいつも俺が仕事を押し付けられるんだ」
「ふふっ。まぁいいよ。ジョーカーとこうやって対戦したことなかったし、楽しめそうだからね」
余裕なのか何なのか、ホワイトさんはいつものようににこにこと笑っている。
するとブラックさんは呆れたように肩をすくめてから、私だけに聞こえる声でぼそぼそと言った。
「……名無しさん。あいつ、ほんとに性格ねじ曲がってるから正攻法で勝とうなんて思うんじゃねぇぞ?」
「え?じゃあどうすれば……」
顔をしかめる私をちらりと見るブラックさん。
「お前は俺の言うことだけ聞いてりゃいいんだよ、弱ぇんだから。ほら、このカード捨てろ」
「え、あ、はい」
なんだかよくわからないけれど、こわいからいう通りに動いてしまう私。
でも、これ以上ないくらい頼もしい味方が付いたような気もする。
そう思ってちらりとホワイトさんを見ると、彼はいつもの調子で言った。
「名無しさんと一緒だからかな? 珍しく楽しそうだね、ジョーカー」
「うるせぇ、黙れ。楽しいわけねーだろボケ!」
素直じゃないなぁと笑うとホワイトさんは私を見た。
「名無しさん、ジョーカーと一緒になって俺をいじめるのはやめてね?」
「別にいじめたりなんてしないよ!」
「たまには仕返ししてやれよ、名無しさん。こいつの性悪は死んでも治らねぇんだ。やれるときにやっとけ」
私の言葉にブラックさんはしれっと言うのだった。