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グレイが好き。
でも煙草が嫌。
グレイといたい。
でも煙草からは離れたい。
さて、私はどちらを選ぶべきなんだろう。
そんな風に悩んでいた時、驚くべきことにグレイから告白をされた。
悩んでいたはずなのに、私はあっさりとグレイを選んだ。
でもね、付き合い始めて改めて感じた。
一緒にいる時間が多くなったからわかった。
グレイの煙草の量はちょっと多い気がします。ヘビースモーカーという部類に入っちゃうと思うのです。
喫煙は個人の自由だと言われればそれまでかもしれない。
グレイの喫煙歴が結構長いことは知っているし、きちんとルールを守って吸っているし、
なによりも煙草を吸っている姿がものすごくカッコいい。
でも、そういう問題じゃない。
体に絶対悪いよ、あれ。
そして、私は煙草が苦手だから余計に煙草をやめてほしいなぁと思ってしまう。
私の意見を押し付けているような気もするけど、でもでも!この先付き合っていくのならやっぱり煙草はやめてほしい。
なによりも煙草は体によくない。
散々悩んだ結果、私は勇気を出してグレイに禁煙を勧めてみた。
すると、彼はわりとあっさり「努力しよう」と言ってくれた。
私が煙草を苦手なことを理解してくれていたのだ。
言ってみてよかった。
でもやっぱり禁煙というのは難しいらしい。
私の前では吸わなくなったけれど、なかなかやめられないようだった。
そんなある日のことだった。
久しぶりにグレイが休みだったので、彼の部屋に遊びに行った私。
ソファに座って本を読んでいたら、手持無沙汰だったらしいグレイに後ろから抱きしめられた。
「名無しさん、どこまで読めた?」
「まだ半分」
「そうか。そこから先が面白いんだ」
私の後ろから本を覗き込みながらグレイはそう言った。
「うん。なんか雰囲気がそんな感じになってきた所だから、邪魔しないでね」
「冷たいな、名無しさん……そこで止めておかないと、時間帯が変わってしまうぞ」
彼はそう言いながら、私の耳元にキスをする。
私は本を閉じると、回された腕にそっと触れる。
「ねぇ、グレイ」
「なんだ?」
すぐ耳元で聞こえる彼の声に、ものすごくドキドキしてしまったけれど、私は今思っていることをズバリと言うことにした。
「煙草やめるって約束しなかったっけ?」
「!」
背後の彼が固まるのがわかった。
ちょっと意地悪な言い方をしちゃったかもしれないなぁ、と自分で反省する。
「煙草の匂いがするよ」
私は彼の服の袖口に触れながら言う。
「悪い。なかなかやめられないんだ。だいぶ本数は減らせているんだが」
「うん、知ってる。ごめん、意地悪な言い方しちゃったね。私の前では吸わないもんね」
私は首をねじって彼を見る。
「煙草が吸いたくなったらガムとか噛むといいっていうよね」
「……それでやめられれば苦労はしないな」
苦笑する彼。きっと本音だろう。
ダイエットしたいと言いつつ甘いものを食べる私と同じ。
いや、しっかりと我慢できている分彼の方が偉い。
「煙草をやめたらごはんがおいしく感じられるようになるみたいだし、疲れにくくなるし、いいことばっかりだよ」
「確かにこの間あの迷子が来た時も、体が普段よりもスムーズに動いたな」
「……エースがまた来たんだ」
思わず苦笑すると、彼も笑う。
「名無しさんからのご褒美はないのか?」
「え?」
「禁煙したら、名無しさんからなにかご褒美があれば頑張れるかもしれない」
「……真面目なトーンでそういうこと言うのやめてくれないかな」
「真面目に言っているからな」
そう言いながらくすくす笑う。
「ご褒美かぁ、なにかあるかなぁ?」
確かに、私が彼をけしかけているんだから、何かあげてもいい気はする。
そう考えていると、グレイが顔を寄せる。
「別になんだっていい。君からもらえるものはなんでも嬉しい」
グレイはそう言って私にキスをしようと唇を寄せる。
私はそこで、彼を押しとどめてこう言った。
「やめるまではキスしない、とかどう?」
「!?」
「ご褒美システムよりも、その方が効果あったりして」
自分で言うのもなんだけど、と思っているとグレイはじっと私を見つめて言った。
「名無しさん……本気で言ってるのか?」
「だって早く禁煙したいでしょう?」
「それはそうだが……煙草か君かでしばらくは悩みそうだな」
「えー、そこは悩まないで私を選んでよ」
口を尖らせる私を見てグレイが笑う。
「煙草を吸いたくなったら代わりに名無しさんをもらう、なら禁煙も早そうだが」
「それは却下。っていうかセクハラっぽい」
私が言うと、「せ、せくは……!?」と言葉を詰まらせたグレイ。(珍しい)
「はぁ……名無しさんは厳しいな」
「グレイのためだよ」
「……わかった。努力しよう。名無しさんのために」
「うん、がんばれ」
他人事のように言う私の頭を、グレイは笑いながらポンとなでる。
私もグレイが禁煙している間、何か一つがんばろうかなぁと考えていた時だった。
突然ふっとグレイが顔を寄せてきた。
「最後にしておいてもいいか?」
次できるのはいつになるかわからないから、と言いながら唇を寄せるグレイに私はそっとうなずいた。
お預けが苦しいのは私も一緒。
煙草味のキスはこれが最後になるのかな。