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【とくべつ】
ハートの城の廊下でアリスを見かけた。
と思ったら、なんとそばにはペーターさんもいた。
私はさっと廊下の影に身をひそめ、彼らを観察することにした。
「あぁ、アリス!あなたはなんて可憐で可愛らしいんでしょう!! 素敵です!!」
「……はいはい。わかったから離れてちょうだい」
「そんな冷たいことを言わないでください。僕はどうしたってあなたに引き寄せられてしまうんですからね」
「ペーター。あんたってホントにストーカーよね」
「ストーカー!? ひどいです。恋人と言ってほしいです」
「恋人になった覚えなんて一切ないわよ! 近づかないで!!」
……あぁ、ズタボロに言われてる。
アリスってば容赦ないなぁ。
好きな人からあんな扱いをされたら絶対立ち直れないよね。普通は。
ペーターさんの鋼の心というか、聞く耳持たない感じはある意味尊敬に値する。
「アリス、今度ピクニックに行きませんか?」
ほら、すごいよね。ズタボロに言われた後にすぐ誘うその勇気!(さすがペーターさん!)
ペーターさんはにこにことアリスを見ている。
アリスは眉間にしわを寄せてしばらくペーターさんを見ていたけれど、毒気を抜かれた様にふっと表情を緩めた。
「……別にいいけど」
「!!」
視線を逸らせて気まずそうに言うアリスと、その瞬間喜びで声が出なかったらしいペーターさん。そして一人ニヤつく私。(二人とも可愛すぎる!!)
「嬉しいです!! アリス! 大好きです!! 愛しています!!」
「ちょっ……!!ペーター!!」
いつものセリフでアリスに抱きつくペーターさん。
アリスは思いっきり動揺しているけれど、拒絶しない所を見ると、どうやらペーターさんの恋もそのうち報われる予感がしてきた。
なんだか私が嬉しくなってしまう。
もうこれ以上覗き見するのはやめておこう。
幸せな2人を邪魔するなんてよくないわ。
私はそんなことを思いながら、その場を離れた。
ペーターさんはなんだか惜しい人だ。
たぶんストーカーっぽくなければ、アリスだってもう少し態度を変えたのだろう。だって顔だけ見れば好みだって言ってたし。
もうちょっとストーカーじゃなくて、もうちょっと潔癖症じゃなくて、もうちょっと性格が穏やかだったら人気者だったんだろうなぁ。
……。
……う~ん、無理だろうな。そうなるともはやペーターさんじゃないもんな。
そんな結論に至った私は、1人うんうんと頷いた。
するとその時だった。
「名無しさんじゃないですか。こんにちは」
はっと振り返ると、いつのまにかアリスと別れたらしいペーターさんが立っていた。
見るからに上機嫌の彼。
「こ、こんにちは、ペーターさん」
なんだか私が動揺してしまって、しどろもどろになってしまった。
そんな私を見てペーターさんは小首を傾げつつも、穏やかにこう言った。
「ちょうどよかった。名無しさん。一緒にお茶でもしませんか?」
一応「しませんか?」と疑問形にはなっているけれど、これまでの経験上これは誘いではなく命令だ。
断れたことなど一度もない。
無駄な労力や気を使うよりも、素直にお茶を飲んで話し相手になるのが最善策なのだ。
というわけで、私はペーターさんとハートの城のダイニングルームでお茶をしている。
そして、いつものようにアリスへの愛やら愛やら愛をひたすら聞かされているのだった。
もちろん先ほどOKをもらったピクニック話ももれなく聞かせていただいた。
「それで、その時初めて彼女が笑ってくれたんですが、その時の顔を僕は今でも忘れられないんですよ」
「なるほどー」
彼のアリス話も、最近はだいぶ普通に聞けるようになってきた。
たぶん散々この手の話に付き合ってきたから免疫ができたのだろう。
今ではペーターさんの恋をしっかり応援している自分がいることに気づく。
彼とは女子よりも女子会っぽいトークをしているなぁ私。
「確かにアリスの笑顔はキュンと来ますもんね。私だってキュンキュンしますもん」
「やはりそうですか! 彼女の魅力は異性ならず同性までも惹きつけてしまうのですね!?」
「そりゃそうですよ。わりとドライな普段とのギャップがまたいいですよね」
「そうなんですよ!! 名無しさん! まさにあなたの言う通りなんです!」
ペーターさんはテーブルの上で、私の手をがしっと掴んでキラキラした目を向けてくる。
うわ、すごいテンションが上がっちゃったよこの人。(おもしろいけど)
「意地っ張りな所も素敵ですが、本当はすごく素直なんです。たまに見せる素直な所も照れた表情も全てが愛おしいんです!!」
「あー、はい。そうですよね」
ぐいぐい来るなぁ。
でもちょっと待って。
アリスが照れた表情をペーターさんに見せるようになったということ?
それってすごい進歩な気がする。
「ペーターさん……実はもうひと押しなんじゃないですか?」
「え?」
私の言葉に、ペーターさんは私の手を掴んだまま固まった。
「傍から見ていて思うんですけど、アリスは前よりもペーターさんに心を許しているような気がするんですよねぇ」
「っ!? 本当にそう思いますか!?」
「はい。思います!」
私が強くうなずくと、彼は私の手をますますぎゅっと握る。
「嬉しいです!! ありがとうございます!!!」
「え、いや、別に私が勝手にそう思っているだけで、実際の所はわからないんですけどね!?」
まるでアリスに好きだと言われたかのように喜ぶペーターさんに、私は慌てて言葉を付け加えた。
しかし、ペーターさんは「いいえ!大丈夫です!!」と言い切った。
「名無しさんがそう思ってくれているということは、9割方アリスもそう思ってくれているということです!
僕のこの愛がやっと彼女に届いたということですね!」
彼の中ではそういうことになってしまったらしい。
これ、もしもペーターさんがフラれちゃったら、私逆恨みされないかしら?(ちょっと心配)
私の手を握ってぶんぶん振るペーターさんに何も言えなくなる私。
するとその時だった。
「あれー? 二人で手なんか握り合っちゃって……もしかして今良い所?」
その声に同じタイミングで振り返る私とペーターさん。
見ると、爽やかに首を傾げるエースがいた。
「やだなぁ、ペーターさん。アリスから名無しさんに乗り換えたの? ダメだぜ。脈がないからって違う女の子に乗り換えるなんて。それに名無しさんは俺のなんだからね」
「はぁ!?」
突然現れたかと思えば、失礼かつ変なことを言いだすこの人。
私はエースのものになる予定は今の所全くない。
反論しようとすると、ペーターさんがものすっごく冷たい視線をエースに向けた。
「なに言ってるんですか。名無しさんはエース君のものではありませんよ」
冷たい声でばっさり言い捨てたペーターさんは、さっきまでとは別人だった。急に近寄りがたい雰囲気になる。
しかし、エースは全く気にならないらしい。
「えー?それじゃあ名無しさんはペーターさんのものになったの? 俺、そんなの嫌だぜ」
「名無しさんは僕の大切な友人です。あなたみたいな人にあげられませんよ」
「……ペーターさん、なんかお父さんみたいな発言ですよそれ」
娘はやらーん!みたいな発言に思わずツッコんでしまったけれど、なんだかちょっと嬉しかった。
アリスとは違うけれど、彼の中で私も一応特別な場所をもらっているらしい。
「名無しさん、こんな男の元へ行ってはいけませんよ。色々な意味でとんでもない目に遭うに決まってます」
「色々な意味で?」
どんな意味ですかと思ってペーターさんを見ると、エースが楽しそうにこう言った。
「えー、ひどいなぁ。そりゃあその言葉を否定はしないけど、俺なりにちゃんと大切にするつもりだよ」
「……なんか怖い発言なんですけど」
「だから、こんな男は無視してくださいね!」
ペーターさんはきっぱりとそう言って、私を見つめた。
その目を見た瞬間私はきっぱりとこう言った。
「ペーターさんを信じます」
私の言葉に、ペーターさんが嬉しそうに笑った。
「賢明な判断ですよ、名無しさん」
なんだか褒められた気がして嬉しくなる。
なんか納得いかないぜ、とぶつぶつ言うエースをスルーして、私はペーターさんにえへへ、と笑いかけた。
ハートの城の廊下でアリスを見かけた。
と思ったら、なんとそばにはペーターさんもいた。
私はさっと廊下の影に身をひそめ、彼らを観察することにした。
「あぁ、アリス!あなたはなんて可憐で可愛らしいんでしょう!! 素敵です!!」
「……はいはい。わかったから離れてちょうだい」
「そんな冷たいことを言わないでください。僕はどうしたってあなたに引き寄せられてしまうんですからね」
「ペーター。あんたってホントにストーカーよね」
「ストーカー!? ひどいです。恋人と言ってほしいです」
「恋人になった覚えなんて一切ないわよ! 近づかないで!!」
……あぁ、ズタボロに言われてる。
アリスってば容赦ないなぁ。
好きな人からあんな扱いをされたら絶対立ち直れないよね。普通は。
ペーターさんの鋼の心というか、聞く耳持たない感じはある意味尊敬に値する。
「アリス、今度ピクニックに行きませんか?」
ほら、すごいよね。ズタボロに言われた後にすぐ誘うその勇気!(さすがペーターさん!)
ペーターさんはにこにことアリスを見ている。
アリスは眉間にしわを寄せてしばらくペーターさんを見ていたけれど、毒気を抜かれた様にふっと表情を緩めた。
「……別にいいけど」
「!!」
視線を逸らせて気まずそうに言うアリスと、その瞬間喜びで声が出なかったらしいペーターさん。そして一人ニヤつく私。(二人とも可愛すぎる!!)
「嬉しいです!! アリス! 大好きです!! 愛しています!!」
「ちょっ……!!ペーター!!」
いつものセリフでアリスに抱きつくペーターさん。
アリスは思いっきり動揺しているけれど、拒絶しない所を見ると、どうやらペーターさんの恋もそのうち報われる予感がしてきた。
なんだか私が嬉しくなってしまう。
もうこれ以上覗き見するのはやめておこう。
幸せな2人を邪魔するなんてよくないわ。
私はそんなことを思いながら、その場を離れた。
ペーターさんはなんだか惜しい人だ。
たぶんストーカーっぽくなければ、アリスだってもう少し態度を変えたのだろう。だって顔だけ見れば好みだって言ってたし。
もうちょっとストーカーじゃなくて、もうちょっと潔癖症じゃなくて、もうちょっと性格が穏やかだったら人気者だったんだろうなぁ。
……。
……う~ん、無理だろうな。そうなるともはやペーターさんじゃないもんな。
そんな結論に至った私は、1人うんうんと頷いた。
するとその時だった。
「名無しさんじゃないですか。こんにちは」
はっと振り返ると、いつのまにかアリスと別れたらしいペーターさんが立っていた。
見るからに上機嫌の彼。
「こ、こんにちは、ペーターさん」
なんだか私が動揺してしまって、しどろもどろになってしまった。
そんな私を見てペーターさんは小首を傾げつつも、穏やかにこう言った。
「ちょうどよかった。名無しさん。一緒にお茶でもしませんか?」
一応「しませんか?」と疑問形にはなっているけれど、これまでの経験上これは誘いではなく命令だ。
断れたことなど一度もない。
無駄な労力や気を使うよりも、素直にお茶を飲んで話し相手になるのが最善策なのだ。
というわけで、私はペーターさんとハートの城のダイニングルームでお茶をしている。
そして、いつものようにアリスへの愛やら愛やら愛をひたすら聞かされているのだった。
もちろん先ほどOKをもらったピクニック話ももれなく聞かせていただいた。
「それで、その時初めて彼女が笑ってくれたんですが、その時の顔を僕は今でも忘れられないんですよ」
「なるほどー」
彼のアリス話も、最近はだいぶ普通に聞けるようになってきた。
たぶん散々この手の話に付き合ってきたから免疫ができたのだろう。
今ではペーターさんの恋をしっかり応援している自分がいることに気づく。
彼とは女子よりも女子会っぽいトークをしているなぁ私。
「確かにアリスの笑顔はキュンと来ますもんね。私だってキュンキュンしますもん」
「やはりそうですか! 彼女の魅力は異性ならず同性までも惹きつけてしまうのですね!?」
「そりゃそうですよ。わりとドライな普段とのギャップがまたいいですよね」
「そうなんですよ!! 名無しさん! まさにあなたの言う通りなんです!」
ペーターさんはテーブルの上で、私の手をがしっと掴んでキラキラした目を向けてくる。
うわ、すごいテンションが上がっちゃったよこの人。(おもしろいけど)
「意地っ張りな所も素敵ですが、本当はすごく素直なんです。たまに見せる素直な所も照れた表情も全てが愛おしいんです!!」
「あー、はい。そうですよね」
ぐいぐい来るなぁ。
でもちょっと待って。
アリスが照れた表情をペーターさんに見せるようになったということ?
それってすごい進歩な気がする。
「ペーターさん……実はもうひと押しなんじゃないですか?」
「え?」
私の言葉に、ペーターさんは私の手を掴んだまま固まった。
「傍から見ていて思うんですけど、アリスは前よりもペーターさんに心を許しているような気がするんですよねぇ」
「っ!? 本当にそう思いますか!?」
「はい。思います!」
私が強くうなずくと、彼は私の手をますますぎゅっと握る。
「嬉しいです!! ありがとうございます!!!」
「え、いや、別に私が勝手にそう思っているだけで、実際の所はわからないんですけどね!?」
まるでアリスに好きだと言われたかのように喜ぶペーターさんに、私は慌てて言葉を付け加えた。
しかし、ペーターさんは「いいえ!大丈夫です!!」と言い切った。
「名無しさんがそう思ってくれているということは、9割方アリスもそう思ってくれているということです!
僕のこの愛がやっと彼女に届いたということですね!」
彼の中ではそういうことになってしまったらしい。
これ、もしもペーターさんがフラれちゃったら、私逆恨みされないかしら?(ちょっと心配)
私の手を握ってぶんぶん振るペーターさんに何も言えなくなる私。
するとその時だった。
「あれー? 二人で手なんか握り合っちゃって……もしかして今良い所?」
その声に同じタイミングで振り返る私とペーターさん。
見ると、爽やかに首を傾げるエースがいた。
「やだなぁ、ペーターさん。アリスから名無しさんに乗り換えたの? ダメだぜ。脈がないからって違う女の子に乗り換えるなんて。それに名無しさんは俺のなんだからね」
「はぁ!?」
突然現れたかと思えば、失礼かつ変なことを言いだすこの人。
私はエースのものになる予定は今の所全くない。
反論しようとすると、ペーターさんがものすっごく冷たい視線をエースに向けた。
「なに言ってるんですか。名無しさんはエース君のものではありませんよ」
冷たい声でばっさり言い捨てたペーターさんは、さっきまでとは別人だった。急に近寄りがたい雰囲気になる。
しかし、エースは全く気にならないらしい。
「えー?それじゃあ名無しさんはペーターさんのものになったの? 俺、そんなの嫌だぜ」
「名無しさんは僕の大切な友人です。あなたみたいな人にあげられませんよ」
「……ペーターさん、なんかお父さんみたいな発言ですよそれ」
娘はやらーん!みたいな発言に思わずツッコんでしまったけれど、なんだかちょっと嬉しかった。
アリスとは違うけれど、彼の中で私も一応特別な場所をもらっているらしい。
「名無しさん、こんな男の元へ行ってはいけませんよ。色々な意味でとんでもない目に遭うに決まってます」
「色々な意味で?」
どんな意味ですかと思ってペーターさんを見ると、エースが楽しそうにこう言った。
「えー、ひどいなぁ。そりゃあその言葉を否定はしないけど、俺なりにちゃんと大切にするつもりだよ」
「……なんか怖い発言なんですけど」
「だから、こんな男は無視してくださいね!」
ペーターさんはきっぱりとそう言って、私を見つめた。
その目を見た瞬間私はきっぱりとこう言った。
「ペーターさんを信じます」
私の言葉に、ペーターさんが嬉しそうに笑った。
「賢明な判断ですよ、名無しさん」
なんだか褒められた気がして嬉しくなる。
なんか納得いかないぜ、とぶつぶつ言うエースをスルーして、私はペーターさんにえへへ、と笑いかけた。