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【はる さくら色】
春。
ハートの城は元からメルヘンチックな外観だけれど、この季節がさらにぽわわーんと可愛らしい雰囲気に拍車をかけている。
色とりどりの花に澄んだ青空。
小鳥のさえずりと爽やかな風がすごく気持ちいい。
私は春の陽気に浮かれていた。
だからだろう。
「名無しさん、桜を見に行かない?」という稀代の迷子・エースの誘いに、私は二つ返事でうなずいたのだった。
桜のある場所は私も知っていた。
だから、エースが違う道を行こうとするのを「こっちだよ」と引っ張ることができる。
いつもの『道なき道をゆく旅』にはならず、私とエースはのんびりと春の道を歩いていた。
「なんだかいいよなぁ。こうやってのんびり歩くのって」
「そうだね。春は特にいいよね。歩いてるだけでうきうきしちゃう」
道端に咲く小さな花も、木々の揺らめきも、白い雲も、明るい日差しも、とにかく全てが柔らかい。
こんな風に穏やかな場所を穏やかにエースと歩く日が来るなんて思いもしなかった。
私は隣を歩くエースをそっと見てみた。
機嫌の良いらしい彼は、穏やかな表情でゆっくりと歩いている。
「あ、あの木の実は食べられるよ。けっこう美味しいんだ」とか、「そのきのこは毒だよ。双子くんたちは喜んでつんで行くけどね」などアウトドア専門っぽいことを言ったかと思えば、
「あの鳥綺麗な色だよなー」とか「お弁当持って来ればよかったかもなー」など思いついたことを穏やか~に話している。
彼の話をうんうんと聞きながら、なんだかすごく幸せな気分になる私。
穏やかっていいなぁ、春っていいなぁ、と思わずにやけてしまった。
でも、本当は春に浮かれているだけじゃない。
隣にエースがいることがすごく嬉しい。
私達は友達。
けれど、私は彼が好きだった。
いつからだかはわからないけれど、彼を目で追うようになっていた。
いつも穏やかなわけじゃないし、笑顔の裏で何を考えているのかわからない所があるエースだけど、それでも彼の持っている雰囲気が好きだった。
特に今みたいに本当に穏やかな表情をしている時の彼は、一緒にいて嬉しくなるし安心できる。
そういえばエースって春が似合うなぁ。
一見爽やかな彼は、穏やかな春の日差しとか、明るい雰囲気とかそういうのが似合うし、なんだか似ている。
「あー、春はいいよなぁ」
のんびりとそう言ったエース。
栗色の髪の毛がそよそよと風に揺れる。
なんとなく目が離せずにいると、エースは私を見てにこっと笑った。
うっかりときめく私に、彼はいつもの調子でこう言った。
「でもさ、こんな浮かれた陽気がずーっと続いたらうんざりだと思わない? イラッとして当り散らしちゃうかもなぁ。はははっ!」
・・・・・・あくまで見た目が春っぽいのよね、この人。うん、わかってたんだけど。
「わー、すごい!! 綺麗だね!!」
「うん。すごいね」
無事に桜のある場所までたどり着いた私達。
青空に薄いピンク色の桜が映えてとても綺麗。
「春って感じがするよなー」
「うん、するする」
春って感じという表現がどうなのかわからないけど、エースのいう通り「春」という感じがものすごくする。
地面にも花びらが落ちていて桜色に染まっている。
そこをゆっくりと歩いた私たちは、適当な場所を見つけて腰を下ろした。
他愛のない話をしたり、桜について話したりしていると、不意にエースが黙り込んだ。
不思議に思って彼を見ると、にこにこと私を見つめている。
「え、なに? どうしたのエース」
見つめられて照れる私に、エースはにこにこしたまま言う。
「名無しさん、なんだか機嫌がいいね」
「え? そうかな?」
「そうだよ。なんだかさっきからずっとにこにこしてる。もしかして、俺と一緒だから?」
エースはそう言っていたずらっぽく私を見る。
私は内心「うわー、ばれてるし!」と思いつつ、飛び跳ねた心臓を押さえて平静を装った。
「私、春って大好きだから、無条件でわくわくしてきちゃうの。だからかな」
「わー、俺の言葉スルーしちゃうんだ」
笑いながら言うエースの言葉に、私もつられて笑った。
「エースもなんだか機嫌がいいよね」
「うん。だって名無しさんと一緒だし、君さっきから機嫌がいいからね」
「え」
あっさりと頷くエースにびっくりする私。
「今の名無しさんってなんでも楽しんでくれそうだし、すごく素直になってくれそうだし、ね?」
彼はそう言ってふわりと笑う。
「……私はいつだって素直ですけど」
なんだか恥ずかしくなってそう言うと、彼は楽しそうに笑った。
「ははは!そうだったね」
でもさ。
そう言ってエースは私の手に触れた。
どきりとして彼を見る。
「肝心な所が意地っ張りだよね、名無しさんは」
笑顔のままエースはじっと私を見つめていた。
「そろそろ素直になってくれてもいいんじゃない? 君の大好きな春だし、さ」
彼は腕を伸ばして、私の耳のあたりに手を当てるとそのまま顔を寄せる。
「え、エース?」
近づいてくる顔に思わず身を反らせるが、彼は逃がしてくれなかった。
「名無しさん、俺は君が好きだよ」
どきんとして目の前がくらりとした。
「君も俺のこと、好きだよね?」
一応確認しておくけど、という様子で顔を覗きこんでくる彼。
自分の顔がものすごく熱い。きっと耳まで真っ赤になっている。
「好きだよね?」なんて聞き方は優しいのかずるいのか。
エースの顔が見られなくて、私は思わず視線を落とす。
するとエースがくすくすと笑った。
「当たり?」
よかった、と穏やかな表情で微笑む彼。
勝手に話が進んでいるけれどそんな顔をされたら、文句なんて言えない。
黙り込む私に、エースは春みたいに微笑んでキスをした。
春。
ハートの城は元からメルヘンチックな外観だけれど、この季節がさらにぽわわーんと可愛らしい雰囲気に拍車をかけている。
色とりどりの花に澄んだ青空。
小鳥のさえずりと爽やかな風がすごく気持ちいい。
私は春の陽気に浮かれていた。
だからだろう。
「名無しさん、桜を見に行かない?」という稀代の迷子・エースの誘いに、私は二つ返事でうなずいたのだった。
桜のある場所は私も知っていた。
だから、エースが違う道を行こうとするのを「こっちだよ」と引っ張ることができる。
いつもの『道なき道をゆく旅』にはならず、私とエースはのんびりと春の道を歩いていた。
「なんだかいいよなぁ。こうやってのんびり歩くのって」
「そうだね。春は特にいいよね。歩いてるだけでうきうきしちゃう」
道端に咲く小さな花も、木々の揺らめきも、白い雲も、明るい日差しも、とにかく全てが柔らかい。
こんな風に穏やかな場所を穏やかにエースと歩く日が来るなんて思いもしなかった。
私は隣を歩くエースをそっと見てみた。
機嫌の良いらしい彼は、穏やかな表情でゆっくりと歩いている。
「あ、あの木の実は食べられるよ。けっこう美味しいんだ」とか、「そのきのこは毒だよ。双子くんたちは喜んでつんで行くけどね」などアウトドア専門っぽいことを言ったかと思えば、
「あの鳥綺麗な色だよなー」とか「お弁当持って来ればよかったかもなー」など思いついたことを穏やか~に話している。
彼の話をうんうんと聞きながら、なんだかすごく幸せな気分になる私。
穏やかっていいなぁ、春っていいなぁ、と思わずにやけてしまった。
でも、本当は春に浮かれているだけじゃない。
隣にエースがいることがすごく嬉しい。
私達は友達。
けれど、私は彼が好きだった。
いつからだかはわからないけれど、彼を目で追うようになっていた。
いつも穏やかなわけじゃないし、笑顔の裏で何を考えているのかわからない所があるエースだけど、それでも彼の持っている雰囲気が好きだった。
特に今みたいに本当に穏やかな表情をしている時の彼は、一緒にいて嬉しくなるし安心できる。
そういえばエースって春が似合うなぁ。
一見爽やかな彼は、穏やかな春の日差しとか、明るい雰囲気とかそういうのが似合うし、なんだか似ている。
「あー、春はいいよなぁ」
のんびりとそう言ったエース。
栗色の髪の毛がそよそよと風に揺れる。
なんとなく目が離せずにいると、エースは私を見てにこっと笑った。
うっかりときめく私に、彼はいつもの調子でこう言った。
「でもさ、こんな浮かれた陽気がずーっと続いたらうんざりだと思わない? イラッとして当り散らしちゃうかもなぁ。はははっ!」
・・・・・・あくまで見た目が春っぽいのよね、この人。うん、わかってたんだけど。
「わー、すごい!! 綺麗だね!!」
「うん。すごいね」
無事に桜のある場所までたどり着いた私達。
青空に薄いピンク色の桜が映えてとても綺麗。
「春って感じがするよなー」
「うん、するする」
春って感じという表現がどうなのかわからないけど、エースのいう通り「春」という感じがものすごくする。
地面にも花びらが落ちていて桜色に染まっている。
そこをゆっくりと歩いた私たちは、適当な場所を見つけて腰を下ろした。
他愛のない話をしたり、桜について話したりしていると、不意にエースが黙り込んだ。
不思議に思って彼を見ると、にこにこと私を見つめている。
「え、なに? どうしたのエース」
見つめられて照れる私に、エースはにこにこしたまま言う。
「名無しさん、なんだか機嫌がいいね」
「え? そうかな?」
「そうだよ。なんだかさっきからずっとにこにこしてる。もしかして、俺と一緒だから?」
エースはそう言っていたずらっぽく私を見る。
私は内心「うわー、ばれてるし!」と思いつつ、飛び跳ねた心臓を押さえて平静を装った。
「私、春って大好きだから、無条件でわくわくしてきちゃうの。だからかな」
「わー、俺の言葉スルーしちゃうんだ」
笑いながら言うエースの言葉に、私もつられて笑った。
「エースもなんだか機嫌がいいよね」
「うん。だって名無しさんと一緒だし、君さっきから機嫌がいいからね」
「え」
あっさりと頷くエースにびっくりする私。
「今の名無しさんってなんでも楽しんでくれそうだし、すごく素直になってくれそうだし、ね?」
彼はそう言ってふわりと笑う。
「……私はいつだって素直ですけど」
なんだか恥ずかしくなってそう言うと、彼は楽しそうに笑った。
「ははは!そうだったね」
でもさ。
そう言ってエースは私の手に触れた。
どきりとして彼を見る。
「肝心な所が意地っ張りだよね、名無しさんは」
笑顔のままエースはじっと私を見つめていた。
「そろそろ素直になってくれてもいいんじゃない? 君の大好きな春だし、さ」
彼は腕を伸ばして、私の耳のあたりに手を当てるとそのまま顔を寄せる。
「え、エース?」
近づいてくる顔に思わず身を反らせるが、彼は逃がしてくれなかった。
「名無しさん、俺は君が好きだよ」
どきんとして目の前がくらりとした。
「君も俺のこと、好きだよね?」
一応確認しておくけど、という様子で顔を覗きこんでくる彼。
自分の顔がものすごく熱い。きっと耳まで真っ赤になっている。
「好きだよね?」なんて聞き方は優しいのかずるいのか。
エースの顔が見られなくて、私は思わず視線を落とす。
するとエースがくすくすと笑った。
「当たり?」
よかった、と穏やかな表情で微笑む彼。
勝手に話が進んでいるけれどそんな顔をされたら、文句なんて言えない。
黙り込む私に、エースは春みたいに微笑んでキスをした。
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